歩夢「夢物語」
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ここはどこだろう。
歩夢「あのね!今日ね!すっごく楽しい夢を見たの」
「そうなんだ?歩夢はどんな夢を見たの?」
あそこに居るのは小さな頃の私だ。一緒に居るのは誰だろう?顔がぼんやりしててよく見えない。
歩夢「ん〜あれ?どんな夢だったかな?凄く楽しかったのは覚えてる」
「あはは。そっか。それは仕方ないね。目が覚めると夢の事は忘れちゃうもんね」
たぶんこれも夢なんだろうな。 鳥の囀りで目が覚めた。まるでお伽話のお姫様みたいだ。
頭がボーッとするのは寝過ぎたせいか、それとも睡眠が足りなかったのか。あれ?昨日は何時に寝たんだっけ。
思考が定まらない。 ここはどこ?生まれてからずっとここに住んでるはずなのにまるで他人の部屋みたいに感じた。
酷く記憶が混乱している。
歩夢「寝ぼけてるんだ」
そう自分に言い聞かせ無理に体を起こした。
目を覚ますには太陽の陽を浴びて体を覚醒状態にシフトさせるのが一番効率良いと何かで聞いた事があった。
部屋の窓を開けて体を外へ出すと思った以上に外の空気は気持ちよく細胞が動き出す感覚だった。
ふと、隣の部屋を覗くとまだカーテンが閉まったままだった。 歩夢「まだ寝てるのかな?」
そう口にしてからビックリした。なんでそんな事を言ったのだろう。
なんだか今日は様子がおかしいみたい。
その後、リビングで朝食を食べながら朝の星座占いを見ていたら魚座は最下位だった。
「今日一日発言には気をつけましょう」
との事だった。朝から気分が下がる。 歩夢「余計な事は言わない様にしないと」
と自分を戒めオレンジジュースの入ったコップに目をやると一通の手紙が目に入った。私宛の国際便の様だ。
歩夢「これどうしたの?」
洗濯カゴを抱えたお母さん曰く昨日ポストに入っていたらしい。
歩夢「だったら昨日教えてくれれば良かったのに」 そう言いながら私は封筒の糊付けを綺麗に剥がした。
中には味気ない便箋が一枚入っているだけだった。
「歩夢ちゃん。お元気ですか?
私はこっちで元気にやってます。やっと歩夢ちゃんの居ない生活に慣れて来ました。少し寂しいけどね。
きっと歩夢ちゃんはスクールアイドルを頑張っている事でしょう。
私も歩夢ちゃんに負けない様にパワーアップするつもりなので待っていて下さい!
それじゃあ風邪引かない様に!近況報告でした」
差出人の名前は特に書いていなかったけど私の背後から手紙を覗き見していたお母さんがあの子らしいわねと笑っていた。 留学中のやり取りか。電子メールの類じゃなくてエアメールなのがちょっといいね けれど私はいまいちピンと来なかった。
それどころか何か違和感を感じていた。
その正体までは分からないし朝食を食べ終える頃には私はすっかりそれを忘れてしまっていた。 身支度を終えると私は家を出て学校へ向かった。
学校へ向かうと言っても授業がある訳ではなく部活動の為。
私はスクールアイドル同好会に所属している。
「おーい!歩夢さーん」
歩いていると背後から声を掛けられた。
せつ菜「おはようございます。歩夢さん!」
歩夢「おはようせつ菜ちゃん。登校中に会うなんて珍しいね」 せつ菜ちゃんは一瞬ポカンとして
せつ菜「そうですか?結構な確率で会ってると思いますよ?」
え?そうだっなかな?
歩夢「そうだね。私何言ってるんだろう」
疑問には思ったけど私はつい話を合わせてしまった。 せつ菜ちゃんは特に気にする素振りを見せず
せつ菜「そうですか」
と一言。そのまま会話を続けた。
せつ菜「それにしても今日は天気も良いですね。新しい仲間も迎えて俄然やる気が湧いて来ますね」
歩夢「新しい仲間?」
せつ菜「栞子さんですよ」 歩夢「栞子?」
せつ菜「はい。栞子さん…」
せつ菜ちゃんの言っている事が理解出来ずにいると、彼女は困惑した表情で私を見つめていた。
せつ菜「歩夢さん。大丈夫ですか?様子が…」
歩夢「え?だ、大丈夫だよ」
せつ菜「ですが…」 歩夢「本当に大丈夫だよ。ちょっとボーッとしただけだから」
嘘だった。正直彼女の言っている事がピンと来ていなかったけどつい話を合わせ様としてしまう。
せつ菜「もし具合が悪いのであれば言って下さいね。来週はμ'sの皆さんとの合宿もありますし」
歩夢「ミューズ?」
せつ菜ちゃんの表情がさらに困惑した表情となっていた。 せつ菜「歩夢さん。やっぱり様子がおかしいですよ」
物凄く心配している。どうしよう?正直に言った方が良いのかな?でもなんて言えばいい?
そんな事を考えているとつい沈黙が続いてしまった。
「あっ!歩夢先輩〜せつ菜先輩〜!おはようございま〜す」
そんな沈黙を破る様にしてかすみちゃんが現れた。 せつ菜「あっ…おはようございます。かすみさん」
歩夢「おはよう。かすみちゃん」
声のトーンからなのか表情からなのか。かすみちゃんは何かを察した様だった。
かすみ「………なんかあったんですか?こんなに可愛いかすみんに朝から出会えたのに暗い表情して。まさか喧嘩してる訳じゃないですよね?」
なんと答えればいいのだろう。
せつ菜「喧嘩なんてしません。ただ…」 かすみ「ただ?」
せつ菜「歩夢さんの様子がおかしいんです。まるで栞子さんやμ'sの事を忘れてしまったかの様な…」
そんなストレートに説明するんだ、と思った。
かすみ「しお子やμ'sの事を忘れた?まさかそんな。どう言う事ですか?」
聞かれても困る。
かすみ「しお子の事が分からないんですか?」
歩夢「しお子って言うのは…?」
せつ菜「栞子さんの事ですよ」
かすみ「本当に分からないの?」 私は正直に言う事にした。
歩夢「うん。ごめん。なんか朝からおかしいの。ずっと頭がボーッとしてる様な感じで」
せつ菜「そうなんですか」
かすみ「なんか雰囲気もちょっと違う様な気がしますね。歩夢先輩だけど歩夢先輩じゃないみたいな気がしますね」
せつ菜「歩夢さんは栞子さんの事は分からないけど私やかすみさんの事は分かるんですよね?他の同好会のメンバーは分かりますか?」 歩夢「他の同好会のメンバー?」
せつ菜「はい。言ってみて下さい」
歩夢「愛ちゃん、璃奈ちゃん、しずくちゃん、エマさん、果林さん、彼方さん」
せつ菜「それから?」
それから?
せつ菜「まだ居ますよね?」
同好会のメンバー…。 目を閉じて皆んなの顔を思い浮かべ始める。
せつ菜ちゃん、かすみちゃん、愛ちゃん、璃奈ちゃん、しずくちゃん、エマさん、果林さん、彼方さん。
それから…
だんだんと頭がスーッとする様な感覚がすると同時に
「歩夢!」
と誰かに声を掛けられた様な気がした。
その時、パァンと花火が上がった様に光が広がってその先には声の主が私を見つめていた。
歩夢「ゆう…」
ゆっくりと視界が暗くなっていくとついに彼女顔は確認出来なくなってしまっていた。 だんだんと空気が薄くなって行く中誰かが私をよんでいた。
「歩夢さん」
「歩夢先輩!」
いつしかその声も遠くなり私はいったいどこにいるのだろうか。 誰かが私の頭を撫でている。髪を掬う様に優しく。
ゆっくりと目を開けると見知らぬ少女が私を覗き込んでいた。
「あっ、違うんです。ごめんなさい。愛さんが綺麗な髪だって言うから…つい。他意はないんです」
彼女は慌てて私にそう説明した。
微かに香る消毒液の匂いと白を基調とした部屋の作りからあぁ私は倒れたのだなと思った。
今朝あれだけの混乱状態だったと言うのに今は凄い冷静。
「もうすぐ愛さんとせつ菜さんが帰って来ると思います」 知らない人扱いされたらショックだろうなあ。全員の記憶がないならともかく一部の子だけとか 歩夢「あの…私…」
「登校中に倒れたみたいです。救急車で運ばれたんですよ。歩夢さん」
やっぱり予想は的中した。それよりも私が気になるのは。
歩夢「あの…あなたは…?」
そう尋ねると悲しそうな顔をして
「本当に分からないんですね。せつ菜の言う通り」
歩夢「せつ菜ちゃんの言う通り?」 >>87
りなりーは歩夢のチョコの本気度を見て軽く引いてるのかなw 彼女は私と目を合わせた後視線を落とした。
栞子「栞子です、三船栞子」
栞子…。確かせつ菜ちゃんが言っていた子だ。
栞子「付き合いの短い新参者の私が寂しいなんてやっぱり烏滸がましいですよね」
そんな風に言う彼女に思わず私は
歩夢「そんな事ないよ。付き合いの長さなんて関係ない」
と言ったのは彼女の表情が本当に切なくて悲しそうだったから。なんでか彼女のそんな表情は見たくなかった。そんな顔を彼女にさせたのは私なのだけれど。 栞子ちゃんは少し笑った。
栞子「ふふっ。歩夢さんって面白いですね」
私が面白い?そんな事は初めて言われた。
栞子「名前を思い出せない相手にそんな事言うなんて矛盾してますよ。おかしいです」
歩夢「いや…それは…」
栞子「分かってます。歩夢さんは優しい人ですね」 やっぱり栞子ちゃんだった。存在自体を忘れてなくても、他の子達も色々と違ってそうだから大変そう なんだか揶揄われている様な気がして少し顔が熱を帯びて来た。
栞子「矛盾なんてちょっと意地悪な言い方でしたね。私が言えた事ではないですし」
恐らく真面目な性格であろう彼女なりの自虐を織り交ぜた冗談だったのだろうけど、意味を理解出来なかった私は上手く笑えなかった。
彼女はそれに気が付いた様だった。
栞子「とても愚かな話です。生徒会長の立場を利用して自由を奪い独り善がりな考えを押し付け可能性を摘み取って居たんですから。皆んなの為にと思っていても全く正反対の事をしていたんですから。同好会だって廃部に追い込もうとしましたし矛盾以外の何ものでもありませんよね」
そんな事があったんだ。一悶着あってから同好会のメンバーになっていると言う事は落ち着く所に落ち着いたのだろう。けれど、それでもどこか少し引け目を感じているのだろうと感じ取れた。 歩夢「それでも栞子ちゃんは生徒の為に行動したんだから。その気持ちに矛盾はなかったんじゃ無いかな?」
栞子ちゃんは驚いた表情をしていた。
歩夢「どうしたの?」
栞子「いえ…余りにも呼び方に違和感がなかったので。もしかして思い出したのかと…」
言われてみれば確かにそうだ。私にとってさっきまで初対面に等しかった栞子ちゃんが記憶に刷り込まれていく、そんな感覚がした。 自分のことを覚えてない相手にも自分の過去の過ちを伝えるこの栞子ちゃんは誠実だなあ それでも違和感を覚えるのは例えるから形の違うピースを無理矢理パズルにはめ込まれた。そんな感じだった。
ズキズキと頭が痛み出す。そんな私を心配そうに栞子ちゃんは見ている。
そんな時ガチャっと部屋の扉が開いた。
「歩夢!目が覚めたんだ!心配したんだぞ」
この元気ハツラツな声は愛ちゃん。
「本当ですよ。いきなり倒れるんですから心配しましたよ〜」
それからかすみちゃん。
愛「せっつーが家の人に連絡したんだけど繋がらなくてさ。お医者さんの話を聞いてくれてるよ。それから他の皆んなは後から来ると思うよ」 歩夢「そうなんだ。心配掛けてごめんね」
愛「流石にぶちょーは飛んで来れないけどね」
部長?部長って同好会の部長?
歩夢「部長ってかすみちゃんの事?」
私の発言に愛ちゃんと栞子ちゃんはポカンとしていた。
かすみ「え?歩夢先輩はやっぱりかすみんが部長に相応しいと思うんですか?」
かすみちゃんは嬉しそうだった。
愛「いやいや。何を言ってるの歩夢?かすかすじゃかくて同好会のぶちょーは…」
頭が更にぐわんぐわんとして来て愛ちゃんが何を言ってるのか分からなかった。
途中幼馴染って単語が聞こえて来た。
私の幼馴染って……。
『歩夢ーーーー』
誰かが私を呼んでいる。 自己の確立は他者があってこそだから実際にこういうことがあったら気が狂いそう どこかで聞いた事がある声。私の大好きな声。
なんで忘れていたんだろ。
大事な人を。
侑ちゃん。
愛「歩夢!!歩夢ーーー!!!」
私を呼んでいたのは愛ちゃんだと気が付いた。
歩夢「え?あっ…愛ちゃん」
愛「急に黙るからビックリしたよ」
かすみ「大丈夫ですか?」
歩夢「ねえ。侑ちゃんは?侑ちゃんはどこにいるの?」 三人はまたキョトンとしていた。今日この表情を何回見た事か。
歩夢「侑ちゃんだよ。高咲侑」
栞子「高咲侑さん?ごめんなさい。私は存じ上げないです」
歩夢「愛ちゃんは?かすみちゃんは分かるよね?」
かすみ「えっと…どなたですか?」
愛「歩夢の知り合い?虹ヶ咲の生徒なの?」
そんな返答が来るのではないかとは思っていた。けれどはっきりと言葉にされるとショックだった。 歩夢「私の…幼馴染だよ。小さい頃からずっと一緒だった」
かすみ「いやいや。歩夢先輩の幼馴染は…」
歩夢「侑ちゃんだよ!!!」
自分でもこんな大きな声が出るんだってビックリした。かすみちゃんも思わず涙目になっている。
歩夢「あっ、ごめんね。でも…」
かすみ「やっぱり今日の歩夢先輩変です。別の人みたい」 かすみちゃんの言葉を聞いて愛ちゃんが口を開いた。
愛「まるで映画みたいだね」
映画みたい…愛ちゃんの言葉に私もある考えが浮かんだ。
「パラレルワールドですか?」
私の気持ちを代弁する様に部屋に入って来たせつ菜ちゃんが言った。
せつ菜「入るタイミングが掴めず。外で聞いていました」
との事だった。ずっと外にいたんだ。
パラレルワールド。ある世界から分岐して、それに並行して存在する別の世界。SF映画や小説でもよく題材となる。
栞子「けど。あまりにも非科学的過ぎます」 確かにその通りかもしれない。けど、そう考えると説明がつく。
かすみ「要するに目の前にいる歩夢先輩は私達の知ってる歩夢先輩じゃないって事ですか?」
栞子「あくまでパラレルワールドなんてものが存在するならですよ。すんなりと受け入れられる考えではないです」
あくまで栞子ちゃんは否定派らしい。
かすみ「仮にパラレルワールドだったとして。じゃあ、その世界にはしお子は存在しないって事ですか?」
栞子「存在しない…」
とても複雑な顔をしていた。
せつ菜「存在しないと言うよりもまだ出会ってないのかも」 スクスタとアニガサキを知ってる自分達ならともかく、栞子ちゃんの立場だと記憶障害とかの可能性を考えちゃうよね じゃあ、侑ちゃんもこの世界では私の幼馴染じゃないだけかもしれない。それとも同好会に所属していないだけかも。
じゃあ、私はどの様に同好会に入部したのだろう?
愛「その侑ちゃんって子は歩夢にとって大事な人なんでしょ?」
歩夢「うん。とても大事な幼馴染」
愛「探そうよ!」
歩夢「でも、居るかどうかも分からないのに…そもそも私がおかしくなっただけかもしれないし…」
愛ちゃんはニコッと笑った。
愛「そんな事を言ったら侑ちゃんが悲しむよ」
と言って。 スクスタ時空で侑ちゃん探すのは面白そう。いるかどうかはともかく 愛「三人は嫌?」
せつ菜「そんな訳ないじゃないですか。探しましょう!」
栞子「そうですね。ここで手をこまねいているよりはよっぽどいいかもしれません」
愛「そっか。かすかすは?」
かすみ「ん〜…仕方ありませんね。ただこれだけは言わせて下さい」
愛「どうした?」
かすみ「かすかすじゃなくてかすみんです!!!」 歩夢「なんで協力してくれるの?もしかしたら私は皆んなの知ってる私じゃないかもしれないのに…栞子ちゃんの事だって…」
栞子「私にも幼馴染を大切に思う気持ちは分かりますから。例えそれがどんな形でも」
せつ菜「それに歩夢さんは歩夢さんですよ。私達は仲間です」
愛「そうだよ。私達の知ってる歩夢じゃないから知りませんなんてそんな簡単に割り切れる程器用な性格はしてないよ」
あんな事を聞いた自分を馬鹿みたいに感じた。 かすみ「一つ疑問があるんですけど」
かすみちゃんがほっぺに人差し指を当てながら喋り出した。
愛「ん?なになに?」
かすみ「もし目の前の歩夢先輩が別の世界から来たのなら私達の知ってる歩夢先輩はどこに行っちゃったんですかね?
確かに。かすみちゃんは時々鋭い事を言う。 朝目覚めた時、私は自室のベットの上だった。そこには他の誰も居なかった。
歩夢「そう言えば私…東雲になんて住んでない」
せつ菜「え?」
歩夢「部屋も私の部屋じゃなかったし…皆んなが来てる制服も私の知ってるデザインじゃない」
違和感は覚えていた。それでも結局私はそれらを受け入れてしまっていた。
せつ菜「いよいよ分からなくなって来ましたね」 本当に分からない事だらけだ。
この先どうすれば良いのか。侑ちゃんを探し出してどうしたいのか。
結局、その日は私の体調も優れない事もあってそれぞれ帰宅する事にした。 果林「にわかには信じ難いわね」
果林さんが私の方を心配そうに見つめていた。
璃奈「でも歩夢さんはそんな嘘は吐かないよ」
果林「そんな事は分かってるわ。でもね…」
分かってる。パラレルワールドなんて突拍子もない事だって言うのは。
しずく「昨日の朝目が覚めた時から異変を感じてたんですよね?」
歩夢「うん。そうなの」
彼方「もしかしてここは歩夢ちゃんの夢の中とかだったりして。彼方ちゃんもたまに思う時あるよ。実は全部夢なんじゃないかって。子供の頃からずっと見てる夢なんじゃないかって」 せつ菜「誰でもそう言った妄想はした事、一度はありますよね」
かすみ「せつ菜先輩はしょっちゅうありそうですけどね」
確かに私もそんな事を考えた事がある。実はずっと夢の中に居るんじゃないかとか自分が映画や小説の登場人物で物語の中で暮らしているんじゃないかとか。
パラレルワールドよりかは夢で片付けた方がよっぽど現実味があるかもしれない。
エマ「でも歩夢ちゃんが見てる夢だったら私達って一体…?」 もし侑とあなたが別人なら、歩夢と幼馴染じゃない侑ということになるのかな かすみ「かすみんも夢の中の登場人物になるって事ですか?それは無いですよ。だって意識も意思もちゃんとありますから」
愛「そのセリフも夢の中のかすみんが言ってるだけだったりするかもよ?」
かすみ「…それを言い出したら」
また頭が痛くなりそう。
しずく「どうするんですか?その…高咲侑さんって人を探すにしたってどこを探しますか?」
誰しもが思って居た事をしずくちゃんが口にして皆んなが黙る。そんな空気をまるで見計らったかの様に栞子ちゃんが部室に入って来た。
栞子「歩夢さん、朗報ですよ。高咲侑さんの情報が手に入りました」 そう言って栞子ちゃんは胸に抱えた資料を突き出す様にして私達に見せつけて来た。
クールに見えてちょくちょく可愛い仕草をする子だなぁと思った。
果林「それに何か書いてあるの?」
栞子「名簿に名前が載っていました!個人情報になりますから流石に生徒である皆さんに見せる訳にはいきませんが…」
じゃあどうして持って来たのかとツッコミたかったけど。
かすみ「じゃあ何で持って来たの!!」
かすみちゃんが思っていた事を言ってくれたので私は何も言わなかった。 一度資料を戻しに行って再び戻って来た栞子ちゃんいわく。
栞子「どうやら普通科に通う二年生の様です。特に部活動や同好会に所属している様子もないみたいです」
との事だった。私の知ってる侑ちゃんと一緒だ。驚いたのは
栞子「どうやら歩夢さんと同じマンションに住んでる様ですね」
かすみ「え〜そうなの?って事は本当に幼馴染って事?でも…」
私の知ってる侑ちゃんは同好会のメンバーだ。
せつ菜「取り敢えず会いに行ってみましょう。何かヒントを掴めるかもしれません」
私達は侑ちゃんの元へ向かう事にした。 一つ誤算だったのは今が夏休みだと言う事。特に部活をやっていない生徒は登校していない可能性が高い。
ただ、補習や夏期講習で登校している可能性もあるかもしれない。
狙うのならお昼の休憩時が良いかもしれないとの事で私達は少し早めにお昼を食べる事にした。
こうなる事を想定していなかったのでお弁当を持って来て居なかったので食堂へ昼食をすませる事にした。 食堂へ向かう途中、校内をよく見ると微妙に私が今まで通っていた校舎とは違っていた。
もちろん食堂も多少の違いがあった。あまり使用した事はないけれど。
エマ「ん〜美味しい〜」
変わらないのはエマさんは美味しそうによく食べる。
璃奈「一つ気になってる事があるの」
美味しそうにご飯を食べるエマさんを横目に璃奈ちゃんが喋り始めた。ちなみに璃奈ちゃんは昔ながらのオムライスを食べている。
璃奈「自宅とか校舎が違ってたりするみたいだけど…私達には何か変化はないの?」
歩夢「皆んなに…?感じる事は…」
今の所は特に見当たらない。
璃奈「そうなんだ」
栞子「変化と言えば私と高咲侑さんの存在だけですか…」
栞子ちゃんは少し寂しそうに言った。ちなみ栞子ちゃんはミートソースのパスタを食べていた。 愛「それからぶちょーの事もだね」
私の知らない幼馴染。昨日、家に帰ってからアルバムを開いてみたけどそこに写って居たのはやっぱり侑ちゃんではなく知らない子だった。
けれど、知らない子のはずなのに妙に懐かしい気分に襲われた。写真に写る屈託のないその笑顔に心が暖まる、そんな感じだった。
果林「ねえ。その高咲さんって学校に来てるかしら?」
しずく「どうしてですか?」
果林「せっかくの夏休みだって言うのにわざわざ学校に勉強しにくるかしら?だって出来る事なら勉強なんてしたくないじゃない」
そんな事はないと思うけど。もしかしたら果林さんは少し違いがあるかもしれない。 今いる中で自分だけ忘れられてる栞子ちゃん本当につらいなあ 彼方「ねえ?侑ちゃんってどんな子なの?」
しずく「私も気になっていました」
侑ちゃんがどんな子か?私は侑ちゃんとの日々を思い返してた。
歩夢「侑ちゃんは私の幼馴染で親友で。美味しい物が大好きで……最近はコッペパンにハマってた。笑のツボが浅くてよく笑ってたな。いつも私の事を応援してくれてて…そんな侑ちゃんの事が私は大好きで…」
せつ菜「素敵な人なんですね」
そう。私は侑ちゃんの事が大好き。なのに気を抜くと侑ちゃんの存在がまるで霧が掛かった様にぼんやりとしてくる。 >>1を見返すと、どこまでが夢なのかわからなくなってくる 様々な違いに違和感を感じつつも受け入れていたりかと思えば栞子ちゃんや侑ちゃんの事を考えると何とも曖昧だ。
彼方「それも夢だと思えば納得いくかもしれないね」
確かに夢なんていつも曖昧だ。
彼方「まっ、現実だって割と曖昧だけどね」
私は手に持っていたコップそっと置いた。 昼食を取り終え私達は侑ちゃんが所属すると言う普通科の教室に向かった。どうやら私とはクラスが違うらしい。
かすみ「失礼しまーす」
先陣をきってかすみちゃんが教室へと入っていた。
かすみ「あの〜この中に高咲侑先輩は居ますか〜?」
教室に居る人達がいっせいにかすみちゃんの方を向いた。夏休みだと言うのに結構な人数が集まっている。
果林「よく夏期講習なんかに顔出す気になるわね」
かすみ「居ませんか〜?高咲侑せんぱ〜い」
かすみちゃんの呼び掛けに教室が何故かザワザワし始めた。
かすみ「そりゃあ人気抜群のスクールアイドルですもん。かすみん!」
と誇らしげだった。 かすみちゃんの呼び掛けを受け一人の生徒が名乗り出て来た。
「あの〜」
耳に馴染んだその声、毎日見ていたその顔。
「私が高咲侑だけど…?」
紛れもなく侑ちゃんだ。まるで100年振りの再開の様だ。
侑「何か用かな?中須かすみちゃん」
かすみ「え?かすみんの事知ってるんですか?」
もしかしてと思ったけどかすみちゃんのさっきの言葉を思い出した。
侑「そりゃあ知ってるよ。有名だもん。それで…スクールアイドルの皆んなが私に何かあるのかな?」
かすみ「え?あっ…そうですね。えっと…歩夢先輩どうぞ」
かすみちゃんは私を前に押し出した。 歩夢「あの…侑ちゃん…」
思わず名前で呼んでしまった。当然だけど侑ちゃんは驚いた表情をして
侑「私の事知ってるの?歩夢ちゃん」
と言った。名前を呼ばれたが他人行儀に聞こえるのが寂しい。きっとスクールアイドルをやってる私を知っているのだろう。
侑「驚いた。同じマンションに住んでるのは知ってたけどまさか私の事を知ってるなんて」
歩夢「うん。たまに…見掛けてたから」
どうにも言い訳が苦しい様な気がした。
侑「そっか。私もよく見掛けたよ。声を掛けてみたかったけど迷惑かなって。私、歩夢ちゃんのステージを見て一気にファンになっちゃったから。毎日聴いてるよ!歩夢ちゃんの曲!」
その一言で私の中の感情がどっと溢れ出て来そうだった。
侑「それで私に何の用事かな?」
私は溢れ出て来そうな感情を必死に抑えていた。そのせいで声が震えていたかもしれない。
歩夢「あのね…いつも応援してくれありがとう」
侑「…それだけ?」
侑ちゃんは首を捻った。
歩夢「うん。それだけだよ。それじゃあ…もう行くね」
言葉を交わせば交わすほど懐かしい気持ちになるのと同時に侑ちゃんが私の知ってる侑ちゃんじゃないのだと確信する。それでもやっぱり侑ちゃんは侑ちゃんだった。
侑「歩夢ちゃん!これからも応援してから!頑張ってね!」
別れ際に侑ちゃんのせいで押さえつけていた感情が流れ出してしまっていた。 かすみ「まさか…あんなにあっさり見つかるとは思いませんでしたね」
場の空気に耐えかねたかすみちゃんが口を開いた。
歩夢「そうだね」
皆んなが私に気を遣っているのを感じ取れる。
璃奈「歩夢さん…大丈夫?」
璃奈ちゃんはハンカチを差し出しながら私の側に寄って来た。
歩夢「大丈夫だよ。私ね…悲しくて泣いてるんじゃないよ」
かすみ「え?じゃあ何で?」
かすみちゃんの大きな声が部室に響き渡る。
歩夢「嬉しかったの。どこに居ても侑ちゃんは侑ちゃんなんだって。例え幼馴染じゃなくても私の事を応援しててくれて」
そっかと愛ちゃんが璃奈ちゃんのハンカチを取り私の涙を拭ってくれた。
愛「じゃ、尚更帰らないと」 悲しむんじゃなくて、幼馴染じゃなくても繋がりを感じたことに喜びを感じるっていいね 続いてせつ菜ちゃんが
せつ菜「そうですね。歩夢さんには元の世界でやる事もあるでしょうから」
と言って私の肩にポンッと手を置いた。
不思議だな。また涙が出そうになる。
けど泣いてばかりもいられない。
歩夢「帰ろう。元の世界へ」 ここで、かっこよく決まった所で部室の扉が勢いよく開いた。
「聞いたよ歩夢ちゃ〜ん!!!夢を見てるんだって!!!」
誰!?!?より先に元気過ぎる子が来たなと思うのと同時に
「穂乃果。お願いだから後先考えず突っ走らないで」
この人は気苦労が絶えないんだろうなと思った。 かすみ「あれ?今日はどうしたんですか?」
どうやら同好会の皆んなとは顔見知りらしい。
せつ菜「元々今日はμ'sの皆さんと合宿の打ち合わせをする予定だったのですが。バタバタしていて先程LINEで事情を連絡した所だったんです」
「連絡貰ってビックリしたよ〜。歩夢ちゃん大変だったね〜」
この人は本当に事情を把握してるのだろうか…。 そうか、スクスタ時空ならみんなと知り合ってるんだな それよりなにより誰?
歩夢「あの…えっと…」
私の様子を見て栞子ちゃんが口を開いた。
栞子「私だけではなくμ'sの皆さんの事も分からないと言う事ですね」
「え〜…私の事も忘れちゃったの?私だよ?高坂穂乃果だよ?」
歩夢「えっと…高坂穂乃果…さん?」
「歩夢が混乱してるから」
ごめんなさいと言って穂乃果さんを宥めた。
絵里「私は絢瀬絵里。こっちは高坂穂乃果。音ノ木坂でスクールアイドル活動をしてるの。虹ヶ咲の皆んなとは活動を通じて交流させて貰ってるんだけど…せつ菜から事情を聞いて私も正直驚いてる」 どうやら彼女達は秋葉原でスクールアイドル活動をしているμ'sと言うグループのメンバーらしい。
かすみ「歩夢先輩がスクールアイドルを始めたのはμ'sとAqoursの合同ライブを見たのがキッカケだったんですよ」
そうだったんだ。この人達がこの世界の私がスクールアイドルを始めるキッカケを作った人達。
穂乃果「本当に分からないんだね」
穂乃果さんは不思議そうに私を見つめた。
果林「じゃあ歩夢は…あなたの事よ?歩夢は何がキッカケでスクールアイドルを始めたの?だってμ'sの事は知らないし…」
私がスクールアイドルを始めたキッカケは…。
歩夢「私は…たまたませつ菜ちゃんのパフォーマンスを侑ちゃんと二人で見たのがキッカケで」
私ですかと言ってせつ菜ちゃんは顔を赤くしていた。 今のところμ'sとAqoursの年代が完全に変わってるのが一番大きな違いなのかな 元の時系列的にはこの後ランジュ達が来るのかな。それどころじゃないってなりそうだけど かすみ「せつ菜先輩を見てって事は廃部騒動は無かったって事ですか?」
私はせつ菜ちゃんの方を一瞥して
歩夢「いや…あったよ」
と言ったのでせつ菜ちゃんは申し訳無さそうな顔をした。かすみちゃんはやっぱりあったんですかと言っていた。
愛「微妙な違いはあっても同じ様な事が起きてるんだね」
しずく「夢って記憶を元に構築されているって言いますからね」
これが夢だとしたらですけどとしずくちゃんは付け加えた。
それを聞いて大人しくなっていた穂乃果さんが
穂乃果「夢なら目が覚めれば終わるのかな?」
と独り言の様に言った。 確かにその通りだ。夢なら目が覚めれば終わる。
じゃあどうすれば夢から覚めるの?
かすみ「呼び掛けてみたらどうですか?お〜い!起きろ〜って」
そうは言っても…誰に向かって?
かすみ「天に向かってじゃないですか?」
果林「やってみる価値はあるかもね」
との事なので私は眠っているであろう私に呼び掛ける事となった。
歩夢「お、おーーーい!起きろーーーー私ーーーー」
ただただ私の声が部室に響くだけで恥ずかしさのあまり顔が紅潮して蒸発してしまうのでは無いかと思った。 パラレルワールドなのか、スレタイの通り夢の話なのか、気になるね
当人達にとってはどちらでも自分達の世界に変わりないだろうけど かすみ「まあ…でも…これで呼び掛けても無駄だって事は分かったじゃないですか!一歩前進ですね!」
かすみちゃんは私から目を逸らした。
絵里「夢っていつもクライマックスになると覚めるのよね。殺人鬼に襲われる一歩手前とか王子様とこれからキスするって時に決まって起きちゃうの」
絵里さんの話を聞いてかすみちゃんと穂乃果さんは
穂乃果「絵里ちゃんってそんな夢ばっかり見てるの?」
かすみ「割と乙女なんですね〜絵里先輩」
と面白がっていた。もちろん
絵里「た、例えばの話よ!」
と絵里さんは反論していた。 絵里「とにかく私が言いたのはクライマックスを作っちゃえばいいじゃないって」
クライマックスを作る?意図的に?
絵里「そう。意図的に」
かすみ「それって都合が良過ぎませんか?」
愛「関係ないんだよ。夢なら都合なんて」
でも、クライマックスを作るってどうやって? そこでせつ菜ちゃんと穂乃果さんが勢いよく同時に立ち上がった。
せつ菜「スクールアイドルと言えば!」
穂乃果「ライブだよ!ライブをやるんだよ!」
ライブをやる。そんな事考えもしなかった。
彼方「うん。文字通り夢の世界がステージで夢から覚める為のライブ!物語としてもそれなりに良いんじゃないかい?」
夢オチは禁じ手だけどねと彼方さんは笑った。
しずく「そんな事はありません。夢オチが禁じ手なんて誰が決めたんですか?夢オチでも素晴らしい作品は沢山あります!固定概念をぶち壊して最高の作品にしましょう!」
ぶち壊すなんて言葉はしずくちゃんから初めて聞いた。 果林「そうと決まれば早速準備をしましょうか。なるべく急いだ方がいいでしょう?」
璃奈「うん。ライブはどこでやる?」
エマ「屋上とか?」
話がトントン拍子に進んでいった。
栞子「屋上を使用するなら生徒会に申請をしなければいけません」
その場に居る皆んなが栞子ちゃんの方をジーッと見た。
栞子「タイミングが良かったですね。どうやら生徒会長も登校してる様ですし先生方もまだ居るでしょうから。書類は私が作成しておきます。皆さんはライブの準備に取り掛かって下さい」
さっすが頼りになると誰かが言って栞子ちゃんはちょっと照れていたと思う。 栞子ちゃんが生徒会長じゃないのか、と思ったけど自分のことを冗談めかして言ったのかな 絵里「私達も手伝うから遠慮なく言ってね」
穂乃果さんと絵里さんも手伝うと言ってくれた。
愛「よしっ!愛さんも気合いを入れていくよ!」
愛だけにと付け加えて笑いながら肩を組んで来た。
せつ菜「全力でやりましょう」
逆側からせつ菜ちゃんも肩を組んで来た。
私達は急遽ライブを開催する事になった。 気がつくともう17時頃になっていた。この時期はこの時間でもまだまだ明るい。
屋上から眺める見晴らしの良い景色はまるで夢の様。
もうぼちぼち帰る時間なのか生徒が疎らに歩いているのが見える。
ここからパフォーマンスをしてもどれだけの人が私達に気がつくのだろう?
これは誰に対してのライブなんだろうか。
愛「歩夢!準備が出来たよ!」
これは私が夢から覚める為のライブ。 かすみ「え〜制服でパフォーマンスするんですかぁ?」
後ろの方で何やらかすみちゃんが騒いでるのが聞こえた。どうやら可愛い衣装でライブをしたかったらしい。
しずく「仕方ないでしょ。時間が無かったから衣装を準備出来なかったんだよ。それともかすみさんだけ衣装でパフォーマンスする?」
かすみ「む〜それも嫌」
しずくちゃんの説得に渋々ではあるものの納得はしたらしい。
彼方「制服でもいいじゃん。一番スクールアイドルらしい衣装だよ」
確かにねと誰かが言って笑い声が聞こえて来た。
私は皆んなの元へと向かった。 愛「ライブってやっぱりワクワクするね」
愛ちゃんはなんだか楽しそうだった。
果林「なかなか全員でステージに立つ事もないものね」
かすみ「どうします?円陣でも組みますか〜?」
璃奈「それは栞子ちゃんが来てから」
噂をすればとはよく言ったものでタイミングよく栞子ちゃんがやって来た。
栞子「すいません。お待たせしました」
栞子ちゃんは屋上を使用する為に急いで生徒会長の仕事をしてくれていた。 かすみ「じゃあ早速。円陣を」
とかすみちゃんが仕切ろうとした時にピロリンと私のスマホが鳴った。
かすみ「も〜マナーモードにしといて下さいよ〜」
ごめんねと謝って私はスマホを確認した。これから元の世界へ帰ろうとしてるのになんだか笑ってしまう。
画面上の通知をタップすると見覚えの無い宛名で
「どんな歩夢ちゃんでも応援してる」
と一言だけ。そう言えば昨日届いた国際便の送り主と同じ名前だった。 栞子「良いものですね。幼馴染って」
どうやら栞子ちゃんの側から内容が見えてしまっていたらしい。
栞子「私もこんな素敵な関係性を築けたらと思います。歩夢さんとも」
思わず抱き締めたくなってしまう程可愛い事だなと思った。
私と栞子ちゃんの会話がみんなに聞こえていた様だった。
愛「さっ!ぼちぼち行こうか!」
かすみ「え?円陣は?」
愛ちゃんが私の腰に手を回して
愛「あっちのアタシによろしく頼むよ!」
と囁く。
せつ菜ちゃんの
せつ菜「さあライブが始まりますよ!」
の声を合図に私達は前に出て一列に並んだ。 屋上から眺める見晴らしの良い景色はまるで夢の様。
もうぼちぼち帰る時間なのか生徒が疎らに歩いているのが見える。
ここからパフォーマンスをしてもどれだけの人が私達に気がつくのだろう?
夏だと言うのに身体に纏わりつく空気が冷たく感じる。きっと身体が熱を帯びているせいだろう。
妙に頭が冴えて来た。
本当にこれは夢なのかと不安になる程に。
同時に五感が研ぎ澄まされる。
その時、ふと視線を感じた。
視線の方に目をやると一人の少女がこちらを見ていた。
やっぱりホッとする。
私は目を閉じて息を吸った。 目を開くと見知らぬ天井が目に入った。
頭がズキンズキンと痛む。汗が肌に纏わりついて気持ちが悪い。酷く頭が混乱している様だった。
暫くボーッとしていると
「やっと起きたね」
と声を掛けられた。
思わず誰?と聞いてしまった。 あなたちゃんとも侑ちゃんとも確かな絆を感じられていいな 「もしかして寝ぼけてる?」
そうかもしれない。
「魚座は不用意な発言に気を付けましょうって朝の占いで言っていたでしょ?」
そう言えば言っていたかもしれない。
「もう。人を家に招いておいて。寝ちゃうんだもん。イビキかいてたよ」
嘘!!?
「嘘だよ。可愛い寝顔は撮らせて貰ったけどね」 私はハッとして
歩夢「ちょっ、消して」
彼女の言葉を受けてようやく意識がしっかりとして来た。
よく見ると私のここは私の部屋だ。
「それにしてもグッスリ寝てたよ?もしかして夢でも見てた?」
歩夢「うん。すっごく楽しい夢を見たの」
「そうなんだ?どんな夢を見たの?」
歩夢「ん〜あれ?どんな夢だったかな?凄く楽しかったのは覚えてる」
「あはは。そっか。それは仕方ないね。目が覚めると夢の事は忘れちゃうもんね」
夢って目が覚めるとどうして忘れてしまうんだろう。 おつでした。最後まで雰囲気よくて、歩夢が侑のことを訪ねたあとのシーンとかライブ前のシーンとか最高でした 乙cメ*˶˘ ᴗ ˘˵リ 侑ちゃんの存在は不滅だよ 劇場版って感じで楽しかったです
素敵な雰囲気でした 乙! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています