https://www.news-postseven.com/archives/20170629_572419.html

新聞を開けば毎日のように飛び込んでくる「事務次官」なる単語。ワイドショーをつければ「戦略特区」「岩盤規制」「レク用資料」など、コメンテーターが小難しい単語を連発しながら議論している。

 前代未聞のクーデターと称される前川喜平・文部科学省前事務次官(62才)による告発劇から1か月あまり。学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐる問題は、前川氏の出会い系バー通いに話がすり替わった矢先、当初官邸が全否定した「総理のご意向」を暗示する内部文書が発見されるなど、二転三転。騒動はいまだ着地する気配を見せない。

 だが、報道が過熱する一方で頭に「?」ばかりが浮かぶという人も少なくなかったのではないだろうか。

「要するに誰のどの行為が問題なんですか?」(32才主婦)
「前川さんの告発ってどれくらいヤバいことなの?」(43才主婦)
「そもそも事務次官って何? 政治家とどう違うの?」(45才パート)

 同様の声はネット上にも多数ある。内部文書の内容、事務次官がそれを暴露することの重大性、ひいては一連の騒動の意味するところがイマイチよくわからないのだ。今回の問題を簡潔にまとめると、加計学園の獣医学部新設を文科省が認めた際に、安倍首相による「口利き」があったのではないか、ということ。

 同学園の理事長は安倍首相とは学生時代からの「腹心の友」で、一国のトップが友人に甘い汁を吸わせた疑いが持たれている。

 5月17日、内部文書を入手した朝日新聞のスクープで明るみに出たこの一件は、同25日、文科省の元トップである前川氏が、「『総理のご意向』と記された文書は間違いなく存在する」と認めたものだから、大変。政界を揺るがす大騒動に発展した。

 前川氏はなぜこんなことをしたのか。彼の決死の告発を読み解くカギは、悲哀に満ちた「官僚の世界」そのものにある。

◆キャリア官僚の出世レースで最重要事項は「失敗しない」こと

 官僚とは、中央省庁に勤める国家公務員のこと。選挙で国民に選ばれる政治家とは異なり、大きく2種類に分けられる。国家公務員一種試験(2012年度から国家公務員総合職試験に改称)を突破した幹部候補グループと、その他の試験に合格したグループだ。

 前者はキャリアと呼ばれ、国家運営の中枢を担う重要な仕事を担当し、超特急で出世していく。キャリアを選抜する旧一種試験の受験者は、東大京大をはじめとする一流大学の学生ばかりで、倍率は10倍ともいわれる超難関。狭き門を突破した合格者は希望する省庁ごとに行われる面接試験に臨み、採用が内定する。

 国の財布を動かしたいから財務省、教育行政に携わりたいから文科省、インフラや建設を通した国づくりを求めるから国土交通省…など、目指す道は人それぞれだが、彼らには入省前から厳然たる序列社会が立ちはだかる。