真姫「校庭でオナニーしてたら鎧武者が近付いてきたのよ」
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真姫「薄っすら透けてたけど……見た感じ男だったし多分不審者よ。通報してる間に姿消したけど、皆も気を付けて」
穂乃果「まさか私達の学校に不審者が出るなんて……怖いねえ」
花陽「鎧武者ってことは……刀持ってるんだよね。うう、怖いよぉ……」
凛「大丈夫にゃ、かよちんは凛が守ってあげるよ!」
花陽「凛ちゃん……!」
海未「待ってください。何故校庭でオナニーを?」 真姫「え……?」
穂乃果「ちょ……何言ってるのさ海未ちゃん……」
海未「え? え?」
海未「何ですこの反応。校庭でオナニーなどという破廉恥極まりない行為をしているのですよ?」
海未「そういう目で見られるのは真姫の筈では?」
真姫「ああ……成程。海未は校庭でオナニーをしない派なわけ?」 海未「そもそもそういった派閥があったことを今知りましたよ」
真姫「あれでしょ? 恥ずかしいから家でしかオナニー出来ません、っていう」
凛「ストリートに立ってないチュルいオナニストなわけだね」
海未「そもそもオナニー自体が恥ずかしいことだと何故気付かないんですか?」
海未「校庭なんかでシて、誰かに見られたらどうするんです。廃校まっしぐらですよ」
真姫「だから見られたって話をしてるんじゃない! ちゃんと話を聞いてたの?」 海未「そんな破廉恥な話など聞きたくありません。校庭オナニー派の皆で話していればいいじゃないですか」
真姫「けど海未、不審者が出たのは事実なのよ」
真姫「私が校庭でオナニーをしたかどうかなんて、小さい話じゃないの。もっと視野を広く持ちなさい」
花陽「そうだよ。学校に不審者が入ってきてるんだよ?」
海未「……分かりました。ならば先生達に報告するべきでは?」 真姫「通報した後、すぐに職員室に向かったに決まってるでしょ」
真姫「ただ、見回りを強化するくらいしか言ってくれなかったのよ」
穂乃果「うーん、このご時世に鎧武者だからね。信じてもらえなかったとか」
海未「そもそも本当に鎧武者だったのですか?」
海未「通報している間に消えたと言いますが、鎧は動く際に音が出ますし。何かと見間違えたとか」
真姫「いや……あれは間違いなく鎧武者だったわ。兜を被っていたし、刀みたいなものも下げていたし」 海未「うーむ……」
ガラッ
絵里「あら、皆難しい顔してどうしたの?」
希「校庭でオナニーしてたら鎧武者に遭遇したような顔してるやん」
海未「そうなんですよ。校庭でオナニーしていたら鎧武者に遭遇したんです」
希「へえ、海未ちゃん校庭オナニストやったんか。ウチは屋上派やから相容れんな」
真姫「校庭ニストは海未じゃなくて私よ。というか屋上でやらないでよ、床に汁とか染みつくでしょ」 絵里「よ……鎧武者って……まさか幽霊とかじゃないわよね……?」
花陽「ピャアッ!? ゆ、幽霊!?」
海未「……幽霊なんて非科学的なもの、この世にいるわけないじゃないですか」
真姫「そうね……と言いたいところだけど。さっき海未も言ってたでしょ、鎧は動いたら音がするって」
海未「ええ、確かに……あっ!?」
真姫「鎧武者は通報している間に消えた、遠ざかる音も聞かなかったのに……幽霊と考えたら確かに筋は通るわ」 絵里「こっ……この音ノ木坂学院に、幽霊が出るっていうの……!?」
凛「絵里ちゃん大丈夫? 顔色凄いことになってるにゃ……?」
絵里「の、希ぃ……」
希「はいはい、大丈夫大丈夫」ナデナデ
希「二人共あんまり怖がらせたらあかんよ。絵里ちは怖がりなんやから」
真姫「希は何か聞いたことない? 例えば音ノ木坂に鎧武者の伝説があるとか、昔ここは戦場だったとか」 希「そういう話は聞いたことないなぁ。第一ここって昔から街のど真ん中やったらしいし」
希「屋敷とかがあって、当主が武士だったとかなら可能性あるかもしれないけど……」
真姫「そんな感じじゃなかったのよね……」
海未「真姫が校庭ニーをしている時、鎧武者はどんな感じだったんですか?」
真姫「そうね……不審者だと思って慌ててたからよく覚えていないんだけど」
真姫「確か……凄く悲しそうな目をしていたわ」 凛「悲しそうな目……? オナニーを見て?」
真姫「そう、オナニーを見て」
真姫「けれどオナニーを見て悲しそうな目をする鎧武者がこの世にいるとは思えないのよね」
穂乃果「そうとも言えないよ。この前私が部屋でオナニーしてる時にお父さんが部屋に入ってきたんだけど」
穂乃果「凄く悲しそうな目をしていたもん」
海未「それは……まぁ娘のオナニーを見たら悲しくなりますよ」
凛「凛のパパは凛が台所でオナニーしてても平然としてるよ。個人個人の趣向によるんじゃないかな」 花陽「あっ! 分かりました!」
真姫「何か分かったの!?」
花陽「真姫ちゃんのオナニーを見たのは鎧武者なんだよね? 鎧武者ってことは恐らく何百年も前に死んだ人なんだよね」
花陽「その頃、校庭なんて無かったでしょ? だからその鎧武者は校庭オナニーを知らなかったんだよ」
真姫「成程……確かに校庭オナを知らない人からすれば、校庭でするオナニーは悲しい物に見える」
真姫「さながら、私の話を聞いた瞬間の海未のように」 海未「私は今でもドン引いてますけどね」
絵里「じゃ、じゃあもう幽霊で確定じゃない……!」
絵里「校庭オナニーを知らないなんて、未開の部族か過去の人間くらいなものだもの!」
海未「そんなに有名なんですか校庭オナニー?」
希「知名度的にはジャスティン・ビーバーとタメはる位には有名やん。むしろ何で海未ちゃん知らんかったん?」
穂乃果「ほら……海未ちゃんこういう話題になると、破廉恥ですとか言って逃げちゃう方だから」 希「今逃げてないやん」
海未「私もあのままだといけないと思ってある程度特訓したんですよ」
海未「穂乃果の部屋にあったエロ本を読んでみたり、穂乃果の部屋にあったAVを視聴してみたり」
海未「ことりのバイブを拝借したり、中イキに挑戦してみたり……」
海未「努力が報われて、今こうして何とか下世話な破廉恥話に耐えられているんです」
穂乃果「海未ちゃんのせいだったんだ。私のコレクション減ってるなぁと思ってたんだよね……」 真姫「けど鎧武者は何でいきなり現れたのかしら」
絵里「確かにそうよね……昔からずっといたのであれば、何処かでそんな怪談話を聞いていてもおかしくないのに」
穂乃果「考えられるとしたら……真姫ちゃんのした行動のどれかがトリガーになって、幽霊として現れるようになったとか」
凛「もしくは何処かからやってきたとか?」
海未「何処かから……やってきた?」
凛「うん。皆ここにいる霊だって前提で話を進めてるけど、浮遊霊かもしれないでしょ?」
凛「霊は移動する個体の方が多いってテレビで言ってたにゃ」 海未「となると、鎧武者はたまたま何処かからこの音ノ木坂学院に浮遊してきて」
海未「たまたま発見した第一学生が、彼にとっては異常とも思える校庭でオナ狂っている真姫だったと」
花陽「冷静に考えてみれば最悪の構図だね」
穂乃果「鎧武者も相当落ち込んだだろうね」
真姫「何だか……悪いことしちゃったような気がするわ」
穂乃果「次に会った時に謝ればいいよ。オナニーしててごめんって」 真姫「私は校庭でオナニーをしていることが悪いとは思えない……けど、謝ってみるわ」
希「素直に謝れるのはいいことやと思うよ」
海未「ええ、最初の印象がどうであれその後の行動で評価なんていくらでも変わるんですから」
真姫「もう一度校庭に行ってみるわ、また居るかもしれないし」
海未「一人で大丈夫ですか? 相手は鎧武者ですし……」
真姫「大丈夫。謝罪に誰かを付き添わせる程子供じゃないわ」 校庭
真姫「確かこの辺だった筈だけど……あった、私の汁跡」
真姫「ここでオナニーをしていたら鎧武者が現れたのよね……」
真姫「……」
真姫「……」シュルッ
真姫「はぁ……はぁ……」 真姫「……んっ」チュク
真姫「あっ……はぁ……」クチュクチュ
真姫「やっぱり……校庭でするオナニーは最高ね……」クチクチ
真姫「んうっ……」
鎧武者「……」
真姫「!?」 鎧武者「……」
真姫「……」
真姫「あ、あの……」
鎧武者「……」
フッ
真姫「あ……消えた……」 真姫「あの鎧武者の目……とても悲しげだった……」
真姫(何故私はオナニーをしてしまったのだろう)
真姫(謝罪に来た筈なのに、何故校庭で興奮してしまったのだろう)
真姫(悔やんでも全てはもう手遅れなのだ)
真姫(一度手のひらから落ちた砂は、もうかき集めることなど出来ないと知っていた筈なのに)
真姫「ごめん……なさい……」
真姫(気付けば雨が降っていた)
真姫(頬に流れる水が、雨なのか涙なのか。今の私には分からなかった) 真姫「というわけで怪談ライブをするわよ」
海未「唐突ですね」
真姫「鎧武者の幽霊を見たんだから仕方ないじゃない」
海未「それを理事長に話した結果、我々の語りを衆目に晒す羽目になったと」
ことり「先走る人だから……」
凛「凛は怖い話苦手だなあ」
花陽「私もだよぉ……」 凛「かよちんは見るからに苦手そうだからにゃー」ブォンッ
花陽「う、うん」
花陽(今凛ちゃんが二重にぶれた……)
絵里「まあ……決まってしまったものは、仕方ないんじゃない?」
希「怪談となればウチの出番や! やったるでえ!」 にこ「それで、いつやるのよ。怪談をやるにしても、話を調達する時間くらいはあるわよね?」
ことり「今日です」
にこ「は?」
穂乃果「ええっ!? 穂乃果、怖い話の用意なんて何もないよ!?」
海未「穂乃果は先日体験したあれでいいのでは?」
穂乃果「ああ、あれ……でもあれはなぁ……」
ことり「とっても怖かったし、あれがいいと思うよ!」 真姫「あれ、って?」
穂乃果「実は私、昔ね……」
希「待つやん。お楽しみは後にとっておいたほうがええやろ」
真姫「それもそうね。私としたことがとんだ失敗だわ」
絵里「私も一つあるけど、真姫は?」
真姫「怪談話のストックなら、そうそう負けないわよ!」
にこ「それは頼もしいことね。にこの番もあげたいくらいだわ」
海未「にこ、それはいけませんよ」
にこ「だって、本当に怖い話なんて……」
希「皆が話してる間に何か思い出せばええやん?」
にこ「うーん……」 夜
ことり「何はともあれ、怪談ライブの開幕です!」
穂乃果「わーい」
海未「拍手をしています」
希「この平坦な反応こそホラーちゃうんかな」
凛「何も思いつかなかったにゃ。かよちん、助けてー」
花陽「あれがああなって……これがこうだから……」ブツブツ
凛「かよ、ちん?」
凛「何故だろうか、嫌な気がするにゃ」
穂乃果「お客さん結構いるね」
希「穂乃果ちゃんが一番やな、ほら行ってき!」
穂乃果「うん、行ってくるよ!」 第一夜 「トンネルの向こう側」 語り部 『高坂穂乃果』
今晩は。思ってたよりお客さん多いね。
冬なのに怪談話を聞きに来る人っているんだねぇ。
もっとガラガラだと思ってたよ、理事長の思いつきみたいなもんだし。
えっとね、これは私が体験した話……なんだけど。
これが幽霊の仕業なのか、人間の仕業なのか。実は私も分からないんだよね。
だから……こんなことがあった、くらいに聞いてくれたら嬉しいな。 私の家は穂むらって和菓子屋さんなんです。
普段はお母さんやお祖母ちゃんが店に立ってるんだけど、学校が早く終わった日とか部活が無い日は私も店頭に立つことがあるんだ。
接客のアルバイトなんかをしたことがある人は分かると思うんだけど、どんなお店にも常連さんっているよね?
穂むらにも勿論常連さんはいて……とはいってもお爺ちゃんとかお婆ちゃんが多いんだけど。
若い人も少しはいるんだ。その中の一人……名前は仮にYさんとするね。
海未ちゃんやことりちゃんは会ったことがあると思う。あのスポーツ刈りの人。 Yさんは大学の登山サークルの部長をやってる人なんです。
暇さえあったら山を登ってる……海未ちゃんみたいな人だね。
これは、そんなYさんと私と、登山サークルの人達が体験した話。
あれは……確か一度目のラブライブの参加を辞退した後だったから、八月も終わりかけの夏のこと。
その日は練習も休みで、お母さんから店番を押し付けられて店頭に立ってたんです。
けど、珍しく朝から全然人が来なくてさ。まあたまにはこんな日もあるよね、なんてぼーっとしてた時。
ガラス戸が開いて、Yさんと何人かの男女が店に入ってきたんだ。 あれ、Yさんいらっしゃい。何人も連れて珍しいね。
そう聞いたらYさん笑って、今から近くの山に登るからサークルの仲間と糖分取りに来たんだ、って。
へえ、登山かぁ。いいなあ。何の気なしにそう呟いたら、Yさん目を輝かせてさ。
よかったら一緒に登らないかって、目を輝かせながら言ってきたんだよ。
一瞬で分かったね、これは海未ちゃんと同じ系譜だって。
元々相槌くらいのつもりだったし、いやいや、店番がありますし。って断ったんだけどね。
お母さんが奥からひょいと顔を出して、今日は暇だからご迷惑じゃなければ行ってきていいわよなんて言ってさ。 登山は足腰を鍛えられるからアイドルの練習にもなる、なんて。
そう言われたら、お母さんの後押しもあるし断り辛くなってね。
まあ店番するくらいなら登山の方がマシかって、動きやすい練習着に着替えてさ。
ちょうど和菓子を食べ終わったYさん達と一緒に山に向かったんだ。
近くって聞いてたけど、この辺に山なんかあったかなあ。そんな風に思ってたんだけどね。
予感は的中して、駅二つ分くらい歩くことになってさ。山に着いた頃には既に少し疲れてたよ。 こんなので登り切れるのかなあ、って思ってたんだけどね。
Yさんもサークルの皆も優しくて、素人の私に気を遣ってくれてさ。
山の空気の清々しさもあって、気付けば山の中腹まで登れてたんだ。
時刻はお昼を少し回ってたかな。ここで一旦休憩しようってYさんが言って、皆思い思いに座ったり喋ったりしてた。
私は登山サークルの女の子達と喋ってたんだけど、Yさん達は元気が有り余ってるのかその辺探索してくるなんて言って、何処かに歩いて行ってた。
十分くらいした頃かな、話してた女の子の一人があれ、って顔をしてさ。何か聞こえるって言いだしたんだ。 釣られて耳をすましてみたら少し遠くからYさんの声が聞こえてきたんだ。
けどその声が変なんだよね、反響してるというか、くわんくわんって響くような声だったんだよ。
そんな声で、おーい、おーいって呼んでるんだ。
何か見つけたのかな、崖から落ちたんじゃない。そんな好き勝手なこと言いながら、私達は立ち上がって声の方へ歩いて行ったんだ。
とはいえ反響してるからさっぱり場所が分からなくてさ。
遠くなったり近くなったりする度に方向転換して、あっちでもないこっちでもないって探してたんだ。 普通に怖くなってきたがどこに向かってるんだこのssは 草をかき分けて、やっと辿り着いたと思ったらさ。
目の前に、大きな黒い穴があったんだ。
一瞬それが何か分からなかったよ。昼間の筈なのに、ほとんど光が入っていないみたいに見えた。
隣にいた子が、トンネルだ。ってボソッと言って、ようやくそれが大きなトンネルだってことに気付いたくらい。
こんな大きなトンネル誰が作ったんだろ、何処に繋がってるのかな。そんな風に思ってたらね。
おーい、おーい。って。
トンネルの中から、Yさんの声が聞こえてくる。 中はカーブになってるのか、さっきも言った通り真っ暗で遠くに光も見えない。
その暗闇の真ん中で、こっちに向かって手を振ってるYさんの姿が見えた。
トンネルの向こうに何か見つけたのかな、そう思って。はーい、って答えてさ。
一歩踏み出そうとした瞬間、両手をぐっと掴まれたんだ。
凄い力だったし、手のひらに汗をかいてたのかな、しっとりとした感触だったのをよく覚えてる。
私の隣に立っていた女の子二人とも、私の手を掴んでた。意味が分からなくて、何、どうしたのって聞こうとしたんだけどね。
二人とも、真っ青な顔してるんだよ。凄い形相でトンネルの奥を睨みつけて、ゆっくりゆっくり後ずさってる。 その間も、Yさんはおーい、おーいって私達を呼んでてさ。
どうしたの? Yさん呼んでるよ。って精一杯の声を絞り出して聞いてみたんだけど答えてくれない。
ただ一言、短く。逃げるよ、絶対振り向かないで。って。
それだけ言って、無理やり方向転換させられて、引っ張られながら元の草むらに飛び込んだんだ。
休憩してたところまで戻ってる間、私も、サークルの子達も誰一人口をきかなかった。
ずっとずっと、Yさんのおーい、おーいって呼ぶ声だけが遠くなったり近くなったりして響いてた。 やっと休憩してたところまで戻ってこれた時には、もうYさんの声は聞こえなくなってた。
一先ず落ち着いたけど、どうしてもさっきの行動が気になっちゃって。
青い顔で息を荒くしてる二人に、何でトンネルに入らなかったのかって聞いてみたんだ。
そしたら、一人の子が震える声でさ、こう言ったんだ。
トンネルの中は真っ暗で碌に見えなかったのに、Yの姿だけははっきりと見えた。
って。それを聞いた瞬間、私も背筋が寒くなったよ。
確かにYさんの周りは壁も地面も見えない程に暗かったのに、Yさんの姿だけははっきりと見えていたんだから。 それにさ。
引き継ぐように、もう一人の子が言ったんだ。
あそこに着くまでに道なんてなかったよね。道があった形跡すらなかったよね。
道がないのに、何の為にあのトンネルは作られたの?
あのトンネルの先は何処に繋がってたの? 私は何回もここ登ってるけど、あのトンネルが繋がってる先が想像できないんだよ。
それに、それにさ。
何で、私達を呼んでるYさんの顔。あんなに無表情だったんだろうね。 もう誰も、何も言いませんでした。
そうこうしてるうちにYさんやサークルの男の人達が戻ってきてね。
話を聞いてみたんだけど、Yさんはそんなトンネルは知らないし、男の人達もYはずっと自分達といたって言ってたよ。
けど、その話をしてすぐにね。Yさんが下山しようって言い出したんだ。
これ以上登る気力も無くなってたし、私もそれに賛成してさ。
皆一言も話さず、黙ったまま山を降りた。山を降りてすぐに、Yさんが皆にもうこの山に登るなって言ってたのが印象的だったなぁ。
……私の話はこれで終わりだよ。山の中に変なトンネルがあったって、それだけの話。 こっわ!
導入のバカバカしさからは想像できないガチの怪談 あのトンネルは何だったのかな、あの中にいたYさんは何だったのかなあ。
もしかしたらこの世のものじゃなかったのかもしれないし、登山サークルの人達が私に仕掛けたいたずらなのかもしれない。
けどあの時、Yさんの姿がくっきりと見えたのだけは今でも不思議なんだよね。
あのトンネルに入ったら、私はどうなっていたのかな。
Yさんの姿をしたあれに、トンネルの向こうに連れていかれたのかな。
……トンネルの向こうは、本当にあの山の何処かに繋がっていたのかな。
少し気になるけれど、私はもう二度とあの山に登ることはないと思います。
私の話はこれで終わり。次は海未ちゃんだっけ、楽しみにしててね。
第一夜 トンネルの向こう側 完 こんなアホみたいなタイトルから怪談になるとは思わなんだ
好きだよ 校庭オナニーの話を前座に始まる会談SS,斬新すぎる もし街角でスクールアイドルにでも出くわしたもんなら「オナニー怖い」と唱えるんだ なんかこのコピペ思い出した
先日、俺が妹の部屋で大便していたら、
旧・日本兵の格好をした見知らぬ男が入ってきた。
最初は泥棒かと驚いたんだけど、
無言のまま血走った眼でこちらを睨みつけてくる。
ちょっと薄気味悪くなって、「貴方は誰ですか、何をしているんですか?」って尋ねたら、
「バカヤロー!」って叫んでそのまま霞みたいに消えてしまった。
その後、帰宅した妹に事情を話したんだけど、
泣き叫ぶばかりで話にならなかった。
両親も怒鳴ったり喚いたりするばかりで、その男の話は何も出来なかった。
もしかすると家族は俺の知らない秘密を抱えているんだろうか?
いま思い出しても背筋が凍る思いだ。 くだらない話期待して読んだらこれかよ!これから寝ようと思ってたのに怖くて寝れないじゃねぇか。 μ'sが出会った怖い話
山では実際にあるあるな内容だから、人が本能的に怖く感じる良いエピソード
実は>>29で一人足りなくて、最終話を話す人が遅れてきそう >>53
コンビニのポプラのコピペもその人が作ったと聞いた
チンポプラのやつ まさかのホラーSSとは…
あと関係ないけどスレタイが一瞬鎧武に見えて笑った 校庭オナのSSを見ていたと思ったらいつの間にか真面目な怪談SSに変わっている
書き手がいつの間にかすり変わったのかとすら錯覚させられるホラー 第二夜 「首吊りの家」 語り部 『園田海未』
今晩は。μ'sの園田海未です。
本当に不思議な夜ですね。
真姫の遭遇した鎧武者が、気付けば怪談ライブに繋がりこうして皆様の前に座っている。
まるで……何と言うか、何者かに仕組まれていたかのように錯覚してしまいます。
皆さんもそういう経験ってありませんか? とんとん拍子に話が進んだり、無意識の行動が何かに繋がっていたり。
まるで目には見えない力が働いているような……私が今から語るのは、そん目に見えない何かが仕組んだ罠の話です。 あれは、音ノ木坂学院に入学してすぐ……まだ桜が咲き誇っている春のことです。
当時の私は、よく穂乃果とことりと共に行動していて……それは今もなのですが。
幼馴染ということもあって、常に三人一組のような状態だったんです。遊ぶのも三人、勉強をするのも三人。何をするのも一緒に……。
とはいえ私は入学してすぐに弓道部に入り、二人は特に部活には入らなかった為帰宅時間などほんの少しのズレはありましたね。
あの日も私は私は夕暮れの道を一人とぼとぼと帰っていました。二人はとっくに帰っていましたし、弓道部には帰る道が同じ人もいなかったのでいつも帰路は一人でした。
小学校中学校と、登校も下校も隣には穂乃果とことりがいましたから最初のうちは随分と心細かったですね。 夕方の道というのは妙に怖いものです。赤と薄紫が混じった色が、道を塗りたくるように何処までも伸びていく。
普段ならば気にもしなかった路地裏や、塀の上を歩く猫が奇妙なものに見える。
勿論二人がいないからというのもあったのですが、原因はもう一つあったんです。
……自分で言うのも何なのですが、私は中学生の頃までは文武両道を地でいっていたんです。
勉強も出来、日舞で鍛えた立ち居振る舞いとマナーで先生に気に入られ、運動も得意。
今にして思えば子供の思い上がりなのですが、周りに賞賛されることが当たり前だったせいで私は自分のことを優秀な人間だと思い込んでいたんです。 そんな甘い考えは、高校に入った瞬間に打ち砕かれてしまいました。
中学の頃と同じように勉強をしていても、学年上位に入らない。
精神統一の為にと入った弓道部でも、的に矢が当たらず先輩には怒鳴られてばかり。
穂乃果とことりは次々と友人を作っていくのに、私に近寄ってくる人間はほとんどいない。
自分はある程度何でも出来る人間だと思っていたのに。その実、何も出来ない人間だったんです。
少なくともその時の私は自分をそう捉えて、嫌悪にも似た感情を自身に向けていました。 自分は駄目な人間なのかもしれない。他人の目に怯えていたせいで、普段の通学路が異質なものに見えていたのかもしれません。
だからでしょうか。
いつも通りの道をいつも通り歩いていた筈なのに、気付けば私は見知らぬ路地を歩いていました。
両隣に塀が立ち並び、何処か圧迫感を覚えるような気味の悪い道を。
塀の向こうには家がいくつか建っていましたが、どれも廃墟のようにボロボロで人が住んでいる気配はありませんでした。
おかしいな、曲がり角を間違えたかな。そう思って振り返っても、自分が何処をどう歩いてきたのか分からないんです。
ただ分からなくても近所なのですから、歩いていけば知った道に出るだろうと私はそのまま路地を歩き続けました。 数分歩き続けても、路地は終わりませんでした。塀と、廃墟のような家々が延々と続いて……。
もう引き返して元の道を探した方が早いんじゃないか、そう思い始めた時でした。
右側の塀が途切れているのが見えたんです。
もしかしたら道があるのかもしれない。そう思い覗き込んでみましたが、塀の向こうに広がっているのは荒れ果てた小さな庭と、庭を挟んだ向こうに二階建ての家が建っているだけでした。
一軒家の入り口が此方向きについているのが見えて、ああ、これは門なんだ。こんなところに入り口を作るなんて不便だな、と。そう思ったのをよく覚えています。
ここも廃墟なのだろうか。一瞬そう思いましたが、ふと見上げた二階の窓にカーテンがかかっていて、その向こうに人影が揺らめいているのが見えたんです。
私はほとんど無意識のうちに、途切れた塀を超えて庭へと足を踏み入れていました。 普段ならばそんなことする筈がありません。知らない人の家に勝手に入るなんて。
ただ、その時の私は何かに操られたように自然と家の方へ足を向けていたんです。
頭の中では、道を聞こうとか理由を付けていたような覚えがあります。
路地はほとんど一本道なのですから、真っ直ぐ歩くか戻るかすればいいだけなのに。
小さな庭を超え、私はドアの前に立ってチャイムを押しました。
音は、何も聞こえませんでした。きっと、チャイムが壊れていたんだろうと思います。 ドアノブを回すと、鍵はかかっていませんでした。半分ほど開き、中を覗き込むとその家が随分と古めかしいことに気付きました。
廊下に薄っすらと埃が積もっている。薄暗い中、玄関から奥に続く廊下の先まで電気はついていない。
すいません、誰かいませんか。
声をかけてみても、返事はありませんでした。
けれど人がいることは分かっています。二階の人影を見ているんですから。
すいません、誰かいませんか!
少し声を張ると、二階の方でぎしりと木の軋む音が聞こえました。 しかしいつまで経っても、二階から誰か降りてくる気配も、返事をする気配もありません。
ただ、二階からぎしり、ぎしりと木の軋む音だけが聞こえる。
この家の階段は、玄関を上がってすぐ右手にあるんです。誰か来たらすぐに降りられる筈なんですよ。
なのに、一向に降りてくる気配がない。
不審に思ってもう一度声をかけようとして、ふと気付きました。
もしかしたら、急な病気や怪我で声も出せず苦しんでいるのかもしれないと。 上がりますよ、大丈夫ですか。
言いながら、私は玄関に上がりました。木の軋む音が少しだけ大きくなったような気がしました。
階段を一段一段登るたびに、軋む音はどんどん大きくなっていきました。
二階に着くと、部屋が二つあるのが見えました。片方の部屋はドアが閉まっていましたが、もう片方の部屋は僅かに開いており、その隙間からぎしぎしと音がしているんです。
大丈夫ですか、救急車を呼びましょうか。
言いながら、ドアを開けて。
ドアの向こうにいたそれを、見たんです。 それは。
首を吊った、死体でした。
一人ではなく、幾人も幾人も……男性もいましたし女性もいました。老人も、私より小さな子供も。
その全てが、天井から下がった紐に首を通しぶら下がっていました。
誰一人として生きていないことは明らかでした。皆顔が真っ青で、ぴくりとも動いてはいませんでしたから。
そして、首吊り死体達の真ん中に。まだ誰にも使われていない縄があったんです。
……私の為に吊り下げられた縄なんだと思いました。 吸い寄せられるように近付いていくと、丁度いい大きさの踏み台が縄の下にありました。
踏み台の上に立つと、目の前に輪っかのついた縄が丁度私の首の高さにありました。
ああ、やっぱりこれは私の為の縄なんだ。
そう納得して、輪っかに首を通そうとした瞬間。
ピリリリリリ、と。
スカートのポケットに入れておいた携帯が、けたたましく鳴り響きました。 携帯が鳴った瞬間、叫びました。
意味が分からなかったんです。何で首吊り用の縄に頭を突っ込もうもしたのか。
そもそも何で首吊り死体を見た瞬間に叫ばなかったのか。自分でも意味が分かりませんでした。
踏み台から転げ落ち、腰が抜けたのか立ち上がることもままならず、這うようにして私はその部屋から逃げ出しました。
涙が溢れて止まりませんでした。ただただ、怖かったんです。
この家も、首吊り死体も、自分自身も。全てが怖くて仕方なかったんです。 階段を降りる際、閉まっていた方のドアが少しだけ開いていたような気がしました。
そこから何かが覗いているような、そんな気がしました。
ただその時の私にはそれを気にする余裕も無く、ただただ泣きながら怪談を転がるように降りることしか出来なかったんです。
何とか家を出て、庭を抜け、路地をがむしゃらに走って……。
どこをどう走ったかは覚えていないのですが、気が付いた時には私は家の前に立っていました。
玄関の扉が開いて、母親の顔が見えた瞬間安堵のあまり座り込んだのをよく覚えています。 父と母に、今しがた体験したことを語ると二人は顔を見合わせました。
そんな路地も家もこの辺りにはない、きっと気のせいだ。と一切信じてはくれませんでしたが……私が部屋に戻ろうとした際に父が独り言のようにこう呟いていたんです。
そういえばこの辺りは、行方不明が多いな。
……あの家は、きっと心が弱った人間の前に現れるんだと思います。
自分が駄目な人間で、消えてしまいたいと思う人の前に現れて、首吊りへと誘う……。
私はあれを見たその日から、今まで以上の努力を自分に課しました。また自己嫌悪に陥って、あの家を見るのがたまらなく嫌だったんです。 ……けれど今でも、時々あの家は私の前に現れます。
一人で帰っていると、見たことのない曲がり角が増えていることがあります。
無意識のうちに、路地のある方へ足が向かっていることもあります。
私はあの首吊りの家に誘われているんだと思います。だってあの縄は……私の為に用意されていたんですから。
きっといつか、私はあの家で首を吊るんだろうと思います。
それがいつかは分かりません。何十年も後かもしれないし、明日かもしれない。けれど間違いなく私はあの家で首を吊るんです。 高校に上がって少し落ちこぼれただけであの家は現れたんです。
これから先、そんなことよりももっと辛いことがいくつも待ち受けているに違いありません。
受験、就職、結婚、出産……人生の苦難に耐えきれなくなった時。私はきっとあの家に、無意識のうちに向かうんでしょうね。
恐ろしいんです。私は……あの家が恐ろしい。首を吊ることが恐ろしい。
なのに、その日が待ち遠しくて仕方がないんです。
だって。あの日首を吊っていた人達は。
とても幸せそうに笑っていたんですから。
第二夜 首吊りの家 完 普通に怖い
あの導入は何だったのか
いや、面白いんで続けてください
携帯が鳴ったのは偶然なのかな?誰からなんだろうね? やっぱり学怖だ
BGMは全員ピアノだろうなあw
これもあるあるで面白いです クオリティ高いホラーが語られるほど冒頭のイミワカンナさが怖くなる ンミチャーがマケミちゃんになったら自殺しちゃうってことりちゃん大ショックじゃん
これは籠の中に閉じ込める必要がありますね… 真姫に校庭でオナニー等と貞操観念の皆無な行動をスレ主さんが行わせたので、私が話題を変えて上質なホラーストーリーを
書き上げたのですよ。
もう真姫に馬鹿な事をやらせようとしないで下さい! 第三夜 虚言癖 語り部 『南ことり』
皆さん、こんばんは。
二人の話、何て言うか……凄かったね。作り話なんだよね……?
海未ちゃん自殺なんてしないよね……? 穂乃果ちゃんと一緒にしっかり見張ってなきゃ。
えっと、こほん。作り話ってことで一つ思い出したことがあるんです。
作り話をする人って何処にでもいるよね。人を楽しませる為だったりすることもあるけど……ほとんど自分が優越感に浸る為に。
私が通っていた小学校にもそんな子がいたんだ。周りに嘘を吐き続けてる子が。 その子の名前……仮にY君としておくね。
Y君は四年生の時に近所の小学校から転校してきた子でね。
転校生って言うのはちやほやされることが多いんだけど、Y君はとにかく周りから嫌われてたんだ。
その理由っていうのが、彼がよく嘘を吐いていたから。
自分のいとこは芸能人だ、誰々は誰々が好きだ、この文庫本の作者は自分だ。
一つ一つは小学生らしい、他愛のないものだったよ。けどそれが一日に何度も何度も続くとなると話が変わってくる。 最初のうちは面白がって聞いていた子達も、次第に嫌気がさして離れて行っちゃったんだよね。
周りに人がいなくなってもY君は変わらず、わざわざ離れた席に歩いてきてまで嘘を話し続けてたんだ。
穂乃果ちゃんは早々に嘘に飽きて別の遊びに夢中になってたし、海未ちゃんは必要以上に彼と話そうとはしなかったんだけど……私はよく話しかけられてたなぁ。
くだらない嘘に相槌を打って、少し大げさに驚いてあげると満足したように離れていく。そんなことが何回もあった。
海未ちゃんからは「ことりは優しすぎます! 無視するべきですよ」なんて怒られたけど……別に優しいから聞いてたわけじゃなかったんだ。
私がY君の話をよく聞いていたのは、彼の話に少しおかしいところがあったから。 嘘を吐いたことがある人なら分かると思うんだけど、嘘って余程練ってないと粗が出たり矛盾が出たりするんだよね。
小学生なら尚更だよ。話ははちゃめちゃになるし、どんどんずれて嘘に嘘を重ねなきゃならなくなる。
それなのに、Y君の話はね。どんなに無茶苦茶なことを言っていても筋が通ってるし、矛盾の一つも無かったんだよ。
内容はどう聞いても嘘なんだよ? いとこに芸能人がいるって言った時に、会わせてって聞いても無理だって返すし。
ただ、その無理な理由がね。実は来期に何々って漫画の実写化をやるから、その撮影で会わせられないんだ、とか。
そんな話聞いたことない、って笑ったその翌週に実写化がニュースで発表されたり。
彼の嘘は、何もかも辻褄が合ってたんだよね。 それなら嘘じゃないんじゃないか。何度もそう思ったんだけどね。
何となく教室の中に、Y君の言葉は全て嘘だって雰囲気があったんだよね。
誰が言い出したとかじゃないんだよ。ただ、皆漠然とY君の言葉は嘘だと思い込んでた。
私もおかしいとは思いつつも、結局はその雰囲気に飲み込まれちゃって。
Y君が嬉しそうに話してる内容を、また嘘を吐いてるって軽く聞き流してた。
そんな生活が続いて、三ヵ月立った頃だったかな。Y君が全然喋らなくなったのは。 今までは登校してから帰るまで、ずっと誰かに嘘を話し続けてきたのに。
教室では青い顔して俯いてて、見かねたクラスの子が話聞かせてよって声をかけても生返事でさ。
Y君に何かがあったことは誰の目にも明らかだったよ。
今までY君が騒いでた分、教室も何だか静かでどんよりとした空気になっちゃってね。
すぐに戻るだろうって楽観視してた穂乃果ちゃん達も、日が経つにつれて気にし始めて。
彼にとっては不本意なことかもしれないけど、静かになったことでY君は今までで一番周りに注目されてたんだよね。 一週間ほど経っても彼は相変わらず呆然としたように机を見つめる生活を送ってたんだ。
放っておいた方がいい、って言う人もいたけど……同じクラスの友達だもん。何かあったのなら慰められないかと思ってね。
給食の時間に机を突き合わせた時、聞いてみたんだ。最近あまり話さないけど、何かあったのって。
最初はY君もああ、とかうん、とか生返事しかしてくれなかったんだけど、粘り強く聞いてたらさ。
Y君が少し笑って、家が火事になったんだよね。だから心配でさ。って言ったんだよ。
その頃、周りで家が火事になったなんて話は無かったんだよね。だから、ああ、Y君嘘を吐けるくらいにはなってるんだと思って。
そうなんだ、大変だねって返してその場はそれで終わったんだ。 給食が終わって、昼休みも終わって。五時間目が始まってすぐだったかな。
教頭先生がY君を呼びに来て、Y君が家に帰ったのは。
そんなこと滅多にないから子供心に楽しくなっちゃってさ。何かあったのかな、なんて噂好きの子達ときゃあきゃあ喋ってたんだけどね。
放課後になって、家に帰ったらママから言われたんだよね。
今日は大変だったみたいね、確かことりのクラスの子よね、って。
一瞬意味が分からなくて、何が? って聞き返したんだけど、すぐにY君のことを思い出したんだ。
だから、Y君に何かあったの? 五時間目に帰っちゃったんだ。って聞いたの。
私が聞いた途端に、ママが少し悲しそうな顔をして。こう言ったんだ。 Y君の家が火事になったんだ、って。
それを聞いた瞬間、心臓が飛び出そうになったのをよく覚えてる。
Y君の家が火事になった? そんな筈ない、それはY君の吐いた嘘の筈なのに。
十二時頃だったかしら、台所から火が出たみたいよ。可哀想に、お母さんが酷い火傷を……。
Y君の家から火があがった時間。それは給食が始まってすぐのことで……。
あの時は時計を見ていなかったので詳しい時間までは分かりません。だけど私は薄々気付いていました。
きっとY君があの嘘を吐いたのと同じ時間なんだろうって。 火事があった翌日は休日でした。
月曜日になったらY君に何て声をかければいいんだろう。
私の頭の中はそれだけでいっぱいでした。だって、Y君から無理やり聞き出したのは私なんです。
火事と、Y君の嘘にどんな関係があるのかは分からなかったけれど、幼いながらに私は自分の行動に責任を感じてたんだ。
謝るべきか、けど謝っても何のことだか分からないって言われたら。そもそも月曜日にY君は来るのかな。
そんな風に考えていた時でした。部屋のドアを開けた母親から、私宛に電話が来ていると伝えられたのは。
昔はスマートフォンが無かったから、友達に連絡を取るときは皆家の電話を使ってたんだよね。 だから、穂乃果ちゃんや海未ちゃんからかな? って一瞬思ったんだけど、ママが変な顔してるの。
誰からの電話? って聞いたら、少し困ったような声でY君からって言われてね。
私も少し困ったような変な顔になってたと思うよ。だって、Y君に何て声をかけるかまだ決まってなかったんだもん。
それに、火事になってすぐだし今は大変な時だろうに何で私に電話してくるんだろって不思議でもあった。
のろのろ部屋から出て、恐る恐る受話器を取って、もしもしって聞いてみたら、向こうからももしもし、Yだけどって返ってきたんだ。
けどね、声が……とにかく憔悴してるというか、何処か諦めてるっていうか。どう言えばいいんだろう。
今から死にに行きそうな声っていうのかな。現実感の無い、湿った声色だったんだよね。 少し話したいことがあるんだけど、今時間良いかな。
って言われて、別にその日は何も用事が無かったから大丈夫って返したんだ。
言ってから気付いたんだけど、Y君は何処か外から電話をかけてきてるみたいだった。
声に混じって車の音とか、人の歩く音が遠くから聞こえてたんだよ。
公衆電話とかだったのかな? 何度か言い辛そうに、苦しそうに息を吐いた後、Y君は話し始めたんだ。
僕の吐いた嘘が、現実になってる。って。 最初に気付いたのは、例のいとこの芸能人の話だった。
会わせてと言われて困ったから、その時読んでいた漫画が実写化するって重ねて嘘を吐いたんだ。
そんな嘘はすぐバレてしまう。どうにかして更に嘘を重ねようと思っていたら、本当にその漫画の実写化が決まって。
その上主演俳優がその芸能人だった。最初は喜んだんだ、これで信じてもらえるって。
勿論、違和感はあったよ。その漫画は実写化するほど売れてなかったし、その芸能人も他に仕事があった筈なのに。
けれどその時は、そういうこともあるだろうで終わらせたんだ。だって自分の吐いた嘘が現実になるなんて思わなかったし。 その後も嘘を吐くたびに、大掛かりなことから些細なことまでほとんどが、僕の嘘を補完する形で現実になったんだ。
最初は気分が良かったよ、こんな偶然ってあるもんなんだなあなんて笑ってた。
けど、おかしいでしょ。全部だよ。全部、現実になるんだ。
その上、僕は歯止めが効かなくなってた。気付けば、そんな気はなくても口から嘘が飛び出るんだ。
何か言われたら、無意識に口から嘘が飛び出る。そしてそれが現実になる。他人の心も、他人の不幸も全て。
だから僕は誰とも話さなくなったんだ。これ以上現実を嘘が覆っていくのを見たくなかったから。 けれど昨日、僕は気を緩めてしまった。今までのはただの偶然で、僕とは何の関係もないのかもと一瞬考えてしまった。
そんな僕の口から飛び出したのが、家の火事。言ってから恐怖で身体が震えたよ。
給食を食べている時も昼休みも、僕はずっと怯えていたんだ。どうか現実にならないでください、って。
……その結果は南さんも知ってるだろ。僕の家は燃えて、お母さんは今も意識が戻ってない。
嘘ばかり吐いてる僕に神様が罰を与えてるんだよ。きっと、そうなんだと思う。
僕は、もう嫌だ。自分も、嘘も、何もかももう嫌になったんだ。
……そう語るY君の声は、やはり何処か現実味が無くて。話している内容も相まって、違う世界からY君が電話を通して話してきているように錯覚するほどでした。 それも、嘘なんだよね? 私にはそう聞くことしか出来ませんでした。
だってそれが本当だとしたら、あんまりに悲しかったんです。確かにY君は嘘を吐いてばかりいました。
けど、けれど。そのどれもが些細な嘘だった。家が火事になって、お母さんが酷い火傷を負うほどの罪を犯したわけじゃないんです。
私の言葉を聞いて、Y君は笑いました。久しぶりに聞いたY君の笑い声は、乾いていて酷く悲しい物に聞こえました。
嘘かもしれないね、僕は嘘吐きだったから。じゃあ、最後に一つだけ聞いてよ。
僕には本当はお兄ちゃんが居た筈なんだ。けど生まれてすぐに死んじゃったんだよね。
けどさ、きっと逆なんだよ。お兄ちゃんは生きていて、死んだのは僕なんだ。
じゃあね、ありがとう。話聞いてくれてありがとう、嬉しかったよ。
そこで、電話は切れました。つー、つーと受話器から音を聞いていると自然と涙が出てきたんだ。
何となく、Y君にはもう会えないような気がしたんだ。それに、彼の話が本当なら……彼はどんな気持ちで最後の話をしたんだろうって、思って。 月曜日になって登校すると、彼が座っていた席には別のクラスメートが座っていました。
穂乃果ちゃんに聞いても海未ちゃんに聞いても、Y君なんて子は転校してきていないと言われました。
きっと、そうなんだろうなと思ってはいました。Y君は最後に、自分は死んでいたって言ったんだから。
一学年上に、Yという名前の先輩が少し前に転校してきていたことを知ったのはそれから少し経った後でした。
教室の扉から覗いてみると、Y君を少し大人っぽくしたような男の人がそこにいました。
彼の家は少し前に火事になって、母親が火傷を負ったし家も無くなった為近く実家の方へ引っ越すということも。 YさんはY君と違って友達が多いみたいで、教室で楽し気に話していた顔をよく覚えてるよ。
その時は、一学年上の教室に入るのも何だか怖くて声もかけられなかったんだけど。
運動会練習の合同体育授業で、たまたまYさんとペアになったんだ。
転校して出られなくなるのに何で練習しなきゃいけないんだ、なんてボヤいてるYさんにさ、聞いてみたんだよね。
弟はいませんか、って。Yさん、きょとんとした顔をして、俺には弟はいないよって答えてくれた。
その頃にはY君のことも、実は自分の見ていた夢か何かをごっちゃにしていたんじゃないかって思い始めててさ。
何だかその答えで、ああ、やっぱり夢とか空想だったのかな。なんて思ったんだけどね。
Yさん、少し考えるような仕草をした後にこう言ったんだよ。
ああ、でも。俺が一歳の時に、弟が流産したとかって聞いたことあるな。 ……これでことりの話はおしまい。
Y君の話を始めた時、穂乃果ちゃんも海未ちゃんも首捻ってたよね。
誰も覚えてないんだもん。何で私だけ覚えてるのか分からないくらい。
ひょっとして、Y君の最後の嘘を聞いたからなのかな。だからいつまでも忘れられないのかな。
Yさんはその後すぐに引っ越して、今は何処にいるのかも分かりません。けど、きっと元気にしていると思います。
この話は……作り話かもしれないし、嘘かもしれない。皆はどっちだと思う?
私は、嘘だったらいいなあって思います。
次は誰だっけ、真姫ちゃん? えっ、真姫ちゃんまた校庭にオナニーしにいった?
ちょっと待ってくださいね、段取り確認してきます。すいません行き当たりばったりで。
ねえ、誰だっけ次話す人――
第三夜 虚言癖 完 Y君はけんちん汁の第二夜に登場していたY君と同じ子です ホントにけんちん汁の人だった…
今回の穂乃果の話のYさん…は違うか、引っ越してるし これ九夜まであるのかなと思って校庭オナニー読み返したけど特にないな けんちん汁の人か
それなら今回もsage進行がいいのかな? 本日緊急自慰の為怪談ありません
第四夜は明日になります、あしからずご了承ください >>123
sage進行の方が好きなんですが正直落ちそうなので、怪談中だけsage進行でお願い出来ればと 第四夜 「ロッカールーム」 語り部 『西木野真姫』
……。こんばんは、西木野真姫よ。
確かに怪談ライブをやる羽目になったのは私のせいよ?
私がオナニー中に鎧武者に遭遇したせいでこんなことになったんだから。
けど、校庭でオナニーしてるところを無理やり引っ張ってくることないじゃない。オナニーってのはね、孤独で満たされていなければいけないのよ。分かるでしょ?
怪談よね、分かってるわよ。幽霊に出会った話を語ればいいのよね。 実は私、校庭でオナニーしてる時に鎧武者の幽霊に会ったの。びっくりしたわ。
それではご清聴いただきありがとうございました。
第四夜 校庭でオナニーしてる時に鎧武者に遭遇した話 完 ……何よその目は。仕方ないでしょ、怪談なんて無いのよ。
私だって穂乃果達みたいに怖い話を語りたいわよ? けど皆が皆、恐ろしい体験なんてしてるわけないじゃない。
私はあの鎧武者以外、幽霊に会ったことがないのよ。幽霊に会うこと前提で話を振られても困るのよね。
……分かったって言ってるでしょ。そんなに怒らないでよ、にこちゃん。お化粧落ちてるわよ。
怪談よね、何か……変わった体験。不思議な体験……えっと。
ああ……怖いかどうかは分からないけど、少し前にこんなことがあったわ。 私のパパが病院を経営してるっていうのは皆知ってると思うんだけど。そこで体験した話よ。
私自身が病気になって病院に行く……ってことはほとんど無いんだけど、手術なんかが重なるとパパが家に帰れないことも多いの。
そういう時は、ママに頼まれてお弁当とか着換えを病院に持っていくのが私の仕事なの。
ママが持っていけばいいと思うでしょ? ただ、ママに言わせると家事で忙しいからそんなことしてられないんだって。
私もμ'sの活動があるとはいえ、それ以外だと家にいることが多いし断りにくくて……。
先週の日曜日もパパ、家に帰ってこれなくて。私が病院まで荷物を持っていくことになったの。 とりあえずタクシーを呼んで、特に何事も無く病院に着いて。荷物を渡してさっさと帰ろうって思いながら、受付に向かったのよ。
父に荷物を持ってきましたって伝えて、勝手知ったるっていうのかしら、何度も来てるせいで父がいる場所ももう覚えてるのよね。
院長室? 局長室? 何ていう部屋か名称は忘れたけど、とにかくそこに向かって歩いていったの。
顔見知りのお医者さんや看護師さんに声を掛けられながら部屋に着いたんだけど、パパ、そこにいなかったのよ。
おかしいなぁ、いつもはここで死んだ様な顔してるのにって思いながらナースセンターに行って。
うちの父親どこにいますか、って聞いてみたら丁度手術中みたいでね。ああ、タイミング悪いなあ、この荷物どうするかなあって困ってたら、とりあえずロッカールームに入れておいてほしいって言われたのよ。 ロッカールームって言ったらまず更衣室が思いつくわよね? 私も焦ってそこ女性が入っていいんですか、って聞いたんだけどね。
看護師さん曰く、小物とかちょっとした荷物を置いておく為の場所で着替えの部屋は別にあるみたいなの。
そういうことなら、って教えられた方へ向かったのよ。
丁度その看護師さんもロッカールームに用があったみたいだから着いてきてくれて、歩いてる間に世間話をしてたんだけど。
ふっと、変な視線を感じたのよ。
私達が向かっている先。曲がり角の向こうから、誰かが此方を見ている。 丁度曲がり角の位置から首だけ出して、ジッと眺めてるのよ。
今思い出しても変な感じがするわ。髪はボサボサで廊下に付きそうなくらいの長髪、目はぎょろりとしてて……口を真一文字に結んでた。
河童っているじゃない? あれを無理やり人間らしくして、髪を長くしたような見た目をしてた。
え、何あれ。って思ったんだけど看護師さんは何も気にしてないかのように世間話を続けててね。
見えてる筈なんだけどな、もしかしたらこういうことは日常茶飯事なのかな。なんて考えて、私も出来るだけ気にしないようにしたの。
私達が近付いていくと、スッと首が引っ込んでね。曲がってすぐのところにいたら嫌だなぁなんて思いながら、二人でその角を曲がったんだけど。 曲がった瞬間、思わず立ち止まっちゃった。
だって、曲がった先の……その向こうの角から、同じようにその顔が覗いてたから。
首を引っ込めた後に走っていって、わざわざ顔を出しているのかしら。そう考えたら気持ち悪くなっちゃってね。
下を向いて、それを視界にいれないようにしながら歩いていったの。看護師さんはやっぱり気にしてないみたいで、俯いた私にどうしたのなんて声をかけてたけど、それに答えることも出来なかった。
角に近付いていくと、視線がまた消える気配がして。ああ、また引っ込んだんだって分かったわ。
それと同時に、ここを曲がってすぐの部屋よって看護師さんが教えてくれたの。ああ、よかった、これであの顔に見られなくて済むって安心したのをよく覚えてるわ。 角を曲がって顔を上げたら、もうあの顔は何処にもいなかった。きっと飽きて何処かにいったのね、そう思ってたら、看護師さんが近くの部屋の扉に鍵を差し込んで回したのよ。
入った瞬間、驚いたわ。駅でよく見かけるコインロッカーって分かる?
あれの中型サイズのやつを二つ重ねたのが、部屋の中にズラッと並んでたのよ。
西木野院長のロッカーはあそこよ、って看護師さんが指を差した方に向かって、ロッカーの中に着替えとお弁当を入れてね。
さあ、家に帰ろうって思った瞬間。
ロッカールームの奥から、嫌な視線を感じたの。 見なくても分かったわ、さっきのあれだって。きっとロッカーの影からあれが私の方を見ているんだ、って。
けどおかしいでしょ? 私は看護師さんがロッカールームの鍵を開けているのを見たのよ?
私よりも奥にいるってことは、わたしたちよりも先にこの部屋に入っていたとしか思えない。
きっと気のせいだ、そう思いながら視線を恐る恐る奥にやったの。そこには予想通り、あのぎょろりとした目があった。
さっきと違ったのは、真一文字だって口元が楽しげにニヤニヤと笑ってたこと。
正直、ゾッとしたわ。あんなに気持ち悪い笑顔をみたのは初めてだったから。見ているだけで気分が悪くなるような笑顔がこの世にあるなんて思わなかった。 何なの、何で着いてくるの。
そう聞こうと思った瞬間、私の肩を誰かが掴んだの。
小さく悲鳴をあげて、振り返ると看護師さんが私の肩に手を載せているのが見えたわ。
なるべく見ちゃ駄目、声をかけちゃ駄目よ。
そう言った看護師さんの顔は穏やかな笑顔だったんだけど、目元が怯えたように引き攣ってた。私も何も言えなくなって、それを見ないようにして二人で部屋から出たわ。
廊下を歩きながら、どうしても気になってね。あれは一体何なんですか? って聞いてみたのよ。
看護師さんも困ったように最初ははぐらかしてたんだけど、しつこく聞いたら声を潜めてこう言ったのよ。
あの人、ここのお医者さんなの。 医者? あんなおかしな人が?
医者というよりはどちらかというと、患者にしか見えない。精神的な病気を患って入院している、とでも聞けばまだ納得は出来たかもしれないわ。
本当に医者。なるべく見ないようにして、声もかけちゃ駄目よ。ずっと、着いてくるから。
看護師さんはそれ以上は教えてくれなかった。
そんな話をしてる間も、背後からは視線を感じていたわ。きっと覗かれていたんだと思う。
角からあの顔が、首だけを出して。 ……それが先週の話。その時は何もわからなかったし、気持ち悪い体験をしたなぁと思っただけ。
事の顛末を知ったのは丁度三日前だったわ。
そう、三日前。皆も知ってるわよね? 西木野総合病院に労働基準監督署の立ち入りが入ったこと。
ブラック企業って言葉は耳にしてたけど、まさか自分の父親がブラック企業の経営者側だとは思ってなかったわ。
誰よりも働いていたけれど、その分他人にも労働を強いていたみたい。医者はサービス残業当たり前、なんて笑ってよく言ってたけど……今では笑えないわね。
そうよ。私があの日見たのは、パパに精神をボロボロにされておかしくなったお医者さん。 日常的な暴言暴行、毎日のようにほぼ徹夜で泊まり込み、患者さんの前でのわざとらしい叱責……自分の父親ながら、気分が悪くなるわ。
その上、この病院で勤務していたら精神が壊れたなんて体裁が悪いってことで……精神科にも通わせず飼い殺し。スタッフが通る場所だけ動くことを許して、家にも帰らせなかったみたい。
……怖かったわ、あのお医者さんの顔。心が壊れた人ってあんなに怖いものなのね。
けどそれよりも……他人を壊れるまで追い詰めて、なお気にせず生きていられるパパの方が……。
私は、怖い。
……労働基準監督署の調査、『問題無し』だったみたい。裏でどんな取引が行われたのかは知らないけど……嫌になるわね。
これからもあの病院では似たようなことが起きるんでしょうね。……パパはよくあることだって言ってたわ。うちだけじゃなく全国の病院で医者が壊されているのかもしれない。
……これで私の話は終わり。怪談というより変な話になっちゃったわね。
西木野総合病院、私は継ぐ気がないからそのうち別の人が院長になるだろうけど……その時は、まともな病院になっててほしいわね。
第四夜 ロッカールーム 完 第四夜、正直面白くないんで明日全面的に書き直します
明日は第四夜(2)と第五夜になります 面白いぞ
なんで校庭で自慰できる奴が男子更衣室に入るのを躊躇うのか理解に苦しむけど こっちも面白かったぞ
ほんとに怖いのは人間なんだなぁ… ひとつくらいベクトルの違う怖さの話があった方がいいよね 十分怖かったぞ
でも、エピソードを余分に聞けるなら大歓迎だぜ すいません、楽しんでくれたものを面白くないというのは失礼なので撤回します
ですが幽霊も出したいので、別次元のエピソード扱いで第四夜(2)という形であげさせていただきます
語りすいません 「病院」とか「手術中」とかいう単語には心霊とか超常現象とは別のベクトルの恐ろしさがあると思う 面白かったけど真姫ちゃんパパが悪人なのツラかったから別バージョンも期待 河童がロッカールームの中にいたのがホラー要素かと思ったけど違ったか
別verも期待 第四夜(2) 「ひとくちちょうだい」 語り部 西木野真姫
こんばんは、西木野真姫です。
この度は私の都合で再開を遅らせてしまい、申し訳ございません。次が自分の番だと思っておらず、少し野暮用に……。
ん……? 何で皆そんな生暖かい目を……ヴェッ!? ことりがバラした!?
そうよ、校庭でオナニーしてたのよ! 別に今回は興奮したからオナニーをしにいったってわけじゃないんだけどね。
鎧武者を見に行ったのよ。この怪談ライブをやる羽目になった理由でもあるんだけど……何でか知らないけど、私が校庭でオナニーしてると鎧武者の幽霊がやってくるの。
皆は校庭でオナニーしてる時、鎧武者を見たことありませんか? そう、無いの。 となると、やっぱりあの鎧武者は……。
私に憑いているのかしら。
最初は思い出せなかったんですが、私。別の場所でも鎧武者を見たことがあるんです。
それがあの鎧武者と同じかは分からないけど……昔見た時は、別のことに意識がいっててまともに見れなかったし。
今から語るのは、私が一度目に鎧武者を見た時の話。
中学二年生の夏の日……お婆ちゃんが死んじゃった、その夜の話。 西木野家っていうのは今でこそ医療一族となっているけれど、元々は先祖代々田舎の方で地主をしてたのよ。
皆が教科書で読んだ日本医療の歴史っていうと、多分1774年に杉田玄白が発行した解体新書がまず思い浮かぶと思うんだけど。
西木野家で最初に医者になった人が、医療の道に進み始めたのはそれよりも遅い1822年。コレラが流行した年よ。
当時の家元の次男坊が、江戸の人々がコレラに苦しんでいると情報を聞いて自分でも出来る事は無いかって医療を勉強し始めたの。
2年独学で勉強して、その後シーボルトが作った鳴滝塾で蘭学を学ぶ為に家を出たらしいわ。そこからの流れが医療一族の西木野家、要するに分家ね。
で、ね。私が中学二年生の夏に、本家のお婆ちゃんが死んじゃったって聞かされて通夜に向かったのよ。 お婆ちゃんっていっても本当のお婆ちゃんじゃないわ。ただ親戚だし、血もかなり薄れてるからほとんど他人のようなものなんだけど。
幼い頃から夏とか冬とか、本家参りとかで何度も会ってたせいか私にとっては三人目のお婆ちゃんみたいなものだったの。
お婆ちゃんが死んじゃったって聞いた時は悲しかったわ。本家に向かう車の中でずっと泣いてたのをよく覚えてる。
車の中ではママも私と同じでよくしてもらってたから、って悲しそうにしてたんだけど……パパだけずっと難しそうな顔をしててね。
パパは悲しくないのかな、って思ってたんだけどね。どうも様子がおかしいのよ。
休憩でコンビニとか、パーキングエリアに寄るたびにパパだけ一人離れて場所でずっと電話をかけてて。それも本家の人に電話をしてたみたいなの。 最初は、本家の人間が死んだんだから何か忙しいんだろうって思ってたんだけど、話してる内容が変なの。
本当に真姫を連れて行かなければならないのか、とか。そんなことを話してる。
それを聞いて、ああ、パパは昔から教育熱心だったから、きっと私が学校を休んで通夜に行くのを嫌がってるんだろうなって思ったのよ。
私だって学校とかはあるけど、大好きなお婆ちゃんが死んじゃったんだから通夜くらい行かせてよ。って勝手に怒ってたんだけどね。
違ったのよ、パパが私を連れて行くのを嫌がってた理由。
しばらく車を走らせて本家に着くと、すぐに向こうのおばさんが出迎えてくれたの。 遠いところをよく来てくれて、お婆ちゃんもきっと喜んでるって本当に嬉しそうに言ってたわ。
皆が仏間の方に移動しようとしたから、私も一緒にお婆ちゃんの顔を見に行こうとしたんだけどね。
お前は向こうで遊んでいなさい、って何故か私だけ入れてもらえなかったの。
おかしいじゃない、お婆ちゃんの通夜に来たのに手も合わせられないなんて。って抗議したんだけど、わがままを言うなって強い口調で叱られて。
おばさんに助けを求めたんだけど、そのおばさんも私に仏間の中を覗かせないようにさりげなく移動してて。
真姫も入れてあげればいいじゃないってママも困惑してたんだけど、最後は渋々了解して私だけが廊下に残されたの。 仕方ないから、別の部屋に集まってた従兄弟……でいいのかしら。本家の子や分家の子達の相手をしてたんだけどね。
聞いてみたら皆は仏間に入って、もうお婆ちゃんの仏様を拝んできたって言うのよ。
何で私だけ仲間外れにされるの、ってもう悲しいし虚しいしで……。だっておかしいでしょ? 私だけ入れてもらえないなんて。
何度か入ろうとしたんだけど、その度に見つかって怒られて……いつまでたっても仏間の中には入れてもらえなかったわ。
パパ以外にも親戚の人達、皆歩妻に入れてくれなかった。ママまで、絶対入っちゃいけないって念を押してきて……変な気分だったわ。
……そうして嫌な気分のまま夕飯を終えて、今日は泊まるって聞いてたからお風呂に入ろうとしたのよ。
服を脱いで、さあ入ろうと思ったら脱衣所の扉を開けられたの。 扉の向こう側にいたのは、本家の中でも二番目に歳のいったお婆さん……最年長のお婆ちゃんが死んでいたから、その時には最年長になってたけど。
その人が白装束を着て立ってたのよ。その隣には、神主みたいな服を着たパパがいた。
慌ててタオルで身体を隠して、入ってこないでって叫んだんだけど……私の意見なんか聞いていないみたいに二人とも脱衣所に入ってきてね。
ひだる様に会う前に、身体を清めなければならない。って、ぼそぼそ声でお婆さんが言ったの。
聞き慣れない名前に一瞬戸惑ったんだけど、お婆さんだけならともかく中学二年生になってパパに裸を見られるなんて恥ずかしいじゃない。
何でもいいから出てってよ! って叫んだら、パパが一瞬目を伏せてすまんって小さく言ったの。 パパもお婆さんも普段はそんなことしない筈なのに。何だか気持ち悪くなって逃げようとしたんだけど、パパに無理やり身体を押さえつけられて風呂場の中へ引きずられていったのよ。
当然、何度も叫んだわ。けど、誰も来てくれない。皆私の声が聞こえてる筈なのに、ママも誰も……助けに来てくれないのよ。
そのまま洗い場に押さえつけられて、お婆さんに冷たい水を身体にかけられて。全身を洗われたの。
優しい洗い方じゃなく、へちまみたいなタワシで無理やりゴシゴシ洗われて……肌が擦りむけるかと思うくらいに。
私が洗われてる間、ずっとパパは何か呪文のようなものを唱え続けてた。聞いたこともないような……何というか、訛りの酷い人がお経を読んでるような声だったわ。
全身にまた冷たい水をかけられて、終わったと思ったら今度は身体に何かを塗りたくられてるのが分かった。粉っぽい感触がしたわ。 それをまた全身に塗りたくられて、ようやくパパが私を押さえつけるをやめたの。
よろよろと脱衣所の方まで這い出したら、何でこんな目に合うんだって思いがブワッと出てきちゃって。
父親に裸を見られるわ、全身洗われて何か塗りたくられるわでもう恥ずかしくて泣いちゃったの。
泣きながら着替えを取ろうとしたら何もない。置いておいた筈の下着もパジャマも無くなってて、代わりにお婆さんが着ているような白装束が置かれていたの。
それを着ろって言われて、もう暴れる気力も叫ぶ気力も無くなってたから素直に従ってそれを着せてもらった。下着も無いのに服を着るのは変な感触だったわ……。
そのままパパに手を引かれて、家の中を歩き出したんだけどね。
脱衣所から出た瞬間ギョッとしたわ。廊下の両端に、従兄弟たち以外の親戚全員が土下座するように頭を下げて正座してたんだから。 土下座している親戚達に導かれるようにパパは歩き出したの。親戚の人達、私が何を言っても顔を上げることもなければ、ぴくりと動くこともなかった。
少し歩いて、ようやく親戚の列が終わったところにあったのがお婆ちゃんが寝かされてる仏間だった。
戸惑ってたらパパが仏間の戸を引いて、入るよう促したのよ。
入れてくれるのはいいけど、何でこんなおかしな真似を……と思いながら仏間に入った途端。戸がパタンと閉まったの。
仏間の真ん中の布団には顔に白い布を被ったお婆ちゃんが、寝かされてて。電気はついていない代わりに、提灯のようなものに入れられた蝋燭の明かりが点々としてて……。
いくら大好きなお婆ちゃんといえども、死体と一緒に部屋に二人きりなのが怖くなって戸を開けようとしたんだけど……開かないの。
向こうから無理やり押さえつけられてるみたいに、全然扉が動かない。 パパ、開けて。怖いの。そう言ったんだけど、戸は開かなかった。
代わりに戸の向こうから返ってきたのは、こんな言葉だったわ。
寝てはいけない。ひだる神様に与えてもいけない。朝になったら開けてあげるから、外に出てはいけないよ。
意味がわからないでしょ? ひだる神様って何よ、いいから開けて。そう言う度にその言葉が返ってきて……諦めて、お婆ちゃんの隣に座ったの。
自分がどんな状況に置かれているのかさっぱり分からなかったんだけど、お婆ちゃんを見てると怖さよりも悲しさが勝ってね。
お婆ちゃんとの思い出を一つ一つ思い出しながら、しくしく泣いてたの。 ……時計が無かったからよく覚えていないんだけど、多分仏間に入れられてから三時間くらい経った頃だったと思う。
夜も遅いし流石に眠くなってきて、寝ちゃいけないって言われてたのも忘れてうとうとしてたのよ。
とはいえお婆ちゃんの隣で寝るわけにはいかないじゃない? 故人の横で寝転ぶなんて失礼だし。
どうしようかな、壁を背に寝ようかな。なんて思ってた時。
ひとくちちょうだい。
急に、部屋の中からそんな声が聞こえたのよ。 慌てて声のした方へ顔を向けたら、三角座りした子供がそこにいたのよ。
ぼろぼろの布切れみたいな服を着た、八歳くらいの子供。顔色が真っ青だったのも気味が悪かったんだけど、それ以上に気持ち悪かったのがその子のお腹。
他は子供相応の見た目なのに、お腹だけが妊婦のように丸く膨らんでたのよ。
間違いなく、仏間に入った時この子はいなかった。夜中にかけつけた親戚の子が、うとうとしてる間に入り込んだのかしら。そう思ってね。
こんなところに来たらパパやママに叱られるわよ。早く戻りなさい。
そう声をかけてみたんだけど、相変わらずひとくちちょうだい、ひとくちちょうだいって高い声で繰り返してる。 一口頂戴、なんて言われても私もお菓子もご飯も持ってないし。何を言ってるんだろうと思って、ハッとしたの。
子供の目線が、お婆ちゃんに向いていたのよ。
ひとくちちょうだい、って。お婆ちゃんのことを言ってるの? そう気づいた瞬間、パパの言葉を思い出したわ。
ひだる神様に与えてもいけない。
もしかして目の前にいるこの子供が、パパの言っていたひだる神様? そう思った瞬間ゾッとしたわ。この子は人間じゃない。 絶対に駄目、一口もあげない。
何とか震える声で、そう返した。怖かったけど、こんな気持ち悪いものにお婆ちゃんの死体を食べられるのはもっと嫌だった。
私がそう言った瞬間、子供がこっちを見て笑ったの。不気味な笑顔だったわ、人間臭さを感じない無機質な笑顔。
じゃあ、かわり。
そう言って、子供が私の方へと歩いてきたのよ。かわり、代わり? 食べられる! 叫んで、逃げようとしたんだけど身体が動かない。
子供は尚も近付いて、大きく口を開けて……。齧られる、そう思った瞬間。
子供の首がぽとりと落ちたの。 何が起こったのか一瞬わからなかった。ただぼんやりと、子供の後ろに鎧を着た人が立ってるのが見えたわ。刀を握って、丁度振り下ろしたような体勢で……。
鎧武者がゆっくりと私の方へと顔を向けた瞬間。
肩を揺さぶられたのよ。
気付けば蝋燭の火はもう消えてて、開いた戸から朝の明かりが仏間に差し込んでた。
私の肩を揺すっていたのはパパだったわ。目に一杯の涙を浮かべて、怖かっただろう、本当にごめんって何度も何度も謝ってた。 とても身体がだるかったわ。それに、何でか分からないけどお腹が凄く空いていた。
用意してくれていた朝食も取らず、私達は家に帰ることになったの。
帰る際、親戚の皆が玄関まで見送ってくれて……従兄弟達はわあわあ騒いでたけど、大人達は皆張り付いたような笑顔を浮かべながら私を見てた。お婆さんが笑顔で、入り込んだ、これで安泰だ。って言ってたのだけが印象的だったわ。
帰る道すがら、ママはずっと泣いてた。パパは相変わらず難しそうな顔をしてたけど、行きよりは何処か安心したような様子だったわ。
もう、あの家には行かない。だから忘れろ。
何があったのか、あれは何だったのか聞いても、パパはそれだけしか答えてくれなかった。 お前が十四歳で、俺が本家に頭が上がらなかったのが悪いんだ。もう縁を切ることにしたから、忘れてくれ。
辛そうに言う父の顔を見ると、もうそれ以上何も聞くことは出来なかった。
……田舎の古い家には、何かしらの風習が残ってることが多いと思うの。きっとあれもその一環なんだと思う。
ひだる神様が死体を食べに来るから、代わりに十四歳の女を捧げる。そんなところかしら。詳しいことは何も分からないんだけどね。
とはいえ本当の儀式は仏間に入れるところまでで、あれはただの夢だったのかもしれない。
けど……鎧武者がいたのは本当なのよね、私の守護霊なのかしら。校庭でオナニーしてる時に現れる守護霊ってちょっと……趣味が悪いわね。
私の話はこれで終わり。実際、本家の方にはそれ以来行っていないし、交流もほとんど無くなったわ。
……偶然かもしれないんだけど。去年本家のお婆さんが亡くなったって訃報が来たあと、従兄弟の訃報を知らされたのよね。その従兄弟、当時十四歳の女の子だったのよ。
……偶然よね? もし鎧武者がいなかったら私今頃……まさか、パパもママもそんな危ない儀式に娘を差し出すわけないわよね……?
第四夜(2) ひとくちちょうだい 完 正直病院の話は心に迫る怖さが無かったけど今回のは良いね むっちゃ怖かったしパパンがいい人だし本家の人の不気味さが程よく感じられて今回のもとても面白かった! 第五夜 「凛がいる」 語り部『星空凛』
皆、こんばんはー! 星空凛だよー。
真姫ちゃんの話なんだけど、さっきひだる神って言ってたよね?
水木しげるの漫画か何かで読んだ気がするにゃ。山で出会うと空腹で動けなくなる妖怪でしょ?
何かを食べると動けるようになったり、食べ物を道に放ってひだる神がそれを食べてる間に逃げるみたいな。
けど家にいるってことはそれとは関係ないのかな。よく分かんないや。 えっと、皆はドッペルゲンガーって知ってる? 流石に知らない人はいないよね?
自分にそっくりな顔をした妖怪で、それに出会うと死んじゃうの。
まぁそんなのは都市伝説だから怖がってもしょうがない……って凛も思ってたんだけどね。
本当にいるみたいなんだよね、ドッペルゲンガー。
他人の空似とかじゃないよ? 凛と同じ顔をして、凛と同じような行動をするドッペルゲンガーがいるんだよ。
今から凛が話すのは、そのドッペルゲンガーの話にゃ。 最初におかしいと思ったのは、クラスの友達から昨日の放課後何処にいたか聞かれた時だった。
凛は放課後にはいつも、μ'sの皆と屋上で練習してるんだ。その子もそれを知ってる筈なのに、変だなぁって思いながらそう答えたにゃ。
そしたらその子、そうだよねぇって変な顔して。何かあったの? って聞いたら、昨日凛を見たって言うんだよ。
放課後、買い物をしてる途中に駅前で歩いてる凛を見たんだって。
けど、学校の屋上にいた凛が駅前にいるわけないでしょ?
似てる人を見間違えたんだよって笑って、その日はそこで終わったの。 その翌週、だったかな。二年の先輩……この人は陸上の関係で前から知ってた人なんだけど。
その人からメッセージが来てて、何かと思ったら『昨日は相談に乗ってくれてありがとう』って内容だったの。
昨日何かしたかな、って思い返してみても、かよちんと真姫ちゃんとラーメン食べに行った以外は特に何もしてないんだよね。
そもそもその先輩に会った覚えもない。だから、誰かと間違えてるにゃって返したんだけどさ。
何言ってるの? 短距離のフォームの相談したでしょ、って返されて……。
確かに凛は短距離選手だったし、先輩に相談されたらフォームくらい見るよ? けどそんなことしてないんだよ。 絶対誰かと間違えてる、って言ったんだけど先輩も譲らなくてさ。最終的に凛が照れてとぼけてるってことで話は終わったの。
変なこともあるもんだなぁとは思ったけど、その時もまだ対して気にはしてなかったんだ。
感謝されたりするなら、記憶になくてもまぁいいかって。もしかしたら寝てる間に夢遊病でやったかもしれないしね。
それからしばらくは何も無かったんだけど……。
ある日、登校して教室のドア開けて挨拶したら。クラスの皆が、あれ? って顔して凛の方を見たの。
何かあった? って聞いたら、ちょうど今凛ちゃん向こうのドアから出たよね? って。 たった今教室に着いたところなのに何言ってるんだろう、ふざけてるのかな? 最初はそう思ったんだけど、皆の顔真剣でさ。
廊下の方見てみたら、誰かが向こうの廊下の角を曲がるのが見えたんだ。
ちらっとしか見えなかったけど、明らかに凛に似てた。
その瞬間、凛を駅前で見かけた話とか、先輩からのメッセージとかを一気に思い出したんだ。
それでようやく分かったんだよ、ああ、凛の偽物がいるんだって。
けどそんなの怖いにゃ。凛そっくりの顔で、凛みたいな喋り方してる人がいるんだよ?
コスプレしてるだけかと思ったんだけど……クラスの皆も、かよちんすらもどう見ても凛だったって言ってたよ。 そんなのが歩き回ってるなんて嫌だったし気持ち悪かったけど、凛にはどうしようもないし……。
先生に、凛の振りをした不審者が校内に入ってるとだけ伝えて終わったにゃ。
何かあったらとっ捕まえて話を聞こう、なんて思ってたんだけどまたそれからしばらく何もなくて。
それが起こったのは、もうそんな偽物事件も忘れかけてた頃だった。
夕方まで練習して、かよちんや真姫ちゃんと家の前で別れてさ。ただいまーって玄関の扉を開けたらさ。
台所にいたママがひょいっと顔を出して、あら、また何処かに行ってたの? って言うんだよ。 何処かに行ってた、って学校に決まってるじゃん。今まで練習してたから疲れちゃったにゃ。
笑ってそう返したんだけど、ママはおかしいなぁって首を捻ってる。
何かあったの? そう聞こうとして気付いたんだ。
凛がいつも履いてるローファーが、玄関に並べられてる。
凛はまだローファーを脱いでないんだよ? だから玄関には本来ならママの靴とかサンダルくらいしか無い筈なのに、きちんと、汚れの位置まで同じローファーが揃えられてたんにゃ。
ゾッとしてね、ママ、ひょっとしてもうとっくに凛帰ってきてるの? って、冗談っぽく聞いてみたんだ。
そんなわけないじゃない、そう言ってくれることに期待して。 けど返ってきた答えはある意味予想通りで、ある意味期待はずれで。
三十分くらい前に一度帰ってきたじゃない。台所で話したから覚えてるわよ。からかってる?
そう言われた瞬間、吐き気がぐうっと競り上がってきたのを覚えてる。
最初は駅前で、次は先輩で、その次が教室。そして、凛の家。
段々、凛に似た何かが凛に近付いてきているんだよ。
部屋で寝るって言ってたから、寝てるんだと思ってたわ。そんなママの言葉と同時に、靴も揃えずに放り出して慌てて階段を駆け上がったにゃ。
ママが怒ってる声が聞こえたけど、そんなの気にしてる場合じゃなかった。 だって家まで来てるんだよ? その上、ママまで騙せる程に似てるんだよ?
もうファンとか不審者とか、そういう話じゃない。捕まえて、何が目的なのか吐かせないと気味が悪くて仕方なかった。
そうなんだよね、凛はその偽物自体が怖いというより……偽物が何を考えているか分からない方が怖かったんだよ。
だって、ただただ近付いてくるんだよ? おまけに凛らしく振る舞って、先輩の相談にまで乗ってるんだよ?
そんなことをしてくる人間の目的が分からないのが、ただただ怖かったんだよね。
だから、捕まえて何を考えてこんなことをしてるのか聞けば安心できると思って……。 階段を上がってすぐのところに凛の部屋はあるんだけど……ドアは閉まってたんだけど、微かに音が聞こえたんだよね。
聞いたことのあるメロディ、鼻歌みたいにふんふん言ってるだけだったけど凛にはすぐに分かった。
これ、凛のソロ曲だって。
ただね、このおかしいんだよね。その曲……まだ世間に公表してない頃だったんだよ。
それどころか、正直に言っちゃうとニ、三日前の練習で凛も知ったようなもので……初めてのソロ曲だからって嬉しくて帰り道も何度も何度も聞いてたけど練習はまだだったんだ。
だから、部屋の中にいる凛の偽物がこの曲を知ってるわけないんだよ。
正直、怯えてたと思う。手が震えてたし、足も上手く収まらなかった。誰も知らない筈の曲を知ってる凛の偽物が、凛の部屋にいるんだ。
けど、何とか勇気を振り絞って。部屋のドアをノックしたんだ。 すぐに開ければよかったんだけど、その時の凛にはノックをするだけで精一杯だったんだよ。
ノックと同時に、鼻歌は止まったにゃ。
それに少し遅れて、部屋の中から声がしたんだよ。
ママ? どうしたの、入っていいよ。って。
自分の声っていうのは、自分が想像してる声と違うってよく言うよね? けど凛は何度も自分の声を録音して聞いてるから、すぐに気付けたよ。
部屋の中から返ってきた声が、明らかに自分の声だったってことに。 その声を聞いた瞬間、冷や汗がぶわっと吹き出したよ。
自分の声で返答されるのって、あんなに気持ちが悪いものなんだね。
けどただただジッとしていても仕方ないし、部屋の中にいる凛が出てきたらそれもそれで怖い。
だからね、覚悟を決めてドアを勢いよく開けたんだ。
開けて、中を見回したんだけど……部屋の中には誰もいなかったよ。
ベッドの下やクローゼットの中を探したけど、やっぱりいなかった。窓を開けた音もしなかったし、鍵はかかったままだった。
凛の偽物は、部屋の中からほんの一瞬でいなくなってたんだよ。 それからは凛の偽物を見たって言われることも無くなった。それで凛の話はおしまい……なんだけど。
最近、また変なことが起こってるんだ。
ママや、クラスの友達から……たまに凛が二重に見えたり、ぶれたりすることがあるって言われるの。
……凛の偽物は、少しずつ凛の近くに向かってたんだよね。
だとしたら、ひょっとしてだけど。凛と凛の偽物は今同じになってるんじゃないかな、って思うんだ。
近付きすぎて全く同じ位置に立って、たまに位置がずれるからぶれて見える。
もしそうだとしたら……次はどうなるんだろうね? 凛の偽物が、凛に成り代わるのかな。
けど、誰も凛と偽物の見分けがつかないんだよね? もし凛自身も見分けがつかない、気付いてないとしたら……。
今こうして話してる凛は、本物の凛なのかな。
第五夜 凛がいる 完 アカン、かよちんのsan値がフォールダウンしてまう! >>198
>>26のギャグ描写思い出してちょっと笑えてしまった >>196
とってもとってもミラクル の方じゃないか現象的に けんちん汁の人か
鎧武者がまきちゃんを守護してるんだとしたら自分の守護対象が校庭オナニーしてたら悲しくもなるわな… >>132-133
某風間さんぽくて笑ったw
かざまきちゃん 第六夜 『プラネタリウム』 『語り部』 小泉花陽
今晩は。小泉花陽です。
皆、色々な体験してるんだね……自殺しそうになったり、ぶれたり、儀式の生贄にされたり。
……今までそんな話、一度もしなかったのにね。
何か恐ろしい体験をしても、他人に語らず生きていける人間の方が私は怖いような気がするなあ。
別に、皆に相談してもらえなかったから怒ってるわけじゃないよ? 凛ちゃんが私に相談してくれなかったことも気にしてないよ。
本当だよ? まあ……でも隠し事や他人に話したくないことって誰にでもありますよね。
私だってありますもん。凛ちゃんにも……皆にも話してないこと。
今だから言っちゃいますけど、スクールアイドルの活動を始めた時、私のSNSに凄い暴言が大量に届いてね。
色々探ってみたら、犯人は私がずっと応援してたスクールアイドルグループの子達だったこととか。
ずっと努力してきたのに、ぽっと出の私達に順位を抜かれてムカついたんだって。流石に呆れたから、今は彼女達の新曲も本アカでしかいいねしてない。
そういったことはよくあって……それも怖かったけど、今までで一番怖かったのはあれかなあ。 去年の秋……十月ごろのことだったかな。
その日は休日で、スクールアイドルの練習も無くてね。
誰かと遊ぼうかと思ったんだけど、凛ちゃんは海未ちゃんと一緒に登山に行ってて、真姫ちゃんはピアノのレッスンが入ってて。
じゃあにこちゃんとアイドルショップ巡りをしようと連絡したら、今から清掃のアルバイトだって言われてね。
仕方ないから目的も無く、一人で街をぶらぶら歩いてたんだ。
秋の街って何だか好きなんです。街路樹が赤く染まって、風に舞う落ち葉が儚くて。
私や歩いてる人達の間を秋の風が通り過ぎていくのが、とても気持ちいいんです。 声をかけられたのは、確か音ノ木坂学院の近くだったと思います。
練習が無い日でも、癖で学校の方に足が向いちゃうんですよね。アルパカさんでも抱き着いていこうかなあ、なんて思ってた時。
お嬢さん、星は好きですかあ。
後ろからがらがらした、風邪引きみたいな喉を鳴らす声が聞こえて思わず飛び上がっちゃった。
振り向いたら、腰が曲がったお婆さんがいて……鼻が高くて長い白髪で、いぼがいくつもある顔をしていて。
失礼な話なんですけど、昔絵本で見た魔女みたいだなあって思っちゃった。 どう返したらいいか分からなくて、戸惑っていたんですけど……お婆さん、私の目の前に紙を差し出してきて。
星は好きですかあ。
また、同じように聞いてくるんです。
差し出された紙には『プラネタリウム』って大きな文字と、簡素な地図があって。そこでようやくわかったんです。
ああ、このお婆さん、このプラネタリウムを宣伝してるんだって。
秋と言ってもその日は少し寒いくらいで、引っ張り出してきた冬服を着てるくらいだったんです。
そんな日なのに、こうしてチラシを配ってるお婆さんに……秋葉原でチラシを配ってた自分達を重ねちゃってね。 つい、絶対行きます、って言っちゃったんだ。
もし私が同じ立場なら、そう言ってほしかったから。
私の言葉を聞いて、お婆さんも嬉しかったのかな。ニコっと笑ってくれて……。
そのまま何処かに歩いて行っちゃったんだ。
それでね、もう一度渡されたチラシを見てみたらそのプラネタリウム、この近くだったんです。
学校の近くにプラネタリウムなんてあったんだ、って驚いちゃったよ。
そんなところあったかな、一度行ってみて良さそうなら希ちゃんを誘ってみよう。こういうの好きそうだし。
そんなことを考えながら、他に目的も無かったし地図を見ながらそちらの方へ歩いて行ったんです。 地図と睨めっこして辿り着いたのは、えっと……何て言えばいいのかな。
古めかしい……アンティーク感のある、公民館みたいな建物でした。
これ、本当に今でも運営されてるのかな、って……。本音を言うと、廃墟にしか見えなかったんです。
けど見た目はそうですけど、チラシが配られてるわけですし……。
凛ちゃんに連れて行ってもらったぼろぼろのラーメン屋さんが美味しかった、なんてこともあったし、見た目で判断しちゃいけないって思って。
入口のガラス戸を開けて、中に入ったんです。 ガラス戸を開けると、広いロビーの中にこじんまりとした受付が見えました。
外の荒れ果てようと違って中は綺麗で、掃除が行き届いてるようでした。
外もきちんと手入れしたらいいのに、あれじゃ女の子は入りにくいよ。そんなことを思いながら受付に向かって歩いていきました。
ロビーは広いのに、並べられたソファやベンチには誰一人いなくて……掲示板には数年前の日付のポスターなんかが貼ってあって。
清潔さとレトロさが融合したような、変な場所だなあとは思ったんですけどね。
まああんまり掲示物に気を遣ってないんだろうな、って納得して受付の前に立ったんです。 受付カウンターの向こうでは、ブレザーみたいな服を着た女性が俯いて座っていました。
髪が長く垂れ下がっているせいで顔はよく見えませんでしたが、隙間から見える目が濁っていたような気がします。
私が前に立っても女性は微動だにすることなく、声の一つもかけてはくれませんでした。
目線も変わらず、下を向いたまま。気付いていないのかな、と思ってね。
あの、プラネタリウムを見に来たんですけど。
そう声をかけたんです。けれど女性は下を向いたまま変わらずジッとしている。 あの、プラネタリウムを。
もう一度声をかけると、女性は下を向いたままゆっくりと上を指差しました。
ひょろりと長くて、節くれだった枯れ木のような……細い指でした。
上の階を差してるんだろうって思って、手短にお礼を言い受付を後にしたんです。
やけに愛想のない人だなあ、ってちょっと気分は悪くなりましたけど……そういう人もいますし、プラネタリウムで心を癒せばいいやって。
ロビーの中の階段を上がると、すぐに張り紙をした扉が目に入りました。
コピー用紙に黒の明朝体でプラネタリウムと印刷された、簡素な張り紙と観音開きの扉。 そっと扉を開けると、暗闇の中に満点の星空と解説する女性の声が聞こえました。
チラシには開演時間とか書いてなかったから、ああ、もう始まっちゃってるんだって。
閑散としたロビーとは違って、プラネタリウムの中にはいっぱい人が居ました。
小さなホールくらいの大きさでしたけど、椅子がほとんど埋まってて……。
盛況だなあ、私達もこれくらい人を集めたいな。なんて思いながら、空いていた後ろの方の席に座ったんです。
見上げると、とても綺麗な星の煌めきが見えて……美しかったなあ。この世のものとは思えないくらいだった。 知っている星座もあったし、知らない星座もあった。
ナレーターの人の解説に誘われるように星の流れを目で追って行って……。
ふっ、と。何の気なしに、隣を見たんです。
薄暗い中、同世代の女の子がそこに座っているのが星の光に照らされて見えました。
目元には影がかかっていて、黒く塗りつぶされているように見えなかったんですけど……。
顔が、星を映した天井のシアターじゃなく。明らかに此方を向いていたんです。 たまたまこっちを向いた、とかじゃなく明らかに私のことを見てる。
その頃にはもうμ'sも有名グループの一つに入ってたので、そういうことはたまにありました。
街中で声をかけられることもあったし、サインを欲しがられたことまで……私のなんか貰って嬉しいのかな……?
だから、きっとこの子も私の事を知ってくれているんだ、μ'sのファンなのかもしれない。
そう思ったんです。薄暗くてあんまり見えないかもしれないけど、お礼の気持ちで小さく手を振ったんです。
もし私が憧れのスクールアイドルを見かけて、手を振ってもらえたらとても嬉しいから……。 何かアクションが返ってくるかな、って期待してたんですけど。
その子、全く動かなくて……まるでこの会場に張り付いた影のように、身じろぎせず私を見続けてる。
目元が見えないからかな、普段ならそんなことは無いんだけど何だか怖くなっちゃってね。
ふいっと視線を逸らして、反対方向を見たんです。
三つほど席が空いて、そっちには男の人がいたんですけど……視線をやって、ギョッとしました。
その人も私を見てるんです。いや、その人だけじゃない……その人の奥も、その奥も。
皆、ジッと私を見ていたんです。場違いなところに入り込んだものを見るように、ジッと。 何だか気持ちが悪くなって。
もう出ようと、席から立ち上がったんです。それで……見ちゃったんですよね。
前の席の人達が、首を振り向かせてこっちを、私を見ているのを。
皆、服装や顔の下半分は見えるんですけど目元だけは影がかかって見えませんでした。
けど、分かるんです。皆、私を見ている。
慌てて荷物を手に取って、視線を背後に感じながら扉に向かって……観音扉を開けたんです。
その瞬間、今まで解説をしていた声が止まりました。同時に星の光が消えて、あれ、丁度終わったのかな、って振り向いて……。 誰も、いませんでした。
窓から差し込む明かりに照らされたホールの中には、私以外誰もいなかったんです。
私は間違いなく、プラネタリウムの途中で人の姿を見ているんですよ。なのに誰もいない。
皆で席の下に隠れている? そんなわけないですよね、そんなことをする意味がない。
小さく悲鳴をあげて、慌ててホールから飛び出して階段を駆け下りて……。
ゾッとしました。綺麗に整頓されていた筈のホールが、荒れ果てて埃だらけになっていたんです。 ソファは色あせて染みだらけ、ベンチは割れている。色あせた数年前のポスター……。
受付の方を見ると、埃だらけのカウンターにさっきの受付が座っているのが見えました。
人がいる、ってことでほんの少し安心したんですけど、何かおかしいんですよ。
髪の毛に白く埃が積もっている。着ているブレザーも日に焼けたように色あせている。
近付いて、二階にいた人が消えたと言おうとして……気付きました。
マネキンだったんです。カツラをかぶせて、ブレザーを着たマネキンがそこに座ってたんです。 私はこの人に、プラネタリウムの場所を教えてもらったのに。
そもそも、誰が何の目的でこんなところにマネキンを置いたの?
泣きそうになりながら、私はその建物から飛び出しました。
外に出ると昼間の太陽が私を照らしてくれて、現実に戻ってこれたような気がして嬉しくてね。
建物の前で、何だか動けなくなっていたら前の道を歩いていた男の人が此方に歩いてくるのが見えました。
私の目の前まで歩いてきて、お嬢ちゃん、こんなところで何してるの、って。 お婆さんに、ここでプラネタリウムがあるってチラシを貰って。
言いながら、チラシを男の人の目の前に差し出して。また、悲鳴をあげちゃいました。
貰った時には真っ白だった筈のチラシが、酷く色あせて変色していたんです。
お婆さん……ああ、あの婆さんまだこんなもの配り歩いてるのか。
あの人ここで働いてたんだけど、ボケて少しおかしくなってるんだよ。だから十年以上前に閉鎖したようなもんを配ってるんだ。
十年前に閉鎖した? 今の今までプラネタリウムを見ていたのに。意味が分かりませんでした。 とにかく、ここには入らない方がいいよ。
そこで一度言葉を切って、少し言いにくそうに男の人はこう続けたんです。
ここの二階で、昔集団自殺した奴らがいるんだよ。そいつらの幽霊が出るって噂があるから。
……これで、私の話はおしまい。あのプラネタリウムは何だったんでしょうね。
私と一緒に星を見ていた人達は幽霊だったんでしょうか。それに、あのマネキンも……。
何でチラシが色あせずに見えていたのかも、今となっては分かりません。
ママに聞いたら、あの場所で集団自殺があったというのは事実らしいです。けど、それ以上のことは何も分かりませんでした。
今でもあの場所ではプラネタリウムが上映されているのかもしれませんね。
死人の為に、美しい星々を映し出して……。
第六夜 プラネタリウム 完 乙!
このプラネタリウム、星好きな真姫ちゃんが行ってたら危なかったかも? 正直このクオリティの怪談を毎日読めることに感謝してる
全員一週回ったら是非二順目かアクア版も書いて欲しい μ'sで書いてるんだからAqoursは自重しようぜ
せめて終わってからだろ 第七夜 「古井戸」 語り部 『矢澤にこ』
にっこにっこにー☆
皆のハートににこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー☆
にこにー、って覚えてらぶにこ?
えぇっとぉ……にこはぁ、怪談なんて怖いからぁ、にこの素敵な日常の話をぉ。
……凛? 凛でしょ今の? 寒いって何よ。はぁ……分かったわよ。
怪談よね、別に私も怖い体験とかしたことないって言えば嘘になるし。 さっきの花陽の話覚えてる?
例のプラネタリウムに行く前に、私に連絡して清掃のバイトがあるからって断られたってとこ。
実は私も、花陽と全く同じ日に恐ろしい目にあってるのよ。
十月、あの頃はアイドルの円盤が大量に出ててね。普段のバイトだけじゃ、お小遣いが足りなくて困ってたのよね。
普段はスーパーのバイトだけなのに、清掃に行ったのはそのせい。
これは……その清掃先であった話よ。 その時の私は、グッズを買いすぎて十月始まったばかりなのに財布に二十五円しか入ってない赤貧生活を送ってたの。
スーパーの給料は月の後半にしか入ってこない。それまでに出るグッズや円盤が売り切れないとも限らないし。
その上、真姫や穂乃果が練習終わりに買い食いに誘ってくることも多いのに、お金が無いからって断り辛いじゃない?
背に腹は代えられないってことで、スーパーの休憩時間に日雇いアルバイトの情報誌を見てたのよ。
けど、大体ああいうのって暇な大学生とかフリーターを前提にしてるのよね。
条件の合うものは時給が少ないし、時給がいいのは工事現場とかばかりだしでああでもないこうでもないって迷ってたの。 一人でうんうん唸ってたら、同じスーパーでバイトしてる同僚が一人休憩室に入ってきたのよ。
仮にBさんとするわね。大学生の子で、私と同じ時間帯によくバイト入ってるから仲がいいのよ。
Bさん、私の手にある情報誌と私の顔見て色々察したみたいでね。
にこちゃん、お金に困ってるの?
そう直球で切り出してきたの。違うって否定しようにも、日雇い情報に赤ペンつけてる時点でバレバレでしょ?
だから素直に、そうなんですよ、良い日雇いないか調べてるところで。って返したの。
Bさんも決行バイトとか詳しい方だし、良いの教えてもらえないかって下心は少しあったわ。
そしたらBさん、少し躊躇った後にね。
本当にお金に困ってるんなら、私がしてるバイト一日やってみる?
って、そう言ってきたのよ。同じ日雇いをやるにしても、知り合いがいるのは大きいわよね。
それで詳しい話を聞いてみたんだけど……どうにも変なのよね。
まず、報酬だけど一万円。日給じゃないわよ、時給が一万円。 日給でも正直多いくらいなのに……日雇いアルバイトで、時給一万円よ?
ヤバいタイプのキャバクラとか風俗とかじゃないのか、って一瞬疑ったんだけど……違ったのよね。
業務内容は、山の中のロッジの清掃。普通に掃除をするだけで時給一万円。
雇い主は有名なホテル……小原グループって知ってるわよね? あのホテル王の。
そこが管理してるロッジで、春と夏にしか貸さないから誰も利用しない秋と冬にメンテナンス兼ねて清掃に入るらしいの。
いまいち信じられなかったんだけど、小原ホテルの公式サイトにもそのロッジ載っててね。 これって俗に言う裏バイトってやつじゃないの?
表面上は普通だけど実は麻薬の運び屋でもさせられてるとか……。
そう思ったんだけど、時給一万円の魅力には耐えられなかったわ。しかも手渡しだから収入に上がらないのよ?
とりあえず一日だけ、泊まり込みで十二時間勤務。気に入ったら何回でも入っていいって条件で、その仕事を受けたの。
正直、お金に目が眩んで受けたとはいえバイト当日まで不安で仕方なかったわ。
Bさんに話を聞いてからバイトの日までの三日間、得たお金で何を買うか想像して無理やり不安を追い払って悶々として過ごしてた。 そして、バイト当日。花陽からの誘いを断って、家の前でBさんを待ってたのよ。
動きやすい服装って言われてたから練習着を着て、パジャマを持って。
昼の十二時に待ち合わせだったけど、Bさんは十五分くらい前には家の前に来てくれたわ。
Bさんの軽自動車に乗って、そのまま山の方へ向かったのよ。
高速に乗って静岡の方まで走って、大体一時間半くらい経った頃ようやく目的地に着いたの。
意外と遠くて、毎週だから大変だよってBさんは笑ってたけど……毎回こんな時間かけて通勤してるなんて信じられなかったわ。 案内されたロッジは、何と言うか……物凄く普通の外見をしてたわ。
中にはスーツを着た中年の男の人が椅子に座ってたんだけど、ロッジに入ってきた私達を見るやいなや鍵を渡して帰っちゃってね。
Bさんに聞いたら、小原グループの人でここの管理の一部を任されてる人だって言ってたわ。
いつも私が来ると忙しそうに帰っちゃうのよ。社会人って大変なのね、って笑ってたわ。
一応中も色々見てみたんだけど間違いなく普通のロッジ。飾られてる絵の裏にお札も貼ってないし、麻薬みたいな粉も置いてない。
ここ掃除するだけで一万円……? 疑問はあったけど、変なことをやらされるよりは全然いいじゃない?
Bさんの指示で色々機材を点検したり、埃を払ったりして……全部終わった時にはもう夜中の八時だったわ。
あらかじめ買っておいたお弁当……といっても、Bさんに奢ってもらったものだけど。
それを食べながら、大変だけどこれで一万円は美味しいバイトですね。なんて話してたのよ。
ロッジを一晩自由に使って、掃除さえすればいいんだし。ちょっとした合宿みたいな気分よね。
Bさんも私に同意しながら笑って、それにここは夜にお楽しみがあるんだよ、なんて言ってね。
私も笑いながら、お楽しみって何ですか? 幽霊でも出るとか? って冗談で聞いてみたらさ。
うん、出るよ。
にこにこ笑ったまま、Bさんがそう言ったの。 思わず、お弁当を食べてた箸が止まっちゃったわ。
冗談ですよね? そう聞く私にBさんは首を横に振ったの。
小原ホテルの人曰く、そっちが時給一万円の理由らしいよ? 秋と冬しか出ないらしいけど。
だからこのロッジをお客さんに貸すの、三月から八月までなんだよ。
何でもないように言うBさんの顔を見てたら、何だか嘘だとは思えなくなって。
帰りたいって言いたくなったけど、ここは静岡の山奥で、Bさんの車で来てるのよ? どう足掻いても帰れない。
泣きそうになってる私に気付いたのかな、Bさん慌てて手を振って。
大丈夫だよ、私一人でやるから。今日はにこちゃんは見学してて。
そう言うのよ。見学って言われても……除霊でもするとか? 正直意味が分からなかったけど、はいって答えて。
食事を終えたらね。先にお風呂に入っていいよ、ってBさんが言ってくれたんだけどさ。
幽霊が出る場所で一人でお風呂に入れるわけないでしょ?
一緒に入りたいって言ったんだけど、Bさん、これから汚れるから後でいいって言っててね。
結局私も入らずに、Bさんと世間話をしてたのよ。 しばらく何でもない話をしてて……二十三時を回った頃だったかな。
そろそろ行こうか、ってBさんが椅子から立ち上がって懐中電灯持ってロッジから出ていったの。行くって言われても、そんなの明らかにあれじゃない。
間違いなく幽霊関係の何かだ、そう思ってね。正直着いていくのも嫌だったんだけど、一人で残されるのも嫌だし……。
仕方なくBさんの後に続いて、ロッジの入り口から出たのよ。
夜の山の中ってね、真っ暗なのよ。ロッジの扉を閉めた瞬間、星が照らしてるだけで本当に何も見えないくらいに暗い。
Bさんから離れたら暗闇の中に取り残される気がして、何とか遅れないように懐中電灯の明かりを追っていったのよ。 そうやってロッジを半周するように裏手に回った先に、けもの道のような小道があったの。
Bさん、そこに分け入るように入って行っちゃって。歩き慣れない土の道を、石に躓きかけながらひいひい言って着いていって。
時間にして三分くらいかな。歩いた先は小さな広場みたいな場所だった。
その広場の真ん中に、ぽつんと井戸があったの。こんな場所に井戸? 正直そう思ったわ。
ロッジの為の水場にしては少し離れてるし、道もほとんどけもの道みたいで整備されていなかったし。
懐中電灯の明かりに照らされたそれは、見るからにボロボロで縁に落ち葉が積もってて。使われていないのは明らかだった。 不気味な雰囲気、というか明らかに異質な何かを感じたわ。
間違いなくこの井戸の中に何かいる。涼しいくらいの気温だったのに、肌に張り付くような気持ち悪い汗がどんどん出てきて。
なのにBさんは当たり前のようにその井戸に近付いていってね。
ひょいっと、その中に入ったのよ。
暗いから落ちたんじゃないか、そう思って慌てて私も井戸に近付いたんだけどそうじゃなかった。
井戸には縄梯子がかけられてて、Bさんがそこに捕まって下に降りていってるのが見えたのよ。 こんなところに入るの? 井戸の中に?
中は水が無いみたいで、枯れ井戸だったみたいだけど……こんなところ昼間でも入りたくない。ましてや夜なんて。
なのにBさん、懐中電灯振り回しながら私に入っておいでって促すのよ。
懐中電灯を持ったBさんが完全に降りちゃったら、真っ暗になっちゃうじゃない。嫌々、私も縄梯子を掴んで下に降りたわ。
危ないとは分かってたんだけど怖くて目を瞑って下まで降りたら、Bさんが自分の顔を懐中電灯で照らして遊んでるのが見えた。
こんな状況で何してんのよこの人。そう思ったら少し気が楽になったわ。 私が下に着いたのを確認して、Bさんは井戸の壁を照らしたの。
……人一人分くらいの横穴が開いていて、中からひんやりとした空気が出てたわ。
Bさんに促されて中に入ったんだけど……その穴を通ってすぐに開けた場所に出たのよ。
暗闇のせいでよくは見えなかったけど、すぐ目の前には鉄か何かの柵みたいなものがあったわ。
私のすぐ後に入ってきたBさんが、それを照らしたせいでそれが柵じゃないことはすぐに分かったけど。
私の目の前にあったそれ、牢屋だったのよ。 座敷牢って言うのかしら。
柵の向こうにはぼろぼろの毛布が敷かれた八畳くらいの部屋があって、小さな四角い入り口には閂がされていたわ。
思わず悲鳴をあげたわ。Bさんに抱き着いて、足に上手く力が入らずがたがた震えてたと思う。
だって、だってね。Bさんが照らした牢屋の中に、懐中電灯の明かりに照らされて……。
何人もの子供がいたのよ。
生気のない青白い顔をした子供が、こっちを見てたの。照らされた瞬間、私、その中の一人と目があっちゃったのよ。
明らかに人間じゃなかった。人間の筈がなかった。だって、私が見たその子……顎から下が無かったから。 震える私を尻目に、Bさんは牢屋に向かってお経を唱えだしたの。般若心経だっけ、般若波羅蜜多、みたいな感じの……。
途端に、牢屋の中から苦しげな声と身をよじるような音が聞こえだしたの。
何とか懐中電灯が照らす方を見たら、子供たちが物凄く苦しんでて……。
本当に、暴れまわるように、狂ったように身体をあちこちにぶつけて、痙攣して、血を吐いて。
お経に合わせて、骨が折れたように関節がねじ曲がってく子までいた。
余りにも気味が悪くて、怖くて。何でBさんは平気なんだろうって、縋り付きながら、暗闇の中Bさんの顔を見上げたの。
……Bさん、笑ってた。お経を唱えながら、苦しんでる子供たちを見ながら楽しげににやにや笑ってたの。 何分続いたかは覚えてない。一分くらいだったかもしれないし、一時間だったかもしれない。
もうBさんの顔も、牢屋の中も見れなくて……ただBさんの胸に顔を押し付けて、叫び声が聞こえないように耳を塞いで。
Bさんが私の肩を叩いて、現実に呼び戻してくれた時にはもう何も聞こえてはこなかった。
当然牢屋の中には誰もいなかったし、子供たちが吐いていた血の跡すらもそこには無かった。
これで終わりだよ。さ、戻ってお風呂に入ろうか。
楽しげに言って、井戸の方に戻っていくBさんに私は何も言えず黙ってその後を付いていった。 ロッジに戻って、広めのお風呂につかってるうちにようやく私もいつもの調子に戻ってきてね。
身体を洗ってるBさんに、あれは何だったのか聞いてみたのよ。
井戸の中の座敷牢とか、子供とか。けれど返ってきたのは知らないの一言だった。
何であんなところに座敷牢があるのかも知らないし、あの子供達が何なのかも知らない。
私が前任者に聞いたのは、秋と冬に週に一回お経をあげないと井戸から出てくるってことだけ。
……Bさんの前任者も、あれが何なのかは知らないそうよ。小原グループの人に聞いてみたことはあるらしいんだけど、教えてくれなかったって。 Bさんは続いてるみたいだけど、そこをすぐに辞めた人達の気持ちも分かる気がするのよね。
だって、お経をあげた時子供たちは苦しんでたのよ?
いくら井戸から出さない為って言っても、あんな幼い子たちにあそこまで苦しがられたら……幽霊が平気な人でも、ねえ?
きっと時給一万円ってのは、子供たちを苦しめる辛さに払われる金額なんだと思う。
……けど、Bさん笑ってたのよね。子供たちが苦しむ姿を見て。
血を吐いて、骨が折れて、狂ったようになった子供たちを見て。楽しげににやついてたのよね。 無事朝になって、仕事が終わって。小原グループの人からお金を受け取って、最悪の気分で車で帰ってる途中にね。
Bさんが、よかったら今後もあのバイトしない? って、そう言ってきたのよ。
Bさん、大学を卒業したらあのバイトを続ける気は無いみたいでね。割の良いバイトだしどうせなら後輩にあげたい、なんて言ってた。
けど、流石に断ったわ。毎週十二万円は美味しい話だったけど、あんなことを続けてたらいつか心が壊れそうだったから。
別れ際に、少し思うところあってBさんに聞いてみたのよ。何であのバイトがあるのに、スーパーで働いてるんですかって。
それ聞いて、Bさん笑ってね。 ああいうまともな仕事をしてないと、多分帰ってこれなくなるから。
そう言ったのよ。
……これで私の話はおしまい。皆も美味しい話には手を出すんじゃないわよ?
時給がいいとか、仕事が簡単とか……そういう時は、絶対に裏で何かがあるんだから。後……間違っても、そのロッジ探して肝試しとかに行くんじゃないわよ?
……きっと私はもう二度とあのロッジに行くことは無いと思うけれど、あの子達、いつか成仏出来るといいわね。
あんなに苦しそうな声、今まで聞いたことなかったから……。
それじゃあ皆、聞いてくれてありがとうね。次は希で最後に絵里……なんだけど、絵里は気絶してるから話せるか分からないわ。
何とか起こしてみるけど、無理そうだったらごめんにこ☆
第七夜 古井戸 完 >>245
既にネタ切れ起こしてるのに追加九話とか悟り開けそう おちゅん
作者さん、お経がどういうものかもわかってそう
>>247
色的には花陽かもw にこちゃん他にも怖い話のネタ持ってるだろ…これが比較的怖くない方なんでしょ… 西木野家のは天保の大飢饉が元なのかな
この作者さんの怪談とストーリー性とそれぞれの背景が浮かび上がるようでええな 第八夜 「チャイム」 語り部 東條希
こんばんは、東條希です。
えっと、にこっちが言ってたし大体分かってもらえたと思うんやけど……今、絵里ちが気絶してるんよね。
絵里ち、怖いの苦手なんよねえ……。
結構眠りが深いというか気絶が深いというか、さっきから何しても起きてくれないんよ。
今凛ちゃんと花陽ちゃんが付きっ切りで見てくれてるし、ウチが話し終えるまでに起きてくれたらいいんだけど。 ウチは両親が海外飛び回ってるせいで、マンションで一人暮らしをしてるんよ。
これを言うと皆、親がいないと寂しくないかとか聞いてくるんやけどウチは特に寂しいとは思わないなあ。
昔から仕事の都合で転校とかすることが多くて、親との関係も割と微妙やったし……それに、何よりね。
一人暮らしはいいぞ。
家に帰ったらご飯が出来てるとか、掃除洗濯をされてるとか……家族と住んでるとそういうメリットがあると思うんやけどね。
一人暮らしはそれを越えるメリットがある。夜ふかししてても怒られないし、宿題せずに居間のソファで寝転びながらポテチ食べて、再放送のドラマを見てても何にも言われないんよ? ……とはいえ、デメリットもある。さっきあげたような、ご飯とか洗濯とかそういうのじゃないよ?
夜がね、怖いんよ。
家に家族がいれば、夜でも何となく安心できるやん? 同じ屋根の下にいるんだから、もし何かが出ても叫べば助けに来てくれる。
けど、一人暮らしだとそうはいかない。叫んでも何しても、誰も助けてくれない。壁は叩かれるかもしれないけどね。
それにもし誰かが……何かが。訪ねてきた時も、お母さんが先に出てくれるでしょ?
今からウチが話すのは、ウチの部屋に訪ねてきた……あるおかしなものの話。 ウチが一年生の夏のこと。その日は本当に何でもない日だったんよ。絵里ち達と帰宅して、途中でスーパーで買い物して。
家に帰ったら軽く作った晩御飯を食べて、予習して……本当に何処にでもあるような何でもない日。
お風呂に入った後、丁度今日は金曜日だってこと思い出してね。明日は休日だし、たまには夜更かしして映画でも観ることにしたんよ。
今日のロードショーは何かな、ってテレビを付けたら数学の天才少年が世界を救うアニメ映画が放送しててね。夏はいつもこれやってるな、なんて思いながらそれを観てたんよ。
何回も見たことがあっても、やっぱり映画って楽しいものやん? ワクワクしながら、家に置いてあったポップコーンつまみつつ観ててね。
終わりがけ……落ちてくる人工衛星の軌道を変える為に、よろしくお願いしますって叫びながらエンターを押した頃だったかな。
チャイムが鳴ったんよ。 ロードショーも終わりがけの時間だから、もう二十三時近いっていうのにピーンポーンって。
思わず飛び上がって、時計を確認しちゃったよ。
一体何だろう、宅急便かな。そう思いながら玄関に近付いていったら、またピーンポーンとチャイムが鳴らされて。
寝てたらどうするんよ、非常識やなあ。そう思いながら、ドアスコープを覗いたんよ。
そこにいたのは、宅急便の人なんかじゃなくて……一人のお婆さんだった。身なりはしっかりしてて、髪も整った白髪で……良家の人、って感じやったな。どこか心細そうな顔をしてたよ。
けど、そんな身分の人に知り合いなんていないし。何より、二十三時に訪ねてくる時点で余程親しい間柄じゃないと有り得ないやん?
だから、間違えてるんじゃないかって思ってね。 すいません、どちら様ですか?
ドアを開けずに、スコープを覗きながらそう聞いたんよ。
お婆さん、ウチの声を聞いておどおどと顔を上げてね。
こちらは、東條希さんのお宅ですかあ。
そう返ってきたんよ。ぼそぼそとして不明瞭な、何とか聞き取れるぐらいのか細い蚊の鳴くような声やった。
あれ、間違いじゃない? そう思ったけど、こんな夜中に訪ねられて少し嫌な気分だったし、宗教の勧誘とかだったら余計気分が悪くなるし。
ドアは開けずに、そうですけど。って答えたんよ。 お父さんからねえ、頼まれて伺ったんです。上がらせてください。
お父さんが頼んだ、そう言われてもウチはそんな連絡は受けてないし。何より、上がらせてくださいって言われてもこんな夜中だしね。
ウチも映画が終わったら寝るつもりだったし、申し訳ないけど明日にしてほしいって断ったんよ。
ウチの言葉を聞いて老婆は少し困ったように、しばらくんう、んうって呟いていたんだけど……少ししたら諦めたみたいで家の前からスッと離れていった。
何やろう、気味悪いお婆さんやったな。そんなことを思いながら今に戻ったら、丁度映画も終わったところで。
そろそろ寝ようってテレビを消した瞬間、またピーンポーンってチャイムが鳴ったんよ。 今度は何や、夜中に何度もチャイムを鳴らすなって近所から苦情来たらどうしよう。そう思いながらまた玄関に戻ってドアスコープを覗いたらさ。
また、さっきの老婆が立ってる。
けどな、おかしいんよ。さっきは手ぶらで家の前に立ってたんやけど、今度は長細い包みを持ってる。青い包みやったんやけど、端が赤く染まってるのが不気味やったな。
すいません、明日にしてほしいと言った筈ですけど。
もしかしたらこのお婆さん、ボケてるんかなと思ってね。ちょっと強い口調で言ってみたんよ。言って、最悪警察呼ばなきゃいけないかな、なんて考えてたんやけど……。
老婆が、手にしていた包みを開いて。中に入っていたものを、ドアスコープの方にグッと突き出してきたんよ。 突き出されたそれな、人間の手だった。
ひっ、って小さく声を上げてドアから飛び退いたよ。
心臓の動悸が激しくなって、冷や汗が吹き出してね。一瞬で理解したよ、ドアの向こうにいるのはまともな人じゃないんだって。
恐怖の余り動けなくなってるウチに、老婆のか細い声がドア越しに聞こえてきたんよ。
これは、あなたのお父さんの手です。持ってきました、上げてください。
お父さんの手。そう言われても、こんな人を家に上げるわけにはいかない。何をされるか分からないし、チェーンをしていたとはいえドアを開けるのすら嫌だった。 だから、息が激しくなる中震える声を何とか振り絞ってさ。
無理です、帰ってください。
それだけ、答えたんよ。答えた後も少しの間、老婆は扉の前にいたようやった。けどそのうちに、コツコツと足跡が遠ざかっていってね。
ああ、良かった。何とか帰ってくれた、今のうちにお父さんに連絡を取って、一応警察にも電話しよう。
そう思ったはいいんだけど、スマートフォンを居間の机の上に置きっぱなしにしてたから、そこまで戻らなきゃ何処にも連絡出来ない。
壁に手を突きながらよろよろと居間に向かおうとして、ね。
また、チャイムが聞こえた。 きっとまたあの老婆だ。そう思った瞬間、そこから一歩も歩けなくなっちゃって。
ドアの向こうでぼそぼそと、蚊の鳴くような小さな声が聞こえた。けど、少し離れていたからか内容はよく聞き取れなかったな。
多分中に入れてくれ、って話やとは思うんやけど。
反応は出来なかったよ。声を出すどころか、息をするのも苦しかった。
ウチが反応しないことに痺れを切らしたんかな、ドアに何かがぶつけられたような音がしたんよ。
水っぽい何かをべちゃりとぶつけたような音。 これは、あなたのお父さんの目玉です。持ってきました、上げてください。
今度ははっきりと聞こえたよ。声量は上がってなかったよ、相変わらず蚊の鳴くようなボソボソ声だった。
なのに、はっきりとウチの耳はその言葉を聞き取ったんよ。
ああ、今ドアに目玉をぶつけられたんだ。怯えながらも、何処か冷静にそう考えてる自分がいたな。
そして、チャイム。ピーンポーン、ピーンポーンと。何度も何度も、繰り返し繰り返し鳴らされて。その度にべちゃり、べちゃりとドアに何かが擦りつけられ、老婆が身体の一部を言う。
そんなことが繰り返されてたんやけど……。 バン、って。ドアの開く音がしたんよ。
ついに開けられたのか、って恐怖の余り膝から崩れ落ちてもたんやけど……開いたの、ウチの家のドアじゃなかったんよ。
うるさいなあ! 何度も何度もチャイムを鳴らさないで下さい!
ドアを開く音に続いて聞こえたのは、男の人の声だった。すぐに分かったよ、隣に住んでる男性の声だって。
普通のサラリーマンっぽい人だったから、多分もうこの時間には布団に入ってたんだろうね。チャイムのせいで起こされて、苦情を言いにドアを開けたみたいだった。
同時にチャイムと、老婆が何かを投げ付ける音が止んだんよ。 代わりに聞こえたのは。
Mさんのお宅ですかあ。
そんな、か細い老婆の声だった。Mさん、隣の人は確かそんな名前だったなって、ウチがそう思った瞬間。
え、はい……そうですけど。
隣の人が老婆に答えたんよ。多分、名前を言い当てられて鼻白んだんやろな。ひょっとしたら隣と自分の家を間違えたんじゃないか、とすら思ったんやないかな。
そのくらい普通の反応やったんやけど、次の瞬間。悲鳴が聞こえたんよ。 スレタイからは想像もできない展開ですね…たまげたなぁ えっ、うわっ!? おい、やめろっ!
やめ……入ってくるな、おいっ! 出ていけ、やめ……!
バタン、と。扉の閉まる音が聞こえて。もう何も聞こえはしなかった。
恐る恐るドアスコープから覗いてみても、誰もいないし何も見えない。隣の人はどうなったんだ、大丈夫なのか。
警察に連絡した方がいいかもしれない。そう思って、居間に向かって。スマートフォンを手に取って。
……その瞬間、意識が飛んだんよ。何でかは分からない、気付いたらスマートフォン握りしめたままソファで寝転んでて、カーテンの隙間から朝の光が差し込んでた。 慌てて飛び起きて、ドアを開けたんよ。昨日の老婆が色々ぶつけてたし、もしかしたら何かなってるんじゃないかって。
けど、ドアは何もなってない。何かをぶつけた形跡もなければ、汚れもない。
そこでようやくウチは気付いたんよ、ああ、あれは夢やったんか。って。
多分映画を見ながらソファで寝ちゃったんよ。それで、あんな怖い夢を見たんだって。テレビは消えてたけど、多分夜中に寝ぼけて消したんだろう。
変な夢見ちゃった、まだ朝も早いし二度寝しよう。そう思って部屋に入ろうとした瞬間。
叫び声が聞こえたんよ。 女の人の叫び声が、外から聞こえる。何かあったのか、って外階段の踊り場から覗いてみたらね。
錯乱したような女性と、地面に倒れてる男の人が見えたんよ。男の人が倒れてるところから赤い色が広がってて、一目で飛び降りだって分かった。
ウチは、そこから目を離せなかったよ。だって男の人が倒れてるその場所、ウチの部屋のベランダから見てほとんど真下やったから。
……結果から言うと、飛び降りたのは隣の家に住んでる男性だったんよ。
ベランダからの飛び降り自殺。遺書が無いから扱い的には事故か不審死なんやけど、まあ状況的にほぼ自殺で間違いない、って。隣の家ってことで一応事情聴取に来た警察の人が言ってたよ。
あんな夢を見た後に隣の人が自殺なんて、なんか予言してたみたいで嫌やなぁって思ったんやけどさ。 隣の人は多分一人暮らしで、サラリーマン風で、すれ違ったら挨拶する程度の仲で詳しく話したことはない。ウチの知ってることはそのくらいやったから、そう答えてね。
そしたら、警察の人がしきりに首を捻ってるんよ。
どうしたんですか、何かあったんですか。その動作が不思議で、ついそう聞いちゃったんよね。
そしたら警察の人、変な顔してさ。
いやあ、最初に目撃した女の人がね。お婆さんを背負った男が落ちてきた、って言ってるんだよ。
けどこの人は一人暮らしだし、近くにお婆さんの死体も無いし……気のせいにしてはやけに力強く確定して言ってくるから気になってね。
その言葉を聞いて、血の気が失せる思いをしたよ。ああ、あの老婆は夢じゃなかったんだって。ウチの代わりに、あの老婆に家に入られたんだって。 あれが事実なら、ウチの家のチャイムが何度も鳴らされたことを他の家が証言してるかと思ったんやけど……警察の人は特に何も聞いてないみたいで。
ウチも、変な老婆が訪ねて父親の身体をドアに投げてきたなんて言っても信じてもらえそうにないし、何も言わず終わったんよ。
後日、近所の人に聞いてみたんやけどね。あの日ウチの家のチャイムが鳴ってる音も、何かをぶつけるような音も。聞いた人はいなかったんよ。
もしかして、最初から老婆が狙ってたのはあの男性やったんかな。だからあの人にだけチャイムが聞こえたんかな。
もし最初から老婆が男性の家に行っていたとしたら、男性も不審に思って開けなかっただろうし。チャイムが聞こえたから、苦情を言う為に開けて……老婆に、入られた。
……もしウチが、最初の時点で気にせずドアを開けたらどうなってたんやろうな? ターゲットを変えて、ウチの家に入ってきてたんかな?
そして、ベランダから飛び降りて……死んでたんかなぁ? これでウチの体験した話は終わり。
それ以来、夜中にチャイムが鳴ることは無かったよ。まあチャイムが鳴ったとしても、もう二度と出ないと思うけど。
さて、絵里ちやな。どう、起きた?
……起きてない? んー……参ったな。
えっと……じゃあ。一旦休憩にして、絵里ちが起き次第再開という形にしますね。もしこのまま絵里ちが気絶していたら、申し訳ありませんが中止にさせていただきます。
絵里ちの怪談を楽しみにしてくれてた人に悪いし、なるべく時間をとって……。 お婆さんがを背負ったってところパロスペシャルみたいな絵が浮かんだわ 怖い怖い
その後のんたんの父親は健在だったんだろうか…あるいはそのまま二度と… 質問なんですが、怪談9話以降も続いたらいいなって思いますか? μ'sのままやるなら続いて欲しい
二週目でも良いので
虹やサンシャインが出てくるなら別スレがいいな
別物ってことで 1人で残業中にこんなもの見るんじゃなかった…仕事が手につかない… 続いて欲しいです。オナニーも詳しく描写してください。 >>315
ネタが続くなら是非お願いしたい
無理強いはしないので主の気が乗ればの話だけど Aqoursも見たいけどこのスレタイでは変だな、スクスタ時空でもないみたいだし
いや元々タイトルと内容ぜんぜんちゃうやんけなんだけど ネタが尽きないならAqours虹学も見たい
新スレ建てるなら誘導してもらえると助かります 作者さんに無理強いはできないけれど真姫ちゃんを守護する謎の鎧武者のお話ももう少し見ていたい 学怖みを感じるから、2週目突入(パラレル)ってことでお願いします 友人が夜中俺の部屋番号間違えて女性の一人暮らしの部屋の呼び鈴をずっと鳴らしてた時の事を思い出したわ そう、皆は続くことを望んでるのね。
良かったわ、私も続くことを望んでるから。μ'sが続くことを、怪談が続くことを。
未来永劫、続くことを。
希「……絵里ち? さっきから何をいってるん? お客さん達に変な質問して……」
希「続けばいいって、もう時間も遅いし……お客さん達もノせたらあかんよー。絵里ちは調子乗りなところがあるんやから」
希「本当に大丈夫? ひょっとして頭打ったりした? 目が据わってるけど」ボソッ
大丈夫よ、私は大丈夫……。さあ、怪談を始めましょう。楽しい怪談を、終わらない怪談を……。 ごめんウインドウズ10の更新終わらないからもう少し待って 皆は、何かが永遠に続いてほしいと思った事はない?
例えば友人と遊んでいる一瞬だったり。
例えば恋人との初めてのデートだったり。
例えば……応援しているスクールアイドルの活動だったり。
けれど、どんなに望んだとしても全ては終わりを迎えちゃうの。
門限があるから遊びは終わり、夜が来たからデートは終わり、卒業をするからスクールアイドルは終わる。 未来永劫終わらないものもある?
残念だけど、そんなものはないの。もしそれが終わらなかったとしても……先にあなたが終わるじゃない。
もしあなたが明日交通事故で死んだら、そこで終わり。例え老人になるまで生き延びたとしても……老衰した瞬間に、あなたとそれの関係は終わっちゃうの。
怖いわよね?
何を言ってるのか分からない?
そうかしら。分からないことなんて、何もないと思うのだけれど。 怪談の話をしているのよ。
怪談はいいわよ、終わらないもの。
終わったように見えても、ずっと続いているのよ。
穂乃果の話。トンネルはまだそこにあって、誰かを呼んでいる。
海未の話。館は首を吊るのを待っている。
ことりの話。Y君の吐いた嘘はもう覆ることはない。
真姫の話。本家の人達はまた儀式をするんでしょうね。
凛の話。もう一人の自分はきっといつか彼女を飲み込む。
花陽の話。死人の為にいつまで星は瞬く。
にこの話。裏バイトがある限り、子供たちは救われることは無い。
希の話。お婆さんは今も何処かでチャイムを鳴らしている。
……続くのよ、怪談は。恐怖というのはいつまでもいつまでも、終わることが無い。 終わらなければいいと思わない?
何もかもが、怪談のように。
友人と過ごす瞬間が。
恋人との初めてが。
スクールアイドルの活動が。
https://i.imgur.com/alABNwB.jpg
永遠に続けばいいと、そうは思わない? 劇場メーカー早速取り入れてて草
これもう一回気絶するんじゃ… 続けばいいと思うわよね?
皆もそう思っているでしょう? だから私の問いに。
続いてほしいと答えてくれた。
https://i.imgur.com/ATcpe7g.jpg
皆だけじゃないわ。
穂乃果も。
海未も。
ことりも。
真姫も。
凛も。
花陽も。
にこも。
希も。
https://i.imgur.com/7tD7Zrm.jpg
そう思っているでしょう? だから、こうして私達は怪談をしているんじゃない。
貴女達は悩んでいたでしょう?
μ'sを終わらせるかどうかを。
https://i.imgur.com/iWgju75.jpg
三年生達が卒業して、なおμ'sを続けるかどうかを。
にこは、誰かがいなくなっても続けるべきだって言ってたわよね。
花陽は、にこ達がいなくなったらμ'sじゃないって……そう言っていたわよね?
けれど心の中では終わらせたくなかった。だからあんなに話し合いをしたんじゃない。 結論は出なかったでしょ?
当然じゃない、皆が終わらせたくないんだから。
花陽の話だって、テセウスの船でしょう?
三年生が抜けて、二年生が抜けて、一年生が抜けて。
もし未来のμ'sに、最初のメンバーが誰も残っていなかったとしたら。
それは本当にμ'sなのか、そうでしょう? でも、もうそんな心配をする必要はないのよ。
https://i.imgur.com/fwtIS19.jpg
三年生が卒業するからμ'sは終わり?
なら、簡単な話じゃない。今この瞬間を……。
怪談のように、永遠に続ければいいんじゃない。
だから、私達は怪談を始めた。終わらない怪談を。
https://i.imgur.com/1hJ7nVf.jpg
未来永劫に続く怪談を。
怪談をしている間は、私達は永遠なの。
同じような毎日が繰り返されて。
怪談をすることになって。
特に問題無く怪談を終えて。
https://i.imgur.com/eroTeU1.jpg
同じような毎日が繰り返されて。
怪談をすることになって。
それでいいじゃない。終わらせて、皆離れ離れになって……。
何も残せないよりも……。 どうしたの? 扉が開かない? 電話が繋がらない?
当たり前じゃない。あなた達は続くことを望んだんだから。
大丈夫よ、すぐに……外に出られるから。
今日の昼間に、何処かで……戻ってきたと知覚することもなく。
終わらない方がいいでしょう?
ねえ、終わらない方がいいんでしょう?
blob:https://imgur.com/b0d4be1c-6ccb-4a34-97e1-e61c67816358 >>347修正
どうしたの? 扉が開かない? 電話が繋がらない?
当たり前じゃない。あなた達は続くことを望んだんだから。
大丈夫よ、すぐに……外に出られるから。
今日の昼間に、何処かで……戻ってきたと知覚することもなく。
終わらない方がいいでしょう?
ねえ、終わらない方がいいんでしょう?
https://i.imgur.com/hvNpsdW.jpg 大丈夫だよ。
終わらないよ、ずっとずっと続いていくの。
皆が怪談が終わらないことを望んでくれたから。
皆がμ'sが終わらないことを望んでくれたから。
さあ、戻ろう? そして、また怪談を始めよう?
https://i.imgur.com/OtkobZ7.jpg
終わらない怪談を、ずっとずっと……。 ……ああ。また、貴方?
何度やっても一緒よ、いくら私を刀で斬りつけても意味は無いの。
私は怪談なんだから。
誰かが望む限り。誰かが続けてほしいと思う限り。
何があっても終わらない存在なんだから。
https://i.imgur.com/fbCZgHg.jpg
……ああ、絵里も分かってくれたみたいよ。じゃあ、またね……鎧武者さん。 校庭
真姫「……あれ?」
真姫「私、いつの間に校庭に……?」
真姫「何だかムラムラしてきたわね……オナニーしましょ」クチュクチュ
娘子が自慰を始めたのは、何度目の繰り返しからだったか。最早覚えてはおらぬ。
幾度と無く繰り返されることに、心か脳が破壊されたのだろう。今では羞恥心も持たなくなった。
私はこの娘子、真姫を幼い頃からずっと守ってきた。
彼女が危険な目に合った際には、それが我が直系の子孫の意思だったとしても。
神を斬ってまで、守り通してきた。
しかしもう、私には救えないのかもしれない。
怪談が繰り返される度に、自分の力が抜けていくのを感じる。
何千、何万と変わらない日々。続いていく怪談……きっと、私も心が壊れてしまっているのだろう。 きっともう。私にこの子を守ることは出来ない。
彼女だけをここに置いて、私はいなくなるのだろう。
残された彼女がどうなるのかは分からない。
心が完全に壊れるのか、いつかこの怪談から解放されるのか。
真姫の成長を共に見ることが出来ないこと。
それだけが心残りだ。 真姫「……んっ」チュク
真姫「あっ……はぁ……」クチュクチュ
真姫「やっぱり……校庭でするオナニーは最高ね……」クチクチ
真姫「んうっ……」
鎧武者「……」
真姫「!?」 真姫「ヴェエッ!? 鎧武者ぁ!?」
真姫「な、何でこんなところに鎧武者がいるのよ!? つ、通報しなきゃ!」
鎧武者「……」スッ
真姫「110番……ってあれ? 何処行ったの……?」
真姫「それにしてもあの鎧武者、何だか……」
真姫「とても、悲しい顔をしていたわね」 怪談に、大きな終わりなんていらないのよ。
精神だけが世界をいくつも渡り歩いていたり。
百物語が百鬼夜行を呼び出す装置だったり。
少し前に消えた十人目が怪談に混ざっていたり。
ドッペルゲンガーに成り代わられたり。
……ただ、続けばいいのよ。そうでしょう?
ずっとずっと、続いていけばいいの。ふふっ、あははっ。
あははははははははっ!
第九夜 怪談 完 見て!μ'sが怪談をしているよ
かわいいね
続くことを望んだせいで、μ'sは終わらない怪談に閉じ込められてしまいました
お前らのせいです
あーあ 今までで一番怖かった…絵里ちゃん取り憑かれてるのかこれ…
イッチに聞いていい?この絵里ちゃん?はけんちん汁のときのロシアのやつとは関係ない?木の根のやつ オツ オモシロカッタ
>>315で文頭にスペースが一文字空いてたのは怪談さんに完全にやられた いやでもあの災いあれから続いてる説も面白いかも
とにかく拙作お読みいただきありがとうございました 各怪談のクオリティは流石だけど
オチがけんちん並なのは様式美か >>361
マジだすげえ
終わらせるルートも考えてたの? これでもけんちん汁のかよちんにとっては一つの救いになってそう 前々から気になってたんだがけんちん汁のスレタイてどういう由来でつけたんだ
ただのインパクト重視? それとも何か意味があるの? ラストの怪談SS引用、ボスラッシュみたいで好き
全部作者の過去作? けんちん汁は晩飯に出たから付けた。オムライスだったらオムライスになってたよ
ラストの怪談SS引用は上から
けんちん汁(俺の)
百物語しよーよ(別作者)
認めっ認めらられれれ(別作者)
冬の夜更けに(別作者) 面白かったぞ乙
新参です漫画過去作の名前だけでも教えてくれ 新参でスマンが、過去作の〜
ってことだろ常識的に考えて ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています