【再掲】 SS 麻薬取締官 黒澤ダイヤ
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私達は猟犬。
国家に繋がれ泥にまみれながら、どこまでも徹底して獲物を追い込む猟犬だ。
私達には昼も夜も存在しない。
世界を隔てる表と裏のその中間で、延々と獲物を追い求め続ける。
確かに存在する世界のその二面性を知ってしまえば、知る前にはもう2度と戻れない。
そこで、生きるだけだ。 〜9月某日 金曜 午後7時0分 名古屋某住宅街のアパートの一室〜
中東系外国人A「先日あそこの密売グループも麻取に摘発されたらしい…最近マークが厳しいな」
中東系外国人B「とりあえず今ある分だけは捌き切りたいと思ったけど、無理はしないほうがいいな。縄張りを変えよう」
中東系外国人A「ああ、そう思ってもう部屋は手配してあるんだ。今晩にでもここを引き払おう」 2人は名古屋近郊を縄張りにしている外国人系密売グループの構成員だ。
かつてに比べればかなり減ったとはいえ、未だに首都圏や、ここ名古屋等の大都市には中東系の在留外国人は多い。
その中でも違法薬物の売買で日銭を稼ぐ外国人は少なくない。
中東系外国人A「さあ、さっさと荷造りするぞ」
ピンポーン
中東系外国人A・B「!?」 2人は急な来客に驚きを隠せなかった。
当然2人はここに住んでいるわけではなく、ただ部屋を拠点としているだけだ。
他にもグループの仲間はいるが、互いを守るためにあえて拠点は知らせずにテレグラムやシグナル、場合によってはレンタル携帯での連絡しか行わない。
それなのに来客があったのだ。 中東系外国人B 「少し見てくる」
中東系外国人A「よせ!ドアに近づくな!ここにいるって思わせるな!」
声を殺しながらも叫ぶようにして止める。
人が来るはずなどないのだ。来るとしたら…
課長補佐「壊すぞ」 瞬間ドアは壊された。
4人ほどの人影が見える。
課長補佐「麻取だ。覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕状が出ている。」
中東系外国人A「畜生!!」
外国人Aは一目散にベランダに向かい飛び降りた。
若手取締官「あ、おい!ここ2階だぞ!」
係長「こちらの男の身柄は押さえた!19時3分、通常逮捕」 中東系外国人A「い、いてえ…でも逃げねえと…」
外国人Aは数秒間は痛みで立ち上げれなかったが、ようやく動き出した。
ダイヤ「私が追いますわ」
課長補佐「任せたよ。おい、下から黒澤を追いかけてくれ」
若手取締官「え?俺ですか?てか下からって?」 若手取締官の頭に疑問符が浮かんでいるのをよそに、ダイヤは外国人と同じくベランダから飛び降りた。
しかし、その姿は苦し紛れに飛んだ外国人とは違い、美しく洗練された飛び降りだった。
若手取締官「はぁ!?そう言うことかよ!行ってきます!」
課長補佐「おう!」 ダイヤの着地は見事な5点着地だった。
外国人Aとは違いロスタイムなしで着地後に走り出した。
ダイヤ「久々にやりましたけど体が覚えているものですわね」
中東系外国人A「なんでもう後ろにいるんだ!?おかしいだろ!?」 飛び降りて追いかけてくるなど考えていなかった外国人Aは完全に後ろに気を取られてしまった。
思慮を巡らせているうちにもう、手を伸ばしたら掴まれる位置にダイヤは迫っていた。
ダイヤ「逃げるのはブッブーですわよ。さぁ、おとなしくしてください」
瞬間、ダイヤは外国人Aに飛びかかり、関節を押さえて制圧した。
中東系外国人A「は。はぁ!?動けねえ!はぁ!?」 驚きを隠せなかった。体の細さは自分の太腿程度しかなさそうな女性に完全に組み敷かれているからだ。
若手取締官「黒澤!すまねえ遅くなった!」
黒澤「いいえ先輩、とんでもない。助かりますわ」
若手取締官「はい、逮捕状な。19時5分…だな。通常逮捕。さぁ部屋に戻ってもらいますよ」
中東系外国人A「くそ…」 女一人に組み敷かれ、その上もう一人男が来たとなれば逃げられないと、外国人Aは観念したのか力が抜けた。
二人で脇を抱えるように外国人Aを先ほどの部屋まで運んだ。
若手取締官「しかし黒澤すごいな。なんだあれ」
ダイヤ「学生時代に少しパルクールをかじりまして。体術のほうは大学が決まってからずっと卒業までシステマを習っていました」
若手取締官「えぇ…」 ダイヤ「補佐、戻りました」
課長補佐「ありがとう。電話で待機組を呼んでくれるか。あいつらが着いたら逮捕現場における捜索及び差し押さえを行う」
ダイヤ「承知しました」
ダイヤは外の車両に待機している2名の取締官を呼び出した。 女性取締官「お疲れ様。あら、証拠しっかり残ってるのね」
ダイヤ「ええ、トイレに流されていたら少し困るところでしたけど。縄張りを移して売ろうと欲が出ていたのでしょう。まだまだ犯罪ルーキーですわ」
中堅取締官「じゃあ補佐、ガサ入れ始めますね」
ダイヤ「では、私はこれで失礼しますね。お疲れ様です!」
若手取締官「え?黒澤帰るの?これから忙しいんだぞ送致用書類作りもあるし」 ダイヤ「分かっていますけど、私ずっと職場のカレンダーに黒澤定時って2ヶ月前から書いていましたし、
補佐にも許可はもらっていますわ。
でも、ごめんなさいわがまま言って…」
課長補佐「すまんな。許してあげてくれ。人は足りてるし大丈夫だ。黒澤、大丈夫だから行きなさい。ずっと楽しみにしてたろ」
ダイヤ「ありがとうございます。先輩ごめんなさい。お土産たくさん買ってきますから」
若手取締官「お、おう」 ダイヤ「係長、車のキーあけてください!荷物を取りたいのです」
係長「はいよ」
ダイヤ「では皆さんご機嫌よう!お先に失礼します!」
そうしてダイヤは下に止めてある公用車から自分のキャリーバッグを取り出し大通りに向かい走り出した。 若手取締官「黒澤、何か用事あるんすかね?」
課長補佐「明日高校の部活の仲間と同窓会なんだってさ。
私は訳あって高校時代の彼女達を知っているからさ、ついつい行かせてあげたくなってしまってな。
すまんが、今日明日は黒澤抜きで頑張ってくれ。」
若手取締官「まあ今回の事件の中で今日含めて一番頑張ってくれてましたからね。
文句は言えないっす。
しかしなんの部活ですか。イメージ的に華道とか?」 課長補佐「いや…」
課長補佐、かつては1オタク取締官に過ぎなかった彼は、当時の記憶を鮮明に思い出しながら答えた。
課長補佐「スクールアイドル部さ」 〜大通りに向かう道〜
ダイヤ「しかしスマートフォンは便利ですわね。μ’sの動画も見られるしタクシーもピンポイントで呼べるのですから。
学生時代に梨子さんに教わっておいて良かったですわ」
大通りについたときには1台のタクシーが待機していた。 運転手「予約の黒澤さん?名古屋駅まででいいんですよね?」
ダイヤ「ええ、お願いしますわ。すいません慌ただしくて」
運転手「荷物多いですね。旅行ですか?」
ダイヤ「いいえ、久しぶりの帰省です。といっても半年ぶりですが」
運転手「いいですね〜どこなんですか地元は?」 ダイヤ「干物の街、沼津ですわ!」
運転手「あ〜金目鯛が美味いんですよね〜沼津まで行きましょうか?」
ダイヤ「もう!そんなお金ありませんわ!」
運転手「冗談ですよ!さぁ名古屋駅着きましたよ。楽しんできてくださいね」
ダイヤ「ありがとうございます。快適なドライブでしたわ。ご機嫌よう」 19時45分。予定の新幹線には間に合いそうだった。
ダイヤ「さて、家に着く頃までルビィは起きていてくれるかしら」
ダイヤ「おっと、自己紹介が遅れましたわ。
まぁ皆さん知っていると思いますけれど改めて。」 〜名古屋駅 午後7時46分 金曜日〜
黒澤ダイヤ/26歳
髪の色/美しい黒
瞳の色/青緑色 SS 麻薬取締官 黒澤ダイヤ
episode1 これが私の生きる道 〜沼津駅 午後10時6分 金曜日〜
ダイヤ「ついたついた。やはり地元の安心感は異常ですわ。さて小腹が空きましたしのっぽパンでも一つ…」
ルビィ「お姉ちゃ…じゃなかった、姉さん!お疲れ様!」
ダイヤ「あらま、ルビィ!迎えにきてくれましたの!?」 沼津駅のロータリーで車の横から声をかけてきたのは、ダイヤの最愛の妹、黒澤ルビィだった。
高校生の時とは違い、髪型はダイヤと同じようにストレートのロングヘアーになっている。
身長も162cmのダイヤとほぼ変わらないまでに成長した。 ルビィ「予定通りの新幹線に乗れたんだね。安心したよ。」
ダイヤ「もうルビィったら、前みたいにお姉ちゃんと呼んでくれて良いんですわよ?
お迎えありがとう」
ルビィ「私ももう社会人5年目だし、少しでも大人らしさを出していきたいの!」
ダイヤ「大人らしさを出そうとすることが逆に可愛くなってしまうなんて、
もうルビィは罪でちゅわね〜!可愛いでちゅわね〜!逮捕ですわもう!!」 ルビィ「何罪だよも〜絶対に不起訴だから!」
ダイヤ「手厳しいわ…あらお母様また車変えましたの?」
ルビィ「ううん。この子は私のだよ。先月買ったんだ。中古だけどね。
ニュービートルと悩んだけどこっちにしたんだ。
可愛いでしょ!姉さんの色だよ」
ダイヤ「グッチョイスですわルビィ。
500Cはやっぱり赤が一番キュートですわ!」 ルビィ「さあ、姉さん乗って乗って!あまり快適じゃないかもしれないけどね」
ダイヤは荷物をなんとかトランクに乗せて助手席に乗り込んだ。
サイズは小さい車だが、二人の体格ならば問題はない。
ダイヤ「ルビィの運転で家に帰る日が来るなんて…感慨深いですわ…」 ルビィ「私もだよ。姉さんがいないと何もできなかった私が、
今は姉さんと並んで仕事ができて、姉さんを乗せて車でどこでもいけるんだもの」
ダイヤ「何をおっしゃいます。ルビィは昔から自分で物事をしっかり決められる強い子でしたわ」
ルビィ「ふふ、ありがとう」
ダイヤ「しかしすぐに泣いていたルビィが今となっては、
最年少の20歳で検察官になった泣く子も黙る鬼検事ですものね」 ルビィ「いやいや、そんな呼ばれたかた今初めて聞いた。
んーまぁ進学しないで勉強ばかりしてたからねぇ」
ダイヤ「さっき並んで仕事が〜って行ってましたけど並んでませんからね!?
捜査上の立場はルビィの方が上なわけですから!」
ルビィ「システム上はね〜でもどっちかだけじゃ成り立たないし、上とか下とかないよ!
さ、海沿いの道に入るよ!」 ダイヤ「屋根開けましょう!屋根を!テンション上がりますわね!」
ルビィ「夜の海って真っ暗で少し怖いけど、私好きだなぁ」
ダイヤ「私たち最強の黒澤姉妹ですわよ〜!!」
ルビィ「お姉ちゃん…飲んでる!?」
ダイヤ「いいえ、ただ少し、感極まってしまっただけですわ!さぁルビィもっと飛ばしなさい!!」 ルビィ「私たちがスピード違反で捕まったらシャレにならないよ〜」
ダイヤ「ルビィ!」
ルビィ「ピギィ!」
ダイヤ「のし上がりますわよ。若いからだとか女だからだとか、
そんな批判は全部これからも力で黙らせて行くのです。
私たちは私たちだから上を目指し上に行くのです!」 ルビィ「それには賛成。なんたって最強の」
ダイヤ「黒澤姉妹ですから!」
空いた夜の道というシチュエーションも相まって、二人は高揚感に満ちたひとときのドライブを楽しんだ。 ダイヤ「ただいま帰りましたわ」
ルビィ「ただいま〜」
母澤「お帰りなさいダイヤ、ルビィ。ダイヤも仕事の後で疲れているでしょう。
お風呂、沸かし直してあるわよ」
父澤「ダイヤ、怪我とかしてないか?無事か!?」 ダイヤ「もうお父様ったら心配性なんですから。
麻取の安全対策はバッチリですわよ。でも心配ありがとう。
では、荷物おいたらお風呂いただきますわ。
ルビィ、お迎えありがとう。助かりましたし楽しかったですわ」
ルビィ「うん。ゆっくり休んで。明日は楽しみだね」
ダイヤ「ええ、早く皆さんに会いたいですわね」
そう、明日はAqoursのメンバーと半年に1回恒例の同窓会だ。
前回は鞠莉と曜が仕事で参加できなかったため、メンバー全員が揃うのは1年ぶりだった。
ダイヤ「では、おやすみなさい!」 〜午後3時45分 土曜日〜
ルビィ「姉さんはスーツなんだね。ネクタイもするんだ」
ダイヤ「このスーツとネクタイはね…勝負服なのよ。特別な日や仕事の時だけ着ることにしているのですわ…」
ルビィ「なんたって今日の会場はホテルオハラの宴会場だもんね…緊張するなぁ」
ダイヤ「ルビィのドレスも素敵ですわよ。真紅のドレスを着こなせる女性なんてそうそういなくてよ」 ルビィ「えへへ、今年の夏のボーナスで仕立ててもらったんだぁ」
ダイヤ「では、そろそろ出ましょうか。淡島久しぶりですわ〜今日の格好じゃ神社にお参りは難しいですわね」
ルビィ「それは明日にすれば良いよ!ホテルオハラ泊まっちゃう?」
ダイヤ「それはアリよりのアリですわね。今日も何時まで盛り上がるかわかりませんしね」
ルビィ「だね〜早くみんなに会いたいなぁ」 保守
俺がこの前見た黒澤は内浦を仕切る元締めだったような気がした >>42
ありがとうございます。
それは前日譚の>>2にあるurl1つ目ですね 二人は母澤にチケット売り場まで送ってもらい、船乗り場に向かった。
ちょうど船は着いているとこで、その乗り口にはよく知ったダイヤの親友の一人が立っていた。 果南「久しぶりだね二人とも。
…ルビィちゃん、会うたびに美人度増してない?」
ルビィ「あ、ありがとうございます!」
ダイヤ「果南さん、私は!?」
果南「はいはい美人美人。さぁ乗って乗って。
これで来てないのは鞠莉だけだけど、鞠莉はどうせヘリでしょ」
ダイヤ「雑ですわもう!でもお元気そうで嬉しいですわ」
果南「私も二人が五体満足で安心したよ。じゃあ行こっか」 果南は慣れた手つきで船の操縦を始めた。
果南は海外で4年間ダイビング修行をした後、内浦に戻ってきていた。
帰ってきてからは親のダイビングショップを正式に引き継ぎ、切り盛りしている。
果南が店長になってからは経営もうなぎ上りで、頻繁にダイバー向けの雑誌から取材も受けている。 ダイヤ「よくそんなひらひらのドレスを着て操縦できますわね」
果南「アイドルのダンスみたいなもんでしょ」
ルビィ「えぇ…」
他愛もない話をしているうちに船は淡島についた。
四方を海に囲まれ、富士山を望むことのできるこの景色は内浦の宝物だ。
宴会場の前に立つと、既に賑やかな話し声が漏れていた。
ピアノの音も聞こえる。
ダイヤは宴会場の扉を開いた。 梨子「ダイヤさん!ルビィちゃん!」
最初に声をかけたのは演奏中だった梨子だった。
意外にも卒業後にダイヤと距離感が一番縮まったのは梨子だ。
梨子は静真高等学校卒業後に東京の音楽大学に進学しており、同じく東京の大学に通っていたダイヤとは頻繁に会っていた。
ダイヤ「ご無沙汰しております。皆さんお元気そうで嬉しいですわ」 鞠莉「私もついたわよ〜」
果南「お、来たな社長。長旅ご苦労!」
千歌「全員揃ったね〜!なんか感動!」
曜「前回私は海の上で鞠莉ちゃんはシンガポールだったもんね。
全員集合はやっぱりテンション上がるね!」
善子「もう!曜は陸にいなすぎ帰って来なすぎ!」
花丸「私もうお腹ペコペコだよ〜早くみんなで食べよ!ルビィちゃんもほら座って座って!」
ルビィ「花丸ちゃんも久しぶり〜
花丸ちゃんの声聞くとホッとするよ〜」 千歌「じゃあ第18回Aqours同窓会始めます!かんぱーーーーーい!!!」
全員「かんぱーーーーーーい!!!」
久々の全員集合にメンバーのテンションはフルスロットルだった。 千歌「そういえばダイヤちゃん、星空さんとは会うことあるの?」
星空というのは、μ’sの星空凛の実の姉で、Aqoursのメンバーが高校生の頃から麻薬取締官として働いていたダイヤの先輩だ。
ダイヤ「ええ、2ヶ月前に横浜港での密輸事件の際にお会いしましたわ。
良い経験だからと課長が出張させてくださったのです」
曜「ああ、あの覚醒剤密輸事件ですよね。冷凍マグロのお腹に覚醒剤隠してたってやつ」 善子「ねえーねえってば〜曜も海上保安官なんて危ない仕事辞めようよぉ」
曜「よっちゃん酔っぱらうの早すぎ!一級海技士取り終わったら考えてあげる」
善子「あと何年かかるのよぉ!あなたが海にいる間心配で本当に眠れないのよ!」
曜「まぁ…それはごめん」 善子「ダイヤとルビィも!危ない仕事やめて一緒にカフェでもひらきましょうよ。あなた達が怪我したり、場合によっては…し、死んだりなんかしたら…ヒック…立ち直れないもの…」
曜「よしよし。大丈夫だよ、よっちゃん。心配してくれてありがとうね」
ダイヤ「相変わらずの泣上戸ですわね善子さんは。いつまで立っても目が離せない後輩ですこと」
ルビィ「善子ちゃん。安心して。私たちも善子ちゃん達が大好きだから、守りたいと思ってるから、この仕事を続けてるんだよ」 善子「それであなた達に何かあったら嫌なのよ!!もう!!うわああん!!」
花丸「善子ちゃん落ち着いて。せっかくの楽しい時間なんだから、3人とも困っちゃうよ?」
善子「うん…ごめんなさい…」
鞠莉「ほら、渡すものあるでしょ。善子からお願い!」
千歌「お!まってました!」 善子「うん…リリー、ルビィ、少し早いけど誕生日おめでとう。これみんなからよ」
善子は荷物置き場に置いてあった紙袋を運んできた。一つは梨子へ、もう一つはルビィへだ。
梨子「みんなありがとう…!うわ、これすごく良いヘッドホンじゃない!」
果南「少しでも良い音を聞いて欲しいからね。奮発したよ〜」
梨子「嬉しいわ…自分じゃ中々手が出しにくくて…一生の宝物にするわ!」 善子「さっきはごめんね、はいルビィ。ハッピーバースデー!」
ルビィ「うわぁ、これ万年筆とボールペン?キャップの星のマークがかわいい!」
ダイヤ「人の人生を左右する大事な書類をこれからも何千何万と書くのですから、
その重みにふさわしい筆記具をと思って選びましたの」
ルビィ「姉さん、みんな…大事にするね!」
ダイヤ「あとで万年筆の使い方は教えてあげますわね」
鞠莉「さぁ!誕生日にふさわしい料理もデザートもまだまだあるわよ!食べて飲んで盛り上がりましょう!夜は長いわよ〜!」
そうして仕切り直された同窓会はさらなる盛り上がりを見せた。 花丸「結局曜さんと善子ちゃんの『28までに相手が見つからなければ一緒に住む』って約束は曜さんから破ったんだね」
曜「ふと思ったんだよね〜。よっちゃんが他の人と付き合うってなったら『あ、嫌かも』って」
善子「そのくせに曜は全然帰ってこないから、ほぼ一人暮らしよ!」 曜「これからも転勤は多いよ。ごめんね。ついてきてくれる?」
善子は恥ずかしそうに顔を背けた。
善子「当たり前!」
曜「うん、ありがとう!」 千歌「ふ〜お二人あついあつい。他のみんなはどうなの?結婚とかは」
果南「千歌、だまりな」
千歌「え、えぇ…」
花丸「みんなお仕事大変そうで余裕なんてないよね。
私はこうして集まれるだけで十分満たされるから、まだそういうのは考えられないな」 鞠莉「花丸は市役所勤めだっけ?
沼津市も観光業を成り立たせていくのは大変よね〜そういえば千歌、私のホテル会社のマリーオットリゾートとのポイント提携の件は考えてくれた」
千歌「ああ、あれね。良いよ〜」
梨子「何々、何の話?」 千歌「鞠莉ちゃんの会社のマリーオットリゾートって会員向けポイント優待プログラムあるじゃない?
あのプログラム対象に十千万を入れないかってお話受けててさ」
鞠莉「私のマリーオットは地方観光業に力を入れたくてね。
お客様からも各国地域の特色を味わいたいって言われてるから、日本では旅館業に声をかけてるのよ」
千歌「マリーオットリゾートだけだと価格帯的にもホテル数的にも幅が狭まるからね。
逆に今までオハラ系列をポイント利用で使っていた人ちが十千万を利用してくれるのはありがたいし、乗らせてもらうよ」 梨子「すっかり女将が板についてきたわね千歌ちゃん!」
鞠莉「梨子は?バンドの方はどうなの?」
梨子「再来月小さい会場ですけど、毎週メンバーの出身地の会場でライブするんです。沼津は最後の週」
鞠莉「梨子出身東京でしょ」
梨子「はっ!!!!」
鞠莉「は?」 梨子「東京出身なの忘れてました…」
千歌「よしよし、心まで沼津に染まったようだのぉ!」
梨子「なんてこと…父さん母さんごめんなさい…」
果南「まあ今の実家は沼津なんだからセーフでしょ。
…あれ、そういえばルビィちゃんとダイヤは?」
善子「曜もいない!!どこよもう!!」 〜ホテルオハラ宴会場外のテラスにて〜
曜「あ、いたいたジャスティス姉妹」
ダイヤ「あなたもいれてジャスティストリオですわね」
ルビィ「かっこ悪いよぉ…」
ダイヤ「同窓会も回数を重ねるごとに、このメンバーで集まれる時間のかけがえなさが身に染みますわ」 曜「去年も言ってましたね。私も大学校を卒業して現場に配属されてから、ダイヤさんの言ってることが少しだけわかるようになった気がします」
ルビィ「裏の社会なんて、知ろうと思わなけらば知らずに終わっちゃうんだもんね…」
ダイヤ「たまにこうして平和な時間に触れないと、戻ってこれなくなりそうなのです。
犯罪者を追おうとするたびに、自分が犯罪者の心理に近づくのを感じますから」 ルビィ「ミイラとりがミイラにならないためにも、表と裏の境界線に常に自分自身で触れられるようにしておかないとだよ、曜さん」
曜「うん。肝に命じておく。ありがとうございます」
ダイヤ「しかし曜さん、善子さんの心配性は年々加速しますわね。まあ、そこが可愛いとは思うのですけど…」 ルビィ「元々心配はしてくれていたけど、2年前の事件から余計だよね」
ダイヤ「あの事件、か…報道はすぐに収まりましたけど、
善子さんのことですから私たちに関連するニュースは意識して調べていたのでしょうね」
曜「そうなんです。
ルビィちゃんが検事になったその日から毎日しっかり新聞まで読んで、活躍がないかチェックしてるんですよ。
ほんと、みんなのこと大好きですよね。」 あの事件とは…
今から2年前、ダイヤが麻薬取締部に配属されて1年目にあたる年の12月だ。
カントウシンエツ厚生局麻薬取締部職員3名が繁華街にあるクラブに潜入し内偵捜査を行っていたところ、
コカインパーティを行なっていた半グレ集団である首都高連合OBの乱闘に巻き込まれて2人が重症、1人が死亡した事件があった。 当然ドラッグパーティと乱闘に参加した首都高連合OBのメンバーは暴行罪で現行犯逮捕され、麻薬及び向精神薬取締法でも再逮捕をされた。
その後実刑判決を受け、関与したメンバーはいまも刑務所に入っている。
だが、その死亡した1名がダイヤの同期であった。
ダイヤ自身の組織内での向上心は、
共に麻取のトップに立とうと誓い合った彼との約束を守るために生まれたものだった。 ダイヤ「確かに、この仕事は…常に死と隣り合わせなのだということを実感した事件でした…
頭ではわかっていたはずなのにね…
あの時私のことかと思ってルビィと善子さんが鬼のように電話してきたのにはビックリしましたけど」
ルビィ「それはそうだよ!!」
曜「よっちゃん前に言ってたんだ。
私を私のままで受け入れてくれたAqoursのメンバーが本当に大好きなんだって。
ぜったいに1人も欠けさせないんだって」 ダイヤ「私達も同じ気持ち、ですわよね」
ルビィ「うん!もちろん!」
曜「むしろ私達が1番元気なんじゃない?ってくらいにばりばり働いてやりましょうよ!」
ダイヤ「ですわね。さあさあ、そろそろ戻りましょうか!
センチメンタルになるのは今日はここまで!まだまだ楽しみましょう」
そうして同窓会は夜の10時まで続いた。
鞠莉が各自の部屋をとっておいてくれたため、全員ホテルオハラに宿泊することに決めた。
翌朝はみんなで淡島神社にお参りに行くことになった。 〜土曜日 午前5時10分 淡島神社〜
善子「二日酔いにはしんどい…」
曜「あのあと部屋についても飲んでたもんね…はいお水」
千歌「ほら見てみて!」
梨子「久しぶりね」
花丸「うわぁ…」
ルビィ「綺麗…」
果南「良いね。ダイヤの発案」
鞠莉「みんなで日の出を見ようなんてね!」 ダイヤ「私はまだまだみんなとの思い出が作り足りませんの。幸せな時間を更新し続けたいのよ」
鞠莉「かわいいんだからもう、ダイヤったら」
果南「私たちだよ?これからもずっと楽しいに決まってるじゃん!」
ルビィ「姉さん!みんなで写真とろう!」
果南「姉さんってルビィちゃんが呼んでるのまだ慣れないな〜」
花丸「背伸びしてる感じが可愛いよね♪」
ルビィ「も、もうみんなからかってぇ!!何かあったら絶対に起訴するからね!!」
千歌「10秒セット!撮るよ〜〜!」 パシャッ
千歌「どれどれ〜」
曜「あ…」
善子「まあこうなるわよね」
ダイヤ「逆光が過ぎますわ!!!」 〜午前10時半 淡島マリンパークチケット売り場前〜
梨子「じゃあ、ここで解散ね」
千歌「寂しいな〜」
鞠莉「年末も会えたら良いわね。忘年会でもやりましょう」
曜「良いね〜休み取れるかな」
花丸「私は多分大丈夫」
ダイヤ「…善処します」
ルビィ「私も部署が変わらなければ多分…」 果南「また連絡とって決めようね!じゃあみんな、元気で!ハグしよハグ!」
そうして果南は一人ずつハグしていった。
ダイヤ「じゃあルビィ、行きましょうか」
ルビィ「うん!」
曜「よっちゃん、良いの?」
善子は首を横にふった。
善子は少し俯き加減だった。
忘年会の話の最中も喋らなかった。 善子「ダイヤ!ルビィ!」
ダイヤ「どうしました、善子さん。寂しいのですか?」
ルビィ「善子ちゃん…」
善子「改めて、昨日はごめん!!心配なのは本当!
でもそれ以上に誇りに思ってる!!私たちを守ってくれてありがとう……
頑張ってるのわかってる!尊敬してる!!一番辛くて大変なのはあなた達だってこともわかってる!!
でもお願いだから…一つだけ約束して…」 ダイヤ「善子さん…」
善子「元気でいてね…次会う時も絶対に…この約束破ったら、絶対に許さない!呪うから!!」
ルビィ「善子ちゃん…うぅ…ありがとう…」
善子「なんであんたが泣くのよルビィ…正義の味方の検事でしょ…泣いてちゃ国民が心配するわよ」
ダイヤ「その約束、必ず守りますわ。私たちを誰だ思っていますの?なんて言ったって私たち最強の」
ルビィ「黒澤姉妹だよ!!」 〜名古屋駅 午後9時〜
ルビィ「じゃあ姉さん、お疲れ様」
ダイヤ「運転ありがとうございます。はいこれガソリン代。
しかし、お互い今は名古屋に住んでるのに全然会えませんわね」
ルビィ「別に良いのに…でもありがと!
互いに忙しいからねぇ…姉さんもよく土日潰れてるもんね。名古屋に2人で居るうちにドライブ旅行でもしようよ」 ダイヤ「何それ最高のプランではありませんこと!?
絶対に流してはいけない予定ランキングNo. 1ですわ!!
…でもまあ、犯罪は待ってくれませんから。
大変だけれど、自分で選んだ道ですもの辛くはありません。
むしろ上等って気持ちですわ!」
ルビィ「私も!明日からもお仕事がんばろうね!」 ダイヤ「ええ、ではおやすみなさい」
ルビィ「おやすみ!」
ダイヤ「あ、ルビィ!言い忘れてました!」
ルビィ「なになに?」 ダイヤ「愛していますわよ…ルビィ」
ルビィ「えへへ、私も!」 守りたいものがある。
たとえ押し潰されそうになっても必ず守り抜きたいものが。
時としてわからなくなる。
自分は人か猟犬か。
大切な人と触れ合っている時、
ようやく他人越しに自分の輪郭を取り戻せる。
後悔はない。
これが私、黒澤ダイヤの生きる道なのだから。 SS 麻薬取締官 黒澤ダイヤ
episode1 これが私の生きる道
完 >>87
見ていてくださる人がいることに驚きました。
素直に嬉しいです。ありがとうございます。 やーっと追いついたー
すっと読めたし楽しかったよ
シャブ、しよ?の撮影のとこ好き 読んでくださって、皆さんありがとうございます。
少し続きを書く気力が湧きました。 〜9月某日 月曜日 8時45分〜
ダイヤ「公用車の掃除も疲れますわね…早く後輩が入ってくれれば一緒に掃除できるから楽なのですが…」
ダイヤは楽しかった同窓会の余韻に浸るのもそこそこに、定時である9時より前に出勤して事務所と公用車の掃除を行っている と言うのも、ダイヤの所属する東海北陸の麻薬取締部には新人が配属されず、配属しても1年せずにやめてしまう事ばかりで、未だに雑用係である。
当然、ブラック企業麻取。早出残業代は出ない。
なんなら残業代自体が大して出ない。
ダイヤ「座席と座席の間までしっかり見ないとですわね。何せ先週末に護送があったのですから」
警察組織の公用車掃除は雑用のように見えて、極めて重要だ。 ブツを隠し持っていた被疑者が椅子と椅子の間にブツを隠し、いざ署についたら証拠品がなく問題となることが、過去には少なくなかった。
そのため、ブツのあるなし問題に対して毅然とした態度を取れるように、車をはじめとした道具はもちろん、現場のビフォーアフターを正確に記憶・把握しておくことは捜査官の必須能力と言える。
ダイヤ「よし!ゴミは先輩が置きっぱなしにしていったコーラのペットボトル程度ですね。戻りましょう」 〜同日 8時50分 捜査課室〜
若手取締官「お!黒澤!ダイヤッホー!いつも掃除ありがとうな」
ダイヤ「ダイヤッホー!ってなんでそれを!まさか、補佐ですわね…それとおはようございます。先週末はありがとうございました」
補佐「ごめんごめん。こいつに黒澤の高校の時の話を聞かれて話してしまった」
ダイヤ「ま、まあ構いませんけど、少し恥ずかしいです…
あ、これお土産です」 女性取締官「…なんか海産物の干物臭がするわねこの部屋」
ダイヤ「はい!お土産に海産物の干物を持ってきました!」
若手取締官「チョイスが渋い」
ダイヤ「実家の干物です!味には自信がありましてよ!」 若手取締官「実家の干物?実家漁師なの?」
女性取締官「もしかしてダイヤちゃんの黒澤って黒澤水産の黒澤?」
ダイヤ「あー…正確には黒澤水産は実家の会社の子会社で…」
若手取締官「え、まさかお嬢様…?」 女性取締官「名古屋の方までは進出してないかもしれないけど、静岡じゃ知らないとモグりってくらい黒澤系列は名前聞くわよ。
プライベートなことだから聞き辛かったけど、まさか本当に黒澤のお嬢様だったのね」
ダイヤ「あまり他人に話すことでもありませんから…あとお嬢様って程でもありませんわ…」
若手取締官「謙虚だな〜俺なら自慢しまくるけど。しかしそんなに有名なのか黒澤系列」 女性取締官「あなた東北麻取よねここに来る前?」
若手取締官「うっす。大麻抜去とかしてましたよ」
女性取締官「カメイみたいなもんよ。沼津のカメイ。それが黒澤」
若手取締官「とてもわかりやすい。」
ダイヤ「じ、実家の話はもういいでしょう!」 若手取締官「おうおうごめんごめん。あとさ、黒澤の高校の時の啓発ドラマ見て思ったんだけど、妹役の子、どっかで見た気がするんだよな…」
ダイヤ「実の妹ですわよルビィは。多分地検ではありませんか?」
若手取締官「地検…?実の妹ってことは黒澤…?ん…?」
ダイヤ「はい。妹はナゴヤ地検で検事をしていますから」 補佐「まじか…?」
ダイヤ「まじです」
補佐「黒澤検事は私が東京にいた時も何度か見かけたことがある…しかしあのルビィちゃん…?」
若手取締官「めちゃくちゃ美人だなとは思ってたけど黒澤の妹だもんそりゃ美人だわな…」
補佐「そもそもルビィちゃんと検事って仕事が結びつかなくて本当に今気づいた…
見かける度に会釈してくれてたのは警備員に対してとかじゃなくて、私のことを覚えてくれていたからなのか…?」 ダイヤ「恐らく。昔、『見かける度に挨拶するけどスルーされてるから覚えてないのかな』って気にしてましたわよ」
補佐「ごめんルビィちゃん…じゃなくて黒澤検察官…」
若手取締官「でも黒澤って黒澤検事以外に兄弟いるの?」
ダイヤ「いえ、ルビィだけですわよ」 若手取締官「家は世襲じゃないの?二人とも公務員じゃん」
女性取締官「あんた、やめなさいよズケズケと」
ダイヤ「それについては話すと長くなります。
私が麻薬取締官になると決めたあの時……つまりもう9年ほど前でしょうか…」
若手取締官「いやこれ、実は話したくてたまらないやつの反応」 ダイヤ「いいでしょう。特別捜査課の皆様に知っていただきます。この黒澤ダイヤが麻薬取締官になるまでの軌跡を…」
若手取締官「こいつ実は話したがり屋だな?」
SS 麻薬取締官 黒澤ダイヤ
episode0 sailing day >>104
ラブライブの更なる発展を期待せざるを得ない、驚きとワクワクに満ちた最高のPVでしたよね。
リリースが楽しみです。 〜9年前 ダイヤ高3 ルビィ高1の冬〜
父澤「どうしたんだいダイヤ。家族全員集めて話があるとは」
爺澤「お小遣い足りないか?」
ダイヤ「い、いえ、確かにそろそろ新しいコートが欲しいとは思っていますがお小遣いではありません」 ダイヤは緊張していた。
小さい頃からはっきり言われたことはないが、
名家である黒澤家を継ぐものとしての品格を備えるために多くの習い事をさせられてきた。
ダイヤ自身は敷かれたレールを歩いてきたと言う気持ちが強く、自分から親や家族に対して意見や要望を伝えると言う経験に乏しかったのだ。
ダイヤ「私…私……」
ルビィ「お姉ちゃん…」 ルビィはなんとなくダイヤの話したいことは分かっていた。名古屋での啓発イベントの後のダイヤの様子から察しがついていたのだ。
ダイヤは自分の行きたい道を決めたのではないかと。
母澤「言いづらいなら私たちは席を外してお父様と二人にしましょうか?」
ダイヤ「いえ…みんなに聞いて欲しいです…」
婆澤「まぁまぁダイヤちゃんお茶でも飲んでリラックスしなさいね」
ダイヤ「お婆様、ありがとございます…」
ダイヤはお茶を一口のみ決意を固めた。 ダイヤ「お父様!私黒澤ダイヤはなりたい夢ができました!目標ができました!ですので…ですので家を継ぐことは…できません…!」
父澤「いいよ」
ダイヤ「幼少から様々な習い事をさせていただき、後継として育てられたにも関わらず大変申しわ…え?」
父澤「いいよ。目指しなさい」
ダイヤ「え?いいの?」 父澤「うん。そもそも私、ダイヤに家を継げって言ったかな?」
母澤「まぁ…客観的に見たらそう育てられてるとは思いますわね。今ダイヤも言ったように習い事も沢山させてきたし。自分だって小さい頃そうだったでしょう?」
父澤「確かに…そう言う子供時代しか知らなかったからそうしてたところはある…かも」
ダイヤ「あ、あの〜…」 父澤「習い事はな〜むしろ逆だよダイヤ。
黒澤の看板に頼らず自分の力で生きていくための可能性や選択肢を持って欲しかったんだ。
それはルビィ、お前に対してもそうだぞ。
私も若い頃は確かに今のダイヤと同じ気持ちだったのかもしれないな…しれないかな…?」
ダイヤ「あ、ありがたいのですけど黒澤家は…」
父澤「別にいいんじゃないか。なあ父さん」
爺澤「うむ…」
ダイヤ「お爺さま…」 爺澤「沼津の創生と共に黒澤家があったわけではない。不死の人間や不滅の国家がないように、黒澤家が絶えて悪い道理などない」
父澤「どうせ絶えるなら…」
爺澤「せいぜい華麗に滅びるが良いのだよ」
父澤「だからダイヤ、そしてルビィ。お前たち姉妹が黒澤家のために自分たちのやりたいこと、なりたいものを我慢する必要はない。
別に黒澤グループを黒澤家の直系が運営する必要なんてないんだから」 爺澤「ダイヤとルビィのお父さんも『外資系IT企業に就職する!』って東京の大学に行ったはいいが就職に失敗して黒澤グループに逃げ帰ってきたんだぞ」
ダイヤ「そうなのですか!?」
父澤「父さん…!バラすな…!」
ルビィ「知らなかった…」 父澤「とにかくね、私は嬉しいんだ。
私にも責任があるとはいえ、黒澤のしがらみから抜けて自分のやりたいことを決めることのできたダイヤを誇りに思う。
言い出すの、すごい勇気が必要だったろう?
頑張ったね。ありがとう」
ダイヤ「お父様…」
母澤「成長したわね。で、何になりたいの?」
ダイヤ「麻薬取締官です…私をここまで育ててくれた家族や内浦の皆様、Aqoursを応援してくださる方々…今の私を作ってくれた人達を守りたい、恩返しがしたいと思うのです」 父澤「そりゃまた珍しい仕事を選んだな。
でも自分を作ってくれた環境に恩返しをしたいと思う気持ちは、黒澤家が今に至るまで大事にしてきた精神そのものだ。
だからダイヤ、君が黒澤グループを継ぐまでもなく、すでに黒澤の意志を継いでくれているんだ。
自信を持ちなさい」
ダイヤ「はい…!」
父澤「それで、大学はどうするんだい?」
ダイヤ「薬学部に進もうと思います。
浦の星に1枠だけ東京のK大薬学部の推薦枠があります。それを獲るつもりです」 父澤「分かった。学費は気にする必要はないよ。
バイトも、したいなら止めないが、する必要はない。
麻薬取締官になるための勉強などがあるならそれに打ち込みなさい。」
母澤「別に麻薬取締官じゃなくてもいいのよ。途中で他にやりたいことが見つかったならそれでも構わない。その代わり、全力でやりなさい」
父澤「そう言うことだ。中途半端はいけないよ。
それと、麻取は警察だろう?
運転免許もいるね。推薦で合格が決まったらすぐに自動車学校に通いなさい。
誕生日的にもちょうどいいだろう」
ダイヤ「何から何まで…ありがとうございます。黒澤ダイヤ、全力で目指します!麻薬取締官を!!」 ルビィ「私は…私は嫌だ…」
ダイヤ「ルビィ…?」
ルビィ「だって危ないお仕事でしょ!?私嫌だよお姉ちゃんが危険な目に合うの!」
ダイヤ「ルビィ、心配してくれるのね…本当に優しい子ですわね…」 ルビィ「私、お姉ちゃんに幸せになって欲しい…普通に大学に行って、普通に働いて、大切な人に出会って結婚して…幸せに生きて欲しい…」
ダイヤ「ありがとう…でもね、そう思ってくれるルビィ、あなたが何よりも愛おしいから、私は守る為の力が欲しいのです」
ルビィ「お姉ちゃん…」
ダイヤ「だからルビィ、私は麻薬取締官になります。応援してくれとは言えませんが…でも信じていてください。
ルビィの前にいるときの私は絶対に元気な姿だと!」 ルビィ「ううん…私応援するよ…お姉ちゃんのこと。私のわがままでお姉ちゃんの夢を邪魔する方が辛いから…」
父澤「ちょっと泣きそうお父さん…」
母澤「私も…大きくなったわね二人とも…」
そしてダイヤは無事にK大薬学部の推薦合格を得た。
ダイヤの夢への第一歩は確かに踏み出されたのだ。 〜9月某日 月曜日 9時45分〜
ダイヤ「と言うことでアニメ二期10話の後半パート冒頭に続くわけです」
若手取締官「メタ発言やめなさい。てかさ、一ついいかな。概ねいい話なんだけど」
ダイヤ「なんでしょう」 若手取締官「黒澤の爺さんは銀河帝国皇帝なのか?あの器でかいセリフ絶対に銀河帝国皇帝だろ!!」
ダイヤ「ちょっと何言ってるかわかりませんわ。シーヴ・パルパティーンに器のでかいセリフなんてなかったでしょう?」
若手取締官「そっちの銀河帝国皇帝じゃねえよ!」
ダイヤ「まあ関係あるかは知りませんけど、あの時期お爺様とお父様はSF長編小説にハマっていましたわね」
若手取締官「絶対その影響だよ…器がでかい発言じゃなくて、ただの引用だよ…」 ダイヤ「まあなんであれ、私が救われたのは事実なのでいいでしょう」
若手取締官「お、おう。
しかしあの黒澤検事にそんな時期があったのか。想像つかねえ〜」
ダイヤ「今でも二人の時は昔のルビィですわよ。何よりも愛おしい大切な妹です」
若手取締官「なるほどね。
いや、話してくれてありがとうな。
黒澤のことが知れて嬉しいよ」
ダイヤ「そして舞台は私の大学生活に移ります」
若手取締官「めっちゃ喋るな黒澤…」 見ていただきありがとうございます。
携帯から失礼します。
この世界線での黒澤家については、先日まとめにもしていただきましたこちらのSSでも解説しておりますので、よろしければご覧を
https://itest.5ch.net/fate/test/read.cgi/lovelive/1591533871 〜8年前 ダイヤ大学1年生 K大アイドル研究部新歓〜
ダイヤ「はぁ…」
ダイヤは今、アイドル研究部の新入生歓迎会に来ている。
しかしアイドル研究部の中身は、ただアイドルの動画を見たりライブに参加したりするだけで、実際のアイドル活動を行うようなサークルではなかった。 ダイヤ「まあ薬学部は試験問題の過去問入手が重要と聞きますし、情報収集の場として割り切るしかないわね…」
ダイヤは心の中で『アイドル』への周囲への意識の違いに凹んでいた。
他の人たちは好きな男性アイドルや女性アイドルの話題で盛り上がっているというのに…
そんな時会場である居酒屋チェーンの入り口の方から歓声が聞こえた。 2年生部員A「今年も来てくれてありがとうございます
2年生部員B「相変わらず可愛いですね〜忙しいところ本当にありがたいです!」
真姫「いいのよ。先輩なんだから当然。
むしろ4年の私が来て1年生が恐縮しちゃわないか心配だわ」 ダイヤ「え、え、まさか…」
真姫「入学おめでとう1年生のみんな。今日は楽しんでいってね。私は医学部4年の西木野真姫よ。よろしくね」
ダイヤ「ま、真姫ちゃん……!」
真姫「あら、知ってくれているの?ありがとう。よろしくね。黒澤ダイヤちゃん」
ダイヤ「は、はいぃいいい」
ダイヤ「…え、なまえ……」 幹事「では、揃ったところで新歓始めまーす!では皆さんドリンクは回ってますか?回ってますね!かんぱーーーーい!!」
全員「乾杯!!!」
そうしてダイヤにとっては憂鬱な、でも憧れたμ’sの西木野真姫がすぐそばにいるドキドキもある新歓が始まった。 2年生部員C「この辺の子たちは薬学部?みんなはもう進路希望とかあるの?」
1年A「ん〜私はあまり決まってないですね。なんとなーく病院とかですかね」
1年B「私はMR気になりまーす!医者と出会って玉の輿に乗りたいなーって」
2年生部員C「ここで医学部生捕まえる方が楽じゃないかな〜。で。あなたは?」
ダイヤ「え!?わ、私ですか!?わ、私は…」 「麻薬取締官です」とはなぜか言えなかった。
決してメジャーな進路ではないことが分かっているから、それについて突っ込まれるのも何か嫌だった。
逆に知らないからと軽く流されるのも不快な気がした。
何より自信が持てなかった。定員数も少ないし女性の割合もそこまで多いとは言えない。
もしここで『なりたい』と宣言してなれなかったとしたら恥ずかしいのではないかと。 ダイヤ「地元の…薬局でしょうか。地域に寄り添う信頼される薬剤師になりたいです」
2年生部員C「具体的な目標があるのは素敵ね。お互い頑張りましょう」
真姫「ふーん…」
嘘をついてしまった。
内浦のみんな…家族もAqoursのメンバーも心から応援して送り出してくれたのに… ダイヤ「少しお手洗いに…」
そう言ってダイヤは外に出た。少し気持ちを切り替えたかった。
自分の気持ちはともかく、先輩方は私たちを歓迎して会を開いてくれているのだから、それには答えなければ失礼だ。
真姫「あなた、嘘ついてたでしょ」
ダイヤ「ピギィッ!?ま、真姫ちゃん…じゃなくて西木野先輩!?」 真姫「名前でいいわよ。私、自分の名前好きなの」
ダイヤ「ま、真姫さん…なんで」
真姫「あなた、Aqoursの黒澤ダイヤちゃんよね」
ダイヤ「知っていらしたのですね…」
真姫「これでもアイドル研究部よ私も」
ダイヤ「ありがとうございます。でも、嘘ってなんのことですか…」 真姫「あなた、別に薬局で働こうなんて思ってないでしょ。
本当は他になりたいものがあって薬学部に来たんでしょ。目を見ればわかるわ」
ダイヤ「なんで…」
真姫「私も昔は今のあなたみたいに自分に嘘をついていた時があったわ。
やりたいことを素直に言えない自分。
思ってることを素直に言えない自分。
だから察しがつくの」 ダイヤ「人に言うようなことではないですから…」
真姫「人に言わないのと、嘘を言うのは全然違うわよ」
ダイヤ「え…?」
真姫「あなたのなりたいもの、何かは別に今言う必要はないけど、応援してくれる人、いないの?」
ダイヤ「います…」 真姫「なのに嘘ついてまで隠すのって、失礼じゃないかしら。
恥ずかしいこと?嫌なこと?
きっと違うわよね。みんなあなたならなれる、やれると思って心から応援してくれてると思う」
ダイヤ「それは…そうかもしれませんが…」
分かっている。頭では。分かっているのだ。 真姫「WATER BLUE NEW WORLD、いい曲よね」
ダイヤ「え…」
ダイヤ達が冬のラブライブで優勝したときの曲だ。
その時の自分たちが込められる限りの、全てを込めた曲だった。
真姫「あなた達の軌跡が、知らないはずなのに見えたわ。
あの決勝のステージ。きっと様々な苦難があって、それでももがいて自分達の輝きに辿り着いたんだろうなって。
なのに、あなたがAqoursの活動で手に入れたのは、そんな消極的な自分なの?」
ダイヤ「…違います」 それはダイヤの本心だ。
Aqoursの活動を通して得たものは消極的で弱気な自分なんかではない。
真姫「そうよね。夢は痛みを抱えながら求めるもの、でしょ?
なりたいものがあって薬学部に来て、すごいじゃない。
みんながなんとなく進学する中、ダイヤは自分で目標を決めてここに入ったんでしょう。
あなたが恥ずかしいと思うことなんて、何かある?」
ダイヤ「真姫さん…私は…」 真姫「自信を持ちなさい。ダイヤはもう自分をしっかり持っているんだから。
自分の夢に胸を張りなさい。応援してくれる人、ちゃんといるんだから。
あとは貫くだけ。そうでしょう?」
その通りだ。
みんな信じて送り出してくれたのだ。
なのにダイヤは自分のために隠した。嘘をついた。
それは裏切りではないか。自分と、みんなへの。 ダイヤ「はい…!
目が覚めましたわ真姫さん。
ありがとうございます。
私、もう自分に嘘はつきません。
支えてくれる人達のためにも、私のためにも!」
真姫「良かった。何かあったら相談して。
ちょっと忙しいけど、力になるわ。
さぁ、戻りましょう。主役はあなた達よ」 私は何を気にしていたのだろうか。
なると決めて、内浦を離れここに来たのだ。
今更ブレる自分なんてないはずじゃないか。
声に出して言っていいのだ。
誇ることはあっても恥じるものは何もない。
ダイヤの気持ちは今一度固まった。
ダイヤ「皆さん、さっきは嘘をつきました。私がなりたいのは…いや、なるのはーーーーーー」 〜新歓終了後 午後9時半〜
真姫「じゃあ帰るわ。今日は本当に呼んでくれてありがとう。
二次会もいいけど、みんなハメはずしすちゃだめよ」
ダイヤ「真姫さん!」
真姫「ダイヤ、どうしたの?」
ダイヤ「応援して…くれますか?私の夢を、真姫さんも…」 真姫「意味わかんない」
ダイヤ「えぇ…」
ダイヤは少し泣きそうになった。 真姫「とっくに私、ダイヤのファンなんだから。
もう既に応援中なのに、今更何よ」
ダイヤ「真姫さん…!!!」
真姫「じゃあ、がんばりなさい」
ダイヤ「ありがとうございます!」 絶対に、絶対になるんだ。
ダイヤ「先輩方!今日はありがとうございました!
私、二次会は遠慮しますわ。
ではごきげんよう!」 まずは帰って走る。入学後少しサボってた。
体力をつけるんだ。
新聞も毎日読もう。
本もたくさん読むんだ。薬関係に暴力団関係。
得られる知識は全部得る。
それと、沼津の師範にこっちのシステマジムがないか確認しよう。
ダイヤ「やれることは全部やる!
やったりますわ!んーー忙しくなりますわね!!
のぞむところですわ!!」
そして時は流れ…… 〜ダイヤ大学6年生 7月某日 クダン第3合同庁舎 17階会議室〜
今日は麻薬取締部の説明会。
ダイヤは張り切って会場に1番乗り!のはずが既に席は埋まりつつあった。
と言っても、全体で80人程度だろうか。
ダイヤ「お隣失礼します」
ざっと見渡す限り、名古屋であった取締官のような風体の採用希望者は見当たらない。
真面目そうな学生や、ミリタリーや警察物の作品が好きそうなオタク気質の雰囲気な人間が多いように感じる。 待っているうちに予定の10時半となり、説明会が始まったが、高校3年生から麻薬取締官を目指していたダイヤにとって、新しい情報はなかったどころか少ないくらいだった。
ダイヤ「高校時代に名古屋で聞いた内容の方が濃かったかもしれませんね…」
司会取締官「では今から現役取締官2人に質問できる質問時間を設けます。皆さん1人に対して取締官が2人つきますので、自由に質問をしてください。質問ブースは6箇所です。ではこちらの列の前から順番に」
ダイヤ「なんと!?」 そんな素晴らしいコーナーがあるだなんて…
ダイヤ「そう言えば…星空さんが言ってましたわ。説明会の質問コーナーから既に採用試験は始まっていると…下手な質問は出来ませんね」
司会取締官「はい、次はあなたね。奥の右から二番目に」
ダイヤ「はい!」
そしてダイヤは指定されたブースに移動したが、そこにいたのはおよそ公務員とは思えない風体の人間だった。 グレた取締官「座って」
ダイヤ「…はい」
その取締官は素肌に白シャツ。ボタンは3つ目まで開けて首には金色のネックレスをしている。なぜか室内なのに色の入ったメガネをしているし、髭だ。コテコテすぎる程にチンピラの風貌だ。
一方横にいる30代前後と思われる取締官は普通のスーツ姿に見せかけてネクタイの柄が派手すぎる。あの奇抜なデザインはサルバトーレだろうか。そして髭だ。 サルバトーレ取締官「じゃあお嬢さん、何か質問は?」
ダイヤ「は、はい!危険な仕事と聞きますが、恐怖を感じた場面などは今までありますか」
グレた取締官「ないね」
ダイヤ「え?」 グレた取締官「ないって言ってるの。危険って分かってるんだから安全対策は徹底してる。
別に怖くなんてないよ」
ダイヤ「あ、はい…ありがとうございます」
サルバトーレ取締官「他には、せっかくだしなんでも聞いてね」 ダイヤ「やはり犯罪者は待ってくれないわけで、不規則な生活になるとは思いますが、どのようにして気持ちをリフレッシュすることが多いですか?」
グレた取締官「別に普通だよ」
ダイヤ「はい…」
辛くなってきた…
あたり強くないかしら…
誰がどう考えてもこの人の普通と一般の方の普通は違う。それこそリ・ガズィとZガンダムくらい違う。
ダイヤは正直逃げ出したい気持ちになった。 ダイヤ「え、英語などの語学はやはり皆さんできるのでしょうか…?」
グレた取締官「いや、そんなことはないな。
できるやつはずば抜けてできるが、出来ない奴もいる。そこは別に重要じゃないと俺は思う」
サルバトーレ取締官「まあ、こことか名古屋みたいに外国人事件が多いところでは重宝するスキルですね」
グレた取締官「今はどちらかっつうと、インターネットスキルとかの方が重要視されるかもなぁ」 ダイヤ「そ、そうなんですね!ありがとうございます!
あとは…薬学出身者かそれ以外で仕事に有利不利はありますか?」
グレた取締官「ないね。あるのは個人の差だけだ。
現に俺も薬剤師ではあるが製薬メーカーで勤めてからここに転職してきた。
それまでの経歴や専攻で有利不利なんて生じないし、それを感じるなら単に自分の実力不足だ」
ダイヤ「な、なるほど…」 サルバトーレ取締官「さ、後ろもいますしこの辺ですかね。じゃあ、えーと名前は」
ダイヤ「黒澤!黒澤ダイヤです!」
グレた取締官「気をつけて帰りな。黒澤さん」
ダイヤ「ありがとうございました」
そうしてダイヤは合同庁舎を後にした。 ダイヤ「怖かったぁ…」
ともあれひと段落。面接は来月の中旬。
今日聞いた話をおさらいして面接準備をしなければ。
ダイヤ「後もう一踏ん張り。がんばるびぃ、ですわね」 ルビィは既に検事となって2年経つ。
絶対に今年麻薬取締官の内定を勝ち取り、妹に並ぶのだ。
そうしてあっという間に採用面接前日となった。 ダイヤ「あら電話。星空さん!?」
星空「もしもし、ダイヤちゃん?今時間いいかしら」
ダイヤ「もちろんです!」
星空「いよいよ明日ね。詳しい内容は話せないけど、面接官は間違いなく各課の課長とカントウシンエツ厚生局麻薬取締部長よ。
正直あの連中の雰囲気は化け物よ。空気に飲まれないように。以上!おやすみ!」
ダイヤ「ま、待っってください早い早い!もう少し何かアドバイスを!」 星空「あまり言うとビビっちゃわないかと思って。
でもダイヤちゃんなら大丈夫ね。ずっと準備してきたんだもの。
自分を信じなさい。そして、あなたを信じてくれるみんなを信じるのよ」
ダイヤ「はい…!ありがとうございます!」
星空「じゃあ、おやすみなさい。一緒に働ける日を楽しみにしてるわ」
ダイヤ「はい。おやすみなさいませ」
そうして電話は切られた。
と思いきやすぐにまた着信があった。 ダイヤ「真姫さん!?はいもしもし」
真姫「今時間いいかしら?」
ダイヤ「もちろんです!」
真姫「明日面接でしょ。頑張りなさいね。
ダイヤ自身をぶつければ絶対に大丈夫って私は信じてるわ。
だって私が採用する側ならダイヤ欲しいもの」
ダイヤ「光栄の極みですわっ…!」 真姫「ふふ、しっかりやるのよ。じゃあ私はこれから夜勤だから。おやすみ」
ダイヤ「おやすみなさい。真姫さん、お体に気をつけて」
ダイヤ「ふぅ…」
みんな応援してくれてる。
応えてみせる!
そうしてダイヤは眠りについた。 〜8月中旬 麻薬取締部採用面接当日〜
ダイヤ「緊張で眠れませんでしたわ…」
ダイヤ「μ’sのの曲でも聴きながらリラックスしましょう」
電車に乗り込んだダイヤはイヤホンを耳につけてμ’sプレイリストを再生した。だがほぼ一睡もできなかったダイヤは逆に電車内で寝てしまった。 絵里「ふぅ、座れそうね。あら、この子確か、Aqoursの黒澤ダイヤちゃん?そっくりさん?まあいいか。可愛い寝顔。リクルートスーツ…就活生なのね」
絵里は寝ているダイヤの横に腰掛けた。
イヤホンから微かに漏れる自分たちの歌う歌に思わず頬が緩む。
絵里「聴いていてくれる人がいるって、何年経ってもしあわせね。
でも寝ていて大丈夫かしら。次の駅は…九段下ね」 ダイヤ「私は…断然エリーチカ…」
絵里「あら、寝言で私の名前を…私の可愛いファンさん。次は九段下だけど、起きなくて大丈夫?」
ダイヤ「ピギィ!九段下!?おきます!ありがとうございますお姉さん!!」
絵里「どういたしまして。就活頑張って」
ダイヤ「どうもっっってエリーチカぁぁぁあああ!?」 閉まりゆくドアの向こうにはそっと唇に指を当てる、憧れの大スクールアイドルがいた。
人目も憚らずダイヤは絶叫してしまったのだ。
ダイヤ「ま、真姫さん真姫さん!!」
ダイヤは真姫に電話をかけた。
真姫「…もしもし。何よ。
と、ごめんなさい、夜勤明けで今起きたところなの」
少し不機嫌そうに電話に出た真姫だったが、すぐにいつもの雰囲気に戻った。 ダイヤ「い、今、エリーチカが電車に!!起こしてもらってしまいました!」
真姫「東京なんだから絵里の一人や二人いるでしょう」
ダイヤ「いえ、エリーチカはオンリーワンです」
真姫「そ、そうね、私少し寝ぼけてたわ。
てっきりダイヤは私のファンなのかと思ってたけど、浮気?」
意地悪に真姫が問いかける。 ダイヤ「そ、そう言うわけでは…でも、私がスクールアイドルになりたいと思うきっかけになったと言う意味では、特別な人です」
真姫「よかったわね。今日のダイヤはついてるってことよ。安心ね。後ごめん。夜勤明けだからもう少し寝たいの。また後で話があったら聴いてあげる」
ダイヤ「突然すいませんでした。おやすみなさい」
ダイヤ「恐るべし東京…さ、行きますわよ!」 〜午前9時20分 クダン第3合同庁舎前〜
ダイヤ「面接は9時35分に来るように言われてたわね。よし…」
ルビィ「お姉ちゃ…じゃなくて姉さん!」
ダイヤ「ルビィ!?なぜここに!?しかもその格好は!?」
ルビィは検事になってからは髪の毛は下ろしていつもスーツ姿だった。
だが目の前のルビィは身長こそ160cmになっているが高校時代の姿のままだ。 ルビィ「た、たまたま捜査の途中でこの辺に来たら姉さんの姿を見かけて、声かけただけだよ〜よ〜…格好はスーツじゃ目立つから、カモフラージュに着てるだけだもん〜…」
ダイヤ「検事のかっこうだとこの辺ではすぐに身バレするからでしょう!仕事はどうしたの?!」
ルビィ「……抜け出してきた」
ダイヤ「なんと言う…」
ルビィ「私普段真面目だからこれくらいは誤魔化せる…はず…それに…」
ダイヤ「それに?」 ルビィ「お姉ちゃんのこと直接応援したかったから…」
ダイヤ「ルビィ!もう悪い子ですけど良い子!!ありがとう!」
ルビィ「えへへ…ガンバルビィだよ!お姉ちゃん!」
ダイヤ「ええ、ガンバルビィしますわ!それと、お姉ちゃんに戻っていますわよ」
ルビィ「しまった…
そうだ、面接何分から?」 ダイヤ「35分に来るようにと言われていますので、30分には伺おうと」
ルビィ「それはやめた方が良いよ。捜査機関は忙しくて秒刻みのスケジュールもザラだから。35分って言われたら35分ジャストで良いくらいだよ」
ダイヤ「なんと…!と言うことは、もう少しルビィといられますわね」
ルビィ「時間は気にしてね!?」
そうして束の間の姉妹の時間を過ごし、ダイヤは
面接に向かった。
9時35分ちょうどに麻薬取締部に着き、中に通された後5分ほどで呼ばれた。 中年女性取締官「こちらにどうぞ。あの扉の先の部屋で面接です」
ダイヤ「はい!」
この面接で決まるのだ。
腹は既に括っている。
トントントン
ダイヤ「失礼します」
部長「どうぞ」 扉の先には5人の取締官が座っていた。
星空のいう通りだった
ダイヤ「(雰囲気が今まで出会った人たちとの誰とも違う)」
部屋の空気も思い。
歴戦の猛者だ。素人でも違いがわかる。
ダイヤ「(この感覚。例えるならばハンターハンターの天空闘技場の200階…)」 調査総務課長「荷物は後ろの机に置いてね」
ダイヤ「はい」
荷物を置いてダイヤは自分のために置かれたであろう椅子の横に立った。
ダイヤ「K大学薬学部からきました黒澤ダイヤです。よろしくお願いします!」
部長「座って構いませんよ。では早速、自分の強みを踏まえて自己紹介を」 そうしていくつか質問が続いた。普通と思われる質問もあれば…
捜査企画情報課長「君のもつ麻取のイメージって何かな?」
ダイヤ「(また抽象的な…)そうですね…やはり昼夜問わぬ捜査業務でしょうか」
特別捜査課長「捜査業務?」
ダイヤ「はい、張り込みですとか尾行ですとか、そういった業務がイメージでは一番に浮かびます」
捜査企画情報課長「なるほどね。ありがとう」 部長「君は、麻薬取締部に入ってどんな業務がしたい?」
ダイヤ「(間違いなくこの人が部長だ)」
全員異様なオーラを放っているが、この真ん中の人物だけは桁違いだ。
それにテレビでも見たことがある。
ミスターマトリと呼ばれる人物だ。
役者のように渋い顔、声、そして髭。
次元が違う。
ダイヤ「私は…希望するのは捜査業務です」
部長「なぜ?危険の伴う業務だ」 ダイヤ「力になりたいのです。薬に苦しむ人、その周りの人たちも含めて。
薬学部で医療について学び、違法薬物に苦しむ人たちを救うことも、薬剤師の義務たる公衆衛生の向上にあたる立派な医療だと思っています。
何よりも、私の大切な人や、その人たちの大切な人。
全ての皆さんの平和な生活を守るためには、やはり最前線の捜査業務で戦う必要があると思うからです」
部長「そうか。ありがとう」 調査総務課長「今、部長も仰ったけどね、警察業務は危険だし、全国転勤ありのハードな仕事だ。
ご家族はその辺どう思っているのかな?」
ダイヤ「父も母も妹も、心配はしています」
捜査第一課長「まあそうだよなぁ」
捜査第二課長「私も、自分の娘に麻取になりたいって言われたら全力で止めますねぇ」
ダイヤ「…ですが、それ以上に誇りに思うと言ってくれました。
心配はしていますが、私のことを理解し応援してくれています!」 調査総務課長「ふむふむ。わかりました。皆さん、他に何かありますか?」
他の4人は『無い』というリアクションをそれぞれとった。
部長「では、以上で採用面接を終了する。気をつけて帰りなさい」
ダイヤ「は、はい…ありがとうございました!」
これで終わり…?
面接で重要と大学のみんなが言っていた逆質問もなし?
質問への回答も深掘りされなかった。
時間も… ダイヤ「まだ9時52分。たった10分でもう終わり…?」
ダイヤ「見込みなしってことなの…あんなにがんば…あ…」
ダイヤは頑張ると言って自分を奮い立たせることはあっても、『頑張っている』『頑張った』と言う言葉は使わないようにしていた。
自分で頑張っていると感じる余裕があるならば、それはまだ頑張れていないと言う持論だった。
ダイヤ「私は今何を言おうと…でも…でもこの6年間ずっとこのために…」
ダイヤの目からは無意識に涙が出ていた。
合同庁舎を出た後で良かったと思った。 ダイヤ「出てくれるかしら…」
ダイヤはこの後、音大の大学院に通っている梨子と就活お疲れ様ティータイムの予定を組んでいた。
昼からの予定だったが、いますぐ誰かの側にいないと挫けそうだった。
ダイヤは震える指で梨子に電話をかけた。
梨子「ダイヤさん!?面接終わったのね!お疲れ様!」
ダイヤ「梨子さん…お昼からの予定ですが、今すぐ会えませんか…辛くて壊れそうなのです…」 梨子「ダイヤさん…?すぐ行きます!飯田橋で良かったですよね!?」
ダイヤ「ありがと…」
私の6年間はこんな形で終わってしまうのかしら……たった10分の会話で…
ダイヤ「お父様…お母様…ルビィ…」
ダイヤはグルグル回る思考のまま飯田橋に向かった。 〜同日 10時20分飯田橋〜
梨子「はぁ…はぁ…だ、ダイヤさんお待たせ…」
ダイヤ「梨子さん…ごめんなさいね急かして…」
梨子「良いんですよ!じゃあお店入りましょう」
そうして梨子に案内され、梨子がお勧めするカフェに向かった。 梨子「ここ、素敵じゃないですか?バンドのメンバーに教えてもらったんです」
ダイヤ「…素敵ですわ…」
どうやら水上カフェレストランのようだ。
都心に、このようなカフェがあることにダイヤは驚いた。
梨子「で、何かありました?私で良ければなんでも話してください」
ダイヤ「別に…ただあまり…面接うまくいかなくて…」 梨子「落ちたかもって、ことですか」
ダイヤ「そう…」
梨子「でも、ダイヤさんは自分でやれるだけのことはやったんですよね?」
ダイヤ「それは…もちろん…」 梨子「私もそう思います。それに、オーディションとかもそうですけど。
できた!絶対私がナンバーワン!って中々ならないですよ。
むしろたくさん準備してきたからこそ、周りから見たら上手くいってても、自分では粗が気になるんです」
ダイヤ「そういうものでしょうか…」 梨子「そうだ…!」
そう呟いて梨子はスマートフォンを操作しだした。
作業は数秒で終わったようで、すぐに携帯を伏せておいた。
梨子「すいません一緒にいるのに携帯いじって。この後少し連れて行きたいところがあるんですけど、大丈夫ですか」
ダイヤ「うん…」 こんなにしょげているダイヤはなんだか新鮮で、梨子は不謹慎にも少し可愛いいと想ってしまった。
元々急にハイになるところがあるとは思っていたが、下にも振り切れるとは思っていなかった。
それだけこの面接にかけていたのだろう。
そうして少し早めのランチを食べ終わり、二人は外に出た。
出るとそこにはタクシーが止まっていた。 運転手「予約の桜内さんね。目的地は予約の内容から変更なしでいいですか?」
梨子「はい!よろしくお願いします。ほら、ダイヤさんも乗って乗って」
ダイヤ「は、はい…いつ呼んだの梨子さん?」
梨子「さっき携帯で。アプリがあるんです。便利ですよ。マトリになったら使いそうですし、教えますね」
ダイヤ「なれたら…ですけど…」 梨子「…もう!そんなことばかり言って!」
ダイヤ「だって…」
運転手「着きますよ〜」
梨子「あ、はーい!」
ダイヤ「ここは…」
アキバドームだった。かつて私たちが目指してたどり着いた場所。 梨子「ダイヤさんは…『取締官になること』が目標ですか?」
ダイヤ「え…?」
梨子「大切な人を守りたい。愛情を注いでくれた人たちにお返しがしたい。
その目的の手段として、取締官があるんじゃないですか?」
ダイヤ「それは…そう…ですわね」 梨子「確かに、面接に通って取締官になれたら、それは完璧ですよね。
でも、もしなれなかったからと言って今までのダイヤさんの積み重ねって無駄になるでしょうか?」
ダイヤ「どうでしょう…」
梨子「私はならないと思います。
誰よりも学んで得た知識も、続けていた格闘技も、運動で身につけた体力も、ダイヤさんの目標に必要ないもの、ありますか?」 ダイヤ「……」
梨子「ダイヤさんは、目的と手段が気づかないうちに入れ替わって考えてしまっているんですよ。
廃校を阻止するという目的があって、その手段としてスクールアイドルがあったのと同じです。
ダイヤさんに関しては、それよりも手段として選ぶものの幅が広いと思いますよ、私は」
ダイヤ「梨子さん…」
梨子「取締官になっても、ならなくても、ダイヤさんは自分の目的のために黒澤ダイヤを貫くだけ、ですよね?」 ダイヤ「そうですわね…その通りです…梨子さん、ありがとう」
梨子「良いんですよ。辛い時はお互い様です。
私のバンドの初ライブ、結局ガラガラだったけどダイヤさんが一番乗りで来てくれた時、本当に嬉しかったんです。
少しはお返しできたかな。」
そうだった。
ダイヤの目的そのものは、麻薬取締官でなくても色々な形で叶えようと思えば叶えられるのだ。
なってもならなくても、それは変わらない。 ダイヤ「少し、吹っ切れました。ごめんなさいね梨子さん。せっかく会ったのに、ずっと失礼な態度で私…」
梨子「本当ですよもう!!だから、今日は夜まで遊んでくださいね!」
ダイヤ「私で良ければいくらでもお付き合いしますわ」
梨子「私で良ければじゃなくて、ダイヤさんが良いんです!夜ご飯のお店は任せますよ!」
ダイヤ「はい!美味しいお肉料理の店があるの」
梨子「楽しみです!」 ダイヤ「まずはカラオケに行きましょう!今日は生エリーチカに初遭遇しましたので、私のBiBIメドレーに磨きがかかりますわよ!」
梨子「ダイヤさんの一人μ’s芸久しぶりですね。早く行きいましょう!」
ダイヤ「フリータイムで行きますわよ〜!!」 〜2週間後 18時40分〜
面接から2週間。気持ちの整理がついたダイヤは地元沼津の方に展開している中小薬局チェーンを受けようかとエントリーシートの準備をしていた。
ダイヤ「まさか新歓の時の嘘が本当になりそうとはね…」
その時ダイヤの携帯電話に着信が入った。
ダイヤ「登録されてない番号…03…東京の局番ですわね。はい、黒澤です」 中年女性取締官「もしもし。黒澤ダイヤさんですね。カントウシンエツコウセイキョク麻薬取締部です。今お時間よろしいですか」
ダイヤ「はい…」
中年女性取締官「春から貴方に麻薬取締部で働いていただきたいと思います。正式な内定通知は10月1日に公布されますので、それまでお待ちください」
ダイヤ「…え?私が?」
中年女性取締官「はい。お受けしていただけますか?」 通った…面接に通ったのだ。
ダイヤは電話をしながら小躍りした。
ダイヤ「もちろんです!!!!よろしくお願いします!!」
中年女性取締官「黒澤さんは新卒薬剤師見込みですので、採用は5月1日になります。
国家試験、落ちないようにしてくださいね。
落ちたら内定取り消しですので」
ダイヤ「はい!頑張ります!!」
中年女性取締官「では、失礼します」
ダイヤ「と、通った…私…」 ダイヤは急いで考えられるだけの人に内定の報告をした。
直ぐに真姫が連絡をくれた。
真姫「おめでとう。絵里のラッキーパワーかしら。そういうのは希の役だと思ってたけど。
なんてね。ダイヤがずっと頑張ってきたんだもの。当然の結果よ。
明日の夜空いてる?お店予約するから、お祝いしましょう」
もちろん空いていたので、約束を取り付けた。
詳しい話はそこで聞くわ、と真姫からの電話は切れた。 それから、両親、ルビィ、日本にいるAqoursのメンバーから次々とお祝いの電話やメールが届いた。
共通していたのは、みんながダイヤは受かるだろうと心配していなかったことだった。
ダイヤ「嬉しいけど少し複雑ですわね…受からなかったらどうなってたのかしら」
ともあれ肩の荷が降りた。
ダイヤ「今日はよく眠れそう」 〜翌日 某都内ホテル最上階のレストランにて〜
ダイヤ「スーツで大丈夫でしたかここ…」
真姫「気にしすぎきよ。てっきりダイヤもお嬢様だから、こういう場所は慣れてるかと思ったわ」
ダイヤ「むしろ料亭とかの方が落ち着くくらいで…
料亭なら実家も経営していますし…」
真姫「私はむしろそっちの方が経験少ないわ。
ねえダイヤ。私たちって似たもの同士のようで、足りないところを補い合える、良いパートナーだと思わない?」 ダイヤ「そ、そんな!!恐れ多いことを!!!」
真姫「ねえ、私しばらく実家の病院で働いたら独立して診療所を開こうと思うの。その門前に薬局を構える気はない?
私、貴方と仕事がしたいわ」
ダイヤ「それは…」
嬉しい申し出ではある。
ダイヤという個人を評価して誘ってくれているのだろう。
光栄だ。でも… ダイヤ「嬉しいですが、お断りさせてください…
私は、自分の軸をブレさせないと決めましたので」
真姫「そう言うと思った。そんなダイヤだから、私はダイヤが好きなのよ」
ダイヤ「た、試しましたわね!?」
真姫「違うわよ。誘いに乗ってくれても喜んだわ。
あなたと仕事がしたいのも本心よ」 ダイヤ「人が悪いですわ…もう…」
真姫「大変な仕事なんでしょ。
辛くなったら、いつでも来なさい。心療内科開いて待ってるから」
ダイヤ「不吉…!」
真姫「さぁ、食べて飲みましょ。ダイヤ、おめでとう」
ダイヤ「ありがとうございます…!」 〜5月1日 黒澤ダイヤ24歳 トウカイホクリク厚生局麻薬取締部 部長室〜
部長「黒澤ダイヤを本日付で構成労働技官
トウカイホクリクコウセイキョク麻薬取締部 特別捜査課に採用する。
俸給は行政職俸給表(一)1級34号を給する。
久しぶりだね。私は君が高校生の頃は星空の上司で調査総務課長だったんだよ。
まさか君がここに来るとはね。
もう定年退職されたが、前関東部長が期待していた。
君がどんな取締官になるのか見届けることができないのが心残りだと言っていたよ」
ダイヤ「恐縮です。全身全霊で国家の公衆衛生向上及び違法薬物の取締りに従事します」 初日は辞令交付と入省関係書類の記入に追われ、あとは職場案内と近隣の警察署や検察庁への挨拶回りだ。
ルビィは来年からはA庁検事だろうから、東京・大阪・名古屋のどこかに配属されるだろう。
名古屋だったら嬉しいな、とダイヤは思った。
そうして、初日は定時で上がらせてもらえた。
ダイヤ「明日からは忙しくなりそうね!」
星空「ダイヤちゃーーーん!!!」 合同庁舎を出ると、そこにはダイヤがこの世界に踏み込むきっかけをくれた星空が立っていた。
ダイヤ「星空さん、今横浜では…!?」
星空「午後有給使って明日も有給使ったわ!
嬉しくて嬉しくて…さぁ!ご飯いきましょう!予約はしてあるの!」
ダイヤ「あわわ…ま、待ってください!」
そうして、ダイヤのマトリ人生が始まったのだ。 〜9月某日 月曜日 11時45分〜
ダイヤ「と言うわけです」
若手取締官「…長いわ!もう昼だよ!」
ダイヤ「まあまあ、いいではないですかたまには」
若手取締官「黒澤はあれだね、真面目な皮を被って結構バグってるね」
ダイヤ「失敬な!」 若手取締官「でもさ、話してくれてありがとうな。さあ、昼飯行こうぜ」
ダイヤ「ご一緒していいんですか?」
若手取締官「無理にとは言わないけど、そのつもりだぜ」
ダイヤ「是非ご一緒させてください。何を食べにいきましょう」 若手取締官「最近美味しいハンバーガー屋さん見つけたんだけど、どうよ。
黒澤ハンバーガー食わなそうだけど」
ダイヤ「そんなんことありませんわよ。ただハンバーグが苦手で…」
若手取締官「大丈夫。そこフィレオフィッシュがうまいから」 ダイヤ「私魚の味にはうるさいですわよ。
お土産の干物からもわかるように黒澤家のルーツは漁師にあります。
魚に関しては幼少の頃より英才教育を受けてきたと自負しております。その私をなっと…」
若手取締官「おま、黒澤お前面倒くせえなぁ!!!行くぞ!!!」
ダイヤ「ああ!!おいて行かないでください先輩!」
若手取締官「ふん!!」 ダイヤ「あ、すいませんテレグラムにメッセージが。Aqoursの仲間からですわ」
若手取締官「黒澤友達とのやりとりにテレグラム使ってるの!?悪いことしてないよね!?
歩きスマフォ危ないから止まるぞー」
ダイヤ「ありがとうございます。…あらあらまぁまぁ」
若手取締官「どうした。急ににやけて」 ダイヤ「Aqoursの大切な仲間が二人も結婚式を挙げるそうで…二人ともずっと一緒に住んではいましたけど、ようやく」
若手取締官「めでたいじゃん。こりゃまた、なかなか仕事辞められなくなるな。黒澤」
ダイヤ「ええ。守るものが多くて大変ですわ!」
若手取締官「俺も一緒に守るよ。がんばろうや」
ダイヤ「先輩…」 若手取締官「この仕事つらくてさ、挫けそうになるけど、そうやって誰かの幸せを守ることにつながるって思えば、頑張れる。
改めて気づかせてくれて、ありがとうな、黒澤」
ダイヤ「どういたしまして。お礼にお昼ご馳走してくださいね」
若手取締官「お前…そう言うタイプか…」
ダイヤ「曜さん、善子さん、お幸せに」 若手取締官「ん?何か言った?」
ダイヤ「はい、言いました。独り言です」
若手取締官「普通そういう時『いいえ』って言わない…?」
ダイヤ「私は嘘をつかないと決めているんです!
さあ先輩!お腹空きました急ぎましょう!!」 高3の時、麻薬取締官になりたいと思った時よりも、守りたいものや守らなければいけないもの、その重さは随分増えてしまったように思う。
でもそれで構わない。
みんな遠慮しないでどんどん幸せになれば良いのだ。 その幸せが私の灯台になる。踏み外さずに進んでいくための。
そうして歩む日々ひとつひとつが私、黒澤ダイヤの存在証明だ。
でも今は少しだけ仕事のことは忘れて、先輩とハンバーガーでも食べながら、曜さんと善子さんの船出を祝いましょう。
SS 麻薬取締官 黒澤ダイヤ
episode0 sailing day
完 以上でAqoursとクスリ関係の一連の流れは一区切りです。
長々とした作品になりましたが、付き合ってくださった方々には心から感謝申し上げます。 作中に出てきた曜と善子についての詳細は、先日あげたこちらのSSで詳細に書きました。
見てくださると嬉しいです。純愛です。
SS 曜「ミスド寄って行かない?」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1592047359/l50 また、スレの途中にも書きましたが、この世界線での黒澤家についてはこちらのSSで
詳細を記しました。合わせてご覧ください。
果南「ぶっちゃけ黒澤家ってヤク… ダイヤ「はぁぁぁ……」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1591533871/l50 面白かった!あとスレタイのイメージより平和な内容でほっとした
過去作読めばもっと世界観わかる感じなのかな >>234
長い文章にも関わらず読んでくださりありがとうございます。
過去作合わせるとそこそこの文量にはなってしまいますが、読んでいただけた方がより世界観の繋がりがわかっていただけるかと思います。 >>235
おぉありがとうございます
もっと知りたくなったので読んできます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています