■ 「私は現実的なリベラル」と辻元氏は言うが…

衆院選の直前から「リベラル」(liberal)という言葉に接する機会が増えた。
民進党が分裂し、保守を掲げる「希望の党」への合流組と、民進リベラル派を集めた「立憲民主党」などに分かれたのがきっかけだ。
専門家は「個人の自由を尊重する思想的な立場」という本来の意味から外れて、日本ではある特定の「平和主義者」や「左派」を指すと指摘する。

「私は現実的なリベラルです」。
立憲民主党の前職、辻元清美氏(57)=大阪10区=は5日、大阪市内の街頭演説でこう宣言し、「信念に従って憲法改正や安全保障関連法に反対してきた」と語った。

リベラルという言葉が盛んに使われるようになったのは、衆院解散が目前に迫った先月下旬、民進の前原誠司代表が「安倍晋三政権に勝つため、野党勢力を結集させる」と、小池百合子東京都知事が代表を務める希望の党への合流を模索して以降のことだ。
小池氏は、憲法観の一致や集団的自衛権の限定的な行使を認める安全保障関連法への賛成を「踏み絵」として提示。

受け入れを拒否した左派が「リベラル派」と呼ばれるようになり、枝野幸男氏(53)=埼玉5区=による「リベラル新党」立民の設立につながった。
立民は主張が近い共産や社民と連携を深め、全国の249選挙区で候補者を一本化。これら3党がリベラル勢力と呼ばれている。

■ 東西冷戦下、「長い平和」享受した日本ならではの事情 

『広辞苑』によると、「リベラル」とは、「個人の自由、個性を重んずるさま。自由主義的」、『大辞泉』は「政治的に穏健な革新をめざす立場をとるさま」とする。
実際に使われている意味と語義が異なる背景には、「リベラル」が特殊な意味で語られることが多かった日本ならではの事情があるという。
大和大の岩田温(あつし)専任講師(政治哲学)によると、先の大戦後の「長い平和」とも呼ばれる安定した東西冷戦の下で、日本には「憲法9条を守っていれば平和が維持できる」「集団的自衛権を行使すれば徴兵制になる」という「空想的平和主義」が広がり、その主唱者をリベラルと呼ぶことが多かったという。

■ 公約見極め投票先を選ぶことが重要 

外国でのリベラルという言葉の使われ方は日本と異なる。
日本大の岩井奉信(ともあき)教授(政治学)によると、米国では少数者の権利や福祉政策を重視する立場を指すことが多く、欧州では国家の市場への介入を防ぐ経済的な意味が強い。

「個人の自由と権利を求める思想」がリベラル本来の意味で、「個人より国家、国家より党を重んずる共産党を除き、日本の政党は全てが個人の自由と権利を尊重するリベラルだ」と指摘する。
自民(自由民主党)の英語表記は「Liberal Democratic Party」だ。

今回の衆院選では、自民、公明、希望、維新4党を「保守派」、共産、立民、社民3党を「リベラル派」と位置づけて語られるケースが多いが、岩井教授は「対決の構図を作るための色分けにすぎず、本来の意味からかけ離れている」と批判。
「政治家の発言や政党の公約を見極めて投票先を選ぶことが重要だ」と有権者に呼びかけている。

解説図:各党の安全保障に関する憲法改正の姿勢
http://www.sankei.com/images/news/171013/wst1710130044-p1.jpg

http://www.sankei.com/west/news/171013/wst1710130044-n1.html