http://www.sankei.com/politics/news/171130/plt1711300030-n1.html

 北朝鮮による11月29日の弾道ミサイル発射を受け、米政府が打ち出した新たな対北圧力をめぐり、日本政府が対応に苦慮している。ティラーソン米国務長官が北朝鮮に対する海上封鎖ともとれる追加措置の必要性を訴えたが、日本政府は憲法上の制約から参加できない可能性があるためだ。安倍晋三政権はトランプ政権とともに圧力を強化する方針を掲げるが、これと矛盾する事態となりかねない。

 「ティラーソンが何を目指すのか分からない。日本にはできないこともある」

 外務省幹部は30日、困惑の表情を隠さなかった。ティラーソン氏が弾道ミサイル発射直後に発表した声明で「国際社会は実施中の国連制裁に加え、北朝鮮に出入りする物資の海上輸送を阻止する必要がある」と指摘したからだ。

 海上封鎖を目的とした臨検は国際法上、武力行使とみなされる。国連安全保障理事会が9月に対北制裁決議を採択した際、貨物船臨検のため「あらゆる必要な措置」を認める米政府草案に対し、中露両国は「軍事手段の容認につながる」として反対した。

 ティラーソン氏の意図が海上封鎖にあるならば、自衛隊や海上保安庁は参加できない。政府が存立危機事態か武力攻撃事態と認定しない限り、日本が米軍などによる臨検に協力すれば憲法が禁じる「武力行使の一体化」に当たる。

 政府は昨年施行された安全保障関連法の制定時に見直しを図ったが、内閣法制局の反対で見送った。当時を知る政府関係者は「この問題は安保法制の最大の穴になっている」と語る。

 とはいえ、米政府が対北海上封鎖に踏み切れば、日本に協力を求めることになる。周辺諸国で能力があるのは日本、韓国などに限られている。政府高官は「日本に手足はあるが、縛られている」と嘆く。

 「わが国は、いかなる挑発にも屈しない。国際社会で結束して圧力を最大限に高める」

 安倍首相は30日の参院予算委員会でこう強調したが、この言葉を裏付ける法整備は不十分な状態にとどまっている。(杉本康士、大橋拓史)