[東京 3日 ロイター] - 東京都議選の自民党大敗を金融市場は冷静に受け止めており、株買い・円売りのいわゆる「安倍トレード」の巻き戻しは起きていない。国政への影響は避けられないにしても、現在の政治的枠組みがすぐに変わるとはみられていないためだ。

しかし、安倍晋三首相の求心力低下は否めず、長期的視点に立った政策を打ち出しにくくなるとの懸念も強まっている。

<海外勢、動かず>

都議選の自民党大敗で、市場の一番の関心は、海外勢がどう動くかという点だった。長期政権を敷く安倍政権は、海外勢の日本株投資の大前提とされる。地方選とはいえ、歴史的な惨敗で国政への影響も懸念されるなか、海外勢による日本株売り・円買いが強まるのではないかとの警戒感は強かった。

しかし、今のところ「海外勢からの日本株売りは特段みられない」(大手証券の海外担当トレーダー)という。3日の市場で、日経平均<.N225>は薄商いのなか小幅高。ドル/円<JPY=>も112円台でこう着し、円債先物<2JGBv1>も小動きとなっている。

BNPパリバ証券・グローバルマーケット統括本部長、岡澤恭弥氏が6月に欧州投資家を訪問した際、最も話題にのぼらなかったのは都議選だったという。「有力な野党不在の状況などからみて、もし都議選で自民党が大敗しても、国政への影響は限定的とみていた」と話す。

今回の都議選では、民進党も惨敗。都民ファーストの会を率いる小池百合子都知事が、国政に進出しなければ、自民党に対抗しうる有力な野党は現時点で見当たらない。自民党内の派閥争いが強まる可能性は高いが、早期の解散・総選挙が遠のいたともみられており、内閣改造などがあっても、現在の政治的な枠組みは維持されそうだ。

4日の米独立記念日を控え、一部の海外勢はすでに休日モードであり、都議選についても「日本の市場反応を見てから動こうとしている」(外資系証券)との指摘もある。しかし、国内市場の動きがこのように冷静であるなら、明日以降も日本売りや円買いを加速させる可能性は乏しいかもしれない。

<政策期待も高まらず>

市場には、安倍首相が求心力低下をカバーするために、景気刺激策を打ち出すとの見方もある。しかし、3日の日本株市場では、建設や土木など公共投資関連株は小動きで、政策発動への期待もそれほど高まっていない。

安倍首相は次期臨時国会中に自民党の憲法改正案を国会の憲法審査会に提出するとみられている。市場では、改憲を後押しするために拡張的なマクロ経済政策を打ち出すとの読みがすでに浮上しており、景気刺激策自体に「目新しさ」は乏しい。

一方、政策には手詰まり感も強い。日銀のマイナス金利政策には批判も強く、簡単に利下げできる状態ではない。補正予算など財政出動は可能だが、財政赤字が膨らむ中で「真水」の規模を膨らますのは難しいほか、きょう発表された3月日銀短観にみられるように国内景気がさほど悪くない中で、あえて財政出動を行う意義が問われよう。

いちよしアセットマネジメントの上席執行役員、秋野充成氏は「経済対策でやれるとしたら『ヘリコプターマネー』ぐらいしかないが、実現には強力なイニシアチブがいるため、政権基盤が強くなければ難しい」とみる。