8月9日の「長崎原爆の日」に、田上富久長崎市長が平和祈念式典で読み上げる平和宣言文の起草委員会が1日、同市内であり、田上市長は修正案を提示した。国連の「核兵器禁止条約」の制定交渉に参加していない日本政府を批判する一方、安倍晋三首相が強い意欲を示す憲法9条改正には言及せず、委員から不満の声が相次いだ。

 3回目のこの日は最終会合だったが、市長は、今月7日までに採択される見通しの同条約の動向を見極めたり、委員から個別に意見を聞いたりして、今月下旬に宣言を最終決定する。

 修正案は、前回の案と同様、同条約を前面に出した。核廃絶を訴える被爆者の努力が実現したとしつつ、核保有国と「核の傘」に依存する国々の参加が重要と強調。「唯一の戦争被爆国」でありながら交渉に参加していない日本政府を批判した。

 委員からは、同条約を宣言の柱に据えることに異論は出なかったが、条約に関する文言が大部分を占めていることを疑問視する声もあった。長崎大医学部5年の西田千紗さん(22)は「条約は専門家が進める難しい話。身近な原爆(の被害)を冒頭に置くべきではないか」と述べた。

 憲法は前回と同様、わずかに「平和主義」に触れるだけで、委員からは9条改正に対し「平和憲法の重要性を具体的に示すべきだ」との意見が多く上がった。活水中学・高校非常勤講師の草野十四朗さん(62)は「(平和の)理念を無効化する安全保障関連法などの見直しを求めてはどうか」と提案した。

 市長は終了後、9条改正について「全体の(宣言の)ストーリーの中で盛り込むことができるかどうか検討する」と述べた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170702-00010000-nagasaki-l42