小池氏率いる都民ファーストの会が大勝する結果となった東京都議選。都民ファーストと公明党は合計で過半数を上回る議席を確保し、小池都政の基盤は盤石となった。この戦いの真の「勝者」そして「敗者」は誰なのか― 注目すべき7人を振り返ってみたい。
1. 勝者:小池百合子 東京都知事・都民ファーストの会代表

普通、首長は何年もかけてじっくりと議会に飼いならされ「オール与党体制」という名の檻に閉じ込められる。檻を出ようとした首長は、予算や条例案を質草に絡め取られ、再選出馬断念に追い込まれたり、身内だった与党から対抗馬をぶつけられることすらある。しかし、小池知事は就任わずか10ヶ月で、自らの名の下に結集した多数与党を形成することに成功した。有権者にとってそれがベストだったかどうかはさておき、都議選を知事選と地続きの「信任投票」に仕立てた実力は並大抵のものではない。今後、知事がその政治力を維持できるかどうかは、大勢の「小池チルドレン」を擁する都民ファーストの会に掛かっている。学級崩壊状態で既成政党に食い荒らされた名古屋の減税日本のようにならないよう学習効果を発揮できるかどうか、「河村流スタンドプレー」ではなく、「小池流チームプレー」が試されている。
2. 勝者:音喜多駿 都議

ほとんどの人が知らないか、忘れていることを指摘したい。つい1年前まで彼は「次がない」都議の筆頭格だと思われていたのだ。都議会では事実上彼を狙い撃ちにした定数削減が行われ、北区選挙区は4人区から3人区に。結果「自公共」で仲良く指定席を占めるものと思われていたからだ。しかし、ファーストペンギンは勝運を掴んだ。今や彼は、都政史上最も政治的基盤の強い知事のもとで、与党会派の幹事長を務めている。尤も、選挙後も同じ立場であり続けるかはわからないし、彼自身も、国政政党になるかもしれない都民ファーストの会の中で「次のステップ」を意識し始めるかもしれない。今後大きな課題になる市場問題で知事が打ち出した「アウフヘーベン」は、豊洲市場への移転を一貫して主張してきた音喜多氏の考えと100%相容れるものではないだろう。1年生議員が多い都民ファースト会派の中で「チームプレー」をまとめるリーダー的存在であり続けられるかどうかが今後の勝負の鍵だろうか。
3. 敗者:都議会自民党

彼らは集団だから、正確には1人ではなく大勢だ。しかし言うまでもなく、彼らこそ最大の敗者である。もし自民党が何かの拍子に都議会公明党を「翻意」させても、自公では過半数には届かない。これでは公明側にはついていくメリットがない。更に、自公で過半数に届かないだけでなく、単独で1/3にすら届いていないことも重要なポイントだ。つまり、地方自治法が定めるところの「特別多数議決」を単独では阻止できなくなるのだ。例えば、もし小池知事が豊洲市場の民営化を決断した時、その議案は特別多数議決の対象となる。一方で、都民ファーストの会と公明党の合計でも2/3に届くわけではないので「まず、2/3をとらせないこと」という懐かしの岡田民進党の名キャッチコピーが、今度は都議会自民党のものとなる日が来るかもしれない。