タイムラグ:15秒


遥「えっと……簡単なやつ……卵ってあったっけ……」

遥ちゃんのスマホを操作する手が震えてる
私が体調不良になるなんて、きっとあんまり考えてなくて、
お母さんもいないせいで、自分でどうにかしなきゃって不安なのかもしれない

料理をするのが苦手なのも……あるのかも。

でも、おかゆなんかより……

彼方「彼方ちゃんは、遥ちゃんが欲しいな〜……」

遥「え……っ?」

――ガタンッ

遥ちゃんの手からスマホが滑り落ちて、床に衝突した鈍い音がする
カバーが外れたのか、カシャンッと小さな音も聞こえたような気がしたけど
遥ちゃんはそれどころじゃなさそうな顔だった。

彼方「遥ちゃんが欲しい」

遥「わ、私ならここにいるよっ!?」

遥「ねぇっ……私だよ? 遥だよ?」

落としたスマホなんて見向きもしない
呆然とした顔のまま、私のそばにしゃがんで手を握ってくる

遥「やだよ……やだっ」

遥「わかるよねっ? 私……私のこと、わかるよね?」