https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171024-00000092-sasahi-pol

 血税635億円もかけた衆院選は自民党が283議席(追加公認含む)と大勝、公明党とあわせて全議席の3分の2を上回る勢力となり、憲法改正の発議が可能となった与党。安倍圧勝で、“モリカケ疑惑ロンダリング”は許されていいのか。前川喜平・元文部科学事務次官、郷原信郎・元東京地検特捜検事が怒りの声をあげた。

●元文部科学事務次官・前川喜平「首相が国家権力を私物化した疑いは濃厚」

 安倍首相にとって、今回の解散は森友・加計問題を“ロンダリング”する意図があったことは明らかだと思います。野党の足並みがそろわない隙をついたことで勝利はしても、それで首相に向けられた疑惑に対し国民が信任を与えたことにはならない。国家権力を私物化して友人に特権を与えた疑いは濃厚であり、こうした不公正さに国民は敏感です。

 加計問題については、私が文部科学省にいた当時に知らなかった事実が次々と明らかになっています。2015年4月には、愛媛県今治市や加計学園の関係者らが首相官邸を訪れて首相秘書官と会っていたとされていますが、行政をつかさどる役割ではない首相秘書官が面会するのは不可解です。

 私が「加計ありき」の指示を受けたのは昨年8月からですが、それよりずっと前から「加計ありき」は始まっていたのではないか。加計孝太郎理事長や今治市の菅良二市長なども国会に呼ぶ必要がありますし、当時の内閣府の担当者らには、うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問の場で証言してもらうべきです。

 自民党が公約に掲げた憲法改正についても危惧しています。私は安倍政権下での改憲には反対です。今回の選挙では無理かもしれませんが、立憲民主、社民、共産の立憲3党で衆院の3分の1を確保し、改憲になだれ込まないかたちをつくってほしい。

 それでも安倍首相が改憲を実行するというのなら、私も国会正門前に行ってデモに参加しますよ。

●元東京地検特捜検事・郷原信郎「森友問題で『妻はだまされた』は暴言」

 安倍首相は森友学園疑惑を巡り、前理事長の籠池泰典氏を「詐欺を働く人物」とし、「妻はだまされた」という趣旨の発言を民放の党首討論でしました。

国民に対し「丁寧に説明する」と繰り返し約束してきたが、それは籠池氏を詐欺師と決めつけることだったのか。これから公判がありますが、行政の長である総理が、刑事司法の「推定無罪の原則」を破ったとんでもない暴言です。名誉毀損に当たる可能性がきわめて高いからです。

 名誉毀損の免責要件は事実の公共性と、目的の公益性です。もし籠池氏から名誉毀損で民事訴訟を起こされたら、安倍首相はどういう反論ができるだろうか。公共性はありますが、「妻はだまされた」なんて自己弁護でしかないから、公益目的とは到底言えません。ましてや、一体何をだまされたというのか。昭恵氏が名誉校長になるときに、籠池氏が何かだましたわけではないでしょう。

 今回の検察の捜査にも政権の意向が働いたと疑わざるを得ません。国の補助金の不正受給であれば、補助金適正化法が適用されるべきなのに、大阪地検はより罪の重い詐欺罪で起訴した。検察実務の常識ではあり得ないことです。大阪府からの補助金不正受給も行政処分の対象で、わざわざ詐欺罪で立件する話ではありません。法治主義の観点からも大問題です。

(構成/本誌・小泉耕平、亀井洋志)