この選挙結果で唯一はっきりしているのは、小池百合子知事が今後の都政でフリーハンドに近い主導権を握れることだろう。
選挙戦で問われたのは、首長の行政を監視すべき議会の多数派を、首長自ら率いる政党に与えるかどうか。
「知事のイエスマンばかりになる」との自民党の訴えは稲田朋美防衛相の失言などで吹き飛び、都民は小池流に今まで以上の力を与えた。

判然としないのはその先だ。小池流はどこに向かうのか。
知事率いる政党が議会第一党となった先例はある。

橋下徹氏が大阪府知事時代に立ち上げた大阪維新の会だ。
ただ、何のために多数派を握ったのかという点では違いがある。

橋下氏は「大阪都構想」という明確な政策を掲げた。
小池氏はどうか。街頭で「古い議会を新しく」と繰り返したように、「古い」自民党の力をそいで議会を変えたい思いは分かったが、具体的な政策を前面に押し出した印象はない。

過去の都政、都議会を主導してきた勢力と戦うそうした小池流は、自民党都連と対立した知事選以来、もう1年近く続いている。
元知事の石原慎太郎氏にまでさかのぼった市場移転問題や2020年東京五輪・パラリンピックの会場・経費見直し。
これらの問題に多くの時間と小池氏自身の労力が費やされてきた。

もちろん、その手法は不透明だった過去の経緯を明らかにするなど悪いことばかりではなかった。
ただ例えば、3年後に迫った五輪の開催準備は少しの遅れも許されない状況に追い込まれた。
「交通標識の準備もままならない」と警察関係者が嘆く状況を一刻も早く解消しなければならない。

気がかりなのは、小池氏の勢力に、憲法改正を志向する自身の政治信条とは違いそうな候補者もいたことだ。
月刊「正論」8月号のインタビューで小池氏は「リベラルな考え方を持った人も『あり』ですね」と話している。

「あくまで、『人』で選んでいます」とも言っているので、数で勝つことを優先したとは思わないが、都政でも教育や治安の問題などで政治信条は重要なはずだ。
取り沙汰されている国政進出ともなればなおさらだろう。

小池氏は新年早々「臥薪嘗胆、断酒でいきたい」と都議選への誓いを立てた。
「臥薪嘗胆」は「かたきを討つ志を保つために、ひどい苦労を自分に課すること」(小学館「新選国語辞典」)。
その意味で言ったのなら、今回の大勝で復讐はもう終わったのではないか。

産経ニュース 2017.7.3 07:16
http://www.sankei.com/politics/news/170703/plt1707030044-n1.html