2日に行われた東京都議選は、小池新党である都民ファーストの会の圧勝だった。
都民ファーストは、選挙前勢力の5からほぼ10倍の49議席をとった。
都民ファーストと選挙協力を行った公明党は選挙前23と同じ23、自民党は選挙前57から大幅減の23、民進党は選挙前18から激減しての5、共産党は選挙前17とほぼ同じ19だった。

都民ファーストの大躍進は、自民と民進を食った形だ。
東京都議選は、1人区(小選挙区)と2〜8人区(大選挙区)の並立制で行われている。
1人選挙区は千代田区など7区、大選挙区はそのほか35区だ。
これは、普通ならそれほど大きく変動の起こらない選挙制度であるが、1人選挙区7つのうち、都民ファーストは6人、大選挙区でも43人が当選した。

都民ファーストの勝因は、何にも増して小池都知事の魅力である。
これは、大阪維新の会が橋下氏の人気で持っているのと同じである。
政策と言うより、行政を変えていこうという姿勢や、この人なら何かをやってくれるという期待からの指示であることは言うまでもない。

地方行政の選挙の場合、たとえば公約をみると細かく生活に密着している話は多いが、テーマが多種多様にわたっているので、ワンイシューにまとめにくく、なかなか政策議論になりにくい。
東京の場合、2020年の東京五輪を控えているので、五輪の顔として小池都知事は絶対的な存在になる。
であれば、議会も小池都知事をサポートするような体制が望ましいと、多くの都民が考えたのだろう。

豊洲移転問題は確かに争点であったが、これについても小池都知事は絶妙なハンドリングを行った。
筆者は、本コラムで書いていたように、サンクコスト論と豊洲・築地の科学的なリスク評価のみで考えても、豊洲に移転するのが合理的な帰着であると主張してきた。

ところが、小池都知事の老獪なところは、この単純明快な答えをすぐには出さずに、政治的なタイミングをはかって、都議選の直前に打ち出したことだ。
これは「一周遅れ」との批判を招いたが、そのとき同時に、「築地を再開発する」ともいっている。
豊洲と築地の両方にいい顔をしただけと見ることもできるが、これが効果的だったということだ。

政策論としては、「築地再開発」は筋悪である。
食のテーマパークを作るという主張についても、無理して施設を作ることは可能だが、問題はその後どのように黒字経営できるかの見通しを示せてはいない。
思いつきレベルの話で、どこまで収支計算ができるかわからないし、実際、詳しい収支計算はやっていないようだ。

選挙前の話なので、方向性だけを示しておいて、その後、「やっぱりやめます」と取り消すことも可能なしろものである。
しかし、選挙向けと考えれば、実に計算された「政治的な妙手」である。

なにより、小池都知事はメディアの動向を読むのがうまい。
国政レベルで、森友・加計学園問題が「もりそば・かけそば」と揶揄され、本コラムで書いたようにいずれも「総理の関与」も「総理の意向」もないにもかかわらず、イメージだけは確実に悪くなるような報道がなされた。

それだけではたいしたことはなかったはずだが、都議選終盤において、豊田真由子議員の信じられない暴言、稲田朋美防衛相の失言は、あまりにわかりやすく、これが決定的に都議選へ悪影響を及ぼしたといわざるをえない。
これらの暴言・失言は、小池都知事の豊洲移転の失敗を覆い隠すとともに、自民党の自滅を誘った。小池氏はとにかく運がいい。

さて、この都議選が国政へなにか影響を及ぼすのだろうか。
結局、国政には影響なし…? 無論、自民党はこれだけの大敗をしたのだから、影響がないはずない。
有権者は、国政選挙が当分ない安倍政権への「お灸」をすえたのだろう。

一方で、この影響が国政に直接響くとは言えないだろう。
そもそも都議選は地方選挙であり、国政選挙でない(当たり前のことで恐縮だが)。
民進党、共産党が大躍進でもしない限りは、国政での自公連立は揺らがないだろう。
というのは、都民ファーストが勝ったのは、公明党の勝利という見方もできるからだ。

かなり乱暴な言い方であるが、自公連立政権としては、都民ファーストが勝っても自民が勝ってもどちらでも良かったともいえる。
都民ファーストが勝利したが、2020年の東京五輪を控えて、小池都知事が国政で自公政権と対立するとは思えず、むしろ協力関係を築くことになるだろう。

現代ビジネス 7/3(月) 6:01 
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170703-00052185-gendaibiz-pol

※続きます