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 「保守とリベラルのイデオロギー論争は、もうたくさん」。新党が入り乱れる混沌(こんとん)とした選挙戦だが、子育て世代の有権者は候補者が訴える政策の中身を見極めようとしている。待機児童問題に取り組むある市民グループを追った。【中村かさね/統合デジタル取材センター】

 ◇無償化より待機児童解消を

 「もう、だまされません」

 東京都武蔵野市の会社員、中井いずみさん(41)は記者に言った。3歳の次男は認可保育所に3年連続で落選した。実質2歳児までの認証保育所に、3歳児となった今も残留する。次男のクラスには、同じように認可に落選した子どもが6人いる。「来年はどうする?」。他の保護者と顔を合わせるたびに話題は自然とそこにいく。

 自民党は幼児教育・保育を無償化し、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿確保を公約に掲げている。昨年の参院選では「待機児童の受け皿を10万人分増やして50万人分確保する」とぶち上げ、今年度末までの待機児童ゼロを目標に掲げていた。ところが今年6月に、待機児童の解消目標を20年度末まで先送りしたうえで、22年度までに32万人分の受け皿を整備する新プランを発表していた。今回の衆院選では、この32万人分の整備を2年前倒しし、20年度までにやると訴えている。

 一方、希望の党も無償化や「待機児童ゼロの義務付け」を、立憲民主党は保育士給与引き上げを公約に掲げる。公明党と共産党も、保育や幼稚園の無償化を訴え、各党の訴える内容に大差はない。

 安倍晋三首相が衆院解散の9月28日に語った「無償化」の3文字に、中井さんはめまいを覚えた。近所に新設されるはずだった認可保育所は、住民の反対などで2年連続で先送りされ、来春も認可に入れる見込みは薄い。

 「上級生から刺激を受けたり集団保育で社会性を身につけたりできる施設で、のびのび育ってほしい。保育園はもうあきらめて幼稚園に預けます」と話す中井さん。預かり時間が短い幼稚園では、夫婦で協力したり外部のサポートを使ったりしても仕事に支障が出るだろう。

 「ただでさえ少ない枠を奪い合っているのに、無償化されたら競争が激化するだけ。無償化より受け皿確保が先。順序が逆じゃないですか」。保守やリベラル、3極など次の政権の枠組みばかり語られる選挙に違和感を抱いている。

 ◇関心の有無は政党に関係なし

 「この選挙を逆手に取りましょう」。

 10月4日に東京都内で開かれた「保活」イベントで、天野妙さん(42)が100人を超す参加者に呼びかけた。「自分の選挙区の候補に、子育て施策を質問してみてください。財源は? 優先施策は? 相手がたじたじとなったら、たいして考えていない証拠。それでも質問すれば、候補はきっと考えるようになるはずです」

 イベントの主催は今年2月に発足した市民グループ「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」。天野さんが代表で、中井さんも参加する。活動に加わるメンバーは地域も職業も政党支持もまちまちだ。仕事や育児の合間にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でつながり、情報を共有して会議を進める。データや資料を作成する人、広報担当、表に出て発言する人−−。自然と役割分担も生まれた。

 国会議員への陳情活動を続ける中で分かったこともある。「政党に関係なく、共感してくれる人もいればそうでない人もいる。でも子どもを連れて会って話せば、聞く耳を持たない政治家はいません」(天野さん)

 活動に協力してくれた政治家は、与党にも野党にもいた。その一人が、週刊誌報道を機に民進党を離党した山尾志桜里氏だ。天野さんは「子育て支援に関心を持ち、しっかり動いてくれる人なら政党やプライベートは問題ではない」と強調する。

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