かすみ「か、かすみんだって…璃奈ちゃんボードになれますけど…!」
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かすみ「(私達の虹ヶ咲スクールアイドル同好会でもユニット活動という物が始まりました)」
かすみ「(この活動を通して、より一層かすみんの魅力を!…と思っていたのですが…ここで一つ問題が立ちはだかります)」 かすみ「(私達のグループは四人グループです、ゆっくりマイペース代表のエマ先輩、そして、いつでも自分のペースを崩さないって意味ではこれまたマイペースな彼方先輩。)」
かすみ「(そしてりな子。あの顔の状態は…なんていうか……存在がマイペースじゃないと維持できない状態にあるというか…型破り過ぎて卑怯というか……」」
かすみ「(というかあのボードどうなってるんでしょうね……どこから前見てるんでしょう…?)」
かすみ「(とにかく、このように同じグループのメンバーがマイペース過ぎるのです!このままではあまりの自由さにかすみんが埋もれてしまいます!!)」
かすみ「(だから、何はともあれ、ライバルは事前に倒しておかないと!出る杭は打たれる、です。インパクトのあるライバルは事前に潰しておきますよ〜ふっふっふっ……)」
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─── 【虹ヶ咲部室】
かすみ「エマ先輩、二人共遅いですねえ……りな子は今日教室当番だって聞いてますけど……」
エマ「そうだねえ、たぶんこの感じだと彼方ちゃん教室で寝ちゃったまんまかもね……」
かすみ「ああ…あの人ならあり得ますね……」
エマ「ごめんねかすみちゃん、ちょっと私彼方ちゃんの教室見て来るね?……一人になっちゃうかもだけどちょっと待ってて貰えるかな…?」
かすみ「ええ……かまいませんけど」
エマ「ごめんね、あ!ポットに紅茶用のお湯沸かしておいたから、それと、そこに置いたお茶菓子も一緒に食べていいからね?」
かすみ「は、はあ……ありがとうございます」 駆け足でエマ先輩が出て行った後の部室には、ポットで湯がグラグラと湧き上がる音が響き渡る。
最近、この部室には私物が一気に増えた。具体的に言うと、家電製品が多い。先述のポットにヘアアイロン、誰かが箱で置いて行ったパーティサイズのお菓子に漫画本全巻セットまで置いてある。
かすみ「(まあ、最後のは大体誰が置いて行ったか予想がつくんですけど…)」
璃奈「こんにちは、ってかすみちゃんだけ…?」
かすみ「あれ、りな子。うん、エマ先輩は彼方先輩を迎えに。クラスの仕事は早く終わったの…?」
璃奈「うん、同好会の活動があるなら早く行って来な、っていつもライブ見に来てくれるクラスの子が言ってくれた。璃奈ちゃんボード『フクザツ』」
かすみ「あー……まあ、いいんんじゃない、その分ここで頑張れば」
璃奈「かすみちゃん、意外と真面目、『サボれてラッキー☆』くらい言うと思ってた」
かすみ「かすみんの印象どうなってるの!」 かすみ「(りな子、前々から思ってたけど……感情を表に出すのが苦手とか言いながらもコミュ症ってわけではないし、話すの恥ずかしがってる訳じゃないし…なんでボードしてるんだろう…?)」
かすみ「ますます気になる……」
璃奈「………?あ、かすみちゃん、そのお菓子」
かすみ「ああ、エマ先輩が持って来たやつでさっき食べていいって言ってたけど……」
璃奈「……なら、遠慮なく頂く、お昼が少なかったからカロリー不足。璃奈ちゃんボード『ハラペコ』」
かすみ「あと、紅茶も飲んでいいって言ってたけど……あ、そうだ」
璃奈「……?」
かすみ「じゃあここは、この大天使かすみんが紅茶を淹れてあげますから、りな子はそこでお菓子でも食べてて、ほら!ね?」
璃奈「かすみちゃん、急に態度がアヤシイ……璃奈ちゃんボード『じーっ』」
かすみ「もう、天使の気まぐれだって!ほら、早く早く!」 かすみ「よいしょっと……茶葉はどこでしたっけ……」
かすみ「(ライバルを御するにはまずは情報から、あのボードの秘密を探りますよ!ふっふっふっ……)」
かすみ「ほら、りな子、お茶持って来ましたよ」
璃奈「……かすみちゃん、ありがと。璃奈ちゃんボード『キラキラ』」
かすみ「(ふふっ……座ったまま後ろから近づかれれば、避けるのは不可能…!)
かすみ「(カップに注ぐ振りして……ボードの裏面を……!)」
ガッ
かすみ「へっ…?」
バッシャーーン!!!!! 璃奈「わひゃっ…!?」
かすみ「あ……え………ごめん!?大丈夫!?!?」
璃奈「……大丈夫、かすみちゃんは怪我無い?」
かすみ「そんなことより、りな子!こ、紅茶!あ、頭に被ったでしょ!?早く水で冷やさないと!!」
璃奈「私の顔は璃奈ちゃんボードが守ってくれたから大丈夫。ほら、ちょっと袖が濡れたくらい」
かすみ「……そっか、よかった…でも、服も濡れちゃってるし……本当にごめんなさい」
璃奈「もういいってば、大丈夫だったから、そんなに謝らないで」 かすみ「でも、ボードもぐちゃぐちゃになっちゃってるし……」
璃奈「璃奈ちゃんボードはスペアがあるからまた描けば大丈夫。鞄のこの辺に……」ゴソゴソ
璃奈「あ……今日全部置いてきたんだった」
かすみ「え…じ、じゃあ…代わりのボードは……」
璃奈「これは困った、家に帰ればいっぱいあるけど…これから練習だし」
かすみ「あの、ほんと……ごめんなさい……」
璃奈「………」
璃奈「いっこだけ、ある……解決する方法」
かすみ「へ……?」 璃奈「璃奈ちゃんボード『にっこり』」
かすみ「『>_<』」
璃奈「璃奈ちゃんボード『しょんぼり』」
かすみ「『T_T』」
彼方「ええと……あの二人はくっついて何してるの…?」
エマ「かすみちゃんが璃奈ちゃんボードに飲み物こぼしちゃって、代わりが無いんだって。だから、代わりにかすみちゃんが璃奈ちゃんボードになってるの」
彼方「なるほど…なのかな、これ…?………なんでもいいけど、練習が始まらないんだったら一休みするね……ふぁぁ…」
エマ「ああ、彼方ちゃん寝ちゃダメ!二人共!彼方ちゃんが寝ちゃう前に早く練習始めるよ!」
璃奈「璃奈ちゃんボード『ガチャで180連ドブった上に隣で友達に推しを引かれた』」
かすみ「『; _ ;』……ってそんなの無いでしょ!!」
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─── 【練習開始から二時間後】
エマ「ふぅ、ここまでにして一回休憩にしよっか!…水分補給は大事だし」
彼方「ふぁぁ、彼方ちゃん疲れた……一回寝るね、また始まったら起こして……ZZZ」
かすみ「あの……りな子あんまり張り付くのやめて貰ってもいい…?」
璃奈「どうして…?ボードだったら顔の前に無いと意味ない」
かすみ「あの……その………」
璃奈「……?」
かすみ「あ、汗とか、気になるから!練習中は勘弁して!」
璃奈「なんだ…それなら大丈夫、気にならない。むしろかすみちゃん、汗をかいても良い匂い」
かすみ「そっ、そういう問題じゃないの!現在進行形で汗かいてるとこに張り付かれる気持ち考えなさいよ!」 エマ「ごきゅ…ぷはっ!やっぱ運動後のお水は最高だね〜!彼方ちゃんもしっかり飲まなきゃだめだよ?」
彼方「起きたら飲む……ZZZ」
璃奈「こくん……ぷはっ……おいしい、璃奈ちゃんボード『ぷはっ』」
かすみ「…………」ゴクゴク
璃奈「………かすみちゃん、『ぷはっ』」
かすみ「え!?顔やれって事!?水の感想絶対要らないでしょ!?」
璃奈「それは困る、璃奈ちゃんボードは私の心を写す鏡。細かい心の動きも逃しちゃダメ」
かすみ「そもそも背中で物を飲み食いするのをやめてよ」
エマ「なんかテレビで見たことあるな〜こうやってお母さんが子供を背負って食事したりする動物!」
璃奈「私もそれ見た事ある気がする……でも勘違いしないでほしい。動物は下がお母さんだけど、今は私が本体。私が主でかすみちゃんが従」
かすみ「誰が従ですか!」
璃奈「いいから、璃奈ちゃんボード『ぷはっ』」
かすみ「ううっ…………『>_<』」
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─── 【帰り道 電車】
エマ「ばいばい、二人共!ほら、彼方ちゃんはちゃんと歩いて!」
彼方「ムリ…練習後は疲れ切ってて……睡眠のゴールデンタイムだから…ZZZ」
エマ「ああっ!私によりかかって寝ないで!もう……とにかく二人共、またね!」
かすみ「は、はい……さようなら」
璃奈「二人共気を付けて。エマさん、彼方さん、また明日。璃奈ちゃんボード『バイバイ』」
かすみ「『^_^/』」 『まもなく電車発射します、閉まるドアにご注意ください』
かすみ「…………」
璃奈「……………」
かすみ「…………」
璃奈「……………」
かすみ「……え、どこまで付いてくるの…?」 璃奈「大丈夫、ちょっと回り道なだけでこっちからも帰れる」
かすみ「いや、そうじゃなくて…もう先輩二人も帰った事だしもう私居なくても……」
璃奈「電車の中って、人は思ったより人の顔見てる。まだまだボードが無いと恥ずかしい」
かすみ「そういう問題じゃなくて……」
璃奈「ほら、現にあの辺の人達、私達の事よく見てる」
かすみ「りな子が背中に張り付いてるから目立ってるの!!」
璃奈「どうどう、かすみちゃん、ボードが単独で怒りだしちゃダメ」
かすみ「もー……なんなの!」 かすみ「ちょっと……いい加減に!」クルッ
我慢出来ず後ろを向いた私の目の前に在ったのは、想像していたような肌色の小さな顔では無く……
璃奈「『>_<』」
かすみ「………は?」
璃奈「ボード、鞄の中探したら一枚だけ奥の方に残ってた」
かすみ「………いつからあるって気付いてた…?」
璃奈「休憩の時に鞄の中で水筒探した時」
かすみ「結構前から気付いてるじゃない!私絶対途中から要らなかったでしょ!!」
璃奈「どうどう、かすみちゃん。周りを見て…大声出すから見られてる」
かすみ「ハッ…!」
璃奈「いくら璃奈ちゃんボードがあるからって…こういう注目の浴び方は恥ずかしい」
かすみ「ああ……もう!じゃあなんで……本物があるなら要らないじゃない」
璃奈「かすみちゃんで遊ぶのが楽しかったから」
かすみ「くっ……隠すことなく直球で来たわね……」
璃奈「もちろん、だって璃奈ちゃんウソつかないから。なんでも正直に答える」
かすみ「はぁ……まったく、もう……」 璃奈「それに、かすみちゃんが羨ましかったから」
かすみ「へ…?」
璃奈「いつも表情がコロコロ変わって楽しそうな、かすみちゃんが羨ましかったの。普段みんなと居る時とか見てて、いつも」
かすみ「りな子………」
璃奈「これも本当、璃奈ちゃんボードを付けた私は心にウソつかない」
璃奈「あっ……じゃあ私、ここで降りるから」
かすみ「え、ええ………」
璃奈「またね……璃奈ちゃんボード『バイバイ』」
璃奈「『>_<』」 扉が閉まると同時に、加速度的に電車が外の世界を流していく。
電車の窓越しに見えたピンクのペンで描かれたその“顔”はいつもと同じで、憎たらしい程輝いた笑顔だった。
電車の空いた座席に少し深めに腰掛ける。いつの間にか車内にはすっかり人は居なくなっていた。
かすみ「はぁ……全く、りな子のやつ、かすみん使いが荒いんですから……」
電車が流れていく、その一瞬私は見た。
ボードからはみ出した部分。顔の横から覗いたりな子の、えくぼになるほど吊り上がった口角。
あれこそが、彼女の心なんだと思う。前に出せないと嘆いていた彼女の感情なのではなんだと、私は思う。 かすみ「まったく……そうだ!明日になったら何か仕返しをしてやらないと…何がいいでしょう……」
ひとりぼっちになった車内でひとり呟く。規則的な揺れが心地よい微睡みに誘って来るが、ここで寝たら終点まで運ばれてしまう。仕方が無いので、明日の事を考えて眠気を耐え凌ぐ事にした。
そうだ、ドッキリか何かをしてやろう。どうせなら、中身の顔までびっくりさせてやりたい。ネズミはこの前やったから、次は蛇のぬいぐるみがいいかも、うん、きっと、それがいい。
かすみ「流石かすみん…これならビックリ間違いなしです、くふふ……」
イタズラが成功して、びっくりした顔を想像する。ビックリして飛退いて、驚く表情。自然ともう一度、あのピンクのペンで描かれた顔を思い出す。
今日一日振り回された、ピンクで綺麗に描かれたあの顔を。
『それに、かすみちゃんが羨ましかったから』
『いつも表情がコロコロ変わって楽しそうな、かすみちゃんが羨ましかったの。普段みんなと居る時とか見てて、いつも』 かすみ「ま、まあ……ドッキリはまたの機会にしてあげましょう!かすみんは寛大なので!」
かすみ「全く、りな子には感謝して欲しいものですよ…!」
誰に言うわけでもなく、一人呟く。そうこうしている内にもう少しで家の最寄り駅に着きそうだ。
ふと外を見ると、夕日が半分以上地平線の下へと落ちていた。それが今日という一日が終わる合図だった。
沈みゆく太陽を眺めながら、今日の事を少し思い出すと
いつの間にか、私の口角も自然と少し吊り上がっていました。 これ名作じゃん!!
りな子が意外に直球なセリフいうところとか分かってますなぁ! かすりなでこの距離感がいいね
どうどう、は愛さんからの影響かなとか想像したり 璃奈のかすみへの対応に、愛さんの影響受けてるようなフシがあるのほんと好き
お題:あいかな(愛さんと彼方)で あなた留年も書いてた人だよな
名作続きで本当すごいな ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています