プーチン大統領の支持率は、なぜずっと高いのか?

 米国の世論調査機関、ピュー・リサーチ・センターが先週20日に発表したロシア市民を対象にした調査報告によると、ウラジーミル・プーチン大統領の外交政策への支持率は87%だった。

 また、ロシアの民営調査機関、レバダ・センターによると、プーチン大統領の支持率はここ2年余り8割を超えて推移している。直近の5月調査の支持率は81%。いずれも極めて高い。

 その一方で、今月12日にロシア全土で数万人が参加して政府の汚職を糾弾する集会・デモが展開された。3月にも同様の抗議デモがあった。またロシア経済は過去2年、マイナス成長を続け、市民生活は目立って苦しくなったとは言えないが、今ひとつさえない状態が続いている。それなのになぜプーチン大統領の支持率は高いのか。

 「ピュー」は今年2月18〜4月3日、ロシア各地で1002人を対象に面会方式で世論調査を実施した。それによると、プーチン大統領の外交政策に「ある程度、あるいは高い信頼」を置いているという回答は87%。対中政策はもちろんのこと、悪化の一途をたどる対米政策への評価も高い。

 この世論調査は国内問題についての見解も聞いており、経済の現況を「良い」とみる人は46%、「悪い」が49%。判断は分かれている。

 国内問題の中で「大変大きな問題」として最も多くの人が挙げたのは、物価上場(71%)。以下、政治家の汚職、雇用機会の不足、テロリズム、貧富の格差、犯罪、財界人の不正の順。

 一方、レバダ・センターによるプーチン大統領の5月の支持率は81%だが、急に跳ね上がったわけではなく、ここ2年以上、80%を上回ってきた。

 ロシア経済は2015〜2016年に不振が続いた。2015年の実質成長率はマイナス2.84%、2016年はマイナス0.25%。2年連続でマイナス成長だった。石油価格の低下が主な理由。それに米欧諸国を中心にした対ロ経済制裁の影響もある。

 6月12日の反政府抗議デモは主に汚職の撲滅を掲げ、「ピュー」の調査にあるように、汚職対策への市民の不満は強い。

 このほかにも最近ではモスクワの老朽化アパートの取り壊しなど再開発計画や大型長距離トラックを対象にした道路通行料徴収措置に反発するデモが起きている。

 プーチン支持率は下がっても良さそうだが、そうなる気配はない。ロシアが現在かかえる汚職や経済的な問題はプーチン支持率とは関係ないというのが実態だ。

 その理由について様々な議論が可能だろうが、ここではまず、ロシアが「外敵」にさらされ、「強い指導者」であるプーチン大統領の下に結束して対処しなければならないとの意識が強いことを指摘したい。

 「レバダ」によると、プーチン支持率は2014年春のクリミア併合などウクライナ危機が起きる前、例えば2013年11月には61%だった。それでも十分高いのだが、ウクライナ危機、その後の米欧による対ロ経済制裁の実施をきっかけに一気に80%台に跳ね上がった。この出来事がロシアのナショナリズムを一段と強めたことが考えられる。

 加えて、そもそもロシア国民には歴史的にロシアは大国であるとの意識が強いとの要因もあろう。大国ロシアの象徴がプーチン大統領であり、彼はころころ変わる政治指導者の1人ではないと受け止められている。

 つまり、ロシアのナショナリズム、あるいは大国意識のバネが働いているとみる。