東京都議選で惨敗した自民党。その背景をジャーナリストの田原総一朗氏が詳しく分析する。

 東京都議選で自民党は惨敗した。獲得議席が23というのは、情けない記録だ。小池百合子都知事が率いる都民ファーストの会は55議席を獲得した。
だが、都民ファーストは都政について確たるビジョンを示しておらず、自民党にあきれ果てた都民たちがとりあえず投票したのである。

 私は、今回の惨敗の責任は安倍晋三首相自身にあると考えている。

 特定秘密保護法の時も、安保関連法の時も、安倍内閣の支持率は下落したが、いずれも、それほど時をおかず回復した。
強引ではあったが、安倍首相がこれらの法案を成立させたいという気持ち、そして一生懸命であることは理解できた。
だが、森友学園問題、「共謀罪」、加計学園問題はどうにも理解できない。
一強多弱が長く続いたため安倍首相が自信過剰になり、神経のバランスを大きく欠いたとしか思えなかった。

 たとえば森友学園問題の基軸は、財務省近畿財務局が地価を8億円も値下げした根拠が不明なことだ。
だが、近畿財務局が記録を破棄したと言い切り、一切文書が出てこなかったので、野党もメディアも追及を断念せざるを得なかった。

 ところが安倍首相が「もしも私や妻が学園の許認可や土地の売買にかかわりがあれば、総理大臣も議員も辞める」と言ったので、
野党もメディアも昭恵夫人と学園との関係を懸命に追い、土地売買にも浅からぬかかわりがありそうなことが露呈した。
また、安倍首相は昭恵夫人を「私人」だと言ったが、国家公務員のスタッフが5人もつく「私人」などいるのか、と安倍首相の言動への疑念がますます強まったのである。

「共謀罪」にしても、国民のプライバシーをどこまで侵すのか、どこで歯止めをかけるのか、とても難しい法律だ。
その担当大臣に、なぜ野党の質問に満足に答えられない人物を選んだのか。
国民の多くが、安倍首相は「共謀罪」に本気で取り組もうと決意していたのではなく、
一強多弱の自信過剰から「この際、一気にやってしまえ」という気になったのだろう、としか受け取れないはずだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170711-00000045-sasahi-pol