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彼方「ぅ……」

うまく声が出ない
体もなかなか動かせそうにない
遥ちゃんが何度も体を揺さぶって、今にも泣きそうな顔をしているのが見える

いつもならとっくに起きて、ご飯を作っているのに
なのに、遥ちゃんに起こされようとしてるからだろうか。

遥「お姉ちゃ――」

彼方「うーん……」

彼方「遥ちゃんが抱きしめてくれるなら元気になるよ〜……」

やっと出せた声はそんな言葉で。
体を揺さぶっていた遥ちゃんはその手を止めて唖然とする

遥「な、なに言ってるの?」

遥「咳は……出てないけど、頭痛いとか、ねぇ」

遥「お姉ちゃんっ、今日は学校休んだ方がいいんじゃないかな」

彼方「抱きしめてくれるなら元気に……」

遥「お姉ちゃん……」

遥ちゃんのぎゅっとつむった目元から涙がこぼれる
すぐそばのスペースに膝をついて、潜り込むようにした遥ちゃんの腕が体を抱き上げようとして――

力が足りなかったのか、起こされることなく、ぎゅっと抱きしめられた