2017年06月29日 10時00分
提供:週プレNEWS

安倍首相が「加計学園問題」で揺れる国家戦略特区での獣医学部の新設について「全国展開を目指したい」と発言したり、小池都知事が長期化している市場移転問題について「築地は守る、豊洲を生かす」と表明したり、国政、都政でトンデモ発言が相次いでいる。

混迷を極める昨今の政治状況を、外国人ジャーナリストはどう見ているのか? 「週プレ外国人記者クラブ」第82回は、フランス「ル・モンド」紙の東京特派員、フィリップ・メスメール氏に話を聞いた――。

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―多くの懸念が示される中で「共謀罪」法案が強行採決された6月15日、加計学園問題では、政府がそれまで存在を認めなかった文書が文科省で突如「発見」されました。安倍首相は自分の言い分を一方的に主張した「記者会見」で、この問題に幕引きを図ろうとしているようです。その間に世間の話題は東京都議会選挙に移り、小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」がどこまで議席を伸ばせるのかが注目されているわけですが…。

メスメール 私は、それらの出来事は別々の事象ではなく、全てが繋がっていると考えています。安倍首相は依然として非常に強い立場にあり、加計学園問題などのスキャンダルによるダメージを最小限に留めるように、あるいは共謀罪法案への反発がこれ以上広がらないように、議会における圧倒的な「数の力」を背景に政治日程をコントロールすることができる。そのことは共謀罪法案の成立過程でもハッキリと示されました。

共謀罪法案が成立した時点で国会は閉幕し、そのタイミングであれだけ「確認できない」と主張していた加計学園問題に関する文書が発見された。まるで悪い冗談のようですが、メディアは十分な批判を加えられていない。むしろ安倍政権の側がメディアを「利用している」ようにも見え、政治日程を支配することを可能にしているのだと思います。

─マトモな議論さえないまま共謀罪法案を強行採決し、加計問題や森友問題の疑惑も残っている。同じようなことがフランスで起きたら大問題になっているのでは?

メスメール 間違いなくそうでしょうね。特に今、フランスでは政治家のモラルに対して国民から非常に厳しい目が向けられており、メディアも盛んに報道します。新しく成立したエマニュエル・マクロン政権の閣僚も最近、相次いでスキャンダルで辞任に追いやられました。日本のメディアも加計や森友の問題では多くのよい取材を重ねているのに、政府からのプレッシャーを感じているのか、その報道は及び腰に見えます。

ただし、彼らが諦めてしまったかというと、私は必ずしもそう感じてはいません。先日もNHKの「クローズアップ現代」が加計問題についてかなり突っ込んだ報道をしていましたし、共謀罪についても引き続き懸念や問題点を指摘し続けているメディアも多い。現実として安倍政権の支持率も、調査によって異なりますが、ここにきて10ポイントほど落ちています。

安倍政権が成立してから既に4年半が過ぎましたが、こうした一連の出来事を通じて、安倍首相に危うさや傲慢(ごうまん)さを感じる国民は着実に増えてきている。あれだけ強固な守りを誇った「安倍の砦」の城壁に少しずつ「小さなひび」が入り始めているというのが私の印象です。

─その「変化」は、現実的な政治の変化にどう繋がっていくと思いますか?

http://news.ameba.jp/20170629-227/