歩夢「夢物語」
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ここはどこだろう。
歩夢「あのね!今日ね!すっごく楽しい夢を見たの」
「そうなんだ?歩夢はどんな夢を見たの?」
あそこに居るのは小さな頃の私だ。一緒に居るのは誰だろう?顔がぼんやりしててよく見えない。
歩夢「ん〜あれ?どんな夢だったかな?凄く楽しかったのは覚えてる」
「あはは。そっか。それは仕方ないね。目が覚めると夢の事は忘れちゃうもんね」
たぶんこれも夢なんだろうな。 >>1を見返すと、どこまでが夢なのかわからなくなってくる 様々な違いに違和感を感じつつも受け入れていたりかと思えば栞子ちゃんや侑ちゃんの事を考えると何とも曖昧だ。
彼方「それも夢だと思えば納得いくかもしれないね」
確かに夢なんていつも曖昧だ。
彼方「まっ、現実だって割と曖昧だけどね」
私は手に持っていたコップそっと置いた。 昼食を取り終え私達は侑ちゃんが所属すると言う普通科の教室に向かった。どうやら私とはクラスが違うらしい。
かすみ「失礼しまーす」
先陣をきってかすみちゃんが教室へと入っていた。
かすみ「あの〜この中に高咲侑先輩は居ますか〜?」
教室に居る人達がいっせいにかすみちゃんの方を向いた。夏休みだと言うのに結構な人数が集まっている。
果林「よく夏期講習なんかに顔出す気になるわね」
かすみ「居ませんか〜?高咲侑せんぱ〜い」
かすみちゃんの呼び掛けに教室が何故かザワザワし始めた。
かすみ「そりゃあ人気抜群のスクールアイドルですもん。かすみん!」
と誇らしげだった。 かすみちゃんの呼び掛けを受け一人の生徒が名乗り出て来た。
「あの〜」
耳に馴染んだその声、毎日見ていたその顔。
「私が高咲侑だけど…?」
紛れもなく侑ちゃんだ。まるで100年振りの再開の様だ。
侑「何か用かな?中須かすみちゃん」
かすみ「え?かすみんの事知ってるんですか?」
もしかしてと思ったけどかすみちゃんのさっきの言葉を思い出した。
侑「そりゃあ知ってるよ。有名だもん。それで…スクールアイドルの皆んなが私に何かあるのかな?」
かすみ「え?あっ…そうですね。えっと…歩夢先輩どうぞ」
かすみちゃんは私を前に押し出した。 歩夢「あの…侑ちゃん…」
思わず名前で呼んでしまった。当然だけど侑ちゃんは驚いた表情をして
侑「私の事知ってるの?歩夢ちゃん」
と言った。名前を呼ばれたが他人行儀に聞こえるのが寂しい。きっとスクールアイドルをやってる私を知っているのだろう。
侑「驚いた。同じマンションに住んでるのは知ってたけどまさか私の事を知ってるなんて」
歩夢「うん。たまに…見掛けてたから」
どうにも言い訳が苦しい様な気がした。
侑「そっか。私もよく見掛けたよ。声を掛けてみたかったけど迷惑かなって。私、歩夢ちゃんのステージを見て一気にファンになっちゃったから。毎日聴いてるよ!歩夢ちゃんの曲!」
その一言で私の中の感情がどっと溢れ出て来そうだった。
侑「それで私に何の用事かな?」
私は溢れ出て来そうな感情を必死に抑えていた。そのせいで声が震えていたかもしれない。
歩夢「あのね…いつも応援してくれありがとう」
侑「…それだけ?」
侑ちゃんは首を捻った。
歩夢「うん。それだけだよ。それじゃあ…もう行くね」
言葉を交わせば交わすほど懐かしい気持ちになるのと同時に侑ちゃんが私の知ってる侑ちゃんじゃないのだと確信する。それでもやっぱり侑ちゃんは侑ちゃんだった。
侑「歩夢ちゃん!これからも応援してから!頑張ってね!」
別れ際に侑ちゃんのせいで押さえつけていた感情が流れ出してしまっていた。 かすみ「まさか…あんなにあっさり見つかるとは思いませんでしたね」
場の空気に耐えかねたかすみちゃんが口を開いた。
歩夢「そうだね」
皆んなが私に気を遣っているのを感じ取れる。
璃奈「歩夢さん…大丈夫?」
璃奈ちゃんはハンカチを差し出しながら私の側に寄って来た。
歩夢「大丈夫だよ。私ね…悲しくて泣いてるんじゃないよ」
かすみ「え?じゃあ何で?」
かすみちゃんの大きな声が部室に響き渡る。
歩夢「嬉しかったの。どこに居ても侑ちゃんは侑ちゃんなんだって。例え幼馴染じゃなくても私の事を応援しててくれて」
そっかと愛ちゃんが璃奈ちゃんのハンカチを取り私の涙を拭ってくれた。
愛「じゃ、尚更帰らないと」 悲しむんじゃなくて、幼馴染じゃなくても繋がりを感じたことに喜びを感じるっていいね 続いてせつ菜ちゃんが
せつ菜「そうですね。歩夢さんには元の世界でやる事もあるでしょうから」
と言って私の肩にポンッと手を置いた。
不思議だな。また涙が出そうになる。
けど泣いてばかりもいられない。
歩夢「帰ろう。元の世界へ」 ここで、かっこよく決まった所で部室の扉が勢いよく開いた。
「聞いたよ歩夢ちゃ〜ん!!!夢を見てるんだって!!!」
誰!?!?より先に元気過ぎる子が来たなと思うのと同時に
「穂乃果。お願いだから後先考えず突っ走らないで」
この人は気苦労が絶えないんだろうなと思った。 かすみ「あれ?今日はどうしたんですか?」
どうやら同好会の皆んなとは顔見知りらしい。
せつ菜「元々今日はμ'sの皆さんと合宿の打ち合わせをする予定だったのですが。バタバタしていて先程LINEで事情を連絡した所だったんです」
「連絡貰ってビックリしたよ〜。歩夢ちゃん大変だったね〜」
この人は本当に事情を把握してるのだろうか…。 そうか、スクスタ時空ならみんなと知り合ってるんだな それよりなにより誰?
歩夢「あの…えっと…」
私の様子を見て栞子ちゃんが口を開いた。
栞子「私だけではなくμ'sの皆さんの事も分からないと言う事ですね」
「え〜…私の事も忘れちゃったの?私だよ?高坂穂乃果だよ?」
歩夢「えっと…高坂穂乃果…さん?」
「歩夢が混乱してるから」
ごめんなさいと言って穂乃果さんを宥めた。
絵里「私は絢瀬絵里。こっちは高坂穂乃果。音ノ木坂でスクールアイドル活動をしてるの。虹ヶ咲の皆んなとは活動を通じて交流させて貰ってるんだけど…せつ菜から事情を聞いて私も正直驚いてる」 どうやら彼女達は秋葉原でスクールアイドル活動をしているμ'sと言うグループのメンバーらしい。
かすみ「歩夢先輩がスクールアイドルを始めたのはμ'sとAqoursの合同ライブを見たのがキッカケだったんですよ」
そうだったんだ。この人達がこの世界の私がスクールアイドルを始めるキッカケを作った人達。
穂乃果「本当に分からないんだね」
穂乃果さんは不思議そうに私を見つめた。
果林「じゃあ歩夢は…あなたの事よ?歩夢は何がキッカケでスクールアイドルを始めたの?だってμ'sの事は知らないし…」
私がスクールアイドルを始めたキッカケは…。
歩夢「私は…たまたませつ菜ちゃんのパフォーマンスを侑ちゃんと二人で見たのがキッカケで」
私ですかと言ってせつ菜ちゃんは顔を赤くしていた。 今のところμ'sとAqoursの年代が完全に変わってるのが一番大きな違いなのかな 元の時系列的にはこの後ランジュ達が来るのかな。それどころじゃないってなりそうだけど かすみ「せつ菜先輩を見てって事は廃部騒動は無かったって事ですか?」
私はせつ菜ちゃんの方を一瞥して
歩夢「いや…あったよ」
と言ったのでせつ菜ちゃんは申し訳無さそうな顔をした。かすみちゃんはやっぱりあったんですかと言っていた。
愛「微妙な違いはあっても同じ様な事が起きてるんだね」
しずく「夢って記憶を元に構築されているって言いますからね」
これが夢だとしたらですけどとしずくちゃんは付け加えた。
それを聞いて大人しくなっていた穂乃果さんが
穂乃果「夢なら目が覚めれば終わるのかな?」
と独り言の様に言った。 確かにその通りだ。夢なら目が覚めれば終わる。
じゃあどうすれば夢から覚めるの?
かすみ「呼び掛けてみたらどうですか?お〜い!起きろ〜って」
そうは言っても…誰に向かって?
かすみ「天に向かってじゃないですか?」
果林「やってみる価値はあるかもね」
との事なので私は眠っているであろう私に呼び掛ける事となった。
歩夢「お、おーーーい!起きろーーーー私ーーーー」
ただただ私の声が部室に響くだけで恥ずかしさのあまり顔が紅潮して蒸発してしまうのでは無いかと思った。 パラレルワールドなのか、スレタイの通り夢の話なのか、気になるね
当人達にとってはどちらでも自分達の世界に変わりないだろうけど かすみ「まあ…でも…これで呼び掛けても無駄だって事は分かったじゃないですか!一歩前進ですね!」
かすみちゃんは私から目を逸らした。
絵里「夢っていつもクライマックスになると覚めるのよね。殺人鬼に襲われる一歩手前とか王子様とこれからキスするって時に決まって起きちゃうの」
絵里さんの話を聞いてかすみちゃんと穂乃果さんは
穂乃果「絵里ちゃんってそんな夢ばっかり見てるの?」
かすみ「割と乙女なんですね〜絵里先輩」
と面白がっていた。もちろん
絵里「た、例えばの話よ!」
と絵里さんは反論していた。 絵里「とにかく私が言いたのはクライマックスを作っちゃえばいいじゃないって」
クライマックスを作る?意図的に?
絵里「そう。意図的に」
かすみ「それって都合が良過ぎませんか?」
愛「関係ないんだよ。夢なら都合なんて」
でも、クライマックスを作るってどうやって? そこでせつ菜ちゃんと穂乃果さんが勢いよく同時に立ち上がった。
せつ菜「スクールアイドルと言えば!」
穂乃果「ライブだよ!ライブをやるんだよ!」
ライブをやる。そんな事考えもしなかった。
彼方「うん。文字通り夢の世界がステージで夢から覚める為のライブ!物語としてもそれなりに良いんじゃないかい?」
夢オチは禁じ手だけどねと彼方さんは笑った。
しずく「そんな事はありません。夢オチが禁じ手なんて誰が決めたんですか?夢オチでも素晴らしい作品は沢山あります!固定概念をぶち壊して最高の作品にしましょう!」
ぶち壊すなんて言葉はしずくちゃんから初めて聞いた。 果林「そうと決まれば早速準備をしましょうか。なるべく急いだ方がいいでしょう?」
璃奈「うん。ライブはどこでやる?」
エマ「屋上とか?」
話がトントン拍子に進んでいった。
栞子「屋上を使用するなら生徒会に申請をしなければいけません」
その場に居る皆んなが栞子ちゃんの方をジーッと見た。
栞子「タイミングが良かったですね。どうやら生徒会長も登校してる様ですし先生方もまだ居るでしょうから。書類は私が作成しておきます。皆さんはライブの準備に取り掛かって下さい」
さっすが頼りになると誰かが言って栞子ちゃんはちょっと照れていたと思う。 栞子ちゃんが生徒会長じゃないのか、と思ったけど自分のことを冗談めかして言ったのかな 絵里「私達も手伝うから遠慮なく言ってね」
穂乃果さんと絵里さんも手伝うと言ってくれた。
愛「よしっ!愛さんも気合いを入れていくよ!」
愛だけにと付け加えて笑いながら肩を組んで来た。
せつ菜「全力でやりましょう」
逆側からせつ菜ちゃんも肩を組んで来た。
私達は急遽ライブを開催する事になった。 気がつくともう17時頃になっていた。この時期はこの時間でもまだまだ明るい。
屋上から眺める見晴らしの良い景色はまるで夢の様。
もうぼちぼち帰る時間なのか生徒が疎らに歩いているのが見える。
ここからパフォーマンスをしてもどれだけの人が私達に気がつくのだろう?
これは誰に対してのライブなんだろうか。
愛「歩夢!準備が出来たよ!」
これは私が夢から覚める為のライブ。 かすみ「え〜制服でパフォーマンスするんですかぁ?」
後ろの方で何やらかすみちゃんが騒いでるのが聞こえた。どうやら可愛い衣装でライブをしたかったらしい。
しずく「仕方ないでしょ。時間が無かったから衣装を準備出来なかったんだよ。それともかすみさんだけ衣装でパフォーマンスする?」
かすみ「む〜それも嫌」
しずくちゃんの説得に渋々ではあるものの納得はしたらしい。
彼方「制服でもいいじゃん。一番スクールアイドルらしい衣装だよ」
確かにねと誰かが言って笑い声が聞こえて来た。
私は皆んなの元へと向かった。 愛「ライブってやっぱりワクワクするね」
愛ちゃんはなんだか楽しそうだった。
果林「なかなか全員でステージに立つ事もないものね」
かすみ「どうします?円陣でも組みますか〜?」
璃奈「それは栞子ちゃんが来てから」
噂をすればとはよく言ったものでタイミングよく栞子ちゃんがやって来た。
栞子「すいません。お待たせしました」
栞子ちゃんは屋上を使用する為に急いで生徒会長の仕事をしてくれていた。 かすみ「じゃあ早速。円陣を」
とかすみちゃんが仕切ろうとした時にピロリンと私のスマホが鳴った。
かすみ「も〜マナーモードにしといて下さいよ〜」
ごめんねと謝って私はスマホを確認した。これから元の世界へ帰ろうとしてるのになんだか笑ってしまう。
画面上の通知をタップすると見覚えの無い宛名で
「どんな歩夢ちゃんでも応援してる」
と一言だけ。そう言えば昨日届いた国際便の送り主と同じ名前だった。 栞子「良いものですね。幼馴染って」
どうやら栞子ちゃんの側から内容が見えてしまっていたらしい。
栞子「私もこんな素敵な関係性を築けたらと思います。歩夢さんとも」
思わず抱き締めたくなってしまう程可愛い事だなと思った。
私と栞子ちゃんの会話がみんなに聞こえていた様だった。
愛「さっ!ぼちぼち行こうか!」
かすみ「え?円陣は?」
愛ちゃんが私の腰に手を回して
愛「あっちのアタシによろしく頼むよ!」
と囁く。
せつ菜ちゃんの
せつ菜「さあライブが始まりますよ!」
の声を合図に私達は前に出て一列に並んだ。 屋上から眺める見晴らしの良い景色はまるで夢の様。
もうぼちぼち帰る時間なのか生徒が疎らに歩いているのが見える。
ここからパフォーマンスをしてもどれだけの人が私達に気がつくのだろう?
夏だと言うのに身体に纏わりつく空気が冷たく感じる。きっと身体が熱を帯びているせいだろう。
妙に頭が冴えて来た。
本当にこれは夢なのかと不安になる程に。
同時に五感が研ぎ澄まされる。
その時、ふと視線を感じた。
視線の方に目をやると一人の少女がこちらを見ていた。
やっぱりホッとする。
私は目を閉じて息を吸った。 目を開くと見知らぬ天井が目に入った。
頭がズキンズキンと痛む。汗が肌に纏わりついて気持ちが悪い。酷く頭が混乱している様だった。
暫くボーッとしていると
「やっと起きたね」
と声を掛けられた。
思わず誰?と聞いてしまった。 あなたちゃんとも侑ちゃんとも確かな絆を感じられていいな 「もしかして寝ぼけてる?」
そうかもしれない。
「魚座は不用意な発言に気を付けましょうって朝の占いで言っていたでしょ?」
そう言えば言っていたかもしれない。
「もう。人を家に招いておいて。寝ちゃうんだもん。イビキかいてたよ」
嘘!!?
「嘘だよ。可愛い寝顔は撮らせて貰ったけどね」 私はハッとして
歩夢「ちょっ、消して」
彼女の言葉を受けてようやく意識がしっかりとして来た。
よく見ると私のここは私の部屋だ。
「それにしてもグッスリ寝てたよ?もしかして夢でも見てた?」
歩夢「うん。すっごく楽しい夢を見たの」
「そうなんだ?どんな夢を見たの?」
歩夢「ん〜あれ?どんな夢だったかな?凄く楽しかったのは覚えてる」
「あはは。そっか。それは仕方ないね。目が覚めると夢の事は忘れちゃうもんね」
夢って目が覚めるとどうして忘れてしまうんだろう。 おつでした。最後まで雰囲気よくて、歩夢が侑のことを訪ねたあとのシーンとかライブ前のシーンとか最高でした 乙cメ*˶˘ ᴗ ˘˵リ 侑ちゃんの存在は不滅だよ 劇場版って感じで楽しかったです
素敵な雰囲気でした 乙! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています