学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、安倍総理大臣が全国での獣医学部の新設を認める方向で検討を進める考えを示したことに対し、獣医学系大学の研究者らが記者会見を開き、「根拠を欠く規制緩和で、深刻な教育の質の低下が危惧される」と反対する声明を出しました。
声明を出したのは、獣医学部のある16の大学で作る協議会と、獣医学の専門家で作る日本獣医学会です。

獣医学部の新設は、国家戦略特区制度のもとで、52年ぶりに学校法人「加計学園」に認められましたが、安倍総理大臣は今月24日、新設を1校だけに限定したことが国民の疑念を招く一因となったとして、全国での獣医学部の新設を認める方向で検討を進める考えを示しました。
声明では、安倍総理大臣の発言について「日本の獣医学教育の現状を理解しないまま発せられたもので、大学教育・研究を崩壊に導きかねない、驚がくすべき発言だ」と批判しています。

そのうえで、「獣医師の需要の検討なしに進められた根拠を欠く規制緩和で、深刻な教育の質の低下が危惧される」と指摘しています。
稲葉睦会長は「大学が乱立すると、限られた教員の奪い合いが起きて、全体的な質の低下につながるおそれがある。
政府は獣医学教育の現状を理解し、適切な判断をすべきだ」と話しています。

■菅官房長官「52年間新設せず異常」

菅官房長官は午後の記者会見で、「獣医師会は、学校を作らせないために徹底して反対してきており、52年間にわたって獣医学部が設置されなかったことは極めて異常だ。
岩盤規制に風穴を開ける意味で国家戦略特区の中で獣医学部の新設を決定し、安倍総理大臣は『全国展開ができればいい』と発言している。
私立大学のおよそ45%が定員割れをしているときに、獣医学部は15倍もの競争率があるのも事実で、口てい疫や鳥インフルエンザも発生しており、設置は認められるべきだ」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170630/k10011036181000.html?utm_int=news_contents_news-genre-new_004