今回は政治家の「言葉」に注目したい。
いかにひどいかを実証しようという動きがあるのだ。
まず「毎日新聞」。

「『コッカイオンドク!』で再現 市民が音読」(6月12日)

「コッカイオンドク」とは「国会の質疑を文字に起こして音読する取り組み」である。
このイベントが全国で市民の間にジワジワ広がっているという。
なんと「東京新聞」では夕刊の1面で報じていた。

「読むと赤面『共謀罪』答弁 『コッカイオンドク!』全国一斉実施」(6月12日)

■声に出して読みたい「国会珍問答」

なぜ読むと赤面するのか? ここに狙いがある。
「迷言や珍問答を声に出して読むことで、国民置き去りの国会審議の問題点を浮き彫りにする」

衆院予算委や法務委などでの共謀罪を巡る攻防を、金田勝年法相や野党議員になりきって再現すると、とたんに赤面モノになる。
たとえばこちら。

《「ただいまのご指摘はですね、その一般の方々が、その集団に属しておる方々が、一変した場合の組織的犯罪集団に、えー、そのまま属している場合に、その、みなさんが『関わり合いを持つ』ということになるわけであります」》

参加者の感想は、
「何を言ってるのか分からない」
「台本をよく読んできたが、実際に言ってみても意味が分からなかった。」
「文章として成り立たない発言がよくできるなと、読んでいて恥ずかしくなった」

ああ、この記事の冒頭にある「笑えない国会審議の再現劇はやっぱり笑えなかった。」というネタバレどおりだったのである。

■「土俵に上がらないから負けない」論法

しかし、「コッカイオンドク!」には最強のライバルがいるのではないか?
菅官房長官である。
その理由の前に、菅氏の「言葉」に関する記事も最近多いので紹介しよう。

「勝負避ける『菅話法』とは」(毎日新聞・6月15日夕刊)

菅氏がよく使うフレーズと言えば「そのような指摘は当たらない」「全く問題ない」。
この話法の意味を映画監督の想田和弘氏が記事中で分析する。

「菅氏の言葉は、相手の質問や意見に対して、正面から向き合わないことに特徴があります。
『その批判は当たらない』など、木で鼻をくくったような定型句を繰り出すことで、コミュニケーションを遮断する。
実質的には何も答えない。したがってボロを出さないので無敵に見えるのです」

質問者が正面からぶつかればぶつかるほど、相撲の技で言えば「肩すかし」を食う状態に似ている。
そう思って記事を読んでいたら、
《つまり、相撲にたとえると「土俵に上がらないから負けない」論法だ。》

あ、土俵にすら上がってなかったわけか。
私が先ほど「コッカイオンドク!」の強敵は菅官房長官ではないかと書いた理由はここにある。
感情の温度が低くてコミュニケーションの意思がないようにみえるので、わざわざ「音読」をしなくても「何を言っているかわからない」ことは歴然だからだ。

■安倍首相大好き新聞までガースーをチクリ

「毎日新聞」は、菅ネタを3日後にまた投入。

「『鉄壁ガースー』決壊 『怪文書』菅氏の誤算 国民の思い無視」(6月18日)

ガースーとは菅官房長官のネットでの呼称。

《閣僚の醜聞や失言への批判も落ち着き払い「指摘は全く当たらない」などと一蹴してきた菅氏。
ネット上では「安定のガースー」とも。》

しかし、菅話法は、加計学園問題では「総理のご意向」文書を「怪文書」と断じてから、安定感はなくなったのだ。
前川喜平前事務次官に対する菅氏の感情むき出しとも思える個人攻撃もあり、たしかに菅話法は決壊していた。
驚くべきは次の記事である。

「加計問題 こじれた理由は」「冷静さ失った菅長官」(6月19日)

これ、なんと「産経新聞」の記事なのだ。
安倍政権が大好きと思われる、あの産経がこの指摘とはいよいよである。

《官邸関係者は「菅氏は『前川憎し』になったのかもしれないが、個人攻撃で切り返すようなことをしてしまい、問題がこじれた」と残念がる。》

でも最後はやはり「産経」だ。

《今回の失敗は次への大きな教訓となるか。》とまとめている。

つ、次もあるんですね、菅話法。
この「産経」の指摘を、菅官房長官はどう読んだ?
「そのような指摘は当たらない」「全く問題ない」だろうか。

6/30(金) 7:00 文春オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170630-00003114-bunshun-pol
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170630-00003114-bunshun-pol&;p=2