梨子「私は桜内梨子。スパイダー・リリーよ」Vol.2
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前回までのあらすじ
謎のクモに噛まれた桜内梨子は、クモの能力を手に入れスパイダーウーマンになった!
※前スレ
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1563291407/ 簡単なキャラ紹介
・スパイダーリリー/桜内梨子
謎のクモに噛まれた浦の星女学院に通う女の子で今作の主人公。
クモのスーパーパワーを手に入れ、ヒーローとして沼津の街を守るために日夜戦っている。
・小原鞠莉
梨子の先輩でスパイダーリリーの支援者。
莫大な資金でもってリリーのスーツを作ったり支援用の装置や色々なものを研究している。
犯罪者に対して並々ならぬ憎悪を抱いている。
・ナターシャ
鞠莉のメイド。
・アクアガール/渡辺曜
ある事故から、全身を水に変化させることができるようになった。
かつてはリリーと敵対し戦い、今は共に闘う仲間となった。
・Aqours
浦の星女学院のスクールアイドル。
梨子と鞠莉と曜が所属している。 〜夜〜
ウー…ウー…
リリー「……アクアガール」
アクア「なに?リリー」
リリー「ここ最近、事件多いよね……」
アクア「そうだね……特にヤクザとかギャングとか、外国人の人たちが増えてるかも」
リリー「この街で、何か良くないことが起きようとしてる気がするんだ、私」
アクア「それって……もしかしていつものクモ肌ってやつ?」
リリー「スパイダーセンスって呼んでよ……もう。なに? クモ肌って」
アクア「ほら、あの……腕の毛がぶわっ!てなってたやつでしょ?」
リリー「あ、うん、それだよ。危険が近づくと感覚でわかるようになるの」
アクア「うんうん。あれが鳥肌っぽいなって思って」
リリー「……そうなんだ」
アクア「であります!」
リリー「……でも、だからってゆっくりしてる暇はないよね」
アクア「ね!」
リリー「私たちはこの街のヒーロー。沼津での悪事は許さないんだから」
アクア「よーっし! それじゃあまずは曜ちゃんが事件解決に行っちゃいますか!」ダンッ!
リリー「じゃあ私は向こうに! 何かあったら通信で呼んで!」
アクア「おっけー!!」バシューーン!
リリー「……水の噴射で空飛べるようになったんだ。すごいなぁ、ふふ」
リリー「……よし、私も!」タッタッタッ
パシュパシュッ
ヒュンッ! リリー(ここ最近の事件はヤクザ同士の抗争が多い……)
リリー(そこに海外のマフィアやギャングが乱入して大変なことになってる感じなんだけど……今日もそんな感じみたい)
リリー(私と曜ちゃんで乗り込んで懲らしめて、警察が身柄拘束してもまだまだ治らない……)
リリー(鞠莉さんが言うには────)
鞠莉『全面戦争と言うよりは、戦力を小出しにして互いに削りあってるようにも見えるわね』
鞠莉『でもこんな抗争の仕方なんかあったかしら……ダイヤも何か不可解だって言ってたけど、マリーもちょっと違和感なの』
鞠莉『もしかしたらこの抗争の裏に何かマズイことが起き始めてるのかもしれない……気をつけてね』
リリー(ってことらしいけど……確かに日本のヤクザの抗争に海外から乱入するって、よくわからないかも)
リリー(確かに鞠莉さんの言う通り、何かが起ころうとしてるような……スパイダーセンスも何かを感じてる。間違いないのかもしれない) ・・・
リリー「…………ふう、こんなところかな?」
ヤクザ「ぅ、ぐっ……」
リリー「もう喧嘩しちゃダメですよー? ……って、毎日言ってるけど聞いてくれないもんね、あなたたち」
ヤクザ「……ヘッ」
リリー「今日の人たちは……ヤクザさんと、別のヤクザさん、それに……外国人かぁ」
ヤクザ「ヤロウ……人のシマでふざけた依頼なんかに、ノリやがって……」
リリー「……依頼? どういうことですか?」
ヤクザ「……」
リリー「ねえ、ちょっと! …………だめ、気絶してる。やりすぎちゃった……」
リリー「……依頼? なにを依頼されてるの、あの外国人は」
リリー「……鞠莉さんに相談してみよう」 〜ホテルオハラ・研究室〜
「お嬢様、あの子から本日の活動報告が届いてます」
鞠莉「んー」カタカタ
「昨日と同様のヤクザ同士の抗争でした。アクアガールと手分けして2件の抗争を止めた、とのことです。ドローンでも確認できてます」
鞠莉「その映像はこっちでも確認できてるわ」
「そうですか」
「……それと、最近よく現れる海外のマフィアについてヤクザが変なことを言っていたと」
鞠莉「変なこと?」
「……人のシマでふざけた依頼なんかにノリやがって、と」
鞠莉「……依頼?」
「そこで気絶したようで」
鞠莉「依頼ねぇ……」
「……先日、コンタクトを取ろうとしてきた変な教授と関係あったりしないわよね」
鞠莉「変な教授?」
「スパイダーリリーの生みの親たなんだと語っていた人物です」
鞠莉「……ああ、忙しいとか適当に言って無視したアレ」
「ええ、アレです」
鞠莉「……あの人は確か、放射能を浴びさせたクモの研究をしていたのよね」
「ええ。そして研究の発表を前に、そのクモを輸送していたところ、沼津駅前でその輸送トラックが横転事故を起こし、あの子がそのクモに噛まれた」
鞠莉「……その件があってから荒れに荒れて学会から永久追放されたんでしょう? なんで私に……」
「……スパイダーリリーについて研究しようとしてる、とか」
鞠莉「……」
「……」
鞠莉「ナターシャ、それは流石に」
「……」
鞠莉「……すぐにリリーを呼んで」
「もう呼んでるわ、ついでにアクアガールも。あと10分で到着するはず」
鞠莉「……」 ・・・
梨子「お待たせしました……ぅっぷ」
曜「大丈夫?」
梨子「じゃないれふ……」
「なにがあったの?」
曜「私が梨子ちゃんを抱っこして海を走ってきたのであります! シャイニーライナーならぬ曜ちゃんライナーってね!」
梨子「酔いました……」
「……はぁ」
鞠莉「遊んでる場合じゃないのよ二人とも」
曜「鞠莉ちゃん!」
梨子「す、すびばせん……うっ」
鞠莉「梨子の報告にあったヤクザの件だけど」
梨子「ぁ……はい」
鞠莉「ちょっと心当たりがあって、それで呼んだの」
ようりこ『!』
〜マリー説明中〜
鞠莉「……というわけで、梨子にそんな力を与えたクモを生み出した博士が何か企んでるかもしれないから気をつけて」
曜「はーい」
「じゃあ向こう岸まで船を出すからロビーまで降りていて」
曜「はい! いこ、梨子ちゃん」
梨子「……」
梨子「いやいやいやいや待ってください待ってください!」
みんな『?』
梨子「え、えっ……私、狙われてるんですか!?」
鞠莉「かもネってことよ」
梨子「かもねって……でも、クモを生み出した人が……」 鞠莉「でもそんな心配はいらないわよ梨子」
梨子「ほぇ……」
鞠莉「だってあの博士、学会から追放されてるし。それに有り金全部使ってあのクモを作り直そうとして失敗に失敗を重ねて無一文なんだから」
鞠莉「もう威厳もプライドも金も地位も何もかも失った哀れな男よ」
梨子「……」
鞠莉「だから安心して? 何かがあってもマリーが絶対に守るし、助けてあげる」
曜「私もいるしね!」
「ふふ」
鞠莉「ナターシャも腕は立つし」
梨子「……は、はい」
梨子「じゃあ……お言葉に甘えて」
鞠莉「よし、いい子ね。それじゃあ今日はお仕事終わりのtea partyで疲れを癒しましょ! 二人の好きなgrandmaのお菓子も用意してあるから」
ようりこ『!』
鞠莉「マリーももう休憩していいよねナターシャ?」
「あとは私がまとめておきますので、どうぞ」
鞠莉「thank you♥」
鞠莉「さあさあ、新たなリーク情報もあるからそれについて作戦会議も交えて女子トークね!」
梨子「物騒な内容の女子トークなんて嫌です〜!」
曜「まあまあ、私たち二人が頑張れば負けることはないよっ!」
梨子「もお、曜ちゃんったら……」
梨子「……でも、そうだね。私たち二人なら」
曜「うん!」
鞠莉「いいね二人とも。マリーも一緒に行こうかしら?」
ようりこ『危ないからダメ(です)!!』
鞠莉「ちぇー」ノξソ ´・ω・`ハ6 ようりこ『いただきます!』
梨子「はむ、もぐ……ん〜」
曜「おいしいよこのケーキ!」
梨子「紅茶もいい香り……鞠莉さんが仕事終わりに振舞ってくれる紅茶が、私、とっても大好きなんです」
鞠莉「ふふ、その日の働きによって茶葉を変えてるの」
曜「む? それってつまり、あんまり仕事してない日は安いお茶ってこと?」
鞠莉「ノンノン! 疲労度によって変えてるの。たくさん動いて汗をかいた日は甘いお茶にして疲れを癒したり、戦ってダメージをたくさん受けてきた日はさっぱりした後味のものにしたり」
梨子「何か変わるんですか?」
鞠莉「味が違うと癒され方も変わる……んだけど、二人は違うの?!」
梨子「……どうでしょう、いつも美味しくて、それだけで癒されてるから」
曜「私もであります」
鞠莉「マリーの努力って……」
梨子「で、このお茶が楽しみで頑張ってる日もありますから!」
曜「にしし、梨子ちゃん焦ってる」
梨子「曜ちゃん!」
曜「大丈夫だって! 鞠莉ちゃんの出してくれるお茶もお菓子もおいしいしっ」
梨子「それはそうだけど……」
鞠莉「……ふふ、本当におかしな子たちね」
ようりこ『!?』
鞠莉「あなたたちがヒーローでよかった。そんな会話ばかりの普通の女の子に、こんなに大きなものを背負わせてしまってるのは申し訳ないけれど」
梨子「……それは、鞠莉さんだって」
曜「そうだよ、鞠莉ちゃんだって私たちを助けてくれてるヒーローだもん」
鞠莉「……ふたりとも」
梨子「いつもありがとうございます」
曜「今日はサポートなかったけどね」
鞠莉「もう! 今日は忙しかったのっ!」
鞠莉「……ふふ、ありがと。ほらほらお代わりもたくさんあるから食べて飲んで!」
梨子「ふふ、はいっ」
曜「鞠莉ちゃんのケーキもらい!」
鞠莉「それはダメー!」 ・・・
梨子「その日は、お茶を飲んで、お菓子をいただいて、ゆっくりと談笑して解散となった」
梨子「船着場から私は歩いて。曜ちゃんはナターシャさんの運転する車で、それぞれ帰路に着いた」
梨子「家に着いたのは22時過ぎ。お父さんとお母さんに最近帰りが遅いって注意されちゃった」
梨子「どんなに怖い人でも簡単には負けない私になったけれど……親に心配させちゃダメだよね」
梨子「でも、スパイダーリリーをやってる間はどうしようもなくって……」
梨子「……いつか、この役目を終えたら、早くに帰って心配をかけずに済むのかな? なんて、ふふ」
梨子「それから私はスーツとウェブシューターの手入れを軽く済ませて、寝支度を整えて」
梨子「窓から見える千歌ちゃんのお部屋はまだ電気が付いていて……作詞してるのかな? なんて考えながら、私は眠りにつきました」 梨子「これが私の、桜内梨子の人生」
梨子「学校に通い、友達とスクールアイドルをやって……学校が終わればヒーローとして戦う」
梨子「そのあとは一緒に戦った仲間と打ち上げをして、両親の待つ家に帰る」
梨子「今の私はとても幸せだと思います」
梨子「抗争に巻き込まれて銃に撃たれたり殴られたりするのは痛いし泣いちゃうけど、でも」
梨子「それで助けられる人がいる。救える命がある」
梨子「私がこの力を使って人を救えるうちは、どんなに大変なことがあっても全力で助けるんだ」
梨子「それが、私がこの力を得た責任だと思うから」
梨子「その責任を果たすのが、私の役目だから────」
梨子「そう、今の私はとても幸せなんです」
梨子「大好きな人たちがいて、その人たちを守ることができる────だから、幸せ」
梨子「────だけれど」
梨子「私はまだ知らない」
梨子「────これからの私に起きる大変な出来事を」
梨子「私のこの力が、私の大切な人を傷つけてしまうことになるなんて────」
梨子「私は、まだ知らない」 スパイダーリリー
第5話「這いよる混沌」
おしまい 1ヶ月くらい更新できなくて本当に申し訳ないです
時間あるときにまとめて更新するより空いてるときにちまちま更新していくことを目指して2スレ目も頑張ります
さて、とあるマフィアのキャラを把握するためにPS4スパイダーマンやり直さなきゃ… このペースならしたらばとか速報でもよかった気がするがまああっちは人がいないしな… あれから忙しさが限界を超えてしまってた…
本当にすみません…
今日か明日に少しでもと思ってますがもってくれよオラの体 〜沼津〜
千歌「3人で遊びに来るのって久しぶりだねっ!」
梨子「そうかなあ? 先週も来たばっかりのような……」
曜「梨子ちゃん、先々週だよ」
梨子「あ、あれ……?」
千歌「梨子ちゃん忘れっぽいんだー」
梨子「そ、そんなつもりは……えと、ごめんなさい……」
曜「ふふ、本当に先週であってるよ♪」
千歌「にしし、引っかかったのだ!」
梨子「も、もう!ふたりとも〜!」
千歌「だってほら、先週は1時間おしゃべりして帰っちゃうくらい梨子ちゃん忙しかったでしょ?」
梨子「へ……?」 千歌「たまに部活休むし、終わっても急いで帰ってお出かけしてるみたいだから」
千歌「1週間に一回はこうやって遊んでリフレッシュしないとだよっ」
曜「そうそう、こうして私もまた遊べるようになったことだしねっ」
梨子「千歌ちゃん、曜ちゃん……」
千歌「まあ曜ちゃんも最近付き合い悪くなったけど」
曜「!?」
千歌「だから今日はチカと遊ぶんだよ門限の時間までっ!」
ようりこ『は、はい!』
千歌「ふふん、よしよし。それじゃあまずタピオカ買いに行こ! 都会の女の子はタピオカ片手にショッピングなんだよ!」
曜「さ、サーイエッサー!」
梨子「ちょっと知識が偏ってる気が……」
千歌「梨子ちゃんなんか言った?」
梨子「な、なにも言ってないよなにも」
千歌「……ふうん」
梨子「た、タピオカ久しぶりだな〜……あは、あははは……」 千歌「……にしし! チカはねえ、オレンジジュースのタピオカ! きっとおいしいよ!」
梨子「そ、そんなのあるの!?」
千歌「なければ作ればいいんだよ!」ダッ
梨子「なに言ってるの!!?」
曜「千歌ちゃんらしいと言えば、らしいけど……あはは」
梨子「……気を遣わせちゃったね」
曜「うん……口にしないだけで、私たちのこと、一番よく見てくれてるしね」
梨子「曜ちゃんの身体のことは、千歌ちゃんには」
曜「一番最初に話したよ。……たまに、みんなのいないところで突かれて遊ばれてる」
梨子「遊ばれてるんだ……」 曜「怖くないよってアピールしてくれてるみたいで安心できるけどね、ふふ」
梨子「……優しいね、千歌ちゃん」
曜「それは梨子ちゃんもよく知ってることであります」
梨子「まあ……そうだね」
曜「それよりほら、早く行かないと見失っちゃうよ! 千歌ちゃんの居場所は鞠莉ちゃんの通信で教えてもらったりもできないんだから!」
梨子「わ、わ、わ! もう駅前まで行ってる!」
曜「え、早!? 梨子ちゃんウェブでスイングして連れてって!」
梨子「できるわけないよ!? 曜ちゃんこそ水の噴射で連れてってよ!」
曜「よっし任せて!」
梨子「冗談だからやめて!!」 ・・・
千歌「んーっ! オレンジティータピオカっておしゃれだね〜!」ヂュ-
梨子「本当に千歌ちゃんオレンジジュース大好きだね」
千歌「むむ? オレンジティーだよオレンジティー! オレンジジュースなんてもう子供の飲み物なんだよ」
梨子「えぇ……毎日お昼にパンと一緒に飲んでなかったっけ?」
千歌「あの頃の私はただの子供、こわっぱだったんだよ」
梨子「こわっぱ……」 千歌「そのこわっぱに出会いがあった。大人になったんだよ、オレンジティーとの出会いによって」
曜「明日にはオレンジジュースに戻ってるよきっと」
千歌「戻らないもんっ!もうオレンジティーで大人になったチカはそんな子供の飲み物なんて……」
曜「ほんとかなぁ?」
千歌「ほんとだよ!」
曜「じゃあもうオレンジジュースは飲まないの?」
千歌「もちろん!」
曜「じゃあ学校の帰りにオーモスで寿太郎のジュースも飲めなくなっちゃうね」
千歌「!!」 梨子「あ、ほんとだね。もう寿太郎飲めなくなっちゃう」
千歌「そ、それは……うぐぐ……」
千歌「い、いじわるー!!」
ようりこ『あはははっ』
千歌「いじわるなふたりにはオレンジティーとの出会いを体験させてあげるよ!」
曜「一口くれるんだ」
梨子「やさしい……」
千歌「ねえ、それよりだよ」
梨子「?」
千歌「梨子ちゃんってスパイダーリリーなの?」
梨子「ぶはっ!!?」
曜「うわぁ!?」
千歌「私のオレンジが〜!」 梨子「げほ、けほっ……ち、千歌ちゃん今なんて……」
千歌「梨子ちゃんスパイダーリリーなんでしょ?」
梨子「……違うよ?」
千歌「曜ちゃんから聞いたもん」
梨子( ・ὢ・ )
曜「ゴメン♪」
梨子「よ、曜ちゃんったら冗談好きなんだから〜」
曜「おお、逃げてる」
千歌「本当に違うのー?」
梨子「違うに決まってるよ? 私みたいな、ほら……腕も細くて地味で運動神経もそんなに良くない普通の高校生が、あんなヒーローなわけないじゃない」
梨子「そうでしょ?そうだよね曜ちゃんならまだしも」
千歌「むむ……確かに曜ちゃんは運動神経抜群だし筋トレしてるから強いし……」
梨子「……」
曜「いや〜えへへ」 千歌「……でも曜ちゃんはほら、水のヒーローでしょ?」
曜「まあね」
梨子「!!?」
千歌「あれ、聞いてるんじゃないの? アクアガールっていう新しいヒーロー、あれって曜ちゃんだって」
曜「……てへ♪」
梨子(もぉ〜〜っ!!)
曜「ま、そういうわけだから! これからは何かがあったらすぐに曜ちゃんが助けちゃいますとも!」
千歌「わ〜い♪」
梨子「……」
梨子(なんだか複雑な気分だなぁ……むむむむ)
千歌「よし、それじゃあスーパーヒーロー曜ちゃん! ゲームセンター行こ!」
曜「ヨーソロー!」
梨子「あ、待ってよぉ〜!」 〜ゲームセンター〜
ドゥンドゥン♪
千歌「こんにゃろ〜!!」ズダダダダダ!!
曜「千歌ちゃん待って待ってリロード追いつかないから!」
千歌「え、なになになにわあちょっと待って噛まれてる噛まれてる曜ちゃんたすけてたすけて!!」
曜「待ってリロードして……あ、こっちまで来てる!」
千歌「よーちゃーん!」
曜「ゴメン無理〜!!」
梨子「……ふふ」 梨子(そういえば、普通のなんでもない1日を過ごしたのっていつぶりだろう)
梨子(思えば、この力を手に入れてからずっとスパイダーリリーとして活動して……)
梨子(それのない時間は学校と部活、あとはラブライブ……)
梨子(最近部活にも満足に参加できてない……ダイヤさんにも色々と心配されちゃったんだっけ)
梨子(……みんな、優しくて暖かくて、本当にありがたいな……)
梨子(……だから、私)
梨子(この力を手に入れた時、最初にみんなを守りたいって思ったんだよね)
千歌「あー……負けちゃった」
曜「チームワーク最悪だったであります……」
千歌「曜ちゃんがたすけてくれたらもっと行けたもん!」
曜「いやいや、千歌ちゃんが自分だけ回復しちゃうからだよね!?」
千歌「むむむ……! じゃあ、次は梨子ちゃんとやる! 梨子ちゃんとなら最高のベストマッチを見せつけられるもん!」
梨子「ほえ?」
曜「望むところだよ! 梨子ちゃん交代!」
梨子「あ、はい! えと……どうやるの?」
曜「えっと、ここを〜……」 〜ホテルオハラ・鞠莉の部屋〜
ダイヤ「掴んだって、本当ですの?」
鞠莉「of course」
鞠莉「近頃ずっと巷を騒がせてるヤクザやギャング、マフィア……面倒だからもう全部ギャングで統一しちゃうけど」
鞠莉「そのギャングたちが今日、沼津駅に奇襲を仕掛ける計画を立ててる情報が入ってきたの」
ダイヤ「確かな筋の情報なのでしょうね……?」
鞠莉「それはno problemデース! 小原家が本気で調べ上げたんだもの!」
ダイヤ「……そう。でも、なぜ沼津駅に?」
鞠莉「……それだけが不明なの」
ダイヤ「不明? 何もわからないと?」 鞠莉「今までのギャングたちの抗争も、なぜか沼津周辺で行われていた。それは確かなんだけれど、その理由だけは依然として分からない」
鞠莉「ダイヤの方だって、捕まえた組員は何も吐き出さないんでしょ?」
ダイヤ「……そうね、ええ、その通りですわ。どの組、どのマフィアの者かまでは突き止められても、なぜこの沼津で銃撃戦を繰り広げているのか……なにひとつ判明していませんの」
鞠莉「でも、とにかく今日は先手が打てる。一般人に被害が出ないよう、ダイヤは警察を回して避難させて」
ダイヤ「すぐに手配致しますわ。鞠莉さんはどうなさるおつもり? 例のスパイダーリリーを寄越してくださるのかしら」
鞠莉「……今日はリリーは非番よ」
ダイヤ「非番? どういうこと?」 鞠莉「あの子も人間。たまには休ませてあげないと……きな臭い輩もうろついてるから」
ダイヤ「でも、この有事に? 彼女の存在は我々にとっても大きな戦力に……」
鞠莉「分かってるわ。でも……彼女がいなくても何とかできないと……この先、何かが起きた時にどうしようもできなくなる」
鞠莉「ハイドロマンの時みたいなことは……ゴメンよ」
ダイヤ「……そうですわね。そもそも、この周辺は黒澤家が守護してきたんですもの」
ダイヤ「そこに鞠莉さんの技術力や情報が合わされば最強に決まっています」
鞠莉「ふふ、ありがとう。それじゃあよろしく頼むわね、ダイヤ」
ダイヤ「ええ、もちろん」
鞠莉「……何かあれば私も出る。出られるように……調整は済ませてあるから」
ダイヤ「無理はなさらぬように。では、失礼します────またあとで」
鞠莉「thank you♪ またあとでね」
バタン 鞠莉「……さて」
鞠莉「ナターシャ」
「はい」
鞠莉「スーツの調整、すぐに済ませられると思う?」
「……無理ね。まだ飛行テストすら上手くできてないのに」
鞠莉「そうよね……」
鞠莉「脚部だけの飛行ユニットじゃバランスが調整できない。そのために背面にもスラスターを、と考えたけどそれでも……」
「……」
鞠莉「なにかいいideaはない?」
「……さあ」
鞠莉「……shit! やっぱり今回も使えそうにないわね!」
「……」 鞠莉「とにかく今できる全力で今日の作戦を成功させるわよ! ここまで大きな抗争、必ず幹部クラスだって現れるわ!」
「了解。私も行きましょうか?」
鞠莉「私に何かあったときは、ね」
「それなら、あの子たちが先んじて行きそうだけど」
鞠莉「今日は非番だって言ったでしょ? 戦士にも休息は必要────ゆっくりと休んでてもらわないと」
鞠莉「で、全て丸く収まってから、私たちでも出来たのよって教えてあげて、悔しそうな顔を拝ませてもらわないと」
「……意地の悪い」
鞠莉「最悪、こっちだって私が出向いて現場で指揮するくらいはやるわよ」
「そうならないことを祈りますわ」
(……本当に、あなたのような子供には戦わせたくないの。スーツのことだって、私は敢えて間違った調整をさせているんだし)
(────戦うのはヒーローの仕事。鞠莉、あなたはまだヒーローじゃない)
「……ところで」
鞠莉「なに?」
「あの子たち、いま沼津駅にいるようだけど」
鞠莉「えっ!!?」 〜同時刻・JR貨物線某車両〜
ガン!ガン!ガン!
運転手「ぐ、ぁあ……ぁ、あ゛ぁ……!!!」
ギャング「どきやがれ!」
運転手「な、なにを……!」
ギャング「この列車は今から俺たちがもらうぜ」ズガン!!
運転手「ぁ」バタリ
ギャング「お前ら、ブツを積み込むぞ。計画成功の前祝いの大花火だ」 〜イシバシプラザ〜
梨子「ふはー……」
曜「はふ〜……」
千歌「お洋服買っちゃったね〜」
曜「買っちゃいましたでありますなあ……」
梨子「私は買わなかったけどね……」
ようちか『あれ絶対梨子ちゃんに似合ったのに!』
梨子「あ、あはは……でもすごく高かったし」
千歌「……たしかに」
曜「高校生に出せるお金では、ないかも……」
梨子「出せないよ……」
曜「鞠莉ちゃんに買ってもらお!」
千歌「そうだそれだ!」
梨子「ダメだから!」
ようちか『ちぇー……』 曜「まあお揃いのネックレス買ったし!」
千歌「うん、友達の証だよね!」
梨子「……ふふ、これ、宝物にするね」
千歌「そんな風に言われると照れちゃうなあ……にしし」
曜「離れ離れになっても一緒だよ! ……なんてね」
梨子「お別れの挨拶みたいで嫌だからやめてよ、ふふ」
曜「てへへ」
千歌「さてと、お腹も空いてきたことだし!」
曜「少し遅めのお昼ごはん食べにさわやかだ!」
千歌「え、またさわやか!?」
曜「好きでしょ?」
千歌「好きだけど」
曜「梨子ちゃんは?さわやかでいいよね?」
梨子「あ、うん、いいけど……」
ウー…ウー…
梨子(パトカー多いな……駅前で何か起きてるのかな……)
梨子(……見に行きたい。でもスーツ置いてきちゃったし……うぅ)
千歌「りーこちゃん!」
梨子「!」
千歌「ごはん、いこ?」
梨子「ぁ……うん、そうだね」
梨子(何かあれば鞠莉さんから連絡くるよね? ……多分) 遅くてごめんなさい
PS4でファーフロムホームが見れない同志はいますか… 近いうちに投稿したいと思ってます
もう少しお待ちを 遅くなってごめんなさい
今週中には続きやります
年内に完結は無理です… ある程度書き溜めできたので明日投下します!
そんな多くないけど… 〜さわやか〜
梨子(駅前から結構離れてきちゃったな……)
梨子(サイレンの音、まだ聞こえてくる……けど、避難命令は何も出てないし、小さないざこざくらいなのかなぁ?)
梨子(私がいれば……うぅ、歯がゆい気持ち……)
曜「……気になる?」ボソッ
梨子「!」
曜「……」
梨子「えっ、と……ち、ちょっとサイレンが多いなあって思ってただけで……」
曜「誤魔化さなくても顔に出てるから大丈夫だよ」
梨子「…………はい」
曜「……わかるよ。私もちょっと不安だもん」
梨子「曜ちゃん……」 曜「私たち二人だけならすぐ向かうんだけどねえ……」
千歌「ふっふふんふっふふん♪」
梨子「……千歌ちゃんに辛い思いはさせたくないよ」
曜「うん……今日遊ぶの楽しみにしてたもんね」
梨子「私も……楽しみだった」
曜「もちろん私だって」
梨子「……鞠莉さんも、私が現れるまでは警察と鞠莉さんたちでなんとかしてたって言ってたし」
梨子「信じて、任せてって」
曜「……うん、そうだね」
曜「私たちが動き出すのは、千歌ちゃんに危険が及びそうになった時!」
梨子「……うん、そうだね」 曜「よしよし、ほんとはすぐにでも飛んで行きたいだろうにね」
梨子「も、もう!」
千歌「ねー! ふたりだけでなにしてるの!」
曜「ふふふ、内緒の話であります」
千歌「その内緒にチカもまぜろ〜!」
曜「もちろーん!」
梨子「!?」
「3名でお待ちの〜……」
千歌「あ、はーい!」
千歌「呼ばれたよ!ほら!」
梨子「わ、わかったから……」
曜「ごはんを目の前にしたわんちゃんみたい」
千歌「飼い主はペットに似るって言うよね」
曜「いやいや逆だから、ペットが飼い主に似るんだよ!?」
千歌「……む?」 〜ホテルオハラ・鞠莉の部屋〜
『ギャングに奪われた貨物車両が速度を上げて沼津駅に向かって進行中! 繰り返す────』
鞠莉「Fuck!……やつら、貨物列車で沼津駅を爆破するつもりね……!」
ダイヤ『すでに警察が動いていて、沼津駅やその近隣の避難は完了しています。まだ学園通りまでは伸ばせていないけれど……』
鞠莉「ありがとうダイヤ。でもあいつらの積んでる爆弾の量が不明なの……可能な限り避難活動を続けて」
ダイヤ『言われるまでもありませんわ』
ダイヤ『……ねえ、本当にスパイダーリリーは』
鞠莉「ダイヤ、それは何度も言ってるけど」
ダイヤ『そう、ですわね。これまでわたくしたちで守ってきた街ですもの、彼女たちの不在くらいで困っているようでは警察の名折れですわ』
鞠莉「そうよ。……大丈夫、いざという時はマリーがsuitsで向かうから。調整も……もう、終わるから」
ダイヤ『……鞠莉さん、あなたは本来、裏方です。表立って危険に身を投じる必要は……』
鞠莉「マリーたちの街でしょ? なら、そうも言ってられないじゃない」
ダイヤ『……』
鞠莉「ドローンからの動画や情報は全てリアルタイムでそっちのserverに送ってる。毎秒確認しておいて」
ダイヤ『了解ですわ。……今日を乗り越えて、奴らを一網打尽にしましょう』
鞠莉「of course.」
鞠莉「……また何か分かったら連絡し、そっちもそうして」
ダイヤ『ええ。では、また』
プツン 鞠莉「……最終調整に入るわ。ナターシャ、研究室に」
「……本当にするの?」
鞠莉「当たり前でしょ? もうゆったり構えていられる時間はないもの」
「……そう」
「……もう、止められなさそう」
鞠莉「ん、なんて言ったの?」
「いいえ、何も。ただの皮肉」
鞠莉「……そう」
鞠莉「脚部の飛行ユニットだけでダメなら、手で調節できるようにすればいいと思うの」
鞠莉「手のひらに調節用のスラスターと、その噴射を利用したエネルギー放射武器を装備すれば……理論上では自由な飛行が可能になる」
鞠莉「suitsの各部には小型化させた武器や装備を載せてある。これがあれば……私もあの子たちを助けることが……」
「……」
鞠莉「文句でも言いたそうね」
「……もう、言わないわよ」
「でもね、ご主人様……いいえ、鞠莉」
鞠莉「なに?」 「もう止めはしないわ。けれど、あなたはまだ子供……本当なら大人に任せて隠れていていいはずなの」
鞠莉「でも、私は」
「分かってる。隠れていられないほどあなたは強い。だけどその強さは危険よ。いつか……あなたに牙を剥くでしょう」
鞠莉「……」
「……だから、その時くらいは大人を頼りなさい。自分の力をちゃんと理解して、出来ないことは出来ないと言えるように……お願いよ」
鞠莉「……約束するわ」
「その言葉を信じるわ」
鞠莉「やっぱりナターシャ、あなた記憶戻ってるでしょ」
「いいえ、何も」
鞠莉「ふうん。まるでロシアのスパイみたいに掴めなさ。でも……あなたは本当に私の味方だと思える。ありがとう」
「……」
鞠莉「さあ、実験を始めましょう」 〜さわやか〜
千歌「はぁ〜……おなかいっぱぁい」
曜「やっぱりさわやかは最高であります……」
梨子「美味しかったね、ふふ」
千歌「静岡県民たるもの、さわやか無くして語れないってもんだよ!」
梨子「何を語るのかな……」
千歌「静岡のいいところ?」
梨子「それ、さわやかが肝心な部分なの!?」
曜「さわやかは大事だよ梨子ちゃん!」
梨子「えぇ〜?! 他にもいいところいっぱいあるのに……」
千歌「じゃあ……例えば?」
梨子「えっ」 千歌「静岡の外からやってきた梨子ちゃんの思う、静岡のいいところって?」
曜「気になる気になる!」
梨子「え、と……えっと……」
ようちか『わくわく!わくわく!』
梨子「……富士山が綺麗?」
千歌「確かに! 富士山は静岡が一番綺麗に見えるもんね!」
曜「山梨には負けない自信があるね、うん!」
千歌「で、他には?」
梨子「ぇ、と……気候も、人も暖かくて……すごく良いところだな、って」
千歌「……照れるのだ」
曜「海の幸、山の幸も豊富って言うよね! 私、海の幸はあんまり得意じゃないけど」
梨子「東京にいた頃は、伊豆も魅力的な観光地だって思ってたし……静岡県っていいところばっかりだよね」
梨子「……だから、こんなに守りたいんだ」
千歌「ほえ?なんか言った?」
梨子「あ、ううん!」 梨子「……さっき、暖かいって言ったけど」
ようちか『うん?』
梨子「ふたりの太陽のような暖かさも、この街の魅力かな……なんて、その……えへへ」
千歌「…………」
曜「…………」
梨子「……え、ぇと……あ、ぁの……っ」
千歌「梨子ちゃんって、たまにすごいこと言うね……?」
曜「言うねえ……」
梨子「えぇっ!?」
千歌「そこまで言われると照れる超えて恥ずかしいよ!?」
曜「でも、私も千歌ちゃんの暖かさっていうか、明るさは太陽見たいって思うけどな〜」
千歌「よ、よーちゃんまで!?」 曜「梨子ちゃんはその太陽を見守るやさしいお月様って感じだよね? 太陽と対になってて」
梨子「お、おつきさま!? いや、あの……な、なん……っ」
梨子「────────」ゾクッ
曜「梨子ちゃん?」
千歌「どうし────」
キャアアアァァァァァァァ!!!!!!
梨子「……!!」バッ
グイッ
千歌「わ、ちょっ!?」
曜「!」
ガシャーン!!! チクリと首の後ろを指すような感覚────半自動的に私の身体は千歌ちゃんを抱きしめるように動いて、座席から大きく飛んだ。
クモの危機察知能力が私に知らせたのは、その場にいると死ぬという明確な危険。
私のその行動を曜ちゃんは理解していたのかな────そんなことを考える余裕が訪れるよりも早く。
乗用車が私たちの座っていた、まさにその場所へと突っ込んでいた。 ゴロゴロ…
梨子「っは、はぁっ……千歌ちゃん、平気!?」
千歌「ぅ、う……え、何が……一体……」
梨子「曜ちゃん!」
曜「平気!」ズズズ…
梨子「……よかった」
「な、なんだよこれ……車……!?」
「まるで投げ飛ばされたみたいに……どうなってんだよ!?」
「逃げなきゃ……っ!!」
曜「みんなとりあえず落ち着いて! 店の奥に固まろう! 外に逃げるのは警察が来るのを待って!」
「でも、またヤバイ奴らの車が……! それに、ギャングたちも……」
曜「大丈夫! 私が守るから!」 千歌「ね、これっ……なに……? なんなの……?」
梨子「……落ち着いて千歌ちゃん。多分、最近よく起きてるギャングと警察のいざこざだと思う」
千歌「ギャング……? でも、あれは駅前で、こっちまでは……ニュースだと……」
梨子「今日はずっとサイレンが色んなところから聞こえてたから、不安だったんだけど……」
梨子「もしかしたら今日、何か大きなことをやろうとしてるのかもしれない」
千歌「大きなこと……? なに、なにが……」
梨子「分からない……でも、ごめん。ここまでされたら、私……行かなくちゃ」
千歌「りこちゃ、ん?」
梨子「曜ちゃん、ここの人たちのことはお願い。私、見に行ってくる」
曜「……わかった。ここは曜ちゃん……ううん、アクアガールに任せておいて!」
梨子「……うん」
曜「スーツとか、今はないんだっけ」
梨子「でもウェブシューターだけ持ってきてるから大丈夫。いけるよ」 曜「でも顔は隠しておかないと、だよね。ヒーローの正体は謎のままじゃないと」
曜「私の帽子と……あとはマフラー! 肌寒くなってきてたからと思って用意しといてよかった」シュル
梨子「ありがとう」
梨子「たぶんギャングたちが暴れにくると思うから、曜ちゃんは」
曜「任せて、ここは私が守ってみせるよ。梨子ちゃんは」
梨子「なんだかまずい予感がするんだ……駅前の方に行ってみるよ」
千歌「……梨子ちゃん」
梨子「!」
千歌「ど、こに行くの……? 危ないよ、曜ちゃんの言う通り警察が来るまでここで待ってようよ……」
梨子「……ごめん、千歌ちゃん。それはできないんだ」
千歌「え……?」 梨子「私、ふたりのおかげで勇気を持てた。ふたりのおかげでこの街を守りたいって思うようになった」
梨子「今はふたりだけじゃなくて、Aqoursのみんなや、この街に住む全ての人を守りたい────だから、行ってくる」
千歌「だ、め……だめだよ、危ないよ! みんなでここに────」
梨子「私、みんなを守らなくちゃいけないんだ。千歌ちゃんは曜ちゃんが守ってくれるけど……駅前ではきっと、もっと色んな人が危険な目にあってると思うから」
千歌「な、なんで……なんで梨子ちゃんが……?! 警察に、大人に任せないと……!」
梨子「私はスパイダーリリーなんだ」
千歌「────────」
梨子「だから────行ってきます」パシュパシュッ
ヒュンッ!
千歌「ゎっ……!!」
曜「……千歌ちゃん」
千歌「梨子ちゃんがリリーって……」
曜「ほんとだよ。嘘、言ってなかったでしょ?」
千歌「…………」 ・・・
パシュッ
ヒュッ
パシュッ
ヒュッ
梨子「えっと、ニュースニュース……!」スマスマ
梨子「……貨物列車がジャック!? 爆弾って……駅前で避難勧告出てるならこっちまで広げてよ、もぉ……っ!」
梨子「スーツを取りに帰る時間はない……なら、やっぱりこのまま行くしかないか!」
梨子「マフラーで顔を隠してるなんて、昔のヒーローみたい。仮面ライダー……みたいなね、ふふ」
梨子「……よし」クイッ
リリー「行くよっ!」パシュッ 〜貨物列車〜
ギャギャッ!!
キィィン!
ギャング「チマチマと鬱陶しい奴らだ! 撃て撃て、パトカーもヘリも近づけるな!」
ズダダダダダ!!
ギャング「はあ、ヒヒ……こいつで俺たちの仕事もひと段落だ」
ギャング「そうですよね────ボス」
「────ああ。不本意だが、金の分は働く。給料分の仕事もできねえマフィアは不要だからな」
「いいか、お前たち。俺たちの仕事は、こんな田舎の国、小さい田舎町を爆破することじゃない」
「これは単なる花火だ。エキシビションなんだ」
「俺のシナリオじゃあないが……これも金の発生する仕事だ。不満や文句はあるだろうが、やること全て済ませてからにしよう」
「上手くいけば俺たちマフィアの存在を改めて世界に知らしめることができる。マフィアが街で恐れられる存在に返り咲く、それこそが────」 リリー「この電車乗りまーす!」
ヒュンッ!
ガシャーン!
「────!!」
リリー「っと……もしかして飛び込み乗車禁止だった?」
「貴様は────!!」
リリー「ごめんね、この電車ってあなたたちの物を運ぶようにはできてないんだ!」バッ
ギャング「お前ら撃て! ボスに近づけるな!」 下っ端たち『うぉおおおお!!!』ズダダダダダ!!
リリー「うわっと! 狭いとこで撃ったらみんな怪我するよ!?」ヒュッ! バッ!!
リリー「飛び降り降車にご注意くださーい!」ドカッ! バシッ!
「ぐあ!」
「うぁっ!」
リリー「ほっ!」パシュパシュッ!
リリー「降車の際は着地にご注意くださいね」
リリー「ほらほらどんどんかかっておいで!」
「クソが!」ガン!ガン!ガン!
リリー「んっ!」バッ
「当たらねえ!!」
リリー「もっと狙わないと……ほらこっちだよ!」バシッ
「ぅあっ!」
リリー「えいやっ!」バシッ! ドゴッ!
「ぐっ!」
「がっ!?」 リリー「ふう……さあ、残るはあなただけだよ頭のおっきな人────!」ブンッ
「くっ……!」
リリー「あなた、ボスって言われてた……ここに一体何の用なの? 外国の人ですよね」
「俺の目的か? 俺は仕事でここに来ている」
リリー「仕事ね……日本で暴れるのが仕事? ギャングっていうより戦争屋さんみたい」
「俺たちはギャングじゃねえ。マフィアだ」
リリー「……なにが違うのかわかんないけど、そうなんだ」
「ここに来たのも、俺たちマフィアの復興のため────この仕事を完遂すれば、俺たちマフィアは新たな力を得られる。俺たちの国でデカくなるためのな」
リリー「はあ……悪いことするためにここで悪いことしてるってこと? それってつまり悪いことだから……じゃあ、止めなくっちゃだよね」
リリー「あなたを倒して電車も止めて街中のギャング……えっと、マフィア? たちも捕まえて事件終わり! 急いで行くよ!」パシュッ
ダッ
リリー「せいやーーっ!」ブンッ
「ふんっ!」ブンッ ガキィン!!!!
リリー「っぎ……ィ……!?」
リリー「痛っ…………たぁ……っ!! な、何その頭!」
「俺の頭は特別製でな。貴様ごときに割られるほどヤワな作りじゃない」
リリー(今ので右手が使えなくなった……私の回復力がすごいって言っても、2時間はかかるかも……まずいよね、これ)
リリー「でも、頭以外なら……!」バッ
「フン!」ズガン!!ガン!ガン!
リリー「わ、っと……っ……!」ヒュッ バッ
リリー(さっきの部下の人たちより銃の扱いが上手い……! 本気で避けないと撃たれちゃう!)
リリー「近づかせないつもり? だったら……」パシュパシュッ
バキバキバキバキ…
リリー「コンテナの蓋を盾にすれば……!」ダッ 「くっ……」ガン!ガン!ガン!
チュイン!キン!
リリー「これなら────」
ズガン!!
リリー「ぁ────、」
リリー(背中、痛い……撃たれ、……?)
「スナイパーを用意しておいた。貴様のためにな」
リリー「ぅ、ゔぅ……っ、ぐ……わたし、の……?」
「俺たちの目的は最初から貴様の捕獲。虫取りってやつだ」
リリー「一体、なにを……」
「そいつは……貴様の知ることじゃない。しばらく眠っていろ」ブンッ
ゴシャッ!!!
リリー「ご、ぶっ……ぁ…………」ガクッ
リリー「────」
「俺の頭突きを喰らって起き上がった奴はそうそういない。貴様も……それと同じだ」
「こんなただの女のガキが……」
「聞こえるか。ヘリを回せ、ここを離れるぞ」
「────積んだ爆弾か? 手土産だ、盛大に見舞ってやれ」
バラバラバラバラ……
「くく、はははは! さらばだ日本よ。貴様らのクモ女は連れて行くぞ」
プァーン
────カッ!!
この日、沼津駅は貨物列車に積み込まれた爆弾によって破壊し尽くされた。
そして────スパイダーリリーがその消息を絶った。 今回はここまで
お待たせしました
ありがとうございます 乙です
正体を隠してるヒーローが家族や友人に正体を明かして戦場に向かうシチュめっちゃ好き 忘れてましたが前回の更新で6話が終わってた
>>178
スパイダーリリー
第6話「ハンマーヘッド」
おしまい 現在公開可能な情報
・即席スパイダーリリー
スーツを持っていなかったために用意した即席のコスチューム。曜ちゃんの帽子とマフラーを借りて顔をある程度隠した、ぶっちゃけ普通の桜内梨子。
ウェブシューターだけは携帯していた模様。
シンフォギアの響や仮面ライダー1号みたいな正義マフラーをイメージしてもらえると嬉しいです
・ボス
鋼鉄の頭のやばい人。
リリーに頭突きを喰らわせてどこかへ連れ去った。
・鞠莉の研究
『スーツ』と呼ばれる何かを製作中。
リリーが連れ去られた時、飛行制御実験の最中であった。 沼津駅爆破事件から数日後
〜ホテルオハラ・鞠莉の研究室〜
ガチャッ
曜「ここだよ、千歌ちゃん」
千歌「……お邪魔します」
鞠莉「いらっしゃい、ちかっち」
千歌「鞠莉ちゃん……なんだか、久しぶりに会う気がするね」
鞠莉「そうね……あの事件があってから、沼津一帯には避難命令が出されているから……学校も開いていないし」
鞠莉「果南たちはどうしてる?」
千歌「果南ちゃんにも会ってないんだ。……大丈夫だよ、学校行かなくていいのはラッキーだって笑ってた。レッスンが出来ないのは残念そうだけど」
千歌「花丸ちゃんとルビィちゃん、善子ちゃんも……みんな無事。今は県外の……親戚の家に家族で避難してるみたい」
鞠莉「……そう」 鞠莉「なら……よかった。危険なここに残るよりはずっと安心」
千歌「……梨子ちゃんは」
鞠莉「……」
千歌「梨子ちゃんは、まだ帰ってきてないって」
鞠莉「……知ってるわ」
千歌「梨子ちゃんちのみんな、心配してた。警察にも届けたけど……事件に巻き込まれたのかもって警察は大きく動いてくれないって」
鞠莉「……そこはダイヤが手を回してくれてるはずよ。そのうち、きっと見つけて────」
千歌「……違う、全然違うよね鞠莉ちゃん!」
鞠莉「……」
千歌「梨子ちゃんは……あの爆発に巻き込まれたんじゃないよね!? だって……だって、梨子ちゃんはスパイダーリリーなんだよ……!?」
千歌「スパイダーリリーなんだから、大丈夫だよね……!?」
鞠莉「……」 鞠莉「ちかっち……」
千歌「そ、そもそも……なんで梨子ちゃんにあんな危険なことをずっとさせてたの? 曜ちゃんにも……毎日、夜遅くまで……危険なことを……っ」
千歌「鞠莉ちゃんが指示を出して戦わせてたんでしょ!? 曜ちゃんにも……ずっと、これまでみんなに隠して!」
曜「千歌ちゃん落ち着いて……」
千歌「だって、だって……梨子ちゃんも曜ちゃんも、女の子なんだよ!? 腕も細くて、可愛くて、普通の……普通の女の子なんだよ……?」
千歌「なんで……鞠莉ちゃん、ふたりに辛いことさせるの……? 鞠莉ちゃんがふたりにヒーローなんてさせなかったら、こんなことには……」
鞠莉「……」
曜「違うよ千歌ちゃん、そうじゃないよ。梨子ちゃんは誰かに言われるわけじゃなくて自分から────」
千歌「違わない、違わないよ!」
曜「!」 千歌「最初はそうかもしれない、そうだったかもしれない! でも最初の頃は……街の困ってる人を助けたり、ちょっと悪い人を懲らしめる……少し正義感の強い……ご近所さんみたいな人なんだよ……」
千歌「それを……鞠莉ちゃんが唆して、ヒーローなんて呼んで……」
千歌「……梨子ちゃんを、っ……こ、こ……」
曜「千歌ちゃん!」
千歌「!」
曜「言い過ぎだよ。もうやめないと……私も怒るよ」
千歌「……ごめん」
鞠莉「……ちかっち」
千歌「……」 鞠莉「あなたの言ってることは間違いじゃない、と思う。たしかに私があの子のサポートを始めなければ」
鞠莉「きっと今でも、街中のゴミ拾いをしたり、道に迷ったおばあちゃんを案内してあげたり、横断歩道を渡る子供を見守ったりしていたことでしょう」
鞠莉「あとは……夜道歩いて暴漢に襲われかけた友達たちを助けたり」
千歌「……」
鞠莉「私が梨子と手を組んだのは、あの子の力が必要だと思ったから。私の……日本から犯罪者を一人残らず消し去るという目的のために」
千歌「……なんで、そんなことを……」
曜「……そういえば、いつも悪い人たちのこと、すごく怒ってたような……」
鞠莉「そうね……話したことは、なかったわね。話すほどのことじゃないんだけど」
千歌「……む」 鞠莉「でも、話さないと納得できなさそうな子がいるし……教えてあげる」
曜「いいの……?」
鞠莉「別に隠してるほどのことじゃないもの」
鞠莉「簡単な話……とても簡単な話よ。普通にあり得そうで……まあ、普通にあり得ることではないけど」
千歌「いったい何が……?」
鞠莉「誘拐されたのよ。子供の頃にね」
ようちか『────!!!』 鞠莉「まだ日本に来る前────イタリアの犯罪者グループに、一度ね」
鞠莉「そいつらは……小さなテロリスト集団のような奴らでね。そこそこの金持ちの子を誘拐しては身代金を要求し、そうして得たお金で活動をしてる……そんな腐った連中だった」
鞠莉「そこには私以外にも誘拐された数人の女の子たちがいた。奴らは決まって女の子を狙って誘拐してた」
曜「な、なんで女の子ばっかり…………ぁっ……」
鞠莉「分かるでしょう? 慰み者にできるから」
千歌「っ……!!」 鞠莉「奴らは身代金のためだからと言って誘拐した子供たちをVIP待遇してくれるような奴らじゃなかった」
鞠莉「自分たちの不満をぶつける人形のように扱っていた。抵抗の強い子は痛めつけたり、私たちみんなの前で犯されたり……ね」
鞠莉「あの頃の私は引っ込み思案で抵抗する勇気もなかったから、とにかく言うことを聞いた」
鞠莉「親へと送られるビデオでは、奴らの望む通りのことを言って……とにかく自分だけは守ろうと必死だった」
鞠莉「とにかく地獄のような日々だったけれど……希望はあったの。誘拐されていた子の中に、私の面倒をよく見てくれた、少し年上のお姉ちゃんがいて」
鞠莉「ふたりで逃げ出そう、とか……ここから出られたら一緒に紅茶を飲もう、とか」
鞠莉「誰かが助けに来てくれることを祈って……そんなことを話してた」 鞠莉「それが、地獄の中での唯一の救いだった。それ以外は全て地獄……毎日痛めつけられたり、犯される子の悲鳴を聞かされながら、ただ生かされているだけの日々」
鞠莉「中には女性としての機能を壊されたり、殺された子もいたらしいわ……私が誘拐されてる間にはなかったけど」
千歌「で、でも鞠莉ちゃんは助かったんでしょ?! だから、今ここに……」
鞠莉「……助けてくれたのよ」
千歌「え……?」
鞠莉「……そのお姉ちゃんが、私の分もすべて一人で……」
千歌「ぁ、……」
鞠莉「最終的に二人とも助かった。けど……その子は精神を病んで、今は連絡も取れなくなってしまっているわ」
曜「っ……」 鞠莉「……私は見ているしかなかった自分が許せなくて、何より、あのお姉ちゃんをそんなにした犯罪者が許せなくて……」
鞠莉「……だから、私はすべての犯罪者を消し去るために、黒澤家とつながりのある沼津の警察に技術提供し、梨子のサポートをしてるの」
鞠莉「……分かってもらえた?」
千歌「……ご、めんなさい……私……」
鞠莉「いいのよ、ちかっち。いずれは話すべきことだったし……特に、梨子には力を借りてばかりだから」
鞠莉「あなたがスパイダーリリーのことを知ったなら、気になって仕方ないだろうし」
千歌「で、でも……」
鞠莉「どうしてもって言うなら……あなたに力を貸してもらうことがあったら、その時は助けてくれるかしら?」
千歌「え……?」 曜「ち、千歌ちゃんに!? でも、千歌ちゃんは何のパワーもない普通の……」
鞠莉「だからこそ! ……力になる時があると思う」
鞠莉「まあ、その時が来ない方がマリーは嬉しけどね?」
鞠莉「……どう?」
千歌「……分かった、分かったよ! 力になれるなら、ぜひ!」
鞠莉「おっけー! 言質はもらったことだし、お茶にしましょ? 悩んだって梨子は見つからないし帰ってこない。こういう時こそブレイクブレイク♪」
千歌「あ、そうだ……梨子ちゃん……」
曜「梨子ちゃんは……」
鞠莉「……大丈夫、あの子は生きてる。今、うちの優秀なメイドが街中に放ってあるドローンから回収した動画データを洗ってる」
鞠莉「リリーが消息を断つ直前、どこにいたのか────それを見つけるために」
曜「じゃあ……!」
鞠莉「希望は捨てない。だってあの子はヒーローなんだから……ヒーローはいつだってみんなを笑顔にしてくれるの」
鞠莉「……だから、私たちはあの子が帰ってこられるように準備をしておくの」
曜「……」
千歌「……うん」
千歌「わかった、わかった……!」
千歌「私にできることがあるなら、絶対力になるよ!」
鞠莉「ありがとう、ちかっち」
鞠莉「曜も……ゴメンね、いつも大変でしょう」
曜「私は、大丈夫。ヒーローでありますから!」
鞠莉「……ふふ」 鞠莉「まあ、あの爆破事件のあとから犯罪者は現れなくなってるし、しばらくは暇かもしれないわね?」
曜「それはそれで退屈だなぁ……」
千歌「曜ちゃん!」
曜「あ、あははは……」
鞠莉「私は梨子の捜索を続けながら、駅周辺の修復を進めなくちゃ。ちょっと電話してくるから、二人はここにいて?」
ようちか『はーい』 バタン
鞠莉「……さて、と。ナターシャ聞こえる?」pi
『ええ、聞こえてるわ』
鞠莉「ドローンはどう?」
『まだね……例の貨物列車周辺のドローンはいくつか破壊されていてデータが取れないの。他の角度から撮影できてるものがないか確認しなくちゃならないわね』
鞠莉「……時間はかかりそう?」
『それなりに』
鞠莉「そう……お願いね。私は抗争を仕掛けてきた米国のギャングについて調べておくから」
『かしこまりました』
pi
鞠莉「……絶対に梨子は生きている……きっと、きっとね……」
鞠莉「その時は私が助けなくちゃ……あの時、助けてもらったように。今度こそ私が、私の大切な人を助けなくちゃ……」
鞠莉「……この、スーツと共に」 スパイダーリリー
第7話「ケツイ」
おしまい
保守ありがとうございます
更新遅くて本当に申し訳ない 保守ありがとうございます
最近仕事内容が変わって忙しかったんですが
もう少しで落ち着きそうなのでまた少しでも投稿できるよう書き溜めしてます
もう少しお待ちください… この週明けくらいに投稿できそうと思います
もう少しお待ちを 〜???〜
「あぁっ……が、ぅあ……っ!!」
────私がいる。
「は、っあ……ぐっ、ぅ……」
────私がいる。
「ぅ、ぎ……ゃ、あ……っは、っあ゛……ぁ」
────もがき苦しむ私の前に、私がいる。
その悲鳴は断末魔。
受ける苦痛は、隣で見ている私にも伝わってくる。
肉を切り裂かれ。
血を抜かれ。
薬で苦痛と快楽をない混ぜにされた私は、しかしそれでも抑えられない痛みに泣き叫ぶ。
腕や足はベルトで台に固定され、逃げることは叶わない。
痛いのに。
苦しいのに。
逃げられない。
私を切り刻む人の顔は……わからない。
白い服を着た……人。
その人は私に注射を打ち薬品を流し込む。
その人は私に刃物を突きつけ、皮膚を切り剥がす。
その度に私は叫び、泣いて、拘束を外そうともがく。
けれどとても堅いのか、拘束は私の全力でもビクともしない。
「ぅあ、ああぁぁあぁぁあ────!!!」
終わらない苦痛に、私は叫ぶ。
はやくこの痛みが終わりますように。
はやく解放されますように。
はやくおうちにかえれますように。
はやく……みんなにあえますように。 ・・・
梨子「────はっ!!」ガバッ
梨子「は……はぁ、はっ……はぁっ……」
梨子「はあ……っ、はぁ……は、ぁ……」
梨子「、…………はあ」
梨子「……ここは……ゔ……っ」
梨子(喉が痛い……声を出した、から……? 私、いったいどれだけ眠って……)
梨子(ここは……病院の部屋、だよね……?)
梨子(白い壁に、白い天井……窓から差し込む光…………)
梨子「は、っ……く……」グッ…
梨子(身体に力が入らない……立ち上がるのも、こんなに辛いなんて……)
ズリズリ…
梨子(一体、どこなの……?)
梨子(窓から見える景色は……大きな公園が見える、場所)
梨子(遠くに海があって…………全く知らない場所、景色……)
梨子「は、ぁ……はっ……は、はあ……っ……」
梨子(嫌な、予感がする) 梨子「そとに、でなきゃ……」
ズリズリ…
ビンッ
梨子「づぅっ……!」
梨子「な、に……ぃ……?」
梨子(腕が引っ張られた────ように感じたのは、私の腕に刺さっていた針とチューブ)
梨子(点滴……)
梨子「……んっ」ブチッ
梨子(私はそれを無理やり引き抜き、部屋の出口へと向かう)
梨子(身体は重く、足も上手く動かせない。満足に歩けない……けれど、進まなきゃ) 梨子(せめて、ここがどこなのかだけでも────それさえ知ることが出来たら、助けを求められるはず)
ガチャッ…
キィ…
梨子「わ、ゎ、っ……ぅあっ!」
ズデッ
梨子「い、っ……たたた……」
梨子(ドアを開けた時にそのまま転んじゃったみたい……)
梨子「……なに、これ」
梨子(よく見てみれば、私の身体にはガーゼや湿布、包帯がたくさん……)
梨子「私、いつの間にこんな怪我ばっかり……」
梨子(少しずつ声も出せるようになってきた……みたい。まだ少しガサガサするけど)
梨子「……今まで戦ってきて、こんなに……怪我だらけになってたのかな」
梨子「ふふ……女の子なのに、って千歌ちゃんに怒られちゃうかな」
梨子「……とにかく帰らないと」グッ 梨子(長い長い、白い廊下…………)
梨子(やっぱりここは、病院……だよね……?)ペタペタ
梨子「……なんだか、少し寒い」
梨子(って、そりゃ寒いよ! 私、今……な、なんか薄い着物みたいなの着てるだけだもん!)
梨子(下着もない……こ、これ……どこか調達しないと……///)
梨子「ぁ、階段だ……ゆっくり降りないと……落ちちゃったら大変だし」
梨子「……まあスパイダーパワーで階段から落ちたくらいじゃ怪我しないけど……今は上手く力も入らないし、安全に越したことはないよね」
ペタ…ペタ…
梨子「千歌ちゃん、曜ちゃんは無事かな……私、あそこで気絶しちゃったけど……病院に運ばれてるってことは曜ちゃんが助けに来てくれたってことだよね」
梨子「だとしたら、ここは鞠莉さんが手を回してくれた病院……」
梨子「……でも、誰ともすれ違わないのは変だな……機械で全部制御してるとか……?」
梨子「どうなんだろ……ケータイも全部置いてきちゃったから手元に何もないし……」
ヒタヒタ…
ペタペタ…
ズリズリ…
梨子「……あ、出口だ」
梨子「こ、この服で出るのは嫌だけど……ちょっ……とだけ、うん、ちょっと外見るだけ……」
梨子「……よし」
ガチャッ
梨子「…………」
梨子「…………え?」 梨子(病院のドアを開け────外に出た、私が見たものは、まるで見覚えのない景色で)
梨子(まるで日本ではない……いや、日本では全くない、別の場所の景色で)
梨子(ここって……ここは────)
「目が覚めたか」
梨子「────!!」バッ 「さあ部屋へ戻ろう。君はまだ外に出られるほど回復はしておらん」
梨子「あ、な……たは……」
「君の生みの親だよ、スパイダーリリー」
梨子「────ぇ」
「手間をかけさせないでくれたまえ。私もあまりのんびりしていられないのだ」
梨子「待、っ……どういう、こと……!」
「この施設を使える時間も限られているということだよ。我々がこの国に滞在できる時間もな」
梨子「この、国って……やっぱりここ、日本じゃ……!」ダッ
「なっ……待て!」
梨子(ここ、ここは……っ!)タッタッタッ
梨子(身体が……っ、やっぱりいつもみたいに速く走れない……!)
プーップーッ!
梨子「わ、わ、っ……ご、ごめんなさい!」
梨子「ごめんなさい通りますーー!」タッタッタッ
梨子「……待っ、て」タッタッタッ…タッ…
梨子「この、感じ……歩いてる人たち……」
梨子「あの……本で見たことある橋……」
梨子「ここ、って……もしかして」
カチャ
梨子「……っ!」 「手間をかけさせるな、と言っただろう。引き金を引かせるつもりか? さあ戻りたまえ」
梨子「……教えてください」
「何かな」
梨子「ここ……って、どこなんですか」
「この景色を見てわからないのかね? ふむ、最近の子供は海外旅行などしないものか」
梨子「……教えてください」
「アメリカ。ニューヨークさ」
梨子「────────」
梨子(私が、目覚めた場所は)
梨子(……日本から遠く離れた国)
梨子(アメリカの土地で────)
梨子「…………」
梨子(その瞬間、私は膝から崩れ落ちた)
梨子(理解しがたい事実と、冷たく寒い空気が私の肌を撫でた) 〜研究施設〜
梨子(私は抵抗する気力を失い、そのまま黙って最初の部屋へと戻された)
梨子(気を失う前と、今までの情報を整理する必要がある……と思ったから)
梨子(あの人は……ここを研究施設と言っていた。ということはこれは病院ではなく、研究……)
梨子(……いったい何の研究か……なんて、分かり切ってる)
梨子「私だ……私の研究なんだ……」
「その通り」
梨子「!」
「私の目的は君の研究。君から新たな血清を作り、失われた研究成果を取り戻すのだ」
梨子「女性の部屋に入るときはノックをする……っていうのは、常識なんじゃないですか」
「ははは、すまないね。だが君はもはや私の研究対象。人として扱ってもらえるとは思わないでくれよ」
梨子「……殺す気ですか」
「殺しはしない。だが、まあ……下手をすると死ぬ可能性はあるがね」
梨子「……」 「それと、蜘蛛の能力には期待しないことだ。逃げることはできない」
梨子「……え?」
「いまの君はその能力のほとんどを失っている。君が眠っている間に施した薬品のおかげでね」
梨子「え────」
梨子「い……いま、なんて……? 私がスパイダーパワーを失った……? じゃあ身体が重たく感じたのも、上手く動けなかったのも……全部、力を手に入れる前の私に戻ったからってこと……?」
「その通りだ」
「元々は君の遺伝子を抜き取り、蜘蛛の能力だけを取り除く予定だったのだが……」
「副産物として、君の持つ能力を破壊する薬品を作り出すことに成功してね。つまりはいまの君はただの女子高生というわけだ」
梨子「は、は────はっ……はぁ、はあ……」
「フム。呼吸と心拍が乱れているな……よほどショックだったかね? だがよく考えてみてほしい」
「君はその力のために痛い思いをし、友人楽しみ青春を犠牲にしてきたのではないか。であればこの状況はむしろ君にとって好都合だろう」
梨子「で、も……そんな、これじゃ……」 梨子「…………」
「とは言っても、まだ薬は試作段階でね。まだ完全に消し去ることは出来ない────明日にはまた戻っていることだろう」
梨子「!!」
「だから継続的に摂取させていたのだが……君がさっきひとつダメにしてしまった」
梨子「ぁ……あの、点滴……?」
「そういうことだ」
梨子「っ…………、……!」ギリ
「さて、目覚めてくれてことだ。君にも私の研究成果を見てもらおう」
梨子「……何を見せるつもりですか。別の女の子を切り刻む姿でも見せる気?」
「まだ強気な口を聞けるとは……伊達にヒーローを名乗ってはおらんな」
「私の研究は蜘蛛の力だ。君に力を与えた蜘蛛を……もう一度作り出す、それが私のこれまでの研究」
梨子「これまで……?」
「君という存在が現れたことで、私の研究は次のステージを見た」
「君の量産だよ、スパイダーリリー」
梨子「…………!!!」 「しかもただの女子高生である君とは違い、戦いのプロである軍隊や裏社会を牛耳るマフィアの屈強な連中たちをスパイダーマンにする」
「超人兵士を作り出す……そんな薬があれば、あらゆる国家が欲するとは思わないかね?」
梨子「そん、なこと……!!」
「私がさせない……と? その力を失いつつある君が?」
梨子「……っ」
「安心してくれたまえ、君の安全は保障しよう。薬品の製作が完了すれば君は解放するし、無事に沼津へと送り届けよう……普通の女の子として、ね」
「……まあ、研究のために多少の苦痛は我慢していただくことになるがね」
「ではまた来るよ。逃げようとは思わないことだ」
バタン
梨子「……」
梨子「私の力が……消える……」
梨子(頭がぐちゃぐちゃ……)
梨子(目が覚めたらアメリカで、私がこの力を手に入れるきっかけになった、あの蜘蛛を作り出した人に捕まっていて……)
梨子(……なんでアメリカなんだろう、って思ったけど……そっか)
梨子(私が最後に電車で戦ってたあの頭の大きな人……アメリカのマフィアだったんだ)
梨子(きっと私を捕まえるよう依頼されて……それで誘き寄せるために大きな事件を起こしてたんだ……)
梨子(……私、バカやっちゃったよ……鞠莉さん、曜ちゃん、ナターシャさん……千歌ちゃん……みんな……ごめん、ごめんね……)
梨子「弱くて、ごめんね……っ」グスッ
梨子(……この日、私は疲れて寝落ちするまで、ずっと泣き続けていた。ごめんね、ごめんねと……呟きながら) 長らくお待たせして申し訳ありません
今回はここまで
今後の展開は賛否あるかも… きつい展開が続くなぁ…スパイダーマンだもんな…
頑張れ梨子ちゃん 命の保障が一応されてるだけマシではあるけど中々辛い 梨子(────それからの毎日は、痛みと戦う毎日だった)
梨子「ぅあ、っあ……ぐ、ぅゔ……っ」
梨子(身体の内側から焼けるような痛み────能力を壊すという薬品ともう1つ別の薬品が体内で喧嘩しているためらしい────に耐える日々)
梨子(生きたまま身体が作り変えられる感覚に耐え、時々血を抜かれて別の研究に使われる)
梨子(私の知らないところで私の身体を使った研究が行われている────らしいけれど、私自身は、この痛みに耐えるだけの毎日)
梨子(鎮痛剤を打たれても、多少和らぐだけ)
梨子(激痛が全身を襲い、酷い時にはあまりの痛みで身体の穴という穴から液体を垂れ流しながら叫び続けた)
梨子(自室とは違う、研究室でその経過を観察され……ある程度のデータが取れたらその日は終了。解放される) 梨子(逃げようとは、何度もした)
梨子(行動は研究所内に限ってはほとんど自由が許されていたから……隙を見ては逃げ、武装した警備員に捕まる)
梨子(あの博士や他の研究員がいなくなった夜中に部屋を抜け出して……けれど当然、出入り口には鍵がかけられていて外には出られない)
梨子(窓から降りようにも、ここは3階……いつもなら怖くないのに、壁に張り付く力のない私には恐ろしくてたまらなかった)
梨子(そんな生活の中でも、なんとか気持ちを折れさせずにいられる場があった)
梨子(それは────) 〜子ども部屋〜
コンコン
ガチャッ
梨子「こんにちは」
金髪の少女「あ、リコ」
赤髪の少女「きてくれた!待ってたんだよ!」
梨子「ごめんね……その、博士のお手伝いが長引いちゃって」
赤髪の少女「そっかー! じゃあ仕方ないね!」
梨子「……うん」
梨子(この子たちは……生まれつき身体が弱いみたいで、この施設で作ららた薬品の被験体になりつつ育てられている、らしい)
梨子(あの人────博士は、私の研究とは違う内容だと言っていたから安心、のはず)
梨子(……信用はしてないけどね。最低最悪の人なんだから) 赤髪の少女「ねえねえ今日もお歌聞かせて! リコの歌、大好きなんだ!」
梨子「ふふ、今日も? 毎日だね」
赤髪の少女「私たち、この部屋の本は全部読みきっちゃったし、二人で出来る遊びは全部やりきっちゃったもん」
赤髪の少女「博士の許可がないと外に出ることもできないから、リコの外の話や歌ぐらいしか楽しみがないんだ」
金髪の少女「エマのやつ、ずっとリコのことばっか言っててうるさかったんだ」
赤髪の少女「しょーがないじゃん楽しみだったんだから!」
梨子「あ、あはは……」
梨子(ここに来てから1週間くらいした頃……だったっけ)
梨子(その日の研究から解放されて、ベッドと机しかない自分の部屋に戻るときに……廊下の端にあるこの部屋を見つけたんだ)
梨子(子供用のダブルベッドと、大きなおもちゃ箱、たくさんの絵本や図鑑が詰まった本棚)
梨子(そして壁に大きな鏡が取り付けられた……だけど窓はひとつもない、そんな部屋)
梨子(私はそこで、この子たちに出会った)
梨子(最初は警戒されてたけど……すぐに懐いてくれたっけ)
梨子(投与される薬品の痛みに耐えるだけの日々に、この子たちとふれあう時間は、私に安心と精神の平穏を与えてくれたの)
梨子(それにもし、もし……私の力を研究することで、私の体の強さだけをこの子たちに分けてあげられたら、なんて……) 赤髪の少女「ねえ、リコはアイドルなんだよね?」
梨子「あ、アイドルって……そんなすごいものじゃないよ? えっと、学校の部活でやってるだけで」
赤髪の少女「学校! いいないいな〜」
金髪の少女「学校かぁ……私たちずっとここにいるから学校行ったことないんだよな」
赤髪の少女「絶対楽しいと思うよねメリー!」
金髪の少女「でも宿題とかやらなくちゃいけないんだろ? 面倒だよ」
梨子「でも、友達もたくさん出来るよ?」
金髪の少女「友達なんて……別にいらないし」
赤髪の少女「えー! それじゃ寂しいよう!」
金髪の少女「べ、別に……エマとリコがいれば…………いいから」
赤髪の少女「!! めり〜!!」ムギュウ
金髪の少女「く、苦しいよエマ……」
梨子「……よしよし」ナデナデ
ふたり『んへへ……』 赤髪の少女「……ねえリコ」
梨子「なあに?」
赤髪の少女「私たち……いつか学校に通えるようになるかなぁ」
梨子「……そう、だね……通えるように、ならなくちゃね」
赤髪の少女「うん!」
梨子「……メリーちゃんとエマちゃんは、外に出られるようになったら、どんなことがしたいの?」
赤髪の少女「学校にいきたい! お勉強して、お友達を作って、それからそれから……)
梨子(あとあといっぱい美味しいもの食べて、メリーとふたりでリコのアイドルを見に行く!」
梨子「エマちゃん……ふふ、素敵な夢だね」
赤髪の少女「でしょ! にひひ〜」
梨子「じゃあ私もふたりのためにいっぱい練習しておかないとね!」
赤髪の少女「やったー!楽しみだねメリー!」
金髪の少女「え……ま、まあ……な」
赤髪の少女「素直じゃないんだから〜」
金髪の少女「う、うるさいな……もう」 赤髪の少女「やった〜! エマは何したいんだっけ? ねえねえ言ってごらんよ〜」
金髪の少女「ぅえっ……私に振られないように静かにしてたのに……」
赤髪の少女「恥ずかしがらずにほらほら〜」
梨子「エマちゃんは何がしたいの?」
金髪の少女「わ、私は……別に、何がしたいってほどじゃないけど……」
金髪の少女「……海が見たい」
梨子「海?」
金髪の少女「うん、海」
梨子「それなら……ニューヨークにも大きな海が────」
金髪の少女「あっ……そ、それとは違くて……」
梨子「?」
金髪の少女「……その、えと」
赤髪の少女「ほーらはやく言ってみなよメリー♪」
金髪の少女「う、うるさいなエマは……」 金髪の少女「だ、だからな……私が見たいのは……その、ね」
金髪の少女「……リコの住んでるとこの、海……が、見たいんだよ……」
梨子「────」
金髪の少女「おっきな砂浜と、船が見えて……その、リコが歌う元気をもらったっていう……海をさ……見たいんだ」
梨子「メリーちゃん……」ジワッ
金髪の少女「!」
赤髪の少女「リコ泣いてるの?! お腹痛いの?」
金髪の少女「わ、私が言ったことが嫌だった!? ごめん……それなら謝るから泣かないで……」
梨子「ち、違う……違うの、違うんだよ……っ」ギュウッ
ふたり『ぅわぷっ…』
梨子「嫌じゃない、全然嫌じゃないよ」ナデナデ
ふたり『……』
梨子「むしろ嬉しくて……それで、涙が出ちゃった……だけなの」
金髪の少女「ほんと……?」
赤髪の少女「お腹痛くない?」
梨子「うん、ほんとだよ……えへへ。痛くない痛くない」ゴシゴシ 梨子「そうだね。いつか一緒に……私の暮らしてる日本の、沼津の海……一緒に観に行こう」
梨子「絶対、約束だよっ」
金髪の少女「……うん、約束」
赤髪の少女「メリーだけずるい! 私も行きたい!」
梨子「ふふ、もちろんエマちゃんも一緒だよ」
金髪の少女「仕方ないから連れてってやるよ」
赤髪の少女「メリーに連れてってもらうわけじゃないでしょ!」
金髪の少女「ま、私からリコに頼んどいてやるからさ」
赤髪の少女「リコもう良いって言ってるけど!」
金髪の少女「それは私に言ってるんだよ〜だ」
赤髪の少女「なーんーでー!?」
梨子「はいはい、ふたり一緒にね〜」
赤髪の少女「わーい!」
金髪の少女「しょーがないなーエマは」
赤髪の少女「むー!」
コンコン
梨子「!」 ガチャッ
「失礼するよ────、と」
梨子「……」
赤髪の少女「あ、先生!」
金髪の少女「……もうそんな時間?」
「ああ、今日のお薬と検査の時間だよ」
赤髪の少女「もうちょっとお話ししたかったのになー……」
「また明日にしなさい。お薬と検査はちゃんと続けないと意味がないんだからね」
赤髪の少女「はぁい。じゃあリコ……行ってくるね」フリフリ
金髪の少女「また明日も待ってるからな、私たち」
梨子「う、うん……また、明日ね」フリフリ
「君も部屋に戻りたまえ。私の部下が3時間も待っているんだ、あまり手間をかけさせないでやってくれ。彼女も暇じゃない」
梨子「……はい」
バタン
梨子「…………戻ろう」
梨子(私と彼女たちのおしゃべりは、いつもこんな形で打ち切られる)
梨子(私が博士から解放されて、彼女たちの部屋に来て……彼女たちが連れ出されるまでのおよそ3時間ほど) 梨子(部屋に戻ると女性研究員が部屋の前で待っていて……)
「今晩の食事と点滴です。さあ中へ」
梨子(と促され、言われるがままにベットへ横になり、いつもの点滴を打たれる)
梨子(私の中にある蜘蛛の力を破壊する薬品の点滴だ)
梨子(私が勝手に抜くのを防ぐために左腕に拘束器具を装着させられ、その上から管を通して薬品を流し込まれている)
梨子(どれだけ無理やり引っ張っても、壊そうと床に叩きつけても、ビクともしないかった)
梨子「……今日のご飯は、ハンバーガー……?」
梨子「お米が恋しいな……なんて、食べ物に文句を言えてるだけ、まだ私は大丈夫なのかな」
梨子「……うん、私はまだ大丈夫。大丈夫……耐えられる。いつか必ず……逃げて助けを呼ぶまでは」 梨子(大きなハンバーガーをかじりながら、ふと白い壁を見る」
梨子「……」
梨子「もう、1ヶ月……」
梨子(時間の把握は、部屋の壁に傷をつけて数えていた)
梨子(テレビやケータイのような、外部から情報を得られるものは全て私には与えられなくて、とにかく自分が目覚めてからの日数だけを記録していた)
梨子(夜に寝て、朝起きたら1本傷つける。そんな感じで、ね)
梨子「鞠莉さんが探してくれてるはず……だけど、こんなところ……」
梨子(助けを待つのは絶望的とさえ思える。日本ではない場所の、さらに場所も分からないような研究所……さすがの鞠莉さんでも……)
梨子「ウェブシューターさえあれば逃げられるのに……どこで無くしたんだろう……」
梨子「曜ちゃんの帽子とマフラーもだ…………」
梨子「……私、パワーがないと本当にただの無力な女の子だ……」
梨子「…………でも、でも」
梨子「…………諦めたりするもんか。私が諦めたら……助けに来てくれた時、胸を張れないんだから……」
梨子「……そして、メリーちゃんとエマちゃんを、沼津に連れて行ってあげるんだ」
梨子(ここでの生活の中で、二人の存在は私の中で確かな希望となっていた)
梨子(そう、明日を生きる希望に────) 梨子の周りからラブライブ要素が少なくなってることが梨子の孤独感を高めてて自分は好き エマちゃんに何かあったら虹で愛着が湧いてる分キツイな…
この後の展開が怖い 〜子供たちの部屋〜
梨子「え……明日は会えない……?」
赤髪の少女「そうなんだぁ……明日は朝からずっと検査があるんだって、先生が」
金髪の少女「検査だけじゃないだろ。昼からはお薬もいっぱいやるんだ」
梨子「お、おくすりをやるって……」
赤髪の少女「お薬やだなぁ……苦いし、注射は痛いし……」
金髪の少女「でもエマ、明日は早く終わったらお庭に出ていいって言ってたじゃないか」
赤髪の少女「そうだった! リコも一緒に行こ!」
梨子「え、っ……わ、私も……?」
赤髪の少女「だめ……?」
金髪の少女「リコも庭に出る許可をもらわなくちゃいけないのか……?」
梨子「え、えっと……き……聞いておくね、うん! もし私も許可が出たら……一緒に行こっか」
ふたり『! 約束だよ!!』ギュウッ
梨子「う、うん……約束、約束ね……」ナデナデ
赤髪の少女「じゃあ今日は明日の分もたくさん歌を聞かせてもらおー!」
梨子「ふふ、今日もお歌?」
赤髪の少女「だって私たち、良くなったら日本までリコのコンサートを見に行くんだもん! その時のために曲を知っておかないとだよね、メリー!」
金髪の少女「まーな」
梨子「むぅ……でも、私だけ歌ってばっかりは恥ずかしいし……」
金髪の少女「ん……じゃあエマも一緒に歌えばいいじゃん」
梨子「え?」
赤髪の少女「!?」 金髪の少女「最近、毎晩付き合わされてんだ。エマがずっとリコの歌を真似してて寝かせてくれなくてさ」
赤髪の少女「ちょ、ちょっ……メリー何言ってるの内緒って言ったじゃん!」
梨子「……ほんと?」
赤髪の少女「あ、ぇと……うぅ……///」
金髪の少女「ほんとほんと。聞かされ続けた私まで覚えるくらいだよ」
赤髪の少女「……///」
梨子「……ふふ、そっか、そうなんだ……ふふふ」
赤髪の少女「り、リコ……///」
梨子「それじゃあ3人で歌おっか」
金髪の少女「えっ」
赤髪の少女「!」
赤髪の少女「そうだよ! メリーも聞いて覚えてるんだったら一緒に歌わなきゃ!」
金髪の少女「ゃ……い、今のは、違くて……」
赤髪の少女「違わなーい! ね、リコも聞きたいよね?」
梨子「うんっ」
金髪の少女「……ほ、ほんとか? 私なんかが……」
梨子「ほんとだよ! みんなで歌おうよ。その方が楽しいでしょ?」
金髪の少女「……こ、今回だけだかんな!」
赤髪の少女「メリー素直じゃなーい!」
金髪の少女「エマがバカすぎるだけだろー!」
赤髪の少女「素直なだけだもーん!」
梨子「それじゃあ何から歌おうか?」
ふたり『青空Jumping Heart!』 〜日本・沼津〜
────ホテルオハラ・鞠莉の研究室
カタカタ…カチャ、カランカラン…
「……少しは休んだらどうですかお嬢様?」
鞠莉「ん……ナターシャ。何か言った?」
「働きすぎよ、あなた。部屋にこもってから24時間は経ってる」
鞠莉「もうそんなに経ってたのね……でもその甲斐あったわ」
「……どこまで進んだの?」
鞠莉「フッフーン! 見てごらんなさい、この胸に煌めくSunshineを!」
「それは……!」
鞠莉「ついに完成したわよアークリアクター! と言っても、まだprototypeだけど」
「もう、そこまで……」
鞠莉「スーツの材質やデザインは今、AIにやってもらってるとこだから、あとは本当にこれの完成を待つだけね」
「……本当にいいの?」
鞠莉「what?」 「それを、スーツを完成させてしまったら……あなたはもう、戻れなくなる。今ならまだ、ちょっと賢い女子高校生のお遊びとして引き返せるわ」
鞠莉「……ナターシャ?」
「この世界に踏み込んでしまったら……あなたはもう、今までの生活はできない。浦の星女学院の理事長をし、スクールアイドルをし、大切な仲間とともに時間を過ごす────」
「そんな素敵な人生を、あなたは……」
鞠莉「……構わないわ」
「……」
鞠莉「私はもう、大切な人たちが傷つくのを見ているだけなんて嫌なの。私の指示したせいで大怪我を負ったり、死んでしまう人を見ているだけなんて、それこそ、耐えられない」
鞠莉「だけど今、私はその人たちを守る力を、あと少しで手にすることができるの」
鞠莉「……それを手放してまで送る生活が、素晴らしいわけ、ないじゃない」
「────、────」
「そう……ね。あなたはそういう人よね……お嬢様」
鞠莉「ふふ、それにマリーってこういうとこセンス抜群だし? ナターシャが思ってるよりも上手くやっちゃうカモ♡」
「……ふふ、そうね。それこそ、その通りかもしれない」 「でも約束して、鞠莉。あなたの力は、世間に公にしないと」
鞠莉「問題nothing! マリーだってそれくらいは理解してるわ! 謎の鉄仮面男、日本の平和を守る! って新聞の見出しで大笑いしちゃいましょ!」
「……ええ」
鞠莉「さ、A.I.N.A.! スーツの具合はどう?」
A.I.N.A『はい、マリー。スーツに使用可能な合金をリストアップしたのでまずこれから────』
「……」
「どの世界でも私の仕事は同じようね……お給料はあっちの倍はもらわないと気が済まないかも」
鞠莉「何か言ったナターシャ?」
「いいえ、別に。とりあえずシャワーでも浴びたらどうかしら。正直……臭うわよ」
鞠莉「what!? う、嘘でしょ……A.I.N.A.、ほんと!?」
A.I.N.A.『私にそんな機能はありません。が、記録している限り3日間はシャワーもお風呂も入られていないかと』
鞠莉「うぐぐ……寝る時間すら惜しいっていうのに……」
「スーツの素材選びでしょ? 私が適当にしておいてあげるから、入っていらっしゃい」
鞠莉「適当って! 適当って言ったわね今!」
「いいから行ってくる!」
鞠莉「も、もぉ……A.I.N.A.、私が許可するまで勝手に始めちゃダメよ!」
A.I.N.A.『かしこまりました』
「……さてと、私もお仕事始めましょうか。A.I.N.A.、リリーを探すから手伝って。今日から視野を国外にまで広げていくわ」
A.I.N.A.『かしこまりました。スーツの材質選びは構わないのですか?』
「シャワーに行かせる口実だから構わないの。あとで鞠莉が自分で選ぶでしょう」
A.I.N.A.『なるほど、さすがですね』
「……これくらい普通よ。本当に普通」
「今までの仕事に比べたら────ね」 3日間シャワー浴びてない鞠莉ちゃんのにおい嗅ぎたい 〜アメリカ・ニューヨーク〜
研究所
コンコン
ガチャッ
「おはよう。よく眠れたかな」
梨子「……もうお昼過ぎですよ」
「ああ、別の作業で忙しくてね。君は今日は休暇のつもりだったのだが、少し見てもらいたいものができた」
梨子「……?」
「いやなに……なにも聞かされずただただ研究されるだけの日々は退屈だろう?」
「そろそろ、君にも君の携わる実験の素晴らしさを理解してもらおうと思ってね」 〜研究室〜
ウィーン…
梨子「……ここは」
「ここは蜘蛛の飼育部屋……とでも言おうか。様々な蜘蛛を保管している部屋だよ」
「蜘蛛のための研究室はまた別にあるのだが……まあ、それはまた別の話だ」
梨子「……」
「まずは私の最初の研究の話をしよう」
「……あらゆる国のあらゆる蜘蛛を集め、卵の状態から放射線を浴びさせてその変異を観察する────というのが私の研究の起源だ」
「そこから遺伝子を組み替え続けているうちに、1匹の蜘蛛にある変異が起きた」
「なんとその蜘蛛に噛み付かれた別の生命に、なんと蜘蛛の特性が発現したのだ。……そう、君にパワーを与えたあの蜘蛛だ」
「私は新たなる生命の進化を目の当たりにしたよ。極限環境に適応し、なおかつ他の生命に自身の特性を与える……これを進化と呼ばずしてなんと言う?」 「すぐに私は論文をまとめた。もちろん発表するためにね」
「そして学会へ発表するために輸送していた際に────沼津駅でトラックが事故を起こしてね。その結果、君がその蜘蛛の力を手にするに至ったわけだが」
「私としては大きな誤算だったよ。そうだろう? 世界を作り変えるほどの大きな研究結果を失ったのだから」
「だが私は諦めるつもりはなかった。一度生み出すことができたのが、また必ずもう一度作り出せると、そう信じていた」
「蓄えていた資金を全て使い、あらゆるコネクションをも利用した。……だが、二度とあの蜘蛛を生み出すことはできなかった。手順も設備も全く同じだったというのにだよ」
「次第に研究員は次々と私の元から去っていき、ついには資金が尽きるところまで行ったが……このアメリカのマフィアが私の研究に興味を示してくれてね」
「スパイダーソルジャーを生み出すことを約束した私に、彼は金と人員と、研究するために必要な場所を提供してくれた」
「そして最後に貴重な検体……つまり君に来てもらって、今に至る」
梨子「……誘拐した、の間違いでしょう」
「ふふ、招待したと言っていただきたい。多少暴力的な方法だったかもしれないがね」
「さあ見てくれたまえ。この蜘蛛の遺伝子を打ち込んだ最初の個体だ」カチカチ ウィーン…
梨子(彼がコンソールを操作すると、部屋の中央に小さなガラスの箱が現れた────中にいるのは、1匹の蜘蛛)
梨子(ケース越しに、部屋の薄暗い照明に照らされたその蜘蛛は)
梨子「綺麗……」
梨子(私にそう思わせた)
「美しい桜色だろう? まるで君のようではないかね」
梨子「……私の……?」
「私にとっては孫のように可愛らしい存在だよ」
梨子「……」
「打ち込んでからそろそろ1ヶ月経つが、変異はかなり進んでいる。まずは糸の強度が格段に増しているし、敏捷性や顎の力も打ち込む前とは大違いだ」
「あれだけ失敗に失敗を重ねていたというのに、君が来てからというもの、まるで嘘のように研究が進んでいる」
「本当に君には感謝するばかりだ」
梨子「……」 「やはり君の存在は……私の研究は素晴らしい」
「人に蜘蛛の遺伝子を掛け合わせることで君のような超人が生まれ、蜘蛛に君の遺伝子を掛け合わせたことでこの蜘蛛のような変異が起きた」
「今では数百の蜘蛛に君の遺伝子を与え、同じように進化をするか経過を見ているが────やはり個体差か」
「この個体ほど変異が進む個体はなかなか生まれなくてね……やはりこの個体は奇跡だ」
「最初の一匹目がこれほどまでに変異してくれるなんて……ああ、思ってもいなかったとも」
梨子「……」
蜘蛛「……」カサカサ
梨子「!」
蜘蛛「…………」ジー…
梨子「……?」
蜘蛛「……」
梨子「……」
梨子「なぜ……そんなものを作ろうなんて」
「今の私にとって蜘蛛は実験の始まりに過ぎない。私の研究の最終目的は────新人類を生み出すことだ」
梨子「新、人類……?」 「蜘蛛の力を得た君を作り出せたんだ、不可能ではないだろう?」
「この技術が実用段階に達すれば、鳥の特性を得た人間や犬の特性を得た人間が生み出せるようになる」
「すると、どうだ? 人間は人間のまま、他の生物の強みを自身の特性として扱えるようになる」
「魚と組み合わせれば海で暮らせる人間が! チーターと組み合わせれば車のように速く走れる人間が!」
「……夢のようではないかね?」
梨子「……確かにすごいかもしれません」
「だろう! 理解してくれるか……ああ、さすが私の娘だ……!」
梨子「……けど」
「……けど?」
梨子「だからって、動物や人間をそんなモルモットのように扱うなんて、私は……」
「モルモットではないさ。研究の礎だよ」 「君や彼らの協力のおかげで、私の研究は格段に進歩したのだ」
「モルモットではなく協力者だよ。かけがえのない、ね」
「力を貸してくれる大切な君たちを、モルモットなどと呼べるはずもないじゃないか。我が愛しの娘、リリーよ」
梨子「貸して、なんて……」
「本当に素晴らしい────君から作り出した血清はまだ人間への投与実験は行なっていないが……完成すれば、いずれは人間を君のようなスパイダーソルジャーが誕生するだろう」
「君のように蜘蛛の糸を使いこなし、銃弾を避け、怪力乱神を振るうスパイダーソルジャー」
「この血清を某国に売れば、莫大な金が手に入る。その金で研究を続け、いずれは新人類を私が作り出す────!」
「ああ、素晴らしい……なんと素晴らしい……!! まるで神のようではないかね!」
梨子「………………そんなことをして、戦争を起こす気ですか」
「……それは私の預かり知るところではない。私はあくまで超人を……あらたなる人類を生み出してみたいだけだよ」
梨子「……狂ってますね」
「科学者とは狂っていなければできない職業さ」
梨子「……」
「さあ次の部屋に行こう。奇跡を起こす瞬間を共に見ようじゃないか」 ・・・
梨子「こ、れは…………っ」
梨子(通された部屋は狭くて暗い────側面に大きなガラス張りの窓が付いている……まるで動物園の通路のようで)
梨子(そのガラスの向こうにある光景が、私に衝撃を与えた)
金髪の少女『あれ……リコじゃないか?』
赤髪の少女『ほんとだ! リコ! リコー!』
金髪の少女『なんか……すごい顔してないか? リコ、聞こえてる?』
赤髪の少女『おーいリコー? どーしたの、私たちの検査を見にきてくれたのー?』
梨子(その中には、私のよく知った子どもたち────エマちゃんとメリーちゃんのふたりが、いた)
梨子(無機質な金属の壁に囲まれた部屋の中央に、ふたりがいて────薄い手術衣のような着物から、痛々しい注射の痕が覗いている)
梨子(おそらくその傷は衣服で見えない部分にまで……)
梨子(そして私の目を釘付けにしたのは、ふたりに取り付けられた大きく、機械と一体化した首輪────!!) 梨子「こ、れは……っ……どういうことですか! ふたりに一体なにを……!」ガシッ
ギリギリ…
「乱暴はよしてくれないか……シャツにシワができるだろう」バシッ
梨子「ぅっ……」
「彼女らから聞いていなかったのかね。検査をしているのだよ」
梨子「検査!? これのどこが検査なの!? これじゃまるで実験────っ、まさか、まさか……!!」
「さあ、これから面白いものを見せてやろう」
梨子「これのなにが、っ……おもしろい、ものって……どこが面白いの!!?」
「君も知っての通り、彼女たちは身寄りのない孤児でね。修道院や孤児院に捨てられた子供の中で、特に身体の弱い子供だ」
「ここはそんな子供たちを引き取り、治療しながら育てている────」
「────というのが表向き」
梨子「!!!」
「彼女たちも私の協力者でね。君の研究をする傍ら、ラットのような小動物では成果の出にくい実験を行なっている」
「人として扱わなくていい実験材料として、彼女たちはとても役に立ってくれているよ」
梨子「人として、扱わな……い……? なに、を……そんな、そんなことっ……て……」
梨子「こ、こんなこと許されるわけない! 警察が、これを知ったら……っ」
「キングピンが全てもみ消してくれるさ。さっきも話したが、私と彼らは友達でね」
梨子「あ、あのマフィアの……っ!?」
「さて、お待ちかねの『面白いもの』だ」 「見えるかね? あのふたり、名前は……ああ、知っていたね。君は彼女たちと仲良しだったから」
「さて、ふたりの首の装置が見えるだろう」
「あれには君から作り出した血清が入っていてね。このリモコンで操作すれば彼女に血清が投与される」
梨子「血清…………っ、て…………え……?」
梨子「まって……まだそれは、人に使えるものじゃないって、さっき……」
「よく覚えている。感心だよリリー。その通り、血清はまだ試作段階……人体実験はまだ行っていないし、そもそもまだ人体に使用できる段階ではない」
「ラットに投与した時はパワーに耐えきれず内蔵が破裂したか」
梨子「ッ……!!!」
「これを人間に使ったらどうなるか……面白い実験だろう? ラットのような小さな生き物では耐えきれずに死んだが、人間であれば……あるいは彼女らの望む、人並みに強い肉体程度には強化が起こるかもしれん」
梨子「やめ、て……そんなことをしたらメリーちゃんが……!!」
「人は時として歩く前に走ることを先に学ぶ必要があるのだよ。今がその時だ」
金髪の少女『なあ博士』
「……」カチ
プツ…
「何かね?」 金髪の少女『これ終わったら外に出ていいんだよな……?』
「ああ。もちろんだ」
赤髪の少女『だったらだったら! リコも一緒にお庭で遊ばせてよ! リコと3人で外を歩いてみたいんだ!』
金髪の少女『朝からずっと痛いの我慢して、頑張ってきたし……それくらいは、許してくれるよな……?』
「構わないとも────」
「────最後にこれを我慢できたらね」
梨子「!!」
少女たち『えー?』
梨子「やめて、お願い……やめて……!!」
「よく見ていたまえ、リリー」カチ
梨子「やめて────!!」 プシュ
金髪の少女「んゃっ……!」
赤髪の少女「メリーどうしたの?」
金髪の少女「な、なんか首の後ろがチクって……なんだろ……」
赤髪の少女「見てあげる! んと、あれー……だめだぁ……首の機械が邪魔で見えないや……痛っ!」
金髪の少女「エマも? なんだよ変なの……」
梨子『────!! ────!』ドンドン
金髪の少女「リコ……? なんだよ窓なんか叩いて……」
赤髪の少女「すごい怖い顔してる……どうしたんだろう。何かあったのかなあ?」
金髪の少女「わかんな、ぃ……ん、んゔぇっ……!」ビチャビチャ
赤髪の少女「うわっ! な、なに……え、これって……血……? メリー、メリー!?」 金髪の少女「あ゛ぁぁあっ……!! ぁ、に゛……こ、れぇ……ぁぐ、っあ……!」ブチブチッ
金髪の少女「いぎ、っ……ぎ、あ゛……いだ、ぃ……いたい! いだい……ぁ゛、ぁああ…………っ!!」ブシャッ!!
赤髪の少女「メリー!メリー!!」ユサユサ
金髪の少女「ぃ、だい……ぎ、ぃ……ぁ、ずげ、っ……え゛まァ、あ……たす、けて……ぁ、ぅあ゛ぁぁあっ!!!」ブチブチブチッ!!
赤髪の少女「な、なにこれえ……ねえ、めりっ……ぁ、ああ……!!! やだ、やだ……メリー!! ぁぁぁああ……」
金髪の少女「が、ぁぁっ……あ、ああ……痛い、いだぃ゛……っあ゛ぁあ……い゛たい……ぃぃい、ぎ、ぁあ……ッ!!」ブチブチブチブチ!!
梨子『────!!!』
赤髪の少女「ぁ、ぁぁあ……あぁぁっ……!! メリー、メリー……!! メリー……!!!」
金髪の少女「ぅ、ゔぁぁッ……あ゛あぁあぁあ………………!!!!!」ザワザワザワ…
・・・ 梨子(メリーちゃんの姿が、変化した)
梨子(全身を黒い毛が覆い、頭に無数の眼が蠢く。両腕は鋭い爪を持った細く長いものになり、胴から同様の腕が2本ずつ生えて……その姿は、まるで────)
「素晴らしい……! こんな変異ははじめてだ! まさか蜘蛛の力を持った人間を作り出すはずが、まさにその逆! 人の形をした蜘蛛の怪物になってしまうとは!」
梨子「ぁ、あぁぁ……ぁぁ……!!」
梨子「あ、なたの……あなたのせいで────!!!」グッ
「まったく……君は過激な女の子だねリリー」
梨子「ふざけないで!! メリーちゃんの姿を見てなんで笑っていられるの!?」
「実験に想定外はつきものだろう? むしろ嬉しいことじゃないか」
梨子「嬉しい……? なにを言って……メリーちゃんが、メリーちゃんがあんな風になってしまってなにが嬉しいの!!?」
「まだまだ試作段階だったということが分かった上に、面白い変異が起きただろう? これはこれで使い所もありそうだが────さて、その手を離してもらおうか」バシッ
梨子「ぅっ……!」 金髪の少女だったもの『GrrrRRrRrR…………!!』ガキィン!!!!
「無駄だぞメリー。これは強化ガラスだ、その部屋で爆弾を使ったとしても割れることはない」
金髪の少女だったもの『AAAAaAaaaAAaAaaaAaaaaAAAA!!!!!』ガン!ガン!ガン!
赤髪の少女「ぁ、あ……め、りぃ……めりー……」ガタガタ
梨子「────、────!!」バッ
「どこへ行こうというのかね? 君にあれを殺す力があると?」
梨子「…………!!」ダッ!!
タッタッタッ!!
梨子「っ、は……く……っ……!!」
梨子(この1ヶ月……ずっと研究所の中を歩き回ってた)
梨子(ひとりで、ずっと……ひとりで……)
梨子(でも、あの子たちは……メリーちゃんとエマちゃんは、私に元気をくれた)
梨子(そんなふたりを、こんな……こんなことに…………!!!)タッタッタッ
梨子(私にあの子たちを救える……? いや、関係ない……私は、私は────!!)
梨子「……あった!」
梨子(研究所を歩き回ったから、間取りはなんとなくわかってる……この部屋だ!)
梨子「エマちゃん、っ……エマちゃん……!!」
バンッ!
赤髪の少女「……!! り、こ……りこ……!」
梨子「助けに……きたよ!!」 赤髪の少女「めりーが、メリーが……ぁ、ああぁぁっ!! ぁぁぁぁん!」ギュウッ
梨子「……っ」ギュウッ
金髪の少女だったもの『FUuUuuUuuuurrrr……』ギギギギギギ…
梨子「…………何もしてこない……?」
赤髪の少女「りこ……リコ……」ガタガタ
梨子「……行こう、エマちゃん」
赤髪の少女「で、でもメリーが、メリーが……!!」
梨子「……私が後で必ず連れ戻すから。今は……お願い」
赤髪の少女「ぅ、ぅぅぅうう……っ……」
梨子「……エマちゃん」
赤髪の少女「…………うん」
梨子「私の後ろに隠れて……そのまま壁を背にしてドアから出て」
赤髪の少女「……メリー…………」
梨子「……」
金髪の少女だったもの『u……a、…………』
梨子「……」
バタン 赤髪の少女「…………リコ」ギュウッ
梨子「……怖かったよね。ごめん、ごめんね……」ギュウッ
赤髪の少女「めりぃが……めりぃが、ぁぅぅ、ぅぁあぁぁあ、あぁ……っ……!!」
梨子「……ごめんね……ごめんね……」ギュウッ
梨子(私が、されるがままに研究されていたせいで……ふたりがこんな目にあわされるなんて、思ってもいなかった)
梨子(私のせいだ……私から作られた薬のせいで、メリーちゃんがあんな姿に……っ)
梨子(私のせい……私が抵抗しなかった、死ぬ覚悟で逃げなかったから……っ)
赤髪の少女「ぅう、ぅぁぁあ、ぁぁあっ!! めりぃ、めりいぃい……!! ぁぁあああ……!!」
梨子「ごめんね……ごめんね……」
梨子(私は……慟哭し続けるエマちゃん抱き締めながら、謝罪の言葉を吐き続けるしかなかった) いつも保守ありがとうございます
今週頭に風邪で体調をぶっ壊してしまいまして、
そろそろ更新をと思ってたのですがなかなか書き進められておらず申し訳ないです
出来るだけ早く快復して進めたいと思います
もう少しお待ちを 今のご時世体調第一なんで、お大事になさってください、、、 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています