日本側のチーズとEU側の自動車に焦点が当たる、日欧EPA交渉。大詰めの閣僚協議が始まる中、両品目が“交換条件”のようにも取り沙汰されるが、貿易額には大きな開きがある。「チーズ対自動車」の構図には疑問符が付く。

 日本はモッツァレラやカマンベール、ゴーダといったEU産のチーズに29・8%の関税などをかけているが、EUはチーズ全品目の関税撤廃を求めている。これに対しEUは日本製の自動車に10%の関税をかけており日本は5年程度での撤廃を求めている。EUは自動車部品にも3〜4.5%の関税をかける。

 だが、日本側のEUからのチーズの輸入額は378億円で、全体の0.5%にすぎない。日本からEUへの自動車の輸出額は1兆2494億円で全体の15.7%、自動車部品は4658億円で同5.8%に上り、輸出品目の1、2位を占める。チーズの輸入額は自動車・部品の輸出額の45分の1でしかない。

 このため、ある自民党農林幹部は「日本がチーズを譲ったところで、EUは自動車で譲るのか」と指摘する。日本側のチーズ関税の撤廃は、EU側の自動車関税の撤廃に見合わないというのだ。

 ただ、政府関係者によると、EUは交渉で日本側が自動車の関税撤廃を求めると、日本側のチーズ関税の撤廃に言及するという。「日本製自動車への懸念が強いのは車の生産が多いフランスやイタリア。チーズはその両国の輸出関心品目だからだろう」

 しかし「昨日まで自動車を作っていた人が、明日からチーズを作るのか」(別の自民党農林幹部)。一方で、チーズの関税を撤廃すれば、チーズだけでなく生乳需給全体への影響が避けられない。「輸入額が少ないからといって譲歩するのも許されない」(同)。

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