7月2日に投開票された東京都議選で、自民党が大敗した。一夜明け、新聞各紙は今回の都議選をどう報じたのか。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】

今回の都議選では、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が都議会127議席のうち49議席を獲得し、大躍進。公明党など知事の支持勢力で過半数の圧勝をおさめた。

一方、選挙前に57議席を誇り、都議会第1党だった自民党は、60人の候補を擁立して臨んだが、過去最低の23議席。「大惨敗」(下村博文・自民都連会長)の結果に終わった。

BuzzFeed Newsでは主要各紙や地元紙(東京最終版)の報道内容を比較した。
自民党の歴史的大敗 新聞各紙はどう報じたのか

読売新聞「自民 歴史的惨敗」

厳しい表情の下村都連会長と、小池知事の破顔が対照的に並ぶ。「首相の求心力低下 必至」との記事では、自民党の憲法改正案の年内提出が遅れる可能性があるとも指摘している。

「『1強』おごり改めよ」という前木理一郎・政治部長の署名記事では、「安倍首相にとって、2012年に政権に返り咲いて以降、最大の危機」と指摘。

その上で、加計学園問題や稲田朋美防衛大臣の失言に言及。「国民は首相の言葉を信じられなくなっている」と厳しい姿勢を見せた。

さらに、安倍政権の一強体制が「おごりを生み、政府・自民党は緩みっ放し」とまで批判。「首相は国民の政治不信の声に謙虚に耳を傾けて、一刻も早く態勢を立て直さなければならない」と叱咤し、内閣改造のような「表面的」なものではない体質改善の必要性を訴えた。

朝日新聞「自民惨敗 過去最低」「『安倍1強』に大打撃」

小池知事の満面の笑みがあしらわれた1面や社会面などには、他紙のように政治部次長や編集委員の署名記事はなかった。

ただ、社説は「政権のおごりへの審判だ」と手厳しい。

今回の結果は、安倍政権のおごりと慢心に「『NO』を告げる、有権者の審判」とした。森友学園や加計学園、「共謀罪」法や閣僚らの失言に言及し、「『1強』のひずみ」と批判した。

そのうえで、この結果は今後の「政権運営に影を落とす」と指摘。2018年の党総裁選や衆院選、憲法改正への影響があるとし、首相に「憲法に基づき野党が求めている臨時国会をすみやかに召集」するよう求めた。

さらに、政権が「首相の私有物ではない」という「当たり前のことが理解できないなら、首相を続ける資格はない」との言葉もあった。

また、小池知事についても、「手腕は見事」としながら、「都連を『敵』に見立て、政治的なエネルギーを高めていく手法はここまで」「山積する課題を着実に解決していかなければ」と言及した。

毎日新聞「自民 歴史的惨敗」「安倍政権に打撃」

小池知事の破顔と、顔を左手で覆う下村会長のコントラストが印象的だ。

「首相は謙虚さを」という佐藤千矢子・政治部長の署名記事では、「政権の緩みというひと言で片付けられない深刻な問題を含んでいる」と指摘し、国会運営や閣僚らの失言を「政治の劣化」と批判した。

また、秋葉原の街頭演説で安倍首相に「帰れコール」が上がり、石原伸晃経済再生相が「民主主義の否定」と応じたことについては、「互いに異論に耳を傾けない分断の政治を象徴しているよう」と言及。

「こうした政治を生んだのも、批判に不寛容な首相の姿勢が影響している」としたうえで、「地道に政権への信頼回復に努め、謙虚で丁寧な政治を目指すしかない」と結んだ。

日経新聞「小池系が過半数 自民惨敗」「安倍政権に打撃」

小池知事の嬉しそうな笑顔が目立つ。

「対決型政治に限界」という大石格編集委員の署名記事では、「都民ファーストの会の勝因探しばかりしていても、いまの政治の潮流は見えてこない」と指摘。「要するに、自民党が勝手にこけたのだ」と突き放した。

閣僚らの失言や一連の不祥事に言及しながら、この原因は長期政権の緩みではなく、「積極的に敵をつくり出す」攻撃的な戦略にあると指摘。「穏健な自民党を覚えている世代は『いいかげんにしろ』と思い始めていた」とした。

そのうえで、加計学園や森友学園問題について、「法的には何も問題もない。だけど…である」「ひとの行動を最後に左右するのは感情だ」。安倍政権に対し、「『たまたま小池劇場にうまくしてやられた』などと思っているのであれば、いよいよ下り坂が見えてくる」と釘を刺した。