歩夢「バッテリー」
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SS、野球ネタ
話の都合上、一部キャラクターの学年などが異なります 【???】
『本日の第1試合、静真高校対虹ヶ咲学園! 試合は大詰めを迎えています』
歩夢(どこかから流れる実況音。人の気配のしないベンチの中、耳を傾ける)
歩夢(アナウンサーの声、ぼんやりと見えるチームメイトの姿)
歩夢「……」
歩夢(私には幼馴染がいた)
歩夢(誰よりも大好きだった幼馴染)
歩夢(もう思い出せないけど、大切な人)
『選手の交代をお知らせいたします』
『ピッチャー、朝香さんに代わりまして――』 《1》
【野球場】
歩夢(秋の都予選、1回戦)
歩夢(私の通う虹ヶ咲学園の野球部の試合)
『3番キャッチャー高咲さん』
歩夢「侑ちゃん! 頑張れ!」
歩夢(私以外に人のいない虹ヶ咲側のスタンドに響く、自分の声)
歩夢(侑ちゃんが一瞬、私の方に笑顔を向けてくれる) 歩夢(9回表、5−6で負けている)
歩夢(2アウトランナー1塁)
歩夢(ここで凡退したら負けが決まる、そんな場面)
宮下「ゆうゆ! ファイト!」
歩夢(一塁ランナーの宮下さんの声)
侑「……」
歩夢(打席に入って構える侑ちゃん)
歩夢(真剣な表情、やっぱり格好いいな、じゃなくて)
歩夢(一番集中している時の顔)
歩夢(この顔の時は、いつも) カキ―――――ン!
歩夢(打った!)
歩夢(高々と上がった打球が、伸びて!)
歩夢(ホームラン!)
侑「よっしゃ!」
歩夢「凄いよ侑ちゃん……」
歩夢(ガッツポーズをしながらベースを回る侑ちゃん)
歩夢(会心の当たりなのか、とても嬉しそう)
歩夢(これで今日は5打数5安打、しかも大事な場面でホームランだもんね)
宮下「ナイバッチ!」
侑「えへへ、ありがと」
歩夢(あ、ハイタッチ。いいなぁ) 歩夢(これで逆転)
歩夢(ここ最近、虹ヶ咲は練習試合も含めて負けっぱなしだけど、今日は勝てるかも)
歩夢(侑ちゃんは昔からみんなのヒーロー)
歩夢(とっても素敵な、野球少女)
歩夢(明るい性格、リーダーシップ)
歩夢(誰からも愛される親友)
歩夢(私にとっては、大切な幼馴染)
歩夢(そして、世界で一番大切な人)
歩夢(小さいころからこうやって毎試合、彼女のことを応援している)
歩夢(侑ちゃんはいつも私のヒーローで)
歩夢(誰よりも格好良くて)
歩夢(中学までもずっと、一流の選手として輝きを放ってきた) 歩夢(だけど)
ボールフォア!
歩夢「ああ……」
歩夢(せっかく逆転したのに)
歩夢(直後の守備、エラー二つの後、フォアボール)
侑「果林さん、落ち着いて」
果林「うるさいわね、分かっているわよ!」
歩夢「ああ、また」
歩夢(ここ最近、練習試合でも公式戦でもいつもこのパターン)
歩夢(味方のエラーから投手の制球が乱れて)
歩夢(イライラして、甘く入った球を打たれて) 弱小相手の練習し合いだからとくに敬遠とかもされなかったのか カキ――――ン
敵1「やった!」
敵2「サヨナラだ!」
歩夢「あぁ」
歩夢(気づけばあっさり逆転されている、ここ最近のパターン)
侑「……」
歩夢(ホームベース上で立ち尽くす侑ちゃん)
歩夢(ここ最近は、ずっとこう)
歩夢(いくら頑張っても報われない)
歩夢(悲しそうな彼女の姿をみることしかできていない)
歩夢(侑ちゃんは輝いていても)
歩夢(一人だけでチームを変えることはできない)
歩夢(それが野球の難しさなんだ) 【試合後:球場外】
歩夢(侑ちゃん、どこかな)
宮下「ゆうゆ、お疲れー」
侑「うん、お疲れ様」
歩夢(あ、いた!)
歩夢「侑ちゃん!」
侑「歩夢……」
歩夢「お疲れ様」
侑「ごめんね、せっかく応援に来てもらったのに勝てなくて」 歩夢「その、今日は惜しかったね」
侑「そうかな」
歩夢「侑ちゃん格好良かったし、流石だったよ」
侑「そんなことないよ、チームのみんなを引っ張ることができなくて……」
歩夢「侑ちゃんは悪くないよ。ホームランも打って、打点だってほとんど……」
侑「違うよ。野球はチームスポーツ。いくら個人成績がよくても、チームが勝たなきゃ意味はない」
歩夢(誰が見たって、侑ちゃんは最高のプレーをしているはずなのに)
歩夢(最近はいつもこう)
歩夢(試合後、笑顔の彼女を一度も見られていない) ??「高咲さん」
歩夢「?」
歩夢(他校のユニフォーム)
歩夢(胸の文字……球宴、高校?)
侑「栞子ちゃん」
栞子「こうして話すのは、久しぶりですね」
侑「そう、だね」
栞子「残念でしたね、対戦するのを楽しみにしていたのですが」
歩夢(友だち? けどそれにしては)
歩夢(なんだろう。どこか気まずそう?) 栞子「この方は?」
侑「私の幼馴染だよ、今日は応援に来てくれていたんだ」
栞子「はぁ、それなら助っ人をお願いすればよかったのでは?」
栞子「控えメンバーさえまともにいない状況なわけですから」
侑「歩夢はスクールアイドルだから」
栞子「なるほど、確かに野球の適性があるようには見えませんし」
歩夢(むっ、初対面なのに失礼な)
歩夢(確かに私は野球が得意じゃないけど……)
栞子「今日の試合で、いい加減理解できたでしょう」
栞子「虹ヶ咲では全国どころか、一回戦突破すら難しいと」
侑「それは……」
栞子「いっそ、私たちの学校へ転校されてはどうですか?」
栞子「幸い、男子と違い転校の制限などありませんから」
侑「……」
栞子「まあ、いつでも歓迎しますよ」
栞子「あなたのような選手がベンチに控えていれば、我が校の層はさらに厚くなりますからね」スタスタ 歩夢「な、なに、あの子」
歩夢(なんて失礼な)
侑「ごめんね、根は悪い子じゃないんだけど」
歩夢「知り合いなの?」
歩夢(対戦している姿、みたことなかったけど)
侑「一応、元虹ヶ咲のチームメイトだよ」
歩夢「え、そうなの」
侑「うん。すぐに転校しちゃって一緒に試合に出たことはないから、歩夢は知らないかもだけど」
歩夢(控えだった子なのかな) 「あー、ムカつくわね」
侑「果林さん」
歩夢(あ、うちのエースの)
侑「遅かったですね」
果林「取材よ、取材」
歩夢(取材?)コゴエ
侑(果林さん、モデルもやってるから)コゴエ
歩夢(へぇ)
歩夢(そういえば、顔整ってるし、スタイルいい。綺麗) 果林「なによあの子は。久しぶりに挨拶へ来たと思ったら挑発なんて」
侑「栞子ちゃんですか」
果林「そうよ」
果林「挨拶って時点でムカつくのに、もう!」
侑「昔はあんな子じゃなかったのに……」
果林「はぁ、もういいわよ。さっさと解散しましょう」
侑「でも、学校へ帰ってミーティングとか」
果林「私とあなたの二人で何をするのよ」
侑「それは……」
果林「だいたいなによ、あの守備陣は」
果林「ほとんどが助っ人の素人じゃない」
果林「こんな環境でやる気だせって方が無茶よ」
侑「……」 果林「報告とか、適当に済ませておいて」
果林「明日の練習は参加しないかも。じゃあね」
侑「あ、果林さん!」
侑「行っちゃった……」
歩夢「いつも負け投手なのに、どうしてあんなに偉そうなの、もう」
侑「仕方ないんだよ。投球内容が特別悪いわけじゃないし」
侑「他に投手をできる人、このチームにはいないから」
歩夢「けど侑ちゃんだって中学の頃、投げることもあったよね」
侑「……キャッチャー、私以外できないから」
歩夢「それは……」
歩夢(そう、結局は)
歩夢(いくらいい球を投げられても。受ける人がいなければ意味がない) 野球部だけで9人揃ってるわけじゃないんだね。というか9人いたとしても控えがいないから厳しいのか 歩夢「あの子は、唯一普通にプレーできていた宮下さんはキャッチャーをできないの?」
侑「愛ちゃんは助っ人だから、試合の時以外来られないし」
侑「日ごろから練習しなきゃ、キャッチャーは無理だよ」
歩夢「……」
侑「本当にさ、果林さんは責められないんだよ」
侑「最初は、すごくやる気のある人だったんだ」
侑「意識も高くて、人一倍練習する、尊敬できる先輩だった」
侑「チームメイトもみんな上手で、仲良くて、明るくて」
侑「ちゃんとしたメンバーがそろって、みんなで全国を目指していたはずなのに」
侑「夏の大会前、球宴高校に栞子ちゃんも含めて大勢の選手が引き抜かれちゃって」
侑「特待生と留学生として所属していた優秀な先輩も学校の方針が変わったせいで他の学校に」
侑「主力だった菜々ちゃんも、勉強を理由に部を辞めて」
侑「残されたメンバーは私と果林さん以外、全員助っ人」
侑「このチームに残ってくれているだけ感謝しなきゃいけないんだよ」 歩夢「……そんな状況なのに、どうして侑ちゃんは虹ヶ咲に残ったの」
侑「私は誘われなかったからさ、球宴高校に。他の高校からの誘いはあったけど」
歩夢「なんで……」
歩夢(侑ちゃんは実力的に一流なはずなのに)
侑「そもそも、誘われても行く気はないけどね」
侑「私はこの学校が好きだし、ここには歩夢もいてくれる」
侑「まあ仕方ないよ」
侑「今のチームじゃ全国へ行くのは絶対に無理だって、理解できないほど私も子どもじゃない」
侑「監督はただ引率の為にいるだけの教師、チームはバラバラ」
侑「一年生の私が実質的な主将と監督を務めている状態」
侑「エースは来年で卒業、正式な部員も一人だけになる」
侑「まともな新入部員も、普通に考えれば期待できない」
侑「あはは、絶望的だよね」
歩夢「侑ちゃん……」 歩夢(こんな弱音を吐く姿、初めてみた)
歩夢(よっぽど追い詰められているんだ)
歩夢(嫌だ、侑ちゃんが苦しむのは)
歩夢(誰か、救ってくれる人がいれば)
歩夢(彼女を救える方法があれば――)
歩夢「そうだ!」
侑「ど、どうしたの?」
歩夢(ある、一つだけ)
歩夢(侑ちゃんを救う方法)
歩夢「私が」
歩夢「私が侑ちゃんを助けてあげるよ!」
侑「助ける?」
歩夢「私が投手になる!」
歩夢「侑ちゃんとバッテリーを組む!」
歩夢(投手のライバルができれば、エースの先輩もやる気を出してくれるかもしれない)
歩夢(再来年の心配もする必要がなくなるかもしれない) 侑「あはは、気持ちは嬉しいよ。ありがとう、歩夢」
侑「だけどさ、歩夢はスクールアイドルじゃん」
歩夢「そうだけど……」
歩夢(確かにアイドルは大好きだし、侑ちゃんも応援してくれている、大切なことだけど)
侑「駄目だよ、ちゃんと自分の夢を大切にしないと」
歩夢「だけど、それじゃあ侑ちゃんは」
歩夢(私はアイドルと同じ、ううん、それ以上に侑ちゃんのことの方が大切なのに)
侑「いいんだよ、少なくとも今日の試合で諦めがついた」
侑「野球もここで終わりじゃないし。大学、運がよければプロまで続く」
侑「ほら、私一応有望株じゃん、なんて」
歩夢(必死に笑顔を作ろうとしているのが分かる)
歩夢(自分が笑えていないこと、泣きそうな顔になっていること、気づかないまま)
歩夢(幼馴染じゃなくても、今のこの子の感情は理解できてしまう)
侑「正直に言えば、憧れだった全国の舞台」
侑「一度でもいいから、行ってみたかったけどさ」
歩夢「侑ちゃん……」 侑「私は学校寄ってから帰るから、歩夢は先に帰って」
歩夢「でも」
侑「ちょっとさ、1人になりたいんだ」
歩夢「……」
侑「あんまり試合ないかもだけどさ、また応援に来てよ」
侑「私、歩夢が傍に居てくれるだけで元気が出るんだ」
歩夢「……分かった」
侑「じゃあね、今日はありがとう」
歩夢「……うん」
歩夢(遠ざかる背中)
歩夢(とぼとぼと、肩を落として去っていく幼馴染) 歩夢「はぁ」
『一緒にアキバドームへ行こうよ! 歩夢はラブライブ決勝、私は野球で全国!』
歩夢(入学前は、あんなに目を輝かせていたのに)
歩夢(野球の強豪校だった虹ヶ咲に入学できたの、喜んでいたのに)
歩夢(これから、卒業までずっと)
歩夢(あんな侑ちゃんの、好きな人の姿を、見続けなきゃいけないのかな)
歩夢(そんなの嫌だ)
歩夢(このままじゃ駄目だよ)
歩夢「……やっぱり、投手だ」
歩夢(ちゃんと抑えられる投手さえいれば)
歩夢(今日だって、もっと失点を減らせていれば勝てていた)
歩夢「私は本気だもん」
歩夢(本気で侑ちゃんを助けたい)
歩夢(侑ちゃんは冗談だと思ったみたいだけど)
歩夢(無理だって思ったみたいだけど)
歩夢「私が、投手になる」
歩夢(やるんだ)
歩夢(野球に必要な物)
歩夢(グローブ、買おう)
歩夢(スポーツショップ、まだ空いているよね) 【お台場ショッピングモール内、スポーツショップ】
歩夢「うわぁ……」
歩夢(種類、いっぱい)
歩夢(侑ちゃんと一緒に来たことはあったけど)
歩夢(こうやってちゃんとみるのは初めてかも……)
歩夢「えっと」
歩夢(硬式用グローブ、これだ)
歩夢(その中で、投手用)
歩夢「うわっ」
歩夢(高い)
歩夢(金額、5桁ばかり)
歩夢(私は左投げだから、選択肢も少ないし) 歩夢「お金、足りるかな……」
歩夢(貯金も込ならなんとか?)
歩夢(だけど、流石に……)
歩夢「あ」
歩夢(あっちにワゴンコーナーがある)
歩夢(投手用じゃなければ、左投げ用もあるかも)
歩夢(……最初から、高い道具を買わなくても)
『一度でいいから――』
歩夢(……ううん)
歩夢(駄目だよね)
歩夢(本気でやるなら、そんな気持ちじゃ) グローブも持ってない状態から始めようとしてるのか。力になれるなら何だってやるという心境なんだろうね 歩夢「私は、本気!」
歩夢(どうせなら思い切って、この一番高いのを!)
歩夢「あと、必要な物はなんだろう」
歩夢(ボール?)
歩夢(侑ちゃん、色々な道具を持っていた気もするけど)
歩夢(細かい物は、野球部に入るタイミングでいいかな)
歩夢(変な物を買っても困るもんね) 【公園】
歩夢(グローブ、本当に買っちゃった)
歩夢(この公園で壁当て、昔は侑ちゃんがよくやっていた)
歩夢(確かこの辺り……あった、ちょうどいい壁)
歩夢(久しぶりだな、ボールを投げるの)
歩夢(まず、近くから)
歩夢「えいっ!」シュッ
歩夢「それで、跳ね返ってきたボールを、キャッチ!」ポロッ
歩夢「あ、あれ」
歩夢(落としちゃった)
歩夢「もう一回!」シュッ
歩夢「あうっ」ポロッ 歩夢(このグローブ、高いはずなのに上手くボールが捕れない)
歩夢(侑ちゃんにグローブを借りてキャッチボールをした時は、凄く捕りやすかったのに)
歩夢(買ったばかりのグローブは、扱いづらいのかな……)
歩夢(仕方ない、取れないなら投げる練習だけでも)
歩夢(今より少し、距離を空けて)
歩夢「えいっ」シュッ
フワフワ……ポテッ
歩夢「……えいっ」シュッ
ポテッ 歩夢「うう、少し距離が伸びただけで壁に届きすらしない……」
歩夢(そりゃそうだよね……)
歩夢(今までだって、侑ちゃんとプレーするために野球に挑戦しようとしたことはあった)
歩夢(だけど、ただでさえ運動は得意じゃないのに、ボールを扱うとなると全然だめで)
歩夢(気づけば応援しているだけになった、私みたいな人間じゃ)
『野球の適性があるようには――』
歩夢「無理なのかな、私じゃ……」
???「お嬢さん、何かお悩みのようだね」
歩夢「えっ」
歩夢(後ろから、声) ???「お姉さんが野球を教えてあげようか」
歩夢(だ、誰?)
歩夢(二回りぐらい年上に見えるお姉さん)
歩夢(知らない人、だよね)
歩夢「えっと、あなたは?」
???「ああ、ごめんね」
ノゾミ「私はノゾミ。職業は占い師、みたいなものかな」
歩夢「はぁ」
歩夢(占い師? もしかして怪しい人)
歩夢(不審者なら逃げた方が……) ノゾミ「君、ウチこと怪しいと思ったでしょ」
歩夢「え、いや、そんなこと」
歩夢(ど、どうして)
ノゾミ「いや、いいんよ。君の立場だったら私も警戒するから」
ノゾミ「ただね、ウチは悩める野球少女がいたから、声をかけただけなんよ」
歩夢「はぁ」
歩夢(害があるわけでは、なさそう?)
歩夢(だけど、変な人なのは間違いないかも……) ノゾミ「君、初心者だよね」
歩夢「分かりますか?」
ノゾミ「うん、壁当ても普通に出来ない経験者はなかなかいないよ」
歩夢「うぐっ」
ノゾミ「ずいぶん真剣そうだったからね、教えてあげようかと思って声をかけたの」
ノゾミ「ウチ、これでもそれなりに有名な高校野球選手だったからね」
歩夢「はぁ」
歩夢(本当かな。占い師さんとスポーツ、全然違う世界な気がするけど)
ノゾミ「むっ、信用していない顔だね。ほら、この写真」
歩夢「写真?」
ノゾミ「高校時代、全国大会で優勝した時の記念写真だよ」
歩夢「全国、優勝」
歩夢(本当だ。少し幼いけど、お姉さんにそっくりな人が写っている) ノゾミ「これで少しは信用してくれた?」
歩夢「は、はい」
ノゾミ「君、名前は」
歩夢「え、えっと、上原歩夢です」
ノゾミ「なるほど、歩夢ちゃん」
ノゾミ「歩夢ちゃん、これから野球を始めるのかな」
歩夢「は、はい」
ノゾミ「今は中学生?」
歩夢「いえ、高校生で」
ノゾミ「へぇ、高校」
ノゾミ「入学時ならともかく、途中から野球を始めるなんて変わっているね」
歩夢(うぅ、ズバズバと突かれたくない部分を) 歩夢「やっぱり、無理ですかね」
歩夢(私みたいな素人が今さら、しかも投手なんて)
ノゾミ「ううん、そんなことはないよ。可能性は0じゃない」
ノゾミ「だけど珍しいやん。中途入部、しかもチームスポーツでなんて」
ノゾミ「どうしてまた」
歩夢「その、大切な人の助けになりたくて」
ノゾミ「恋愛絡み?」
歩夢「そういうわけでも、ないんですけど……」
歩夢(説明が難しい)
ノゾミ「……親友かな」
歩夢「えっ、分かるんですか」
ノゾミ「勘だけどね」 ノゾミ「ウチもね、似たような理由で野球をやっていた時期もあったから」
歩夢「本当ですか?」
ノゾミ「うん。自分ではなく誰かのためっていうのは、モチベーションを上げる良い動悸になるから悪いことじゃないよ」
歩夢「そっか……」
歩夢(そう言われると、少しほっとする)
ノゾミ「けどまあ、なるほどね」
歩夢(なるほど?)
ノゾミ「歩夢ちゃん、ちょっとついておいでよ」
歩夢「え?」
ノゾミ「特別に教えてあげる」
ノゾミ「普通じゃない、今からでも一流の投手になれる方法」 時間も遅いので今回はここまでにします。
構想的には長めの話なので完結までは時間がかかると思いますが、のんびりとお付き合いいただければ幸いです。 一番重要なのはキャッチャーよな
変化球捕れないから投げるな!って球詠でもあったが運動神経いいだけじゃできない スクスタ時空なのか、同世代ではないのか。
面白い。期待 しずくが詠深ちゃんになれば…!って思ったけどしずくは球技ダメだったわ 侑が一年で果林さん3年?
キャラの学年ねじ曲げてまでやる内容じゃねぇと思うけど >>23 で「エースは来年で卒業」って書いてあるから今の果林は二年生なんじゃない?
なんにせよ続き楽しみにしてるわ 面白けりゃ学年改変でもなんでもいいよ
虹ヶ咲の野球ものはレアだし 面白ければ本当になんでもいい派と
根幹設定は守らんと二次創作じゃない派の溝は
永遠に埋まらんから諦めろ 【都内某所】
歩夢「うーん」
歩夢(断る暇もなく連れてこられちゃったけど)
『ノゾミンの占いの館』
歩夢「ここは?」
ノゾミ「ウチの自宅兼職場」
歩夢(そういえば、占い師って)
ノゾミ「整体の先生も所属していてね、たぶん世界に一つしかないハイブリット占い医院」
歩夢「はぁ」
歩夢(整体?)
ノゾミ「まあ説明は後、とにかく入って」ガチャ ノゾミ「ただいまー」
??「遅かったわね」
歩夢(あれ、女の子がいる)
??「お客さん?」
ノゾミ「それに近い子」
歩夢(もしかして、娘さんとか?)
歩夢「えっと、この子は?」
ノゾミ「あはは、『子』じゃないよ。ここの整体の先生、ウチと同い年」
歩夢「えっ」
歩夢(年下にしか見えない……)
??「失礼な子ねぇ」
歩夢「ご、ごめんなさい」
??「まあいいわよ、慣れているから」
ニコ「私はニコ、よろしく」
歩夢「う、上原歩夢です」 ノゾミ「にこっち」
ニコ「なによ」
ノゾミ「買ったばかりのグローブ、すぐに使えるようにできないかな」
ニコ「はぁ、なによ急に」
ノゾミ「歩夢ちゃん、今日グローブを買ったらしいんだけど、まだ使い物にならなくてね」
ニコ「はあ、そんな自分でどうにかしなさいよ」
ノゾミ「初心者なんよ、やさしくしてやって」
ニコ「初心者? どうみても高校生ぐらいにしか見えないけど」
ノゾミ「特殊な事情があるんよ」
ニコ「……どれよ」
歩夢「へっ?」
ニコ「グローブ」
歩夢「え、えっと、これです」スッ ニコ「……ふーん、初心者にしてはずいぶんいい物買ったわね、しかも投手用」
ノゾミ「投手以外やりたくないんだって」
ニコ「上等な球を投げられる身体には見えないけど」
ノゾミ「そこで、ウチの出番ってわけ」
ニコ「そんなことだとは思ったわ」
歩夢(……どういうことなんだろう)
ノゾミ「まあ、グローブの方はにこっちにお任せするとして」
ノゾミ「歩夢ちゃん、こっちおいで」
歩夢「は、はい」 ◆
歩夢(建物の奥)
歩夢(薄暗い部屋)
歩夢(部屋の中央に置かれた水晶)
歩夢(ここは……)
ノゾミ「ウチの占い部屋」
歩夢「占い?」
歩夢(もしかして、私を今から占おうとしている?)
歩夢「あの、私、お金ないんですけど……」
ノゾミ「お金?」
歩夢「だって、占い」
ノゾミ「あはは、流石に無理やり連れてきた人からお金なんて取らないよ」
ノゾミ「それに、今からするのは占いじゃない」
歩夢「占いじゃ、ない?」 ノゾミ「ちょっと、目を閉じてみてくれるかな」
歩夢「は、はい」
歩夢(真っ暗になる視界)
ノゾミ「手、頭に置くよ」
歩夢「えっ――わっ」
歩夢(ノゾミさんの手が置かれた瞬間)
歩夢(身体に、電撃が走った)
ノゾミ「終わり、目を開けていいよ」
歩夢「は、はい」
歩夢(今のは、なんだったんだろう) ノゾミ「この部屋はね、気の流れを調整している」
ノゾミ「家の中でスピリチュアルパワーを最も高めている場所なんよ」
歩夢「はぁ」
歩夢(スピリチュアルパワーって、なんだろう)
ノゾミ「まあ説明しても分からないだろうから、端的に言うと」
ノゾミ「ここでね、歩夢ちゃんの波動を調整しようかなと」
歩夢「波動?」
ノゾミ「人に流れているオーラ、とはちょっと違うかな」
ノゾミ「難しい話は抜きにして簡単にいえば、歩夢ちゃんが凄い球を投げられるように、超能力を使うって感じかな」
歩夢「超能力……」
ノゾミ「うちの本職はね、占い師じゃない。超能力者とでも言っておこうか」
歩夢「超能力者?」
ノゾミ「うん、あなたの望みを叶える、みたいな」 歩夢(とんでもない言葉が出てた)
歩夢(もしかして、怪しい新興宗教?)
ノゾミ「ありゃ、また疑ってる感じに」
歩夢「ごめんなさい……」
ノゾミ「いいよ、ここで逃げ出されないだけマシ」
歩夢(宗教、弱みにつけこもうとしている?)
歩夢(超能力なんて、あり得ない)
歩夢(お金だけ取られて、効果がないとか……)
ノゾミ「さっきも言ったけど、お金は取らないよ」
ノゾミ「私は純粋に、歩夢ちゃんを助けてあげたいだけ」
ノゾミ「このまま実らない努力をするのは可哀想やん」
歩夢(確かに私が自力で練習しても、侑ちゃんを助けるのは難しい)
歩夢(そんなことは、理解できる)
歩夢(今は、藁にもすがりたい)
歩夢(だけど) ノゾミ「そんな都合のいい話があるわけない、と言いたげな顔やね」
歩夢「まあ……」
ノゾミ「確かにそんな夢みたいな存在しないよ」
ノゾミ「ウチは君に何も求めない。だけど力を手に入れて運命を捻じ曲げるのには、代償が必要になる」
歩夢「代償?」
ノゾミ「そう」
ノゾミ「力を手に入れれば入れるほど、その力で運命を捻じ曲げるほど、歩夢ちゃんは代償を払うことになる」
ノゾミ「特に虹ヶ咲学園、あのチームだと歩夢ちゃんは大変やね」
歩夢「!?」
歩夢(初対面なのに、学校のことを)
ノゾミ「あ、驚いているね」 歩夢「どうして、私の学校」
ノゾミ「超能力者だって言ったやん」
ノゾミ「ちょっと歩夢ちゃんの頭の中や流れる気を読んだだけ」
歩夢「そんなの」
歩夢(あり得ない、はず)
ノゾミ「今の虹ヶ咲はお世辞にも全国へ行けるような学校じゃない」
ノゾミ「君の大切な幼馴染は確かにプロ注目の優秀な選手だけど」
歩夢(侑ちゃんのこと、関係性まで)
ノゾミ「あと1人のチームメイト。エースの朝香果林、才能は抜群でもメンタル面が弱い」
歩夢(調べて? それにしては詳しすぎる?)
ノゾミ「ああ、これ以上話しても怖がらせるだけやね」
ノゾミ「これ」ヒョイ
歩夢「わっ」
歩夢(ボール)
ノゾミ「着いてきて」
歩夢「え、えっと」
ノゾミ「ちょっと投げてみよう」
ノゾミ「裏に投球練習場があるから」 【占いの館・裏口】
歩夢「わっ」
歩夢(本当にブルペンがある……)
ノゾミ「ウチが受けるから、歩夢ちゃんはそこのマウンドに立って」
ノゾミ「とりあえず、1球投げてみようか」
歩夢「は、はい」
歩夢(肩を作ったりとか、しなくていいのかな)
ノゾミ「大丈夫、1球だけのお試しや」
歩夢「でも」
歩夢(そもそも、届きそうにもない距離)
歩夢(実際に立ってみると、ホームベースまではかなり距離がある)
ノゾミ「まあまあ、難しいことは考えずに」
ノゾミ「思い切り、本能に任せて腕を振ってみて」
歩夢「は、はい」 歩夢(とにかく、思い切り)
歩夢「えいっ!」シュッ
ヒュン
ノゾミ「よっ」パシッ
歩夢「えっ」
歩夢(いま、私の球)
ノゾミ「ストライク、いい球だね」
歩夢「あ、あの」
ノゾミ「どうして? とでも言いたげな顔だね」
歩夢「だ、だって」
歩夢(さっき壁当てをした時は、これより近い距離でも届かなかったのに) ノゾミ「ネタ晴らしするとね、さっき占い部屋に入った時に、歩夢ちゃんの波動をいじったんよ」
歩夢「あっ」
歩夢(あの、電撃のようなものが走った時)
ノゾミ「ウチの超能力を信じてもらうためのお試し版だから、後で戻しちゃうけどね」
ノゾミ「だけど信じてくれたやろ、これで」
歩夢「……」
歩夢(理屈は分からないけど)
歩夢(信じられないけど)
歩夢(自分の身体で体験したからこそ分かる)
歩夢(ノゾミさんの言葉は嘘じゃないって)
ノゾミ「とりあえず、占い部屋に戻ろうか」
歩夢「は、はい」 学年については、栞子とミアが歩夢や侑と同世代になっている以外に変更はありません。
現在は序章部分なので、全員一学年前の状態だと考えていただければ問題ないと思います。 時空については、登場人物的にスクスタとアニメをごちゃ混ぜにしているのであまり深く考えないでいただければ 【占い部屋】
歩夢「っ」
歩夢(また、電流のようなものが)
ノゾミ「さて、歩夢ちゃんの力を元に戻したところで」
ノゾミ「確認したいことがあるけど、いいかな」
歩夢「は、はい」
ノゾミ「歩夢ちゃんは、どうして親友の為に力が欲しいの?」
歩夢「どうして?」
ノゾミ「恩を売りたい? 野球をきっかけにその人と特別な関係になりたい?」
ノゾミ「不純な動機ならやめておいた方がいいよ」
ノゾミ「さっきも言ったけど、力を使って運命を大きく捻じ曲げるほど、代償は大きくなる」
ノゾミ「その代償は歩夢ちゃんの人生に大きく影響を及ぼすものかもしれない」
ノゾミ「歩夢ちゃんの親友は幸せになれても、その分歩夢ちゃんは不幸になる可能性が高い」
ノゾミ「それでも、この力が欲しい?」 歩夢(ノゾミさんの表情)
歩夢(これまでで、一番真剣な)
歩夢(私の気持ち)
歩夢(侑ちゃんの力になりたい)
歩夢(それで、何かを得たい?)
歩夢(………………)
歩夢「……私は」
歩夢「私は、侑ちゃんの笑顔がみたいんです」
歩夢「侑ちゃんのためなら、私が何を失っても構いません、見返りも求めません」
歩夢「ただ大好きなあの子に幸せになって欲しい、それだけです」
ノゾミ「……うん、分かったよ」 ノゾミ「名字、上原さんだね」
歩夢「は、はい」
ノゾミ「それなら、ちょうどいい子がいる」
ノゾミ「今年の夏の全国優勝高、浦の星女学院所属のリコちゃん」
ノゾミ「大きな落差のフォークボールを決め球にしている」
歩夢「……わぁ」
歩夢(水晶玉に映し出される、綺麗な女の子)
歩夢(プロ野球選手みたいに鋭い変化球を投げている) ノゾミ「君は苗字的に、落ちる球を投げやすそうだからね」
ノゾミ「この子の力を君に憑かせる」
歩夢「憑かせる?」
ノゾミ「厳密には、その子から出ている波動を借りて、歩夢ちゃんの波動に重ねるんだけど」
歩夢「その、相手の子に問題が起こるとか……」
ノゾミ「そこは安心して。利用するのは彼女に憑いている悪い波動だから。むしろ健康になったり、いいことづくめ」
歩夢(それなら一安心?)
ノゾミ「その分、君には悪いものが憑くわけだから、負担は重くなる」
ノゾミ「一部分だけだから、コピーできる行動も限られる」
ノゾミ「そもそも身体自体の能力は変わらないから、酷く自らを痛めつけながら投げなきゃならない」 ノゾミ「もう一度聞くよ、本当にいいのかな?」
ノゾミ「怪しい、根拠なんて分からない」
ノゾミ「私を信じられるかな」
歩夢(ノゾミさん)
歩夢(まだ完全に信用できているわけではないかもしれない)
歩夢(だけど、この人が親身に私の力になってくれようとしているのは間違いない)
歩夢(だから)
歩夢「わたし、やります!」
ノゾミ「……それなら、さっきと同じように目を閉じて」
歩夢「はい」
歩夢(これで、私は) ノゾミ「――よし、入ったよ」
歩夢「え、もう?」
歩夢(さっきと違って、衝撃がない)
ノゾミ「身体、違和感とかない?」
歩夢「え、えっと」
歩夢(特に変わった感じはないかも)
ノゾミ「問題はなさそうやね」
歩夢「はい」
ノゾミ「なら、裏で試しに投げてみようか」 最初はスポ根モノかと思ったけど代償云々で不穏な感じになってきたな… ◆
歩夢「今度はキャッチボールをするんですね」シュッ
ノゾミ「うん、さっきとは違うレベルの球だからね」パシッ
ノゾミ「このぐらいはやっておこうかなと」シュッ
歩夢「わっ」パシッ
歩夢(ノゾミさんの投げる球、流石に速いな)
ノゾミ「さて、そろそろいいかな」
ノゾミ「さっきみせたリコちゃんの映像、覚えてる?」
歩夢「はい」
ノゾミ「頭の中であれを思い出して」
ノゾミ「できる限り、同じように投げる」
歩夢「えっと、マネッコ?」
ノゾミ「ふふっ、そうやね」 TRPGとかで、有利な特性を取るために不利な特性も取らないといけないみたいなのを思い出した ノゾミ「あとは握り」
歩夢「えっと、ボールを挟んで」
ノゾミ「そう、縫い目に指はかけない」
歩夢「ちょっと指、痛いかも」
ノゾミ「そこは慣れやね。日ごろからボールを挟む練習をする」
ノゾミ「さあ、投げてみて」
歩夢「は、はい」
歩夢(頭の中で、桜内さんのフォームをイメージ)ググッ
歩夢(あ、身体が)
歩夢(自然とリコさんと同じように)
歩夢(最後、抜くように)シュッ
シュ――――ストン
ノゾミ「おっと」パシッ 歩夢「す、すごい」
歩夢(さっきよりも速い球)
歩夢(しかも落ちた!)
歩夢「ノゾミさん!」
ノゾミ「なっ、上手くいったやろ」
歩夢「も、もう1球投げてみてもいいですか?」
ノゾミ「駄目だよ、そのボールは上に負担がかかる」
ノゾミ「今の歩夢ちゃんの身体じゃ、お試しは1球が限界」
歩夢「そうですか……」
歩夢(残念) ノゾミ「一応、波動はいくつか重ねられるけどね」
ノゾミ「とりあえず、女子野球のリリーフレベルだったらこれで十分だと思う」
歩夢「はい!」
歩夢(超能力、凄い)
歩夢(本当に私が凄い変化球を投げられるようになるなんて!)
ノゾミ「さて、あとは練習もしなきゃね」
歩夢「練習?」
ノゾミ「さっきも言ったけど、超能力で手に入れた球を投げると身体に大きな負担がかかる」
ノゾミ「だから、普通の投げ方も教えてあげるよ」
歩夢「い、いいんですか」
ノゾミ「うん、秋の今なら来年の夏の予選まではまだ時間がある」
ノゾミ「その前に色々練習しておいた方がいいやん」
ノゾミ「基本的な投げ方、ルール、守備や打撃のトレーニング」
ノゾミ「これでも元全国優勝チームの一員だからね。基本的なメニューは組めるよ」
歩夢「ノゾミさん……」
歩夢(凄い球が投げられればいいなんて、軽く考えていた私とは違う)
歩夢(ノゾミさんは、真剣に私のことを考えてくれている) 歩夢「あの、どうしてここまでしてくれるんですか」
歩夢「初対面の、私の為に」
ノゾミ「……ウチもね、歩夢ちゃんと同じような気持ちを抱いていたことがあるから」
歩夢「えっ?」
ノゾミ「おっと、自分語りは余計やね」
ノゾミ「とりあえず、明日は日曜だし学校も休みだよね」
歩夢「はい」
ノゾミ「それならお昼頃、またここに来てくれるかな」
ノゾミ「それまでに色々準備しておくから」
ニコ「アンタねぇ、また人助け?」
歩夢「あ、ニコさん」
ニコ「とことん人が良いのは昔から変わらないわね」 ノゾミ「まあまあ。ところでグローブの方は?」
ニコ「明日までには仕上げておくわよ」
ニコ「というかねえ、話を聞いていたけど」
ノゾミ「あー、ニコっち盗み聞き」
ニコ「茶化さないの」
ニコ「あんた、本格的に教えられる身体じゃないでしょ」
歩夢(教えられる身体じゃない?)
ノゾミ「少しぐらいなら平気だよ」
ニコ「平気じゃないわよ、しかも投手は専門外」
ノゾミ「それはそうだけど」
ニコ「呼んでおいてあげるわよ、助っ人」
歩夢「助っ人?」
ニコ「まあ、楽しみにしていなさい」
ニコ「考えうる限り、最高に近い人間を呼んであげるから」 【翌朝・上原家】
歩夢「……朝」
歩夢(昨日は、不思議なことがいっぱいだったな)
歩夢(まるで、夢の世界みたいな)
ブブッ
歩夢「メッセージ」
ノゾミ『お昼過ぎにウチの家まで来てくれるかな』
歩夢(そこに表示された名前が、現実だった証拠)
歩夢(……私、本当にあんな球を)
歩夢(信じがたい体験だった)
歩夢(あそこに行けば、私は侑ちゃんの為に……)
歩夢「とにかく、準備しなきゃ」 ※
歩夢「快晴だー」
歩夢(この時期にしては温かいのは、ラッキーかな)
歩夢(とりあえず、動きやすい服装だし)
歩夢(このままランニングしながら、ノゾミさんのところへ行くのもあり?)
侑「歩夢」
歩夢「あれ、侑ちゃん?」
歩夢(こんな時間に会うなんて、珍しい)
歩夢(いつもは野球部の練習があるはずなのに)
侑「珍しいじゃん、ジャージ着てるなんて」
歩夢「え、えっと」
侑「もしかして、本当に投手の練習をしてる?」
歩夢(ギクッ)
歩夢(流石は幼馴染、鋭い) 歩夢「れ、練習だよ。スクールアイドルの」
侑「あー、そっか」
歩夢(話ちゃってもいいかもだけど)
歩夢(いきなり超能力なんて言っても、信じてもらえないだろうし……)
歩夢「侑ちゃんこそ珍しいね、休日に朝から練習をしていないなんて」
侑「部員、まあ例の果林さんなんだけど、本当に朝練をボイコットされちゃってさ」
歩夢「え?」
歩夢(そういえば昨日……)
侑「練習は昼からになったから、自主練してるの」
歩夢「そ、そうなんだ」 侑「スクールアイドルも大変だよね、歌や踊りの為に、体力も付けなきゃだし」
歩夢「そんなことないよ、侑ちゃんの野球に比べたら全然」
侑「そろそろ学校行くから私はあがるけど、歩夢は今からだよね」
歩夢「う、うん」
侑「じゃ、頑張って」
歩夢(侑ちゃん……)
歩夢(普通に練習すらできないなんて……)
歩夢(このままじゃ駄目)
歩夢(一刻も早く、私も練習に付き合えるようにならないと) 【占いの館】
歩夢「こ、こんにちはー」
ノゾミ「裏から入って〜!」
歩夢「は、はい」
歩夢(投球練習場かな)
ノゾミ「あれ、汗だくだね」
歩夢「あはは、ちょっと走ってきたせいで」
??「……」
歩夢(だ、誰だろう。なんか睨まれてる……) ??「これがニコちゃんの話に出てきた」
ノゾミ「上原歩夢ちゃん、投手志望の女の子」
??「本気? 一般人にしか見えないじゃない」
ノゾミ「仕方ないんよ、実際素人なんだから」
??「素質も含めてよ」
ニコ「あらあら、マキちゃんは手厳しい」
歩夢「えっと、その、その方は?」
ノゾミ「あ、ごめんごめん、紹介遅れたね」
ノゾミ「この子はマキちゃん」
ノゾミ「ウチが全国優勝した時の後輩で、現役の女子プロ野球選手」
ニコ「私たちの広告塔になってくれている子よ」 歩夢「広告塔?」
ノゾミ「ほら、スポーツ選手にはアクセサリーなんかを付けている人がいるやん」
歩夢「えっと」
ノゾミ「野球選手のネックレスとか、あと分かりやすいのは、駅伝の選手が身体に貼っているシールみたいなもの」
歩夢「あー」
歩夢(確かに見るかも)
ノゾミ「ああいうのはね、私たちみたいな人間がお金を渡して選手に使ってもらっているんよ」
ニコ「ようするに、プレー中にスポンサーの商品を宣伝しているってことよ」
ノゾミ「うん、そうやね」 ニコ「ノゾミはね、色々と怪しいグッズを出しているの」
ノゾミ「怪しいかな?」
ニコ「怪しいわよ、傍からみれば」
ノゾミ「まあまあ、だからこそ使用している選手に活躍してもらって、道具の効果がありますよーって広めてもらうの」
ニコ「別に結果を残しても、そのグッズの力とは限らないけどね」
ノゾミ「むっ、ウチのはちゃんと効果抜群だよ」
ニコ「はいはい」 ノゾミ「ほら、これが実際にうちの商品を使っているマキちゃんの写真」
歩夢「わっ」
歩夢(確かに凄く派手なネックレスを付けてる!)
マキ「こんなの趣味じゃないから、地味にしなさいって言ってるのに……」
ニコ「仕方ないでしょ、目立たないと宣伝にならないんだから」
マキ「そりゃそうだろうけど」
ノゾミ「いいやん、マキちゃん似合ってるし」
マキ「それはそれで複雑なのよ」 マキ「そもそも、他人のコーチをするのなんて契約に入っていないと思うけど?」
ニコ「そのぐらいサービスしなさいよ」
マキ「そもそもプロなのに人に教えていいの?」
ノゾミ「だから、こっそり、ね」
マキ「はぁ、まあいいわよ。ノゾミにはお世話になったから」
ノゾミ「流石マキちゃん、いいこやねー」
マキ「もう子どもじゃないわよ」
ノゾミ「うちにとってはいつまでも可愛い後輩やん」
マキ「もう」
歩夢(マキさん、顔真っ赤)
歩夢(ちょっと怖い人かと思ったけど、悪い人じゃないのかな) マキ「まあいいわ、歩夢だっけ」
歩夢「は、はい」
マキ「簡単に事情は聞いているわ」
マキ「指導経験はあまりないけど、教えられることは教えるつもり」
マキ「だけどね、手加減とか苦手なの。やるからには全力でやる」
マキ「弱音、吐かないようにね」
歩夢「は、はい!」 ニコ「そういえばあんた、スクールアイドルやってる?」
歩夢「あ、はい」
ニコ「最近、人気あるらしいじゃない」
ニコ「野球なんて、やっている余裕あるの?」
歩夢「えっと、それは……」
ニコ「怪我とか、日焼けとか、スタイルの変化とか、問題も色々あるでしょう」
歩夢「……」
歩夢(言われてみると、そうかも)
マキ「まあその辺りも注意はするわよ」
マキ「それにトレーニングはアイドルに悪いことばかりじゃない」
マキ「鍛えればダンスにキレも出るし、肺活量が上がれば歌にも好影響」 ニコ「あら、詳しいのね」
マキ「ニコちゃんがドルオタだから、それなりに覚えちゃっただけよ」
歩夢(へぇ)
歩夢(野球好きとアイドル好きって、あんまり一致しないけど)
マキ「結構いるわよ、現役の選手はもちろん、アマチュアだと特に」
歩夢「へっ」
歩夢(心、読まれた)
歩夢「もしかして、マキさんも超能力者……」
マキ「あなたが分かりやすいだけよ」 マキ「とりあえず準備するから待ってなさい」
マキ「戻るまでに、身体を温めておいて」
歩夢「は、はい」
ノゾミ「なんだかんだ、ちゃんと準備してきてくれたんだよね」
ニコ「さすがマキちゃんにこ〜」
マキ「うっさいわね」
ニコ「きゃー、こわーい」
マキ「変なことしてないでその子にアップの方法でも教えておきなさいよ」スタスタ
ニコ「はいはーい」 歩夢「えっと」
ノゾミ「さ、こっちも身体動かしておこうか」
ニコ「その前に歩夢、これ」スッ
歩夢「あ、グローブ」
ニコ「一応使えるぐらいの状態にはしておいたから」
歩夢「一応……」
歩夢(昨日より明らかに柔らかくなってる)
歩夢(ギュッと握れない感じだったのに、今はしっかり閉まる)
ノゾミ「凄いでしょ、にこっちの技術」
歩夢「はい」
ニコ「道具の扱いで分からないことがあったら遠慮せずに聞きなさい」
歩夢「ありがとうございます」
ノゾミ「さっ、今のうちに身体をほぐしておこうか」
歩夢「はい!」 【数時間後】
歩夢「お、お疲れ様でした……」
マキ「明日も放課後、練習をするわよ」
ニコ「しっかり休んで疲れを取ってきなさい」
歩夢「はい……」
ノゾミ「また明日ね〜」
歩夢「……」コクコク 歩夢「うぅ」
歩夢(ボロボロ……)
歩夢(確かに初日から、とんでもない練習だったな)
歩夢(教えてもらえた家で毎日こなす練習メニューもかなりハードだし……)
歩夢(だけど、マキさんの指導を一度受けただけで)
歩夢(昨日とは比べ物にならない球を投げられた)
歩夢(握り方、身体の使い方)
歩夢(野球は奥が深いんだなぁ)
歩夢(思い返してみれば、侑ちゃんはフォーム綺麗だった)
歩夢「侑ちゃん、まだ練習中かな」
歩夢(学校、行ってみようかな) 【虹ヶ咲学園・グラウンド】
歩夢(まだギリギリ日が落ちてない)
歩夢(さて、侑ちゃんは)
侑「ナイスキャッチ!」
??「も、もう一本」
歩夢「あれ?」
歩夢(誰かと練習、ノックをしてあげてる)
歩夢(部員、例の果林さん以外にいないんだよね)
侑「次、ラスト!」キンッ
??「やっ」パシッ
歩夢「わぁ!」
歩夢(身体は小さい子だけど、上手だな) ??「ありがとう、ございました」
侑「うん、気をつけて帰ってね」
??「……」ペコッ
歩夢「侑ちゃん!」
侑「あれ、歩夢」
歩夢「今の子は誰?」
侑「ああ、中等部3年生の子」
歩夢「中等部」
歩夢(そっか)
歩夢(小さいと思ったけど、中学生)
侑「今日、偶々お互いに練習相手がいなくて困っていてさ」
侑「せっかくだから一緒に練習しようって話になったんだよね」
歩夢「へぇ」
侑「高等部へ進学するつもりみたいだから、とりあえず来年の部員1人ゲットだ」
歩夢(新入部員が入るのか、不安そうだったっけ)
歩夢「よかったね、侑ちゃん」
侑「うん!」 侑「ところでさ、歩夢はどうしてここに?」
歩夢「侑ちゃん、練習中かなと思って」
侑「わざわざ来てくれたの? 悪いねー」
歩夢「もうあがる?」
侑「うーん、もうちょっと個人でできる練習を――あれ」
歩夢「どうしたの?」
侑「歩夢、珍しい物を持ってるじゃん」
歩夢「へっ」
歩夢(あ、グローブ)
歩夢(手に持ったままだった) 侑「どうしたの、それ?」
歩夢「えっと、知り合いの人から借りたんだ」
侑「知り合い? 私の知ってる人?」
歩夢「ううん」
侑「意外。野球関係の歩夢の知り合い、私が知らないなんて」
侑「てかさ、ひょっとして本当に投手の練習してるの」
歩夢「あ、あはは、まあね」
侑「それならさ、試しに投げてみる?」
歩夢「へっ?」
侑「キャッチボールしようよ」 ◆
歩夢「えいっ」シュッ
侑「お、ナイスボール」パシッ
歩夢(近距離だけど、向かい合ってボールを投げ合う)
侑「久しぶりだね、こうやってキャッチボールをするの」シュッ
歩夢「だね」パシッ
歩夢(お互いに小さかった頃は、よくゴムボールを使って投げ合っていた)シュッ
侑「近所の公園や家の中でやってさ、お母さんに怒られたりしてさ」パシッ
侑「一番怒られたのはあれだっけ、歩夢が暴投して時計壊しちゃったとき」シュッ
歩夢「違うよ、あれは侑ちゃんが投げたボール」パシッ
侑「そうだっけ」
歩夢「まあ、私が上手く捕れなかったのが原因だったけど」シュッ
侑「あー、そうそう、私が近距離なのに思い切りボールを投げちゃったんだ」パシッ
侑「昔から歩夢には迷惑かけてるなー」シュッ
歩夢「そんなことないよー」パシッ
歩夢(少しずつ、開いていく距離)シュッ 侑「歩夢、もうちょい距離取ってもいい?」パシッ
歩夢「いいけど」
侑「試しにマウンドに立ってみてよ」シュッ
歩夢「えっ?」パシッ
侑「練習、していたんでしょ」
歩夢「で、でも」
歩夢(私、今日ちゃんとした投げ方を教わったばかりなのに)
歩夢(でも、せっかく侑ちゃんとバッテリーを組めるチャンス)
歩夢「分かった、投げるよ」
侑「よし!」 歩夢(グラウンド上のマウンド)
歩夢(初めて登る、思っていたよりも高い場所)
侑「おーい、投げられそう?」
歩夢「大丈夫」
侑「気負わずに私のミットめがけてきて!」
歩夢「うん」
歩夢(足の位置)
歩夢(ちゃんとあげて)
歩夢(テイクバック)
歩夢(腕、しっかり振り切る!)シュッ 侑「おお、ナイスボール!」パシッ
『正しいフォームで投げれば、現状のあなたでも多少はマシになるわ』
歩夢(正しいフォームで投げる)
歩夢(マキさんの指導の成果、こんなに早く出るなんて)
歩夢(やっぱりプロって凄いんだな……)
侑「もうちょっと投げる?」
歩夢「う、うん!」 歩夢「えいっ」シュッ
侑「ナイスボール!」パシッ
歩夢(楽しいな)
歩夢(侑ちゃんと同じグラウンドに立って、二人でバッテリーを組んで)
歩夢(信じられないぐらい、幸せな時間)
歩夢(私がちゃんとした投手になれれば)
歩夢(試合でもこの場所に立てるようになれれば)
歩夢(何度でも、こんな風に楽しむことができる)
歩夢(侑ちゃんの為だけじゃない、自分の為にも)
歩夢(練習、頑張ろう) とりあえずここまで。
次の投稿から他の同好会キャラも登場し始めます。 ここから>>1にどう繋がっていくのか、気が早いけど>>1のあとどうなっていくのか今から楽しみ ノゾミのやってる事ってスポーツマンシップに反してるよな
侑ちゃん二重の意味で怒りそう すでに3人転校してるっぽいけどメンバーどうなるんだ かつてこの板に投稿された野球ものとのつながりはあるのかな? 【2か月後・虹ヶ咲学園】
司会「上原歩夢ちゃんの『夢への第一歩』でした〜」
歩夢「みんな、ありがとう〜」
ワァァァァァ
歩夢「ふぅ」
歩夢(久しぶりのライブだけど、お客さん盛り上がってたな)
歩夢(我ながら良いパフォーマンスができた、うん)
歩夢(今日は虹ヶ咲学園のオープンキャンパスの日)
歩夢(私は部活や同好会に所属しているわけじゃないけど、学校のPRのためにライブを披露して) 歩夢(さて、この後はどうしよう)
歩夢(人気校だけに、人がいっぱい)
歩夢(私のライブにもたくさんの人が集まってくれた)
歩夢(そういえば私自身、お客さん側としてきたときにもライブを楽しんだっけ)
歩夢(侑ちゃんも野球部の試合を観て、入学の意志をさらに強めたって教えてくれたな)
歩夢(そういえば今日も学校のグラウンドで練習試合らしい)
歩夢(新入生獲得の貴重な機会だって)
歩夢(そっちの応援に行ってあげようかな)
歩夢(私にできること、今はそれぐらいしか――) ???「ねえねえ、あれ歩夢さんじゃない」
???「あ、本当だ!」
歩夢(駆け寄ってくる。多分中学生?)
歩夢(もしかして、私のファンの子?)
歩夢(最近、ちょっとずつ増えてきたらしいけど)
歩夢「えっと」
???「あの、かすみん――じゃなくて私たち、歩夢ちゃんのファンで!」
歩夢(わっ、本当に。校外の子には珍しいや) この世界だと、今のところスクールアイドルしてるのは歩夢だけなのかな かすみん?「今年、虹ヶ咲を受ける予定の中学生なんですけど、今日は歩夢ちゃんのライブを観に来て」
歩夢「私のために?」
かすみん?「ああ、まさかライブの後にも会えるなんて!」
歩夢「あ、ありがとう」
歩夢(こんなに熱心に推してくれるなんて、嬉しいけど圧倒される)
???「ちょっと、かすみさん。歩夢さんが困っているよ」
かすみん?「あっと、ごめんなさい!」
かすみん?「歩夢ちゃんと直接お話できるなんて夢みたいで、興奮しちゃって」
歩夢(一緒にいたもう一人の子、お友達かな) かすみん?「あ、あの、サインとかいいですか!」
歩夢「う、うん」
歩夢(なぜかもう一人の子のポケットから出てくる色紙とペン)
歩夢(サイン、侑ちゃん以外の人にするの初めてかも)
歩夢「えっと、名前は」
???「中須かすみです!」
歩夢「かすみちゃんへ……と」
歩夢「はい、どうぞ」
かすみ「ありがとうございます! 一生の宝物です!」 歩夢「あなたも、いる?」
???「えっと、いいんですか?」
歩夢「もちろん」
???「じゃあ……お願いします」
歩夢(おお、別の色紙も持っているんだ……)
かすみ「この子の名前はしず子です!」
しず子?「かすみさん。私の名前はしず子じゃなくてしずくだよ」
かすみ「あれ、そうだっけ」
歩夢「あはは」
歩夢(仲良し二人組なんだ)
歩夢「しずくちゃん、これでいいかな」
しずく「ありがとうございます」 歩夢「2人もアイドル志望?」
かすみ「いえ、かすみん達は野球部に入りたくて」
しずく「アイドルは応援する側が好きなんです」
歩夢「なるほど……」
歩夢(ということは、野球部の試合も観に行くのかな)
歩夢「野球部も見学予定なの?」
かすみ「えっと、野球部は歩夢ちゃんのライブの前に行ったんですけど、早々に試合が決まってしまって」
歩夢「そっか……」
歩夢(結果は聞かなくても想像がつく) しずく「キャッチャーの高咲さん、格好良かったよねー」
かすみ「でもチーム状況はだいたい想像通りだったよね」
しずく「ここなら1年生から出られそうだからちょうどいいかなって」
かすみ「違うよしず子。ピンチの野球部をかすみん達が救うサクセスストーリーを目指す為だよ」
歩夢(だけど、わざわざ事情を知りながら志望するだけあって、本当に受験してくれそうな雰囲気)
歩夢(侑ちゃん、喜ぶだろうな)
しずく「では私たちはそろそろ。帰って勉強しなければいけないので」
かすみ「えー、もう少しお話したいよ」
しずく「あんまり引き留めても迷惑だし。かすみさん、ニジガクはギリギリのラインなんだから死に物狂いで勉強しなきゃいけないんだよ」
かすみ「うっ、そう言われると」
歩夢(学力的な心配はあるんだ……) 歩夢「えっと、二人とも頑張ってね」
しずく「はい」
かすみ「4月、また歩夢ちゃんに会いに来ます!」
歩夢「うん、楽しみに待っているね」
しずく「失礼します」
歩夢(仲良さげに帰っていく2人組)
歩夢(野球部、もしかしたら私の後輩にもなるのかな)
歩夢(いい子たちだったし、楽しみが増えたな) 歩夢「さてと」
歩夢(とりあえず侑ちゃんに会いに行こう)
歩夢(試合が終わっていたとしても、ライブの報告もしたいもんね)
歩夢(えっと、グラウンドは)
歩夢(入学から半年以上になるのに)
歩夢(まだ迷っちゃいそうだよ)
歩夢「こっちかな」
歩夢(観に来てる中学生の子なんて、特に大変だろうな)
歩夢(迷子になっている子とかいるかも――) 『私は帰る!』
歩夢「ん?」
歩夢(大きな声)
歩夢(本当に困っている子でもいるのかな?)
??「遥ちゃん、別に彼方ちゃんのことは気にしないでさ」
??「お姉ちゃんのことを放り出して困らせた学校なんて絶対に嫌だもん!」
歩夢(二人組?)
歩夢(さっきみたいな友達同士? 違うかな、お姉ちゃんとか言ってたし)
歩夢(だけどお姉さんっぽい人も制服うちのじゃないし、在校生には見えない)
歩夢「うーん」
歩夢(気になるけど、かかわらない方が良さげかも) 半端ですがこの辺で
現実のセンバツの期間中は諸事情でゆっくり目の投稿になるかもです
>>127
一応、昔投稿したAqoursの話と同じ世界観ではあります 結構キツイ展開も待ってそうだけど、楽しみにしてます するする読めて面白いんだけど、序幕が意味深すぎて「代償」が怖い >>142
もしやあなたは!?
待っていました。おかえりなさい!
NPBも本日開幕で巷間の野球熱が高まってきましたな。 歩夢「それよりも早くグラウンドに――」
??「グラウンドならそっちだよ」
歩夢「わっ」
歩夢(目の前に急に人が現れてびっくり)
??「あれ、君はゆうゆの」
歩夢「あ」
歩夢(この子は確か、助っ人)
歩夢「宮下、さん?」
愛「愛でいいよ。同い年だしさ」
歩夢「えっと、愛ちゃん」
愛「うん、よろしくね、歩夢!」 歩夢「どうして私の名前?」
愛「よくゆうゆが話しているからさ、可愛い幼馴染だって」
歩夢「そ、そうなんだ」
歩夢(もう、侑ちゃんったら)
愛「歩夢は今日も応援?」
歩夢「うん、そのつもりなんだけど」
愛「そっかー、でも試合は終わっちゃったんだよね。コールド負け」
歩夢「そうなんだ……」
愛「試合の後も二人で練習するって言ってたから、ゆうゆはまだグラウンドにはいるんじゃないかな」
歩夢「そっか、じゃあ行ってみるね」
愛「カリンは機嫌悪そうだったから、気を付けてねー」
歩夢「う、うん」 【虹ヶ咲学園・グラウンド】
歩夢(到着したけど、侑ちゃんは……)
侑「だから、何度も言っているじゃないですか!」
歩夢(見つけたけど)
侑「今日もいつものパターンですよ」
侑「普通に投げれば抑えられる相手なのに、直球しか投げないから当てられて、味方のミスから崩れて失点」
果林「いいじゃない、自責点は0なんだから」
侑「せめて変化球を練習してくださいよ」
果林「嫌よ、性に合わないわ」
侑「中学までは抑えられていたかもしれないですけど、ここは高校野球ですよ」
侑「スライダーとか、チェンジアップとか……」
果林「ああもう、うるさいわね」 歩夢(ああ、また揉めてる……)
歩夢(近寄りがたい雰囲気)
歩夢(収まるまで離れた場所で待っていようかな……)
??「はわぁ」
歩夢「あれ?」
歩夢(先客かな)
??「ああ、怒った果林さんも素敵ですぅ……」
??「まさか、こんな風に合法的に果林さんに近づける素晴らしい催しがあるなんて……」
歩夢(な、なんだろう)
歩夢(独り言、やや荒い息遣い)
歩夢(少し、危険な匂いが……) 歩夢「えっと、あなたは?」
??「はっ、どなた? 不審者!?」
歩夢「えっと……」
歩夢(どうみても他校の制服を着て独り言をつぶやくあなたの方が怪しい……)
??「覗き魔! 見つけましたよ!」
??「ギクッ!?」
歩夢(の、覗き魔!?)
??「大人しくしてください!」
歩夢(何故か手に網を持っているのは、生徒会長の中川菜々さん?)
歩夢(というかこの子、本当に不審者だったの!?) ??「わ、私が何をしたというんですか!」
菜々「しらばっくれないでください! 試合前の野球部の着替えを覗いていたでしょ!」
??「女の子同士だから別にいいじゃないですか!」
菜々「そこに欲望が介在していたのなら性別は関係ありません!」
??「そもそも覗いたのは野球部の着替えじゃなくて、果林さんの美しい裸体です!」
菜々「なおさらたちが悪いじゃないですか!」
??「くっ、話が通じない――こうなれば逃げます!」ダッ
菜々「ま、待ちなさい!」ダッ
歩夢(わっ、行っちゃった)
歩夢(二人とも無駄に足が速いなぁ) 歩夢(菜々さんは昔、野球部だったから分かる)
歩夢(いい選手だったのに、勉強を理由に野球部を辞めちゃったんだよね)
歩夢(不審者さん? も野球をやっている子なのかな)
歩夢(あの制服、どこの学校だっけ……)
歩夢(どこかの高校だったとは思うけど)
??「……果林ちゃん」
歩夢「あれ」
歩夢(見学者がもう1人)
歩夢(大きな白人のお姉さん)
歩夢(中学生には見えないし、どうしてこんな弱小野球部に?) 歩夢(も、もしかして)
歩夢(侑ちゃんや果林さんを引き抜こうとしているとか……)
歩夢(聞き間違いじゃなければ、果林さんの名前を呟いていた)
歩夢(だ、駄目だよ)
歩夢(侑ちゃんはきっと学校に残るけど)
歩夢(だけど、果林さんがいなくなったら)
歩夢(私が入る前に部が潰れちゃうかも……)
歩夢(そんなことになったら駄目だよ) 歩夢「あ、あの」
??「ん、どうしたの?」
歩夢「あ、あれ」
歩夢(怖い人かと思ったら、普通)
歩夢「野球部に、何か御用ですか」
??「んー、そういうわけでもないんだけど」
??「私、一応ここのOGみたいなものだから」
歩夢(あ、関係者の人なんだ。よかった)
??「あなた、野球部の子?」
歩夢「え、えっと、キャッチャーの子の友達というか」
??「そっかぁ、侑ちゃんのお友達なんだ」
歩夢(侑ちゃんのこと、知ってる?)
歩夢(熱心なOGさん、なのかな) ??「あれー、エマちゃん」
??「彼方ちゃん、奇遇だね」
歩夢(この人、さっき喧嘩していた2人組のお姉ちゃんの方)
エマ「どうしてここに?」
彼方「遥ちゃんに学校案内、と思ったんだけど帰っちゃって」
エマ「怒ってたもんね、例の件」
彼方「設備もいいし、一年から試合に出れるからと言っても聞かないんだよ」
歩夢(もしかして、この人もOGの人かな?) 彼方「あれ、その子は?」
エマ「侑ちゃんのお友達だって」
彼方「へー」ジロジロ
歩夢(な、なんだろう、すごく見られている)
彼方「いい身体だねー」
歩夢(身体?)
彼方「この子、野球部の選手?」
エマ「ではないみたいだけど」
彼方「ふーん。練習頑張っているのかなーと思ったけど、彼方ちゃんの勘違いかー」
歩夢「えっ」
歩夢(この人、見ただけで分かるの?) 彼方「君、名前は?」
歩夢「え、えっと、上原歩夢です」
彼方「歩夢ちゃんかぁ、もし君が野球部に入ることになったら、来年の夏には対戦する機会があるかもね」
歩夢「へっ」
歩夢(この人、OGなんだよね)
エマ「彼方ちゃん、残念だけどそれは難しいんじゃないかな」
彼方「どうして?」
エマ「私の学校も、彼方ちゃんの東雲も、順当に行けばシード校」
エマ「1回戦を突破できる可能性がほぼない虹ヶ咲とは当たらないよ」 歩夢(えっとえっと、状況がつかめない)
歩夢(この2人はいったい、何者?)
彼方「エマちゃん、ずいぶん冷たいね」
彼方「果林ちゃんと侑ちゃんがいるんだから、1回戦ぐらい」
エマ「……1年生の頃の果林ちゃんならね」
エマ「でも今の果林ちゃんは、あんまり好きじゃない」
エマ「試合中、チームメイトに酷い態度を取って、自滅して」
エマ「あんなの、私の大好きな果林ちゃんじゃない」
エマ「入学したばかりの頃、同じポジションのライバルの私を助けてくれた、やさしくて頼りになる果林ちゃんは、もうどこにもいないの」 歩夢(果林さんと同級生?)
歩夢(それに、外国人のお姉さん)
歩夢(この人、もしかして留学生だった……)
歩夢「あ、あの」
エマ「ごめん、私たちはもう行くから」
エマ「歩夢ちゃんだっけ。侑ちゃんと――できれば果林ちゃんのことも、よろしくね」
彼方「またねー」
歩夢「は、はい」
歩夢(行っちゃった……) 歩夢(やっぱり、例の留学生さんだったのかな)
歩夢(初めて観る人たちだったけど、虹ヶ咲での侑ちゃんの試合を始めて観たのは既にチームが崩壊してからだから、私は知らなくてもおかしくはない)
歩夢(果林さんと、仲が悪いのかな?)
歩夢(やさしそうな人なのに、果林さんの話になると急に怖くなって)
歩夢(だけど、私によろしくって……)
歩夢(あと、あの人が留学生なら、もう1人の人は特待生?)
歩夢(ぼんやりしているようで、どこか鋭くて)
歩夢(妹さんは危なそうな子だったけど……) 歩夢「そういえば、侑ちゃんたち」
歩夢(揉めていたの、どうなったんだろう)
侑「いい加減にしてください!」
果林「あなたもしつこいわねぇ!」
歩夢(あわわ、ますますヒートアップしている)
歩夢(やっぱり収まるまで待って――)
『果林ちゃんのことも』
歩夢(でも、さっきお願いされたし)
歩夢(また拗ねて練習をボイコットされて、侑ちゃんが困る姿は見たくないし)
歩夢(私が仲裁を……) 歩夢「あ、あの」
侑「え、歩夢?」
果林「……またこの子」
歩夢「は、はい?」
果林「そんなに変化球投手が欲しければ、この子にでも仕込みなさいよ!」
歩夢「え、わ、私?」
果林「ふんっ!」
歩夢「え、えっと」
歩夢(止める前に、出ていっちゃった……) 侑「はぁ……」
歩夢「ゆ、侑ちゃん、なにがあったの?」
侑「いや、いつもどおり口論から喧嘩になりかけて……」
歩夢(いつもこんなことをやっているんだ……)
侑「そっちはライブ帰り?」
歩夢「うん」
侑「ごめんね、試合被っちゃってそっち行けなくて」
歩夢「私の方こそ、お互い様だよ」 侑「ライブは上手くいった?」
歩夢「うん、おかげさまで」
侑「流石だね、後で動画を観なきゃなぁ」
歩夢「えー、恥ずかしいし無理しなくてもいいよぉ」
侑「駄目駄目。私は歩夢のファン1号。推しのことは全部追わないと気が済まないの」
歩夢「もう、侑ちゃんったら」
侑「しっかし、私の方は散々でさ」
侑「勝てそうな相手を呼んで試合をしたのに、序盤からグダグダで」
侑「最後はバッテリーで揉めたところまで見られちゃってさ」
歩夢「あはは……」
歩夢(かすみちゃんとしずくちゃん、最後まで試合を観ていなくてよかったかも……) 侑「歩夢はこの後どうするの?」
歩夢「私はライブも終わったし、そろそろ帰ろうかなって」
侑「そっか、じゃあちょっと待っていてくれない?」
侑「私もこの後は暇だし、一緒に帰ろうよ」
歩夢「うん、いいよ。どこかで遊んでいく?」
侑「それもいいけど、せっかくだしうちにこない?」
歩夢「侑ちゃんのおうち?」
侑「ちょっとさ、話したいことがあるんだよね」 >>149
野球物の過去作は、千歌「白球を追いかけろ」という話です
まとめサイト等を探していただければ見つかると思います とりあえずりなりー以外は登場したのかな。他にもたくさん出そうだけど。楽しみ 今の感じだと歩夢が投手で加入すると果林さんには逆効果にも思えるな >>173
導入部を見ると果林さんは虹学か静真でプレーを続けてるけど、歩夢とはチームメイトじゃないみたいに読めるしね。代償の結果なのか >>171
やはりそうか!
「リコ」がフォークボールを使うというところで「白球を追いかけろ」シリーズが脳裏をよぎった。 【高咲家・侑の部屋】
歩夢「おじゃましまーす」
侑「いらっしゃい」
歩夢「久しぶりだなぁ、侑ちゃんの部屋」
侑「いやいや、先月も来たよね」
歩夢「それだと私たち的には久しぶりじゃない?」
侑「あー、確かに」
歩夢(昔から変わらない部屋)
歩夢(飾り気はあまりないけど、野球道具はいっぱいあって)
歩夢(まっすぐな侑ちゃんの気持ちが伝わってくる、私の大好きな場所) 侑「とりあえず座ってさ、一緒にゲームでもしない?」
歩夢「ゲーム? 何か話があるんじゃなかったっけ」
侑「まあそれは遊びながらってことで」
侑「実はゲームも目的の一つだし」
歩夢「ふーん」
歩夢(アウトドア派の侑ちゃんにしては珍しいな)
侑「これさ、この前に部屋を整理していたら出てきたんだ。懐かしくない?」
歩夢「わっ、本当だ」
歩夢(侑ちゃんが取り出したのは、小学生のころ一緒に遊んでいたテレビゲーム機) 歩夢「懐かしいね」
侑「でしょ」
歩夢「まだ動くの?」
侑「一応試したときは動いたよ、ソフトもほら」
歩夢「おお」
歩夢(ゲーム機が起動し、画面に映るのは、昔一緒にプレイしていた野球ゲーム)
歩夢(物持ちがいいなー) 侑「はい、歩夢の分のコントローラー」
歩夢「ありがとう」
侑「操作方法は覚えてる?」
歩夢「うん、なんとなくだけど」
侑「じゃあ練習無しでいいね」
歩夢「えー、ちょっとは動かしたいよ」
侑「いいじゃんいいじゃん、チーム力的にハンデだよ」
侑「どうせ私がスワローズで、歩夢がジャイアンツ、でしょ」
歩夢(そう、地元のチームで上原さんがいるから、私はいつもジャイアンツ)
歩夢(もう一つの東京だし、髪色がチームカラーっぽいって理由で侑ちゃんはスワローズ) 侑「歩夢、最初は下手でさ」
侑「私が勝ってばかりで、泣かせちゃったりしてさ」
歩夢「もー、思い出させないでよ」
侑「いいじゃん、泣かせたのは最初だけだったし」
歩夢「ふふっ、こっそり侑ちゃんがいない時に練習してね、」
侑「そうそう、気づいたら歩夢の方が上手くなっていて」
侑「ビックリだった。案外負けず嫌いなもんだから参ったよ」
歩夢「子どもだったからかな、凄く悔しかったのかな」
侑「いやいや、努力する才能、歩夢は凄いよ」
侑「どんなことでも小さな努力をコツコツと積み重ねて、大きな花を咲かせられる」
歩夢「どうしたの? 急にそんな風に褒めてくれて」
歩夢(嬉しいけど、もちろん) 侑「いや、ちょっとさ」
侑「見習いたいなって思っているんだ、最近」
侑「最近だってそうじゃん。アイドルも、私が無理やり勧めたようなものだったのにさ」
侑「動画の再生数も増えて、立派なアイドルになっている」
歩夢「私の力じゃないよ、いつも侑ちゃんが背中を押してくれるからできる」
侑「私は歩夢を困らせているだけだよ」
侑「スクールアイドルの件だって、ただ可愛い歩夢を観たいからって、短絡的な理由だったし」
歩夢「理由はそうでも、私がアイドルになって、そんな自分が好きになれたのは侑ちゃんのおかげ」
歩夢「侑ちゃんがいるから今の私があるんだもん」
歩夢「伝えきれないぐらい、感謝しているよ」 侑「……ありがとう、私も歩夢には感謝してる」
侑「今の私が腐らずに野球を続けられるのも、いつも歩夢が傍にいてくれるおかげ」
歩夢「侑ちゃん……」
侑「歩夢さ、今も投手の練習、続けているんでしょ」
歩夢「知ってたんだ」
侑「お母さんたちが話しているのを聞いてさ。最近歩夢がよく服を汚して帰ってくるって」
侑「あと体つき、前より明らかに肉がついてきたよね」
歩夢「その言い方、なんかエッチ」
侑「あはは、ごめんごめん」 侑「でも私さ、今回もちょっとだけ期待してるんだ」
侑「歩夢が歩夢らしくコツコツと努力を重ねて、花を咲かせて」
侑「本当に投手として、私とバッテリーを組んでくれる、なんてこと」
侑「言い出せなかったけどさ、昔から本気で思っていたんだ」
侑「野球は大好きだけど、歩夢と一緒に出来たらもっと良くなるなって」
侑「やっぱりさ、歩夢が傍にいてくれるだけ私は楽しいんだよね」
歩夢「侑ちゃん……」
侑「私も女房役として精一杯歩夢を支えるから」
侑「もし入りたくなったら、いつでも野球部に来てよ」
歩夢「……うん」 歩夢(侑ちゃんの言葉は嬉しかった)
歩夢(彼女も私を求めてくれているなんて、夢みたいで)
歩夢(1人の夢じゃない、2人の夢)
歩夢(もっと上手くなって)
歩夢(侑ちゃんに迷惑をかけないようになる)
歩夢(そうすればきっと、夢は叶う)
侑「よし、それじゃあ試合を始めようか」
歩夢「うん――あれ、もうプレイボール? スタメン設定とかは?」
侑「ああ、歩夢のスタメンも私が決めておいたよ。先発は当然上原で」
歩夢「ありがとう――ってこの年の上原さんは抑え投手だよね!?」
侑「あれ、そうだっけ?」
歩夢「絶対確信犯だ! ズルいよ侑ちゃん!」
侑「あはは、ハンデハンデ〜」 この日から。
運命は動き始めたのかもしれない。
本来とは違う方向へ向けて、大きく、狂ったように 短いですがこの辺で
ここまでが大体序章になります
明々後日ぐらいから長めの分量での更新を始められると思うので、よろしくお願いします。 導入部を見ても結構きつい展開になりそうだけど楽しみ 【翌年・4月】
【朝・占いの館投球練習場】
歩夢「やっ」シュッ
ニコ「OK、いいわよ!」パシッ
マキ「球速は?」
ノゾミ「95、最速に近いね」
歩夢「95……」
マキ「だいぶ形になってきたわね」
歩夢「ありがとうございます!」
歩夢(半年前はホームベースの届かせるのがやっとだったのに)
歩夢(自分でも成長が実感できる) マキ「結構投げたし、そろそろあがりましょうか」
歩夢「分かりました」
ニコ「今日から入部だっけ?」
歩夢「はい、そのつもりです」
ノゾミ「よかったねぇ、マキちゃんの許可が下りて」
歩夢「えへへ、頑張りました」
歩夢(マキさんからは、ノゾミさんからもらった超能力抜きでも一定のレベルに達してから入部と言われていたから)
歩夢(一応、新入生から少し遅れたぐらいのタイミングに間に合ったのはよかったな) ニコ「しっかし、あの素人まるだしだった子が半年でよくもここまで」
ノゾミ「歩夢ちゃん、才能あるんじゃない?」
歩夢「そ、そうですか?」
マキ「そんなわけないでしょ、私の指導が良かっただけよ」
歩夢「あはは……」
歩夢(そうだよね)
歩夢(現役のプロ選手に加えて、元全国優勝選手が二人)
歩夢(こんな贅沢な指導環境は普通ない)
歩夢(本当に、感謝しないといけないよね) ノゾミ「なんていいながらね、マキちゃんいつも褒めているんよ」
ノゾミ「『歩夢は案外才能があるわね』とか、『あんなに努力できる子は珍しいわ』なんて」
歩夢「マキさん……」
マキ「べ、別に、お世辞よお世辞」
ニコ「本人の前じゃないところで言うお世辞なんてあるのかしら」
マキ「う、うるさい!」
歩夢(顔、真っ赤だなぁ)
歩夢(半年間教わっていて分かったこと)
歩夢(マキさんは素直になれない、そしてそこが可愛い)
歩夢(だけど嬉しいな、いつも厳しい人だけど、影ではそんな風に) マキ「と、とにかく、歩夢にはまだまだ教えなきゃいけないことがいっぱいあるから」
マキ「あなたは部活、私もシーズンが始まって忙しくなるし、今までみたな頻度で教えられなくはなるけど、頑張っていくわよ」
歩夢「はい!」
ニコ「私がいれば練習には付き合えるから、気軽に来なさいよ」
ノゾミ「にこっちは基本的に暇やもんね」
ニコ「うっさい! あんたもでしょ!」
ノゾミ「だからウチも手伝うって」
マキ「駄目よ、ノゾミは無理したら」
ノゾミ「えー、けちー」
歩夢(……)
歩夢(ノゾミさんもかつては有望な選手だった)
歩夢(だけど高校の時に大怪我をして、以前のようなプレーはできなくなってしまったらしい)
歩夢(普通に練習するぐらいは可能だって言うけど……) ノゾミ「だいぶ良くなっているし、少しぐらいなら平気だから」
マキ「でも」
ノゾミ「とにかく歩夢ちゃん。波動のことも含めて、忙しくなっても定期的に顔を出してね」
歩夢「は、はい」
ニコ「話は済んだなら早く支度したほうがいいわよ」
歩夢「あ、本当だ」
歩夢(そろそろ出ないと遅刻しちゃう)
歩夢「えっと、じゃあ片付けてから」
マキ「今日ぐらい私がやっといてあげるから早く行きなさい」
歩夢「いいんですか?」
ノゾミ「遅刻されても困るし、ね」
歩夢「ありがとうございます!」ダッ」
ノゾミ「いってらっしゃーい」 ノゾミ「さてと、片付け」
マキ「いいわよ、私がやるから」
ノゾミ「そうはいかないよ――ってイタタ」
マキ「屈んだだけでそれなんだから、もう」
ノゾミ「いやー、最近は一緒に練習もしていたから、疲れが」
ニコ「最近のあんたは無理し過ぎよ」
ノゾミ「そうかなぁ」
ニコ「歩夢に凄く入れ込んでるんだから、もう」 ノゾミ「仕方ないやん、頑張っている子は応援したくなるもの」
ニコ「気持ちは分かるけどね。あんなに素直でいい子、珍しいもの」
ノゾミ「でしょ」
ニコ「実際、あの子も身体はできてきたわよ」
ノゾミ「そうやね、普通の女の子から、運動部の少女ぐらいにはなれたかな」
ニコ「だけど例の超能力、身体への負担が凄いんでしょ」
ノゾミ「うん。将来も野球を職業にしたい子には、絶対に使わせない程度にはね」
ノゾミ「そう考えると、今の身体でもどこまでもつか……」 ニコ「超能力なんて言うけど、ほとんど呪いの類よね」
ニコ「実際、こうやって壊れている人間もいるわけだから」
ノゾミ「そう言われると、ねぇ」
マキ「私は、高校の時にあなたの力を知っていたら絶対止めたわよ」
ノゾミ「……だから、力を使わずに投手として活躍で切れば一番なんだけど」
マキ「球速は100キロも出ない。教えてあげた変化球の中で投げられるのはほとんど曲がらないスライダーだけ」
ニコ「左で投げられるだけでも、それなりには抑えられるんじゃない?」
マキ「現実的には厳しいわよ」
マキ「上に行けば、例え全国クラスのフォークボールを投げられたとしてもね」 ノゾミ「他の子から波動を、力を借りれば、さらに強化することはできるけど」
ノゾミ「極力やりたくはないね」
ニコ「そんなこと言うなら、どうしてあの子に超能力を使ったのよ」
ノゾミ「あの子が、本当に必要としている気がしたから、かな」
マキ「相変わらず、第六感的な部分の話なのね」
ノゾミ「あと正直ね、諦めると思っていた」
ニコ「まあ、普通は止めるわよね。あの子、野球を知らないわけではなかったらしいから」
ニコ「今みたいに、普通に投げられる姿なんて、半年前は想像もできないレベルだったんだから」
ノゾミ(歩夢ちゃん、今はまだ分からないだろうけど)
ノゾミ(一度運命を変えて代償を支払った時、どうするのかな)
ノゾミ(1つだけならまだ引き返せる)
ノゾミ(だけど波動を重ねて力が増えていくにつれて……)
ノゾミ(取り返しがつかなくなる前に、ちゃんとウチが止めないと) 【放課後:虹ヶ咲学園野球部部室前】
歩夢「ふぅ」
歩夢(本当に来ちゃったな)
歩夢(入部届、顧問の先生に提出できたし)
歩夢(先生、野球を知らなそうなおばあちゃんだったけど、いい人だったな)
歩夢(道具、ちゃんと用意してきた)
歩夢(準備は万端)
歩夢(緊張するな……)
歩夢(最初が肝心、侑ちゃんがいるか分からないけど)
歩夢(ちゃんと挨拶をして、えっと……)
??「なにをしているの?」
歩夢「わっ!?」
??「なっ」ビクッ 果林「ちょっと、急に大きな声を出さないでよ」
歩夢(あ、例の怖い人、果林さん……)
果林「ビックリするでしょ」
歩夢「ご、ごめんなさい」
果林「あら、あなたは確か侑の」
歩夢「は、はい」
果林「侑に用時かしら」
歩夢「えっと……」
歩夢(ちゃんとお話したことないのに、覚えておいてくれたんだ)
歩夢(もしかして、悪い人じゃないのかな) 果林「ごめんね、あの子はちょっと遅れてくるみたいで」
歩夢「あの、今日は侑ちゃんに用事というわけではなくて」
果林「あら、それならなぜ野球部に?」
歩夢「その、入部希望なんですけど」
果林「……へぇ」
歩夢(目つきが変わった)
歩夢(なにか、睨むように)
果林「あなた、経験者だったのね」
歩夢「一応……」
歩夢(実戦での経験はないけど)
果林「ポジションはどこ?」
歩夢「その、投手希望で」
果林「そう、投手」
歩夢(あわわわわ、あからさまに敵意を向けられているような) 侑「すいませーん、遅くなりました――って歩夢!」
歩夢「ゆ、侑ちゃん」
歩夢(助かった……)
侑「どうしたの、こんなところで」
歩夢「えと、実はね」
果林「入部希望らしいわよ」
侑「え、新入部員ですか? どこに……」
果林「その子?」
侑「え、歩夢?」
果林「そうよね」
歩夢「は、はい」
侑「へー、歩夢が野球部に――」
侑「えええぇぇ―――――――!?」 果林「……その反応だと、あなたが仕組んだわけじゃないのね」
侑「えっと、入るかもとは聞いていたんですけど」
果林「ふうん」
侑「だけどありがとう歩夢! 嬉しいよ!」ギュッ
歩夢「ゆ、侑ちゃん」
果林「……去年来てくれればよかったのに、人数足りなかったわけだから」
歩夢「その、色々あって……」
歩夢(マキさんから選手としての合格点もらえたの、最近だったから) 果林「今さら来ても、ポジションはないわよ」
侑「もう、そんな言い方」
歩夢「新チーム、もう始動しているんだっけ」
侑「うん。1年生が6人と2年生が1人入ってくれてさ。とりあえず9人」
侑「歩夢が入ってくれるなら、10人目の選手だね」
歩夢「そっか、9人集まったんだ」
歩夢(もしかして私、いらなかった?)
歩夢(ううん、投手は何人いてもいいって、ノゾミさんも言っていたもん)
侑「他の部員の子、紹介したいけど。2年生の子は用事があって途中参加で」
侑「一年生も今日は少し遅れるらしいけど」 ???「おはようございます!」
???「おはようございます」
侑「あ、噂をすれば」
歩夢「一年生の子?」
侑「うん」
???「あれ、あなたは……」
歩夢「え、私?」
???「歩夢ちゃん――じゃなくて、歩夢先輩!」 歩夢「あなたは」
歩夢(この子、オープンキャンパスの時の!)
歩夢「かすみちゃん、だよね」
かすみ「はい!」
しずく「かすみさん、どうしたの」
歩夢(友達の方も!)
かすみ「しず子、みてみて! 歩夢先輩!」
しずく「え――わっ、本当だ!」
歩夢(確かこの子も、かすみちゃんと一緒にいる)
歩夢「しずくちゃん」
しずく「わっ、覚えていてくださったんですね!」
歩夢「うん、もちろんだよ」 侑「あれ、知り合い?」
かすみ「二人とも歩夢さんの大ファンです!」
果林「ファン?」
侑「歩夢、スクールアイドルもやっていて」
果林「ふぅん、かすみちゃんはともかく、しずくちゃんの趣味がアイドルとは意外ね」
しずく「えっと、かすみさんの影響というか」
かすみ「しず子、私より熱心で凄いんですよ! この前、歩夢先輩のライブへ行ったときもテンションが上がりすぎて大騒ぎして」
しずく「ちょ、ちょっと、恥ずかしいよ」
歩夢(そういえば少し前のライブ、人が少なかった割に客席がいつもより盛り上がっていたなぁ) かすみ「ところで歩夢先輩はどうしてここに?」
歩夢「えっとね、今日から野球部に入ることになって」
かすみ「え、歩夢先輩、野球部に入るんですか!」
歩夢「う、うん」
しずく「ちょっと意外ですね」
かすみ「あれですか、侑先輩の為!」
歩夢「え、よく分かったね」
かすみ「二人の仲良し説、ファンの間では時々噂されていたんですよ!」
歩夢「そ、そうなんだ」
歩夢(応援しているところとか、SNSにあげたりしたことないのに)
かすみ「私は、アイドルは歩夢先輩、野球は侑先輩の大ファン!」
かすみ「そんな二人が共演なんて――テンション上がります!」
しずく「ふふっ、よかったね、かすみさん」 ??「おはよう、ございます」
歩夢(あ、もう1人ちっちゃい子が来た)
侑「おはよう」
??「侑さん」ペコ
歩夢(この子は、確か中等部の野球部の)
侑「色葉ちゃんたちは?」
璃奈「やっぱり、今日は来られないみたい」
かすみ「あ、りな子!」
りな子?「かすみちゃん、興奮して、どうしたの?」
かすみ「新入部員の人、入ったよ!」
りな子?「え、本当?」 歩夢「えっと、始めまして。二年生の上原歩夢です」
りな子?「……」ペコッ
歩夢(あ、あれ、無視?)
歩夢(これがよそ者への洗礼……でも頭は下げてくれた)
歩夢(この子、人見知り、とか?)
歩夢「ねえ、あの子はなんて名前なの?」
かすみ「はい! りな子です!」
歩夢「えっと、りな子ちゃん?」
しずく「もう、違うでしょかすみさん。本名は天王寺璃奈ちゃん」
歩夢「りな、ちゃん」
しずく「これ、簡単な部員の名簿です」
歩夢「ありがとう」
歩夢(やっぱりこの子、中等部からあがってきたんだ) かすみ「歩夢先輩、ポジションはどこを守るんですか?」
果林「その子、投手希望らしいわよ」
璃奈「投手……」
果林「やるだけ無駄でしょうけど」
かすみ「ちょっと、どうしてそんなこと言うんですか!」
果林「以前投げていた球、素人みたいだったわよ」
果林「あれが数ヶ月でどうにかなるとは思えないわ」
歩夢(私が投げているところを?)
歩夢(いつみたんだろう……) ???「まあまあ、そう言わずに見てやってや」
侑「えっ」
かすみ「あれ、部外者のお姉さんがいつの間にか」
歩夢「の、ノゾミさん!」
侑「えっと、どなた?」
歩夢「その、私に投球を教えてくれたコーチの人で」
ノゾミ「気軽にのぞみんって呼んでな」
しずく「あなたは、もしかして……」
ノゾミ「まあまあ、ウチのことはええやん」 ノゾミ「確かに昔の歩夢ちゃんの投球は酷いもんやった」
ノゾミ「だけどな、ここ数か月間、血のにじむような努力をしてきたんや」
ノゾミ「今のこの子は、ちゃんとした野球選手だよ」
歩夢「ノゾミさん……」
果林「……それなら、見せてもらいましょうか」
侑「果林さん?」
果林「入部テスト、ではないけど」
果林「あなたの実力、見てみたいわね」 これは浅希今日子色葉の三人組も入ったのかな?
続きが楽しみ 【虹ヶ咲学園グラウンド】
ノゾミ「よし、大体準備できたね」
歩夢「驚きました、いきなり投げることになるなんて……」
歩夢「あと、ノゾミさんが急に現れたことにも」
ノゾミ「いやー、カードがウチに告げたんよ」
ノゾミ「行ってあげないと、歩夢ちゃんが困ったことになるって」
歩夢(相変わらず、謎の多い人だ……) ノゾミ「いつもどおり投げれば問題ないよ」
ノゾミ「出来が悪くても、入部できないというわけじゃないだろうから」
歩夢「はい」
ノゾミ「そうそう、フォークは禁止ね」
歩夢「え、駄目なんですか?」
歩夢(毎日少しずつだけど、ちゃんと投げられるように練習はしたのに)
ノゾミ「負担を考えるとね、全国がかかった夏の公式戦以外、極力投げないに越したことはないよ」
歩夢「分かりました」
歩夢(自分の持ち球だけ、侑ちゃんをがっかりさせないといいけど) 果林「準備はできた?」
歩夢「はい」
果林「一応、私が打席に立つわ」
歩夢「えっと、一打席勝負とか?」
果林「いいえ、実戦形式で投げるところをみたいだけ」
果林「基本的には打たないつもりよ、問題あるかしら?」
歩夢「い、いえ、特には」
歩夢(打席に人が立った状態で投げることはほとんどなかったから、緊張するな……) 侑「歩夢!」
歩夢「侑ちゃん」
侑「とりあえず球種だけ確認、持ち球はストレート?」
歩夢「あと、一応スライダー」
侑「了解、それなら特にサインとかは無しで、好きな球種を投げて」
歩夢「いいの?」
侑「うん、まあ気楽にいこう」
侑「捕る方は任せてくれればいいからさ」
侑「とにかく、私のミットめがけて思い切り投げて」
歩夢「うん!」 果林「それじゃあ、はじめるわよ」
歩夢「はい!」
歩夢(わぁ)
歩夢(果林さん、良い体格をしているから、打席に立つと雰囲気があるな)
歩夢(でも打つわけじゃないらしいから)
歩夢(とにかく、精一杯)
歩夢(力まず、マキさんから教わった通りに)グッ
歩夢「えい!」シュッ
歩夢(あ、上手く指にかかった)
侑「ナイスボール!」パシッ
果林「へぇ……」
歩夢(ど、どうなのかな) 侑「今の感じでもう一球!」シュッ
歩夢「う、うん」パシッ
歩夢(次は、スライダー)シュッ
侑「いいよ!」パシッ
歩夢(あ、いい感じに曲がった)
かすみ「きゃー、歩夢先輩格好いいです!」
歩夢(かすみちゃん、ありがたいけどちょっと恥ずかしい)
しずく「歩夢さん、その調子です!」
歩夢「う、うん」 歩夢(思っていたより、良い反応?)シュッ
侑「よしっ」パシッ
かすみ「格好いい!」
しずく「ナイスボールです!」
璃奈「……」
歩夢(相変わらず心の中が分からない子もいるけど……)
璃奈「……ナイスボール」
歩夢(無表情なだけで)
歩夢(いい子っぽいよね) 侑「次、ラスト!」
歩夢「やっ」シュッ
侑「よし、OK」パシッ
歩夢「ふぅ」
歩夢(少なかったけど、いい感じに投げられたな)
侑「歩夢、お疲れ」
歩夢「ありがとう」
果林「歩夢、でいいのよね」
歩夢「は、はい」
歩夢(果林さん)
歩夢「えっと、どうでしたか」 果林「思っていたより良かったわね、一応、リリーフにはなるんじゃない」
歩夢「へっ」
歩夢(予想外に、好反応?)
果林「まあ出番はないでしょうけど。どうせベンチ枠は空いているわけだから」
歩夢(ですよね……)
侑「まあまあ、初めて数ヶ月でここまで投げられるのは凄いって」
歩夢「いや、でもそれは私じゃなくてノゾミさんの」
歩夢(あれ、いつの間にか消えてる)
歩夢(相変わらず、謎の多い人……) ??「ちーっす、遅れてごめんねー」
歩夢(ん? 誰か)
侑「あ、愛ちゃん、早かったね」
愛「結構早く抜け出せてさ――ん? どうしたの練習もせずに」
果林「新入部員のテスト的なことをしていたのよ」
愛「新入部員? ってあれ、歩夢じゃん」
歩夢「愛ちゃん!」
愛「正解〜、久しぶり。野球部に入ったんだ」
歩夢「うん。愛ちゃんはどうしてここに?」
愛「どうして? そりゃ野球部員だから練習にさ」
歩夢「あれ、愛ちゃんは助っ人じゃなかった?」
愛「そうなんだけどさー、友だちがチームに入ってね、一緒にプレーしたいなーと」
歩夢「友だち?」 璃奈「……愛さん」
愛「お、りなりー!」
歩夢(あだな?)
愛「もう自己紹介した? この子友達の天王寺りなりーちゃん」
璃奈「私の名前は璃奈。かすみちゃんにも間違えられたけど」
愛「あれ、かすかすとネタ被り? やっちゃったなー」
歩夢(璃奈ちゃんと愛ちゃん、友だちだったんだ)
歩夢(正反対のタイプっぽいし、学年も違うのに、ちょっと意外?) 歩夢「というか私、入部OKってことでいいのかな?」
侑「もちろん!」
果林「始めから拒否なんてしていないわよ」
歩夢(そういえばそうだっけ)
侑「ここにいる6人と、今日は来ていない1年生の子3人の小さなチームだけど」
侑「10人目の選手として、歩夢のことは歓迎するよ!」
かすみ「歩夢先輩、よろしくお願いします!」
愛「よろしく〜」
歩夢「うん、ありがとう」
歩夢(これで第一歩、なのかな?)
侑「とりあえず近いうちに練習試合を組んでいるからさ、そこでも投げてみよう」
歩夢「へっ?」
果林「いいわね。私も無理したくない時期だし、歩夢が実戦でどの程度やれるか知りたいもの」
歩夢(わ、私、もう投げるの?)
歩夢(大丈夫かな……) せっつーもピッチャーで侑ちゃんNTRなのかそれともキャッチャーでバッテリー組むのか 【数日後・練習試合】
ボールフォア!
歩夢「うぅ」
歩夢(9回裏、相手チームの攻撃)
歩夢(新チーム初戦)
歩夢(相手は毎年1回戦負けの近所の高校)
歩夢(9回、予定通りにマウンドに上がった私)
歩夢(3点リードだけど、四球3つでノーアウト満塁にしちゃって)
歩夢(サヨナラ負けのピンチ……) 侑「歩夢、落ち着いて!」
歩夢「う、うん」
歩夢(やっぱり、緊張するんだな)
歩夢(制球力だけはそれなりだって褒めてもらっていたのに、全然ストライクが入らなくて)
歩夢(でも大丈夫)
歩夢(相手も下位打線)
歩夢(最悪同点で食い止めれば、引き分けには持ち込める)
歩夢(侑ちゃんのリードがあれば私だって) 侑(アウトローにストレート)
歩夢(うん)コクッ
歩夢(ちゃんと投げられるように)
歩夢(リラックス、リラックス)
歩夢(何か良いことを考えて)
歩夢(例えば、ここを抑えれば侑ちゃんが)
侑『歩夢!』ダキッ
歩夢『侑ちゃん!』ダキッ
侑『やっぱり歩夢は最高の幼馴染だよ! 大好き!』ギュッ
歩夢(なんてことも……)
歩夢(うへへ、うへへへへ)シュッ
侑(あ、ヤバッ)
カキ―――――――――――ン 【翌日・占いの館】
歩夢「うぅ……」
ニコ「アウトも取れずに4失点で負け投手、散々なデビュー戦だったわね」
ノゾミ「まったく、欲を出したらアカンって前にも言ったのに」
歩夢「だけど、ストレートと曲がらないスライダーだけじゃ……」
ニコ「今回の相手なら、滅多打ちにはならなかったわよ」
ノゾミ「そんなんじゃ、実戦で使うフォークも上手く投げられんよ」
マキ「グラウンドで気を抜いたら駄目じゃない」
歩夢「それは……」
ノゾミ「観ていて恥ずかしくなるぐらいのにやけっぷりやったね」
ニコ「まったく、何を妄想していたのやら」
歩夢「はうっ」グサッ 歩夢「というか、観に来てくれていたんですね」
ノゾミ「『弟子のデビュー戦なんだから当然でしょ』」
ニコ「とマキちゃんが言ってね」
マキ「言ってない!」
歩夢「マキさん……」
マキ「そ、そもそも、練習試合でこれじゃあ、先が思いやられるわよ」
歩夢「果林さんにもすっごく怒られました……」
マキ「でしょうね」
ニコ「あれじゃあ、あなたはふざけた新入部員にしか見えていないでしょうし」
マキ「まあ、いいんじゃない。あの子、歩夢が入ってから前よりもやる気を出したみたいだし」
ノゾミ「そうそう、歩夢ちゃんが入部したことに意味はあるんや」
歩夢「ノゾミさん……」
ニコ「そのざまだと、出番はないかもだけどね」
歩夢「うぐっ」 ノゾミ「だけどみんな、気合入っていたね」
ニコ「新チームになってからの初勝利がかかっていたからじゃない?」
歩夢「それもあるんですけど」
ノゾミ「あるけど?」
歩夢「なんか、近いうちに大会に出られるってことで、やる気満々らしくて」
ニコ「もしかして、春に強豪が集まるエキシビションのあれ?」
歩夢「たぶんそれだと」
マキ「嘘でしょ。今の虹ヶ咲が出られる大会じゃないわよ」 歩夢「それが、選抜されたけど辞退した高校の推薦で」
ニコ「辞退した?」
ノゾミ「球宴高校の代わりってことやね」
歩夢(相変わらず謎の情報網……)
歩夢(だけど、そう)
歩夢(辞退したのは球宴高校)
歩夢(虹ヶ咲から大量に選手を引き抜いた張本人)
歩夢(その因縁の相手が、わざわざ私たちを推薦してくれて) マキ「まあ頑張りなさい」
マキ「どこと当たってもボロ負けだと思うけど」
ニコ「もうちょっと言い方あるでしょ」
マキ「仕方ないじゃない、公式戦じゃない限り歩夢もフォークを使えないし」
マキ「普通の実力でぶつかったら、全国の強豪相手に勝てるわけないでしょ」
歩夢(そっか、またフォークは投げちゃ駄目なんだ)
ノゾミ「ちなみにカードによると……」
歩夢(カード占いもするんだ)
ノゾミ「……負けた後の切り替えは大切やね」
歩夢(駄目っぽい……) 【数日後・野球部部室】
侑「春大会の予選の組み合わせ出たよ!」
果林「早いわね」
歩夢「トーナメント形式だっけ?」
しずく「予選と決勝に別れていて」
かすみ「予選はリーグ形式、3チーム中2チームが決勝トーナメントに進出できるんです!」
歩夢「へぇ」
愛「ウチの目標は予選通過だよね」
侑「正直、予選の2試合で経験が積めればいいかなって感じだけど」
璃奈「勝てそうな相手と、当たれた?」 侑「一応、対戦相手はUTX高校と静真高校」
かすみ「UTX高校!?」
しずく「あの名門の!?」
歩夢(いつもリアクションの大きなかすみちゃんだけじゃなくて、しずくちゃんもビックリしている)
歩夢(まあ、私でも知っているレベルの名門校だもんね……)
かすみ「うぅ、やっぱりこの大会はかすみんたちが出ていいレベルじゃなかったんです……」
璃奈「でも、UTXの野球部は廃部の噂で既存の部員が転校、新入部員もほぼ入らないという惨状らしい」
しずく「そうなの?」
璃奈「うん。2年生の村神さんと前川さんのバッテリーは強力らしいけど、後の部員には有名選手はいないみたい」
歩夢(それなら可能性はある、のかな?) 侑「あとは、この静真高校って相手」
侑「聞いたことないけど、強いのかな?」
かすみ「うーん、かすみんも知らない高校ですけど」
しずく「静岡の高校っぽいけど、野球部で有名な感じじゃないよね」
愛「うちらと同じような経緯での出場なのかな」
璃奈「調べてみる?」
侑「うん、お願い」 璃奈「……これは」
かすみ「りな子、静真について分かったの?」
璃奈「うん」
しずく「どんな高校なんですか?」
璃奈「静岡県の沼津市にある学校」
歩夢「沼津?」
歩夢(聞いたことのある地名、たぶん野球で)
璃奈「この学校、沼津にある他の高校と統合したらしい」
かすみ「沼津にある学校……」
侑「それって、まさか」
璃奈「うん。浦の星女学院。去年の夏の全国大会優勝校」
歩夢「なっ」 歩夢(廃校が決まった浦の星女学院、Aqoursの快進撃)
歩夢(野球を知らない子でも、同年代なら知っているような有名な話)
侑「確か、浦の星は最上級生が少ないチームだったよね」
璃奈「うん、だから去年の優勝チームのレギュラーメンバーが半分以上残っているみたい」
歩夢「半分以上……」
璃奈「主要メンバーの簡単なデータも出せた」
愛「流石はりなりー! 仕事が早いね!」
侑「今、説明してもらえる?」
璃奈「うん」 璃奈「打線でまず要注意なのが、『赤い悪魔』と称させる2年生、黒澤ルビィ」
歩夢(わっ、真っ赤な髪……)
璃奈「三拍子揃った通算打率が5割を超える強打者であり、盗塁も上手」
歩夢「5割……」
歩夢(侑ちゃんの通算打率より高い?)
かすみ「か、かすみんだってそれぐらい」
しずく「中学時代のかすみさんの打率は半分の2割5分前後だよ」
かすみ「あ、脚の速さは負けてないよ」
愛「かすかす、盗塁苦手だったよね?」
かすみ「うぐっ」 璃奈「次に自称『堕天使』、津島善子。出塁率6割越え、長打力もある」
璃奈「独自の理論を持っていて、ネットの配信者としても有名」
かすみ「しゅ、出塁率ならかすみんも」
璃奈「かすみちゃんは悪い意味でのフリースインガー。ほぼ打率=出塁率」
かすみ「ぬぐぐぐぐ」
璃奈「この2人は守備力も高い、たぶん静真高校の中心選手」
璃奈「あとは、なぜか北海道から静岡の静真に転校してきた鹿角理亞」
璃奈「去年の夏の全国大会の準優勝、姉妹バッテリーとして話題になった鹿角姉妹の妹」
璃奈「身体は小さいけど抜群の身体能力、本職はキャッチャーだけど今はショートとしてプレーしているらしい」
かすみ「ほう、身体能力おばけのかすみんと同じタイプですね」
愛「うーん、どちらかといえば近いのはゆうゆだね」 かすみ「ちょっとー、さっきからかすみんが微妙な選手みたいじゃないですか」
しずく「そ、そんなことないよ。かすみさんにも良いところは、ところは……」
かすみ「なにか言って!」
愛「これだよこれ、かすかすはムードメーカー的なポジション」
かすみ「それ永遠の秘密兵器と大して変わらないじゃないですか! あとかすかすじゃなくてかすみんです!」
璃奈「……」ムゥ
歩夢(珍しく璃奈ちゃんの考えていることが分かる……)
歩夢「ご、ごめんね、璃奈ちゃん。かすみちゃんも悪気があって話の腰を折っているわけじゃないと思うの」
璃奈「……続けていい?」
侑「もちろん」
果林「あの子たちには後で説明すればいいでしょう」
璃奈「じゃあ、再開」 璃奈「次は守備面の重要選手」
璃奈「エースの桜内梨子」
歩夢(あ、もしかして確か私が投げるフォークの)
璃奈「球速は120前後、多彩な変化球と制球力が魅力。去年の夏から使いだしたフォークボールが決め球」
歩夢(やっぱり)
璃奈「あとは何といってもキャプテン、高海千歌」
璃奈「守備面では扇の要、高い盗塁阻止率、キャッチング技術、逆境でもめげない精神力、チームを鼓舞するキャプテンシーが売り」
璃奈「打撃面では特筆すべき点はないけど。敢えて言うなら、かすみちゃんよりは高い打率、かすみちゃんよりは高い長打力」
かすみ「ちょっとりな子!」
歩夢(うん、璃奈ちゃん結構根に持ってるみたい) 璃奈「選手層は数的な意味では薄いけど、名前が上がらなかった選手もレベルは十分に高い」
璃奈「大本命の音ノ木坂の対抗馬、全国でもトップクラスの力を持っている高校」
璃奈「はっきり言って、球宴高校やUTX高校よりも強敵だと思う」
侑「トップクラス……」
果林「それはちょっと、厳しそうね……」
しずく「……」
かすみ「むぅ……」
歩夢(空気、重いなぁ)
愛「よく分からないけど、まあ何とかなるっしょ」
歩夢(一人を除いて) 朝の早くからの更新乙です!
前作のエピローグにてその渡辺はプロ入りしたとあったので、登場するかどうかはまだしも、出場の可能性は低そうに思える。
もしかしたら別の渡辺の出場はあるかも。 なんで曜ちゃんいないんだ?と思ったらそういうことか
前作読んでないからわからんかった
なんにせよ続きが楽しみ 果林さん不貞腐れて部活辞めるんじゃないかとヒヤヒヤしてたが残ってくれてよかった さすがに地力ではまだまだずっと果林さんの方が上そう 津島善子の出塁率6割越えとあるけど、その内訳を知ったら虹の皆、どんな顔するだろう?
自称「堕天使」だけど、実際の渾名はもしかしたら「マグネット」「爆笑生傷女」だろうし。 侑「このチームは始動したばかり、とにかく少しでも多くの経験を積むことは大事だから」
かすみ「でも、経験よりトラウマになりそうです……」
果林「やっぱり栞子ちゃんの嫌がらせなのよ」
果林「わざわざうちを推薦するなんて、手の込んだ」
愛「あはは、考え過ぎっしょ」
侑「実戦経験が乏しい選手が多いから、公式戦に近い雰囲気を掴めるだけでも大事だし」
侑「もしネガティブな意図があったとしても、覆してしまえばいい!」
かすみ「侑先輩、流石格好いいです!」
歩夢(侑ちゃん、気合入っているな) 愛「よし、じゃあ早速練習行こう!」
かすみ「おー!」
璃奈「おー」
果林「やれやれ、みんな気楽でいいわね……」
歩夢(よし、私も……)
侑「歩夢」
歩夢「侑ちゃん?」
侑「今度の大会も大事だけど、本番の夏前に果林さんに無理をさせるわけにもいかない」
侑「もし勝つのが厳しい点差になったら、歩夢にもまた投げてもらう予定だから」
歩夢「私にも?」
侑「うん、そのつもりで練習はしておいてね」
歩夢「わ、分かった」 【グラウンド】
浅希「璃奈!」キンッ
璃奈「あっ」ポロッ
今日子「璃奈! 今度の相手の打球はもっと厳しいよ!」
璃奈「うん、頑張る」
歩夢「はぁ」
歩夢(ミーティングには間に合わなかった一年生たちも合流して)
歩夢(みんなやる気いっぱいなのに)
歩夢(私はどこかフワフワしてる) 歩夢(さっきまで他人事だった)
歩夢(だけど投げるとなると)
歩夢(全国トップクラスのチーム相手に、私が?)
歩夢(考えると、凄く緊張してくる)
歩夢(侑ちゃんの言うとおり)
歩夢(夏の前に経験を積めるのは良かったのかもしれないな)
歩夢(もっと大きな緊張感に襲われるって考えなきゃだもん)
歩夢(今のうちに慣れないと) 歩夢「だけど練習かぁ」
歩夢(投げ込みたいけど)
果林「ふっ」シュッ
侑「ナイスボール!」バシッ
歩夢(複数あるからブルペンは空いているけど)
歩夢(捕手をできるのは相変わらず侑ちゃんだけ)
歩夢(そもそも手が空いている人、ほとんどいないし)
歩夢(外での時間もそう)
歩夢(ノゾミさんは、長時間プレーができない)
歩夢(マキさんはシーズン中)
歩夢(ニコさんも最近は忙しいらしい)
歩夢(また一人で壁に投げるしか……) かすみ「歩夢先輩!」
歩夢「かすみちゃん?」
かすみ「もしかして、受けてくれる相手を探していますか?」
歩夢「う、うん」
歩夢(よく気づいたな、この子)
かすみ「私が受けますよ!」
歩夢「え、いいの?」
しずく「ちょ、ちょっと、かすみさん。駄目だよ、捕手の経験ないよね」
歩夢「え、それじゃあ」
かすみ「大丈夫! ボールを捕るだけならかすみんはできます!」
歩夢(いいのかな……) つづきが来てた。90km前後くらいなら大丈夫なのかな。でもコントロールの問題もあるから危ないか 主人公サイドの選手で左投げと明示された人物は、そういえば上原が初やね。 キャッチャーは子供たちから不人気ポジションだったりするのかな 白球の人は割と間の空く人。どうしてもダメなら言ってくるので気長に待つべし。 そういえばファウルとかホームランで手をぐるぐる回す人か ◆
かすみ「歩夢先輩! そろそろいいですか?」
歩夢「う、うん」
歩夢(とりあえず肩はできたけど)
歩夢(そもそもアップの段階からミットでの捕球が怪しいというか)
歩夢(小さくて細いから、防具装備した姿があんまり似合わないかも)
しずく「かすみさん、本当に大丈夫?」
かすみ「ドンとこいです!」
歩夢(でも可愛いな……) 歩夢「じゃ、じゃあ行くよー」シュッ
かすみ「っと」ポロッ
歩夢(ありゃ)
かすみ「ごめんなさい! 次お願いします」シュッ
歩夢「う、うん」シュッ
かすみ「ふんっ」ポロッ
歩夢(やっぱり、いきなりじゃ難しいのかな)
かすみ「あ、あれ、変だな……」 歩夢「かすみちゃん、最初は基本を侑ちゃんから教えてもらった方が」
かすみ「平気です! それじゃあ今、歩夢先輩が困るじゃないですか」
歩夢「でも」
かすみ「次は捕ります!」シュッ
歩夢(まあ、私のボールじゃ怪我をすることはないだろうし……)
歩夢「いくよ!」シュッ
かすみ「確か、侑先輩はこうやって――」
かすみ「こう!」
スカッ――ドスッ
歩夢「なっ!?」
歩夢(捕れずに直接身体に!?)
かすみ「っ〜〜〜〜〜」
歩夢「か、かすみちゃん!」
かすみ「か、考え過ぎていたら上手く捕れませんでした……」 璃奈「……かすみちゃん、大丈夫?」
かすみ「り、りな子」
色葉「凄い声出てたよ」
今日子「びっくりした」
かすみ「ど、どうしてみんな」
愛「かすかすが騒がしいからさ、集まってきちゃったみたいで」
璃奈「私たちも、協力する」
かすみ「で、でも、練習」 侑「かすみちゃんだけじゃない。私たちだって、歩夢の力になりたいし」
歩夢「ゆ、侑ちゃん」
侑「果林さんがさ、見ていられないから助けてあげようって」
果林「歩夢も含めてよ。全然腕をふれていないじゃない」
歩夢「そ、そうですか?」
果林「ちょっとみてあげるからこっちに来なさい」
歩夢「は、はい!」
侑「かすみちゃんは私が、とにかく基礎からね」
かすみ「侑先輩……お願いします!」
歩夢(みんながまとまっていく感じる)
歩夢(去年までとは違う)
歩夢(ちゃんとしたチームになっている、そんな気がする) 【数日後・都内グラウンド】
歩夢(今日は春の大会1回戦)
歩夢(予選リーグ初戦の相手はUTX)
バッターアウト!
かすみ「あ、あれ?」
歩夢(試合は7回表の私たちの攻撃が終わって、1−7)
歩夢(スコア、点差を考えれば、試合的には厳しい状況)
侑「ドンマイ、切り替えていこう!」
かすみ「はい!」
歩夢「頑張って!」
歩夢(だけど、雰囲気はいい感じ)
歩夢(みんな落ち着いてプレーできている証拠かな) 歩夢(一緒に練習をして、試合を観ていく中で、侑ちゃん以外のみんなのスタイルが分かってきた)
果林「やっ!」シュッ
歩夢(果林さんはストレートしか投げないけど球速は女子野球トップクラス)
カキーン!
愛「よっと」パシッ
侑「ナイス愛ちゃん!」
歩夢(愛ちゃんは野球に専念し始めたのが今年からとは思えないほど上手)
歩夢(打撃、守備ともにハイレベル。パワーと肩の強さはちょっと足りていないかも) キンッ
歩夢(璃奈ちゃんは分析力が高くて適切なポジショニングで堅実な守備が売り)
璃奈「あぅ」ポロッ
歩夢(時々簡単なボールをエラーするのは気になるけど……)
かすみ「りな子、ドンマイ!」
歩夢(かすみちゃんはどこでも守れるユーティリティプレイヤー)
歩夢(打撃はそこまで得意じゃないけど、脚が速くて)
歩夢(やっぱりムードメーカーとして、チームを支えてくれている)
しずく「璃奈さん、落ち着いてね」
璃奈「う、うん」
歩夢(しずくちゃんは……まだちょっとわからない?)
歩夢(ボールを投げるのは苦手みたいだけど、捕るのは結構上手) 『四番キャッチャー村神さん』
歩夢(あ、UTXの主砲)
歩夢(今日はこの人にホームランを含む4打点をあげられている)
カキ―――――ン!
歩夢(いい当たり――だけど押し切った?)
今日子「え、えっと」ポロッ
浅希「し、しまった!」
歩夢「あっ……」
歩夢(外野の3人は、まだまだ修行中というか、うん)
歩夢(一生懸命プレーをしているけど、UTXの打球スピードだと厳しい、のかな)
歩夢(それでも私の外野手守備より全然上手だけど……) 侑「歩夢!」
歩夢「う、うん」
歩夢(そっか、一塁ランナーが帰っちゃってこれでコールド)
歩夢(果林さん、怒って――)
璃奈「あ、あの、ごめんなさい、私たちがエラーをしたせいで」
果林「仕方ないわよ、璃奈ちゃんには試合中何度も助けられたし、最後の外野フライも難しい打球だったわ」
歩夢(果林さん)
歩夢(変わったな。何だか精神的に落ち着いたみたい) かすみ「うぅ、負けちゃいましたぁ」
歩夢「かすみちゃん、お疲れ様」
かすみ「歩夢せんぱぁい」シクシク
歩夢「よしよし」
しずく「もう、かすみさんったら」
歩夢(だけど、私は)
歩夢(今日は出番、なかったな……)
歩夢(コールド負けの試合でも機会がない)
歩夢(侑ちゃんは投げるかもって言っていたけど、やっぱりないのかな)
歩夢(それとも、次の試合の方が……) 【スタンド某所】
栞子「最終的にはコールドでしたが、どうですか?」
??「意外とやるじゃないか。聞いていたよりは良いチームだよ」
ランジュ「そう? このランジュに比べれば全員たいしたことのない選手にみえるけど」
栞子「あなたは別格ですから」
ランジュ「ふふん、当たり前よ」
??「やれやれ、ボクに言わせれば君だって穴がいっぱいの選手だけどね」
ランジュ「な、なんですって」
栞子「二人とも、喧嘩をしないでください」 ランジュ「はあ、気分を害されたわ。私は帰るわね」
栞子「そうですね、もうお目当ての試合は終わりましたし」
??「ボクはもう少し観ていこうかな。この国のベースボールについて勉強したいから」
ランジュ「熱心ね」
栞子「明日も虹ヶ咲の試合があるので、無理なくお願いします」
??「分かっているよ」
??「でも好きなんだ、野球を観るのが」
??「例えそれが、子どものお遊戯レベル、リトルリーグのような試合であってもね」 【虹ヶ咲学園野球部部室】
『落ちた落ちた!』
歩夢(試合後、侑ちゃんの提案で学校に戻って静真を分析することにした私たち)
歩夢(侑ちゃんが手に入れたという去年の夏の全国大会の決勝戦の映像)
『セーフ! セーフ! サヨナラです!』
『浦の星女学院! 最初で最後の夏大会で優勝という奇跡を起こしてみせました!』
歩夢「……凄い」
歩夢(侑ちゃんが手に入れたというのは、去年の夏、全国大会の決勝戦の映像)
歩夢(そこに映っていたのは、私が知っていた野球とはまるで別の競技)
璃奈「……」
果林「……」
歩夢(みんな、声も出せないみたいで)
愛「……改めて映像で見ると、ヤバいなぁ、これ」
歩夢(愛ちゃんですら、こんな状態) 侑「レベル、高いよね」
歩夢「うん」
歩夢(正直、今の私たちではまるで勝てる気がしない)
歩夢(大人と子ども、それぐらいの差がある)
果林「ねえ、少し巻き戻してもいい?」
果林「浦の星のエースの投球、観たいのよ」
侑「果林さん、その投手はみても」
歩夢(そう、エースの渡辺曜さんは静真にはいないはずなのに)
果林「分かっているわ。だけど、ちょっと気になることがあるのよ」 かすみ「はぁ、去年も生中継で観たけど、改めても……」
しずく「ちょっと、想像もできない世界の人たちだね」
侑「自分だけで観たときは試合展開に興奮して気づかなかったけど、試合前に、マズかったかな。」ヒソヒソ
歩夢「うーん。でも知らずに挑むよりはよかった、かも?」ヒソヒソ
愛「まー、これはもう当たって砕けるしかないっしょ」
璃奈「……うん」
しずく「とにかく明日、精一杯頑張りましょう」
歩夢「う、うん」 【翌日・球場付近】
歩夢「あわわ、遅刻遅刻」
歩夢(今日、投げるかもしれないと考えたら、緊張で眠れなくて)
歩夢(もー、侑ちゃんも起こしてくれてもいいのに……)
歩夢(現地集合とはいえ、せっかくお隣なんだから)
歩夢(昨日、一緒に行く約束をし忘れちゃったのがいけなかったかなぁ)
歩夢(時間――一応大丈夫そう? 場所は……)
??「しまったぁ、迷ったずらぁ……」
??「こ、ここはどこだろう」 歩夢(あれ、どうしたんだろう)
歩夢(可愛い2人組、制服を着ているから、一応高校生みたいだけど)
歩夢「あの、大丈夫?」
??「え、えっと」
??「お、落ち着くずら」
歩夢「えっと……」
??「あ、あの、この地図の場所、この道をまっすぐで合っていますか?」
歩夢「ここは……」
歩夢(私の目的地と同じ球場、だよね) 歩夢「うん、大丈夫だと思うよ」
??「ほ、本当ですか」
??「良かったねルビィちゃん、間に合ったずら」
歩夢「えっ」
歩夢(ルビィ、ちゃん)
歩夢(赤い髪、目的地が球場)
歩夢(もしかして、この子が打率5割の)
ルビィ「あ、あの、ルビィの顔に何か付いていますか?」
歩夢「う、ううん、別に」
歩夢(もっと鬼みたいな子をイメージしていた……)
歩夢(というか、同級生に見えないぐらい可愛い)
ルビィ「ありがとうございました――急ごう、花丸ちゃん!」ダッ
花丸「ま、待つずら〜」ダッ 歩夢(行っちゃった……)
歩夢(って、私も早くいかないと)
歩夢「えっと、集合場所は」
?「あゆむー、ちょっと待って!」ダダダ
歩夢「ん?」
歩夢(この声と走ってくる足音は)
侑「よっしゃ、セーフ!」
歩夢「あれ、侑ちゃん」
侑「おはよう!」
歩夢「ギリギリだね」
侑「いやー、あの強敵に相手にすると思うと、トキメキでなかなか眠れなくてさ」
侑「歩夢も起こしてくれればよかったのにー」
歩夢「えっと、実は私も遅刻で」
侑「え、そうなの? お揃いだ!」
歩夢(侑ちゃんとお揃いは嬉しいけど)
歩夢(遅刻じゃ喜べない、かな?) 果林「遅いわよ、2人とも」
歩夢「ごめんなさい」
愛「大丈夫、前の試合が長引いていて、まだ時間はあるっぽいから」
侑「よかったー、キャプテンが遅刻じゃ洒落にならないよね」
かすみ「そうそう、今日はかなりの数のお客さんがいるらしいですよ! もしかしたら満員かもだって」
果林「私たちじゃなくて、静真効果だけどね」
しずく「き、緊張するね」
璃奈「平常心、大事」 歩夢(でも)
歩夢(満員のお客さんの前でプレー、考えただけで……)
璃奈「歩夢さん、大丈夫?」
歩夢「へっ?」
璃奈「緊張、しているみたいだったから」
歩夢「あ、あはは、ばれちゃった?」
璃奈「そういう時は私みたいに無表情でいると、平常心を取り戻せるよ」
歩夢「へっ」
歩夢(これ、璃奈ちゃんなりのジョークなのかな)
歩夢(緊張をほぐしてくれようとして。いい子だな) 侑「もう全員集まっているよね?」
果林「ええ」
侑「よし、それじゃあ1回状況を整理しよう」
侑「上位2チームが勝ち上れるリーグ戦の2試合目」
侑「初戦に敗れているから、負けた時点で私たちの敗退は決定」
愛「だね」
侑「静真は勝てば突破が確定の試合、日程を考えても相手はエースの桜内さんが登板するはず」
果林「そうね、他のメンバーもレギュラーを持ってくるでしょうし」 侑「その時点で厳しい戦いになるけど、私は突破を諦めたくない」
侑「だから、今日の先発は予定通り果林さんにお願いします」
果林「ええ」
侑「それで、状況をみてリリーフで歩夢が投げる予定です」
歩夢「う、うん」
かすみ「おお、歩夢先輩が!」
愛「おっ、歩夢もついに本格的なデビューか」
璃奈「それで、緊張していたの?」
歩夢「ま、まあ」 侑「打順はこれで」
1:三・かすみ
2:二・璃奈
3:捕・侑
4:投・果林
5:遊・愛
6:一・しずく
7:右・色葉
8:中・今日子
9:左・浅希
果林「概ねいつもどおりね」
しずく「まあ、変えられるほど層が厚いわけではないすから……」
侑「歩夢が投げる時は果林さんがライトに入る形でお願いします」
果林「ええ」
侑「初戦の第2球場と違って、今日はプロの試合もおこなわれる第1球場」
侑「勝手が違う部分もあるはずですけど、少しずつ慣れていきましょう」 愛「ちなみに相手のメンバーとかは分からないの?」
侑「静真高校についての情報はちょっと」
侑「新チームになってから、記録の残る試合に出るのは初めてらしくて」
かすみ「私も調べてみたんですけど、練習試合をした程度の噂しかつかめなくて」
しずく「あの浦の星の、新チームの初陣。かなり注目されそうですね」
侑「いやー、トキメキが止まらないよね!」
果林「ふふっ、そうね」
歩夢(いい感じ、みんな気持ちをうまく整理できているみたい)
かすみ「あ、前の試合、終わったみたいですよ」
侑「じゃあ、みんな準備して」
歩夢「うん」
侑「頑張ろうね、みんな!」
「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」 キリが良いのでこの辺りで
長期間の保守ありがとうございました。
かなり久しぶりの投稿になってしまって申し訳ないです
時間は基本的に今日のように深夜になると思いますが、更新できるめどが立ったのでゆるりと再開していこうと思います。 物語が進んできたので、選手やチームについてなど時々設定を載せていこうと思います。
とりあえず今日は対線チームの簡単な紹介を。
UTX学園
強豪校だが、翌年度からの野球部の新規部員募集の停止が決定。
既存の部員の多くが転校し、非常に厳しい状況に立たされている。
エースの前川と主砲でもある捕手の村神が中心選手。
静真高等学校
沼津にある高校。
学校としてスポーツに力を入れているが、野球部は新設、強化のために廃校となった前年度夏の優勝校、浦の星女学院の生徒を受け入れた。
最強の高校である音ノ木坂の打倒を目標に掲げ、全国優勝を目指している。 続きが来てた、嬉しい。今のところ、部員が抜けてるUTXにもボコボコにされるくらいのチーム力なんだね。これからどうなるのか楽しみ UTXは現1年生が主力か?「白球」のころの1、2年生部員は何処に去ったかにも触れられるのか、どうか。 当時の3番セカンドだった田山などはプロ入りもありそう。 【球場内】
歩夢「わぁ」
歩夢(初戦と会場が違うとは聞いていたけど)
侑「おー、今日は流石に大きな球場だね」
歩夢「お客さんも、いっぱいだね」
侑「最大で3万人以上入るらしいからね」
歩夢「3万……」
歩夢(私のスクールアイドルのライブ、100人集まればいい方なのに)
歩夢(目の前にしても、ピンと来ないぐらい大きな数字) 侑「ちなみに、私たちの夏の地区予選は決勝の会場もここ」
歩夢「アキバドームじゃないんだ」
侑「一応、全国大会専用だからね」
愛「つまり今日は夏の決勝の予行練習だね!」
色葉「おー、愛先輩強気!」
璃奈「流石愛さん」
歩夢「だ、だね」
歩夢(思っていても、なかなか口に出せないようなこと)
歩夢(やっぱり愛ちゃんは凄いな) かすみ「というか、みてください!」
歩夢「かすみちゃん?」
かすみ「スタンド! 音ノ木坂が来ていますよ!」
璃奈「え、本当?」
かすみ「うん! あの小さい人、あの矢澤こころさん! 隣に有名なエースの人も!」
しずく「わっ、本当だ!」
歩夢(矢澤こころさん)
歩夢(確か侑ちゃんの一つ上の年代別代表の正捕手)
こころ「……」
歩夢(あれ、どこかで見覚えがあるような……)
歩夢(日本代表捕手と知り合い、なわけがないけど) 愛「有名人なんだ、どうしてこの試合に来たんだろう」
璃奈「きっと偵察」
果林「偵察……」
かすみ「やっぱり、この可愛いかすみんの」
璃奈「静真高校の」
しずく「ですよね」
かすみ「最後まで言わせてよ!」 侑「だけど、スタンドを見回すと確かに見覚えのある人がちらほら」
愛「みんな偵察?」
侑「それはもちろんだけど、他にもスカウトとか」
歩夢「スカウト……」
しずく「桜内さんとか、プロ注目の選手もいますもんね」
歩夢「なるほど」
歩夢(侑ちゃんが目当ての人もいるのかな)
歩夢(まだ二年生だけど、来年を見据えてとか)
かすみ「あれ、あの人……」
しずく「他にも誰かいたの?」 ???「……」
侑「あの歩夢に少し似ているお団子ヘアの人」
しずく「確か、今度組まれる高校日本代表のコーチの」
かすみ「つまり、ここでアピールできればかすみんにも代表のチャンスが!?」
歩夢(それって、侑ちゃんにとっては大きなチャンス?)
歩夢(ここでアピールできれば、代表に入れるかもしれない)
歩夢(……私も、少しでも頑張って貢献しないと) 〔春季女子野球大会 グループA第2戦〕
【静真高等学校VS虹ヶ咲学園】
先発メンバー
先攻:静真
1:二・黒澤ルビィ
2:中・津島善子
3:遊・鹿角理亞
4:捕・高海千歌
5:投・桜内梨子
6:三・松浦果南
7:右・渡辺月
8:左・むつ
9:一・国木田花丸
後攻:虹ヶ咲
1:三・かすみ
2:二・璃奈
3:捕・侑
4:投・果林
5:遊・愛
6:一・しずく
7:右・色葉
8:中・今日子
9:左・浅希 短めですがここまでで
また設定を少しだしておきます
年間のスケジュール
春に強豪が集まるエキシビション的な大会。決勝は神○球場(形式は3チームのリーグ戦を複数→各リーグの上位2校でトーナメント)
夏に予選と全国大会。決勝はアキバドーム(形式は男子の甲子園大会と同様)
秋に冬の全国大会予選(都道府県→地区大会の上位校)
冬にもう一度全国大会。会場は全戦アキバドーム(出場校の少ない春の甲子園的な内容) 続き来てた。歩夢は今はチームのためとか野球が好きとかより、やっぱり侑ちゃんのためというのが優先なんだね。>>1を見ると報われるかわからないけど。他の気持ちもこれから強くなっていくのかな 【一回表:静真0−0虹ヶ咲】
侑「基本的な部分の確認ですけど」
果林「ええ」
侑「静真はチーム打率の高いチームですが、長打は少ないです」
侑「基本はストレートの威力で押し込む感じでいいですけど……」
果林「予想外の人がいたわね」
侑「はい」
果南「ルビィちゃん! 積極的にいこう!」
侑「あの人、三年のはずだったんですけど」
果林「どうしてここにいるのかしらね……」 侑(松浦果南さん)
侑(浦の星時代の主砲、直球にめっぽう強い選手)
侑(ストレートしか投げられない果林さんには天敵)
侑(普通に考えれば、留年だとしても試合に出られないと思うけど……)
果林「まあ、彼女は今日6番でしょ」
果林「気にし過ぎても仕方ないわ」
侑「そうですね」
侑「上位打線、しっかり抑えて勢いをつけましょう」
果林「ええ」
歩夢(普段はピリピリしがちなのに)
歩夢(試合になるとちゃんと息が合うんだよね、あの2人) 『一番セカンド黒澤さん』
ルビィ「よ、よろしくお願いします」
侑(さて、いきなり要注意の打者)
侑(生で見ると映像より真っ赤、派手な髪色)
侑(なるほど、これで赤い悪魔……)
果林(でも悪魔というより小悪魔ね)
侑(身長の割にがっしりとした身体つき)
侑(だけど、去年のデータからすれば長打力はあまりないはず) プレイボール!
侑(とりあえず高めにストレート)スッ
侑(果林さんの球威で押し込めば……)
果林(ええ)シュッ
侑(よし、良い球――)
ルビィ「えいっ!」ブンッ
侑「えっ」
侑(スイング、はやっ――) カキ――――――――――――ン!!!
果林「なっ」
侑「ヤバッ」バッ
今日子「か、果林先輩のボールを引っ張って――」ダッ
色葉「駄目だ、これは……」
しずく「う、うそ」
歩夢「ほ、ホームラン……」
歩夢(あの可愛い子が)
歩夢(果林さんのストレートを……) 花丸「ルビィちゃん、ナイスバッティングずら!」
ルビィ「えへへ、ビックリしたよぉ」
千歌「流石ルビィちゃん!」
歩夢(笑ってる)
歩夢(ホームラン自体、女子野球では打てる人なんてほとんどいないはずなのに)
歩夢(まさか、まさか)
歩夢(これが全国優勝チームの実力……) 侑「果林さん!」
果林「ゆ、侑……」
侑「ごめんなさい、不用意でした」
侑「もっと慎重に攻めるべきだったのに、私……」
果林「……仕方ないわよ、データにもあの子がホームランを打つなんてなかったし」
果林「いや、でも、まさか、ホームランなんて」
侑(マズイ、動揺している)
侑(せめて私だけでも落ち着かないと)
侑(このまま流れを完全に持っていかれてしまいかねない) 『二番センター津島さん』
善子「私の出番ね!」
侑(今度は出塁率6割の……)
善子「ふっ、この新しく開発した新フォーム。ア○キやウ○モトを参考にコンタクト率を上げる為に――」
侑(ひとりごと? 不気味だ……)
侑(この人は確か長打力もある)
侑(とりあえず外で、様子を見て)スッ
果林(そうね)コクッ 果林(落ち着きなさい、私)
果林(ホームラン、打たれた記憶なんてほとんどないけど)
果林(全国上位の相手なら、不思議な現象ではないはず)
果林(こんなことで動揺していたら駄目)
果林(だけど……)
『カキ――――――――――――ン!!!』
果林(駄目よ、切り替えなきゃ)シュッ
侑「あっ」
ドスッ
侑(で、デッドボール……)
果林(抜けた……) 侑「あ、あの、すみません」
善子「へ、平気よ、慣れているわ……」
侑(慣れているって、果林さんのボール)
千歌「出た! いつもの!」
花丸「善子ちゃんの得意技ずら!」
善子「技じゃないわよ!」
侑(あの様子だと、大丈夫そうかな)
侑(そういえば、全国大会の最多死球記録持ちだっけ……)
侑(だけど、状況はマズいよ) 『三番ショート鹿角さん』
理亞「まったく、騒がしいんだから」
侑(鹿角理亞)
侑(昨年の夏の準優勝校、聖心女子の主力)
侑(私の同年代を代表する選手)
千歌「……」ブンッ
侑(次打者の高海さん)
侑(四番に置かれた意図は分からないけど)
侑(打力や鹿角さんの走力、チームの実力差を考えれば、送りバントはない) 侑(データ的には、ややパワー不足気味ではあるはずだけど)
侑(この人も進化しているかもしれない)
侑(低めで様子を見て)
ボール
果林「くっ」
侑「いい感じですよ」シュッ
侑(見られた……)
侑(だけど惜しかったし、もう一球)
ボール
侑(さっきより外れた……) 侑(果林さん、ブルペンでは調子が良かったけど)
侑(動揺しているせいか、細かい制球までは難しそう)
侑(怖いけど、当初の予定通り押し込むしかないか)
果林(思い切り!)シュッ
侑(よしっ、良い球)
理亞「くっ」ブンッ
カキン!
侑(押し込んだ――けど)
侑(レフト、ライン際に――)
かすみ「落ち――た!」 浅希「や、やばっ」
侑(レフト、対応が少し遅れた)
理亞「っ」ダッ
侑(サード、狙った!)
侑「三つ、急いで!」
愛「こっち!」
浅希「え、えいっ」シュッ
愛「くそっ」パシッ
愛「舐めるなっ」シュッ セーフ!
理亞「ふぅ」
かすみ「ギリギリッ」
歩夢(レフト線の打球なのに、スリーベース……)
果林「くっ」
侑「ドンマイ! いい球はきてます!」
侑(捕ってからはいい連携だったのに)
侑(鹿角さんが速すぎる)
侑(これで2−0)
侑(不運ともいえるけど、上手くやられた……) 『四番キャッチャー高海さん』
千歌「よしっ、チャンスだ!」
侑(打率は低いけど、勝負強い打者)
千歌「打つぞ〜」ブンッ
侑(なんかワザとらしい……)
侑(スクイズの可能性も0じゃないけど)
侑(やらせてもいい、何でもいいからアウトが欲しい)
侑(これまでの三人に比べたら打力は数段劣るはず)
侑(とにかく、ストライクゾーンに)
果林(ええ)シュッ カキーン!
侑(少し浅いセンターフライ、だけど)
今日子「やっ」パシッ
理亞「!」ダッ
セーフ!
侑(鹿角さんには関係ないか)
侑(でも一つアウトは取れた)
歩夢(これで落ち着けるかな) つづき来てた。エキシビジョン的な位置付けで、公式大会じゃないから果南ちゃんも出場できるということでいいのかな ア○キやウ○モトのフォームとか当たる気満々じゃねーか 1回表、一死二塁。3点ビハインドで次打者は5番桜内。
6番までは回りそう。そこで松浦がなぜここに居るかが明らかになるか。 オオタニサン!
の実況の人ってもう引退したのだっけ。 『五番ピッチャー桜内さん』
梨子「朝香さん」フリフリ
歩夢(相手の人、果林さんに手を振ってる)
歩夢(知り合いかな?)
果林「……」ペコッ
歩夢(果林さん)
歩夢(あれで結構恥ずかしがり屋だって最近気づいた) 果林「ふっ」シュッ
侑(あ、ちょっと甘い)
侑(だけど――)
カキン
愛「オーライ!」パシッ
アウト!
歩夢「ショートフライ!」
歩夢(これでツーアウト!)
侑(だけど、問題は次) 『六番サード松浦さん』
果南「ランナーなしかぁ」ブオン
侑(うわぁ、凄いスイング)
侑「どうしましょうか」
果林「そうねぇ」
侑「なにか、遅めのボールも投げて球速差をつけるとか」
果林「それもいいけど、変化球じゃ駄目かしら?」
侑「変化球? だけど果林さんは」
果林「カーブ、ちょっと試してみたいのよ」
果林「いいでしょ、普通に投げても多分打たれるんだし」
侑「まぁ……」
侑(ここで揉めても面倒だし)
侑(最悪、緩急にはなるかな) プレイ!
果南「ストレート♪ ストレート♪」
侑(テンション高いな)
侑(ここまで露骨に表に出る人は初めてかも)
侑(とりあえず、カーブで)スッ
果林(よし、サイン出たわね)
果林(みてなさい)
果林「やっ」シュッ
侑(あっ、甘い、変化もコースも)
果南「えっ」フルン コキン
侑(ファーストフライ!)
しずく「オーライ」パシッ
アウト!
侑(危ない球だったけど、全く頭になかったのかな)
侑(完全に崩されてくれた)
果林「ふー、危なかったわね」
侑「ナイスピッチです!」
侑(うーん、ストレートしか球種がないのは研究されているみたい)
侑(今の打席は逆に功を奏したっぽいけど) 歩夢「果林さん、ナイスピッチです」
果林「駄目駄目、3失点よ」
歩夢「あの流れを3点で止められたんだから十分ですよ」
果林「まあ、そう考えるべきかしらね。ありがとう」
侑「カーブ、いつの間に覚えたんですか?」
果林「浦の星の映像を観たとき、渡辺曜のカーブが気になってね」
果林「参考にして投げてみたら、結構上手くいったのよ」
歩夢「参考に……」
歩夢(見ただけで変化球を投げられるようになるなんて)
歩夢(やっぱり果林さん、凄い人なんだな) 侑「もー、それならもっと早く言ってくださいよ」
果林「ふふっ、ごめんなさい」
果林「変化球は極力投げたくなかったし、どうせなら驚かせたくて」
侑「次の回からは、少しカーブも混ぜていきましょう」
侑「まだ実践に使うのは厳しそうですけど、緩急にはなりますし」
果林「そうね」
侑「なんとか夏までに使えるようになれば、大きな武器になりますね」
果林「ええ、夏までには……」 『二番セカンド天王寺さん』
歩夢「って、あれ!?」
果林「かすみちゃん、もう凡退しているわね」
かすみ「うぅ、歩夢せんぱーい」
歩夢「ご、ごめんね、ちゃんと見れていなかったんだけど、どうしたの?」
かすみ「桜内さんの変化球、打てないですよあんなのー」
梨子「……」シュッ
ストライク! 歩夢「今の、スライダーかな」
歩夢(凄い変化)
かすみ「あれが決め球じゃないんだからあり得ないです!」
かすみ「私が三振した最後のフォークなんて、視界から消えるレベルでしたよ……」
歩夢(あ、例のフォーク)
歩夢(参考にする為にも、ちゃんと見ておかないと)
愛「じゃあさー、あの投手からヒットを打つためにはどうすればいいの?」
果林「比較的打ちやすいストレートを狙い撃ちするとか」
しずく「そうですね、璃奈さんも打席に入る前に言っていました」 梨子「……」シュッ
璃奈(あ、ストレート)
キンッ
歩夢「打った!」
愛「三遊間、抜け――
果南「よっ」パシッ
かすみ「嘘! 捕られた!?」
しずく「なんて反応の速さ!」
果南「こらしょ!」シュッ
ギュ―ン
歩夢「凄い送球!」
愛「あれ、だけど」
花丸「こんな捕れないずらー」
果林「酷い悪送球ね」 璃奈(……助かった)
しずく「流石は璃奈さん、バックアップが処理している間に抜け目なく二塁まで行ったね」
かすみ「内容はともかく、ランナー二塁のチャンスで――
『三番キャッチャー高咲さん』
歩夢「侑ちゃん!」
歩夢(反撃のチャンスだ!)
かすみ「お願いします、侑先輩!」
侑「うん!」
侑(ここは一点でも返したい場面)
侑(絶対に打つぞ!) 果南ちゃんのフィジカルが凄すぎて逆にマイナスになってるの草 侑(桜内さんの持ち球は、ストレート、カーブ、シンカー、スライダー、フォーク)
侑(フォークは基本決め球だけど、それ以外はどれも選択肢にある)
侑(ストレート狙いと言った手前、みんなには悪いけど)
侑(狙うのはカウントを取りに来るとき使うスライダー)
侑(かすみちゃんにはまだ厳しいかもしれないけど、私なら打てる)
侑(変化球を打てば、ストレート狙いを多少誤魔化せるだろうし)
千歌「……」チラッ
千歌(よし)スッ
梨子「……」コクッ シュッ
侑(スライダー! ちょっとボール気味だけど――)
カキーン!
かすみ「一二塁間!」
歩夢「抜け――」
ルビィ「えいっ」パシッ
侑「なっ!?」
侑(捕られた!?)
ルビィ「マルちゃん!」シュッ
花丸「ずらっ」パシッ
アウト! かすみ「う、うそぉ」
歩夢(完全に抜けたと思ったのに、セカンドゴロ……)
侑「流石に有名な選手だけあって上手いなー」
侑(だけどランナーは進塁できた)
侑(あの落差のあるフォークは投げにくくなったはず)
『四番ピッチャー朝香さん』
果林(プレッシャーのかかる場面ね)ドキドキ
愛「カリン! 頼むよ!」
果林「え、ええ」 果林(狙いはストレート、よね)
果林(私はそんな器用なタイプじゃないし、打てる球が来たら狙いましょう)
シュッ
果林(ストレート、低めのいいコースだけど――)
カキ―――ン!
侑「うわっ!」
璃奈「良い当たり」
かすみ「今度こそ左中間――」
善子「残念、ここはヨハネ!」ダダッ
善子「空中にイレギュラーはないわ!」パシッ
アウト! 果林「なっ」
侑(打つと同時に走りだして……)
善子「ふっふっふっ、流石私!」
善子「このシーンは生放送で使えるわね!」
かすみ「凄いけど、変わった子ですね」
しずく「かすみさんが言う?」
かすみ「なっ、かすみんをあんなのと一緒にしないで!?」
歩夢(きっと盛り上げ役として気が合うんだろうな……)
果林「もう、ついていないわね」
侑「今のは相手を褒めるしかないですよ」
果林「そうね」
侑(打撃内容はいい、攻撃は意外と形になるかもしれない)
侑(だけど、点は取りたかったな……) 【3回表:静真3−0虹ヶ咲】
歩夢(2回は静真の攻撃を三者凡退に抑えた私たち)
歩夢(だけど3回)
ルビィ「……」ウユウユ
善子「ふっ」ギラン
歩夢(1・2番の連打でノーアウト1・3塁)
歩夢(だけど)
バッターアウト!
理亞「しまった……」
果林「よしっ!」
かすみ「ナイスです果林先輩!」
歩夢(三振を取ってワンアウト) 『四番キャッチャー高海さん』
千歌「お願いします!」
侑(もう失点はしたくない……)
侑(警戒はして)
果林(ええ)
ボール
侑(やってこないかな)
侑(荒れ球、剛球)
侑(果林さんのボール、スクイズは容易じゃない)
侑(気にし過ぎるより)
ストライク!
千歌「……」 侑(カーブは6番以下までは使うのが怖い)
果林(とにかくストレート!)シュッ
千歌「っ」カキン!
ファール!
侑(追い込んだ)
侑(ここを切れれば)
果林(小細工は抜き、直球で!)
ルビィ「!」ダッ
かすみ「走った!」 果林(スリーバントスクイズ!?)シュッ
侑(ここで!?)
コンッ
侑(う、うまっ)
侑(転がって打球は死んでいる、ホームは無理)
侑「ファースト!」
果林「くっ」シュッ
アウト! 歩夢(アウトは取れたけど)
侑(失点、か)
ルビィ「千歌ちゃん、ナイス!」
千歌「えっへん、上手いでしょ〜」
果林「侑」
侑「すみません、やられました」
果林「まだピンチは続いている、切り替えていきましょう」
侑「はい」 【4回裏:静真6−0虹ヶ咲】
『二番セカンド天王寺さん』
しずく「璃奈さん、頑張って」
璃奈「うん」
歩夢(3回表、結局桜内と松浦さんにもタイムリーが出て点差は6点)
歩夢(あの場面、松浦さんが三塁を狙って憤死してくれたのは助かったけど)
歩夢(私たちの攻撃は、初回を除いて三者凡退)
歩夢(厳しい状況になってきた)
歩夢(のだけど)シュッ かすみ「歩夢先輩! いい感じですよ!」パシッ
歩夢「……」
歩夢(3回が終わった後、侑ちゃんから言われた)
歩夢(4回までに点を取れなければ、5回から私が投げると)
歩夢(準備をしておくようにと)
かすみ「歩夢先輩―」
歩夢「あっ」
かすみ「大丈夫ですか?」
歩夢「ご、ごめんね」
かすみ「緊張ですか?」
歩夢「……うん」
かすみ「スクールアイドルで舞台慣れしている歩夢先輩でも緊張するんですね」
歩夢「お客さんの数も全然違うし。野球とはまた別問題かなって」 歩夢「かすみちゃんは、初めてちゃんとした試合に出る時、緊張とかしなかった?」
かすみ「もちろんかすみんは緊張なんて――と言いたいところですけど」
かすみ「がっちがちでした、正直」
歩夢「やっぱり、みんなそうだよね」
かすみ「だけど始まってみれば案外普通にプレーできて」
かすみ「だから、歩夢先輩もあんまり悩むことはないですよ」
歩夢「そっか」
歩夢(そう言われると、少しだけ安心) 【三番キャッチャー高咲さん】
歩夢「璃奈ちゃん、アウトになっちゃったみたいだね」
かすみ「むぅ、あの投手が憎い」
歩夢「次は侑ちゃんの打席」
かすみ「もいいですけど、早く準備しなきゃですよ」
歩夢「そうだね」
歩夢(といいつつも、やっぱり気にはなる) カキ―――ン!
歩夢「打った!」
かすみ「ほ、本当ですか!」
歩夢(高々と上がった打球!)
歩夢(だけど)
善子「オーライ!」パシッ
アウト!
かすみ「うぅ」
歩夢「残念」
歩夢(惜しかったけど、これで二死)
歩夢(あとワンアウトで私の出番) 『四番ピッチャー朝香さん』
カキーン!
歩夢(初球打ち)
むつ「オーライ!」パシッ
アウト!
歩夢(スリー、アウト)
かすみ「歩夢先輩」
歩夢「うん」 歩夢「侑ちゃん」
侑「歩夢、予定通りいけるね」
歩夢「大丈夫」
果林「あとは任せたわよ」
歩夢「はい」
侑「かなり手ごわい相手だけど、頑張ろうね」
歩夢「うん」
『虹ヶ咲学園、選手の交代をお知らせいたします』
『ピッチャー、朝香さんに代わりまして上原さん、背番号10』 毎度お待たせして申し訳ないです。
次回で試合終了までは投稿できる予定なので、よろしくお願いします。 別のSSで2か月ぶりくらいに作者さんの生存報告あって、ずっと規制だったらしいから他にもそういう人いるかもね >>581
そうなのか。「ウェイティングサークル」という呼び方はあまり一般的でないのか。
回答ありがとう。 >>584
綴りは?やっぱり
on deck circleかな? on‐deck circle であってるみたいだね 両軍のダグアウトを船室に見立てた、というところかな? 打球は右中間を破った。守備側外野手が打球を処理する頃、打者走者は二塁を回り三塁へ向かおうとするところ。この時守備側投手はどこへ占位する? 悪送球や後逸に備えて三塁ベースマンの後ろに占位する、が正解。
パワプロなんかだとそのあたり再現されてないけど、ゲームソフトにそこまで求めるのは贅沢かな。
草野球レベルだと、そのあたりの動きを知らなくてぼんやりマウンドに突っ立ってるだけの投手をたまに見かける。
今回も回答してくれた人、ありがとう。 部活動とかで教わってないとそういう動きは知らない人が多そうだね さて、作中の上原歩夢はどこまで練習が進んでいることやら?
次回更新で初登板のはずだが、まだかいのぅ。 作中の上原歩夢は左投げである旨、明示されている。一塁への牽制球なども取り上げられるのだろうか?
コピー元の桜内梨子の利き腕は特に明示されていなかったように思うが、勘違いかな? 最後の更新からもうすぐ2ヶ月かよ
ここまで保守られるSSもすげえな
作者が失踪するSSは最近では1ヶ月程保守されたら落ちてるのに 3週間待ってやっと更新きたSSも最近あったから希望は捨てたくない 同じ作者さんが以前も長く中断したことあるけどエタったことはないということなので期待はしてる >>662
もうすぐ2ヶ月じゃなくてもうすぐ3ヶ月だぞ
2ヶ月はとっくに過ぎた 始まったの半年前ってマジかよ…
体感2ヶ月くらいだったわ >>1000まで後200レスちょっと、ファイトだよっ! 振り返ってみると作者の人、一度エタってるのでは?
「グラウンドをかけぬけろ」とかいう題名で、やはり野球もので。 日本シリーズに限っては延長12回まで試合するので、戦法に変わりがあるかどうか。 ヤクルトおめでとう
これでオリックスは日本シリーズでヤクルトに0-3か 最終更新から5カ月以上
日本シリーズも終わったしさすがにもう続きは無理かね >>846
由伸がかわいそうなのは今に始まったことじゃない。
昨シーズンまでを思えば今シーズンは野手陣は奮ったほうよ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています