安倍政権を揺るがしている森友学園・加計学園問題に対する与野党の向き合い方は、衆院選の焦点の一つだ。ただ、それぞれの現場となった選挙区では、地元の事情や候補者の思惑が絡み、必ずしも与党VS.野党の構図とはなっていない。ねじれる現地を歩いた。

愛媛2区は加計学園の獣医学部建設予定地の愛媛県今治市を抱える。自民党、希望の党、共産党、日本維新の会の4人が争う。

 民進党から除籍され、希望の党公認で出た前職の横山博幸氏(66)は、県議時代から獣医学部誘致に賛成だ。7月に離党を表明した際は「(民進は)反対の立場からスタートしている。誘致は悲願のプロジェクトだ」と古巣を批判した。

 希望の党の小池百合子代表は加計問題で「お友達であれば何か良いことがある」と政権批判を強めている。一方、横山氏は14日の街頭演説で「首相が説明責任を果たさず、逃げる政治をしたから問題が大きくなった。しっかり説明すべきだ」としつつも、「新年度には県外からの学生、教授陣を温かく迎えよう」と呼びかけた。

 同じ野党の維新元職、西岡新氏(44)も公示日第一声で「プロセスの不透明さをオープンにしたうえで、市民は獣医学部を求めていると、はっきり示したい」と述べた。出陣式には、獣医学部の新設をめざす菅良二市長から激励のメッセージも届いた。維新の公約には加計問題を明示した項目はないが、「首相が指示した証拠が出ないまま長引かせることで不利益を被るのは市民だ」と強調する。

 一方で、自民党前職ながら、安倍晋三首相をたびたび批判する論客の村上誠一郎氏(65)は懐疑的だ。「大学誘致は三、四十年前は流れだったが、人口減少の時代になり、馬牛も減る。社会情勢を考えるべきだ」と話す。

 「十分な教育環境が確保できなければ新設に反対」とする日本獣医師連盟の推薦も得た村上氏だが、街頭演説では加計問題に触れていない。陣営は「市民の多くは誘致賛成。反対を訴えると、票が減る」。出陣式に菅市長の応援メッセージはなかった。菅市長は「獣医学部に反対する候補は支援できない」と話す。

 共産党は批判を強める。新顔の一色一正氏(67)は街頭で「安倍暴走政治の最たるものは加計疑惑。今治市民に100億円以上の新たな負担をかける。こんなばかげた政治があるか」と訴える。(直井政夫)

■追及姿勢、野党に温度差 大阪…

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