SS 小泉花陽はお腹がすいた
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よくあるわかりやす〜い異世界もの
のんびり進行
伝説として語り継がれる9人の女神たちのお話し
ユリカ「どうしてお父さんはそんな実験なんかに協力を……」
エミ「それは………」
ここまで二人の会話はお互いうまく繋がっていたようですが、ここでエミちゃんが言葉を詰まらせます
ユリカちゃんのお父さんが兵器実験に協力した理由……それは……
ユリカ「そんな……」
エミ「………」
花陽「セト村を人質………そんな酷い事を……」
エミ「本当に申し訳ありません。身内の恥とかき捨てるにはあまりにも……っ」グッ
ユリカ「………っ!」
花陽「…………」
ユリカちゃんのお父さんは魔術師として高名な方でした
その名は他国からお父さんに師事を願う人達がいるほど……その力を軍事利用しようとしたのがこの国の偉い人達
村の人達を人質にし、無理やり兵器開発に協力させたのです
エミ「……あの方の配慮もあり、兵器は上手く扱えないはずでした……でも姉さま達は無理やり起動させようとしたのです」
ユリカ「それが……あの事故の原因なのですね……」
エミ「はい。結果としてその場にいた多くの方が亡くなりました。近隣諸国の王族を巻き込む形で……」
花陽「えっ……それって……」
エミ「国境付近で行われた国際会議の場での事でした」
花陽「えぇ………」
ユリカ「それが先にあった戦争の原因。戦争中、セト村になんの援助もなく放置されていたのもそういう理由だったのですね……」
お父さんが戦争に協力しなかったという事だけど、あの敗残兵の人達はもっと違うニュアンスで言っていたと思います
もしかして、そのあたりの食い違いは誰かの意図的なもの?
エミ「私は開戦前にあの方からトト村へ逃げるように言われました」
ユリカ「お父さん……」
エミ「予定外の形での開戦だったため、クレスタリア軍は戦線維持もままならず、結果はみなさんがご存知の通りです」
ユリカ「自分達で戦争を引き起こしておいて、なんて無様な……」
花陽「ユ、ユリカちゃん……」
時折……いえ、結構きつく言う事があるユリカちゃんですが、自分の認識の中で敵としてるものに容赦がないんですね
エミちゃんの事、どう考えているんだろう?
エミ「あの方が…クレスタリアは近いうち滅び、新しい時代がくるから、私にはその時代を生きなさいと……私にエミという名をくださいました」
ユリカ「それでお父さん、自衛のための隠し部屋とか作って避難時の備えをしていたのね」
エミ「あの方はこうも言っておられました……」
-どんな理不尽にみまわれようとも、すべてを覆す存在……勇者がこの歪んだ国を正してくれる
-キミは普通の子供として、普通の人生を歩みなさい……
お父さんはエミちゃんにそう言ったそうです
エミ「私は生まれた時から国の教育施設で育てられ、親の顔もろくに知らないまま生きてきました……」
花陽「え……王女さまなのに……」
第11位というのがどういう立場なのかわからないけど、子供にすることじゃないように感じました
エミ「そんな私にあの方は……私に生きる意味と……道を示してくれ……て…ぅぅ」
話ながらもユリカちゃんのお父さんの事を思い出していたのでしょう
エミちゃんの目に大粒の涙が見えます
ユリカ「……………」
エミ「ごめんなさい……ホントは私、ここにいちゃいけないのかもしれません……でもっ」ポロポロ…
花陽「そんなこと……」
エミ「でも……こんな私に…みんな…っ…優しくして、くれて……友達だって…家族だって……ぇぅぅ」
花陽「エミちゃん……」
エミ「ホントに私、このまま忘れてもいいのかなって……楽しいことを楽しんで、いいのかなって…」
初めて会った時のエミちゃんは、どこか影がありました
リホちゃん達と一緒に遊ぶこともなく、一歩下がったところでその輪に入れずにいたように思います
しかし最近はみんなとも打ち解け、本当の家族のようになれたように思えます
だけど一人でずっと自身の生い立ちから心に重荷を感じてもいたんですね
エミ「でもやっぱりこの体に流れる血の呪いには抗えないようです……」
花陽「それは……エミちゃんが狙われる理由ですか?」
エミ「はい……。私を狙っているのはおそらく王族の生き残りです」
…………ん?
エミ「私にしか扱えないあの魔導兵器は人目につかない地下深くに封印されたと聞きました。きっとそれを使ってまだ戦争をと考えているに違いありません」
花陽「そうなの? 私はてっきり……」
兵器の事は詳しく知りませんが、エミちゃんを狙う野盗の集団は、その命を狙っていました
これはエミちゃんの推測が違う事を意味しているはずです。それにあの人達は……
ユリカ「………セト村が襲われたのって、エミちゃんがいたからなんですか?」
エミ「……っ!?」
花陽「ユリカちゃん?」
ユリカ「どうなんですか?」
どうして急にそんな事を言うの?
どうしてエミちゃんをそんな冷たい目で見るんですか?
それにそれは違うはずです。おそらくこの食い違いも誰かの意図的なものなんです!
エミ「…………それは………そう、」
ダメです、この流れは絶対に止めなくちゃいけません!
花陽「違いますよ!」バッ
エミ「……え」
ユリカ「ハナヨちゃん……」
花陽「村が襲われたのはエミちゃんのせいじゃありません。考えてもみてください……」
ユリカ「どういうことですか?」
花陽「村が襲われた時もそうだと思いますが、私が野盗と対峙した時……あれが要人の保護を目的としたやり方ですか?」
エミ「…………」
ユリカ「それは………」
兵器のためにエミちゃんが必要ならあんな無差別に火を放つようなことはしません
花陽「それにあの人達言ってました、探してる人物…エミちゃんの命が目的だと……」
エミ「え……」ドキッ
ユリカ「……じゃあやはり原因は……」
花陽「違うのっ! あの人達、エミちゃんが居ても居なくても村を襲ってました! 戦争の時、自分達を見捨てたのを許せないって!」
ユリカ「そんな! 私達は見捨てたなんて事……そもそも戦時中に繋がりを絶ったのは国のほうです!」
花陽「そこです、その部分がお互い食い違っているから誤解を生むんです」
エミ「疑心暗鬼に陥らせるための……罠?」
花陽「意図はわかりませんけど、ユリカちゃんの危惧していることは誤解です」
ユリカ「………っ」
エミ「…………」
ユリカ「その……ごめんなさい。つい感情的になってしまいました」
エミ「…………いえ」
花陽「一度落ち着きましょうか」
なんだか話が進むにつれてわからない事もたくさん出てきます
だけど一番大事な問題は見失いません
花陽「エミちゃん自身はアイドルをやってみたいという考えでいいんだよね?」
エミ「えっ……あ、はい。できれば」
花陽「ユリカちゃんも同じでいいんですよね?」
ユリカ「それは変わりありませんが……」
花陽「そしてエミちゃんがアイドル活動をしようとすると邪魔をしてくる人達がいる……と」
エミ「軍事利用のために私を拘束しようとする輩がいるかもしれないのでと、警告はされていました」
ユリカ「問答無用に命を狙われるなんて……もしかしてその相手というのは……」
ここで盗賊から得た情報も考慮します
あくまで噂の範囲ですが、話が繋がる以上無碍には出来ません
花陽「命を狙っている元騎士団の野盗達は、敵国に雇われているという話を聞いた事があります」
ユリカ「敵国……戦争の相手国ですか……」
エミ「おそらく、兵器の修復、再利用されるのを阻止するため。私が必要なのを知っているのなら、封印された兵器はすでに発見されたと見るべきです」
エミちゃんが生きている限り命を狙われる
その理由が戦争の火種になっている魔導兵器の存在……それが私達の邪魔をしています
花陽「それじゃ、するべき事は一つですねっ」
ユリカ「やはり早急に野盗との決着をつけるのですね!」グッ
エミ「でもどこにいるのかわかりません……」
………え? それはあまり意味がないと思います
ユリカちゃん達の直接の仇ではありますが、今は別の問題を解決しないといけません
花陽「あの人達は雇われているだけです。個人的に恨んでもいるようですけど、そこをどうにかしても同じです」
エミ「また別の刺客が送られるだけ……ですね」
ユリカ「えっと、じゃあどういう方法を?」
元凶がなくなればそれで問題は解決するはずです。なので……
花陽「エミちゃんっ」
エミ「はい」
花陽「その魔導兵器というの、壊しに行きましょう!」
おつおつ
ほぼ毎日更新のこのペースはすごい、俺も楽しみに読んでます おつおつです
かよちんの渾身のパンチで魔導兵器を破壊するのか -次の日 お昼
リホ「すごーい……」
パイ「キレイ……」
ヨシノ「可愛い…」
花陽「でしょ〜?」
アイナ「すっごく広いところだね」
アヤ「何人いるの、これ……」
みんながとても喜んでくれています
それもそのはず、今みんなが見ているのは…っ!
花陽「これは日本武道館といって、たくさんのアーティストがここでライブをするんだよ」
ヨシノ「あーてぃすと……カッコイイ響き……」
リホ「ライブって、お姉ちゃん達がやろうとしてる?」
ユリカ「ううん、リホちゃん達も一緒、みんなでやるんだよ」
パイ「おー」
アイナ「え……みんなって……」
アヤ「まさかわたし達も?」
ユリカ「そうよ!」
みんなは今1階の広間にドカーンと置いてある大きいテレビに流れている、アイドルのライブ映像を見ています
……そう、創りました! 様々なアーティストやバンド、アイドルのライブが観られるテレビを!
スズ「言葉はわからないけど、曲と一緒に聴こえてくる歌はとっても綺麗で、耳に心地よいですね」
アヤ「複数の声が重なるとこんなにも変わるんだ…」
アイナ「これをわたし達がやるのって、ちょっと無理なんじゃない?」
エミ「でも、とてもステキですっ!」
花陽「いきなりこのレベルまではさすがに無理だと思いますけど」
だけどみんなにアイドルのライブがどういうものなのかを感じてもらうにはこれが一番!
ホントは私自身で伝えたかったのですが、言葉や文字の壁があるのに気づいてやり方を変えてみたのです
ユリカ「みんな、これから数日の間ハナヨちゃんとエミちゃんが用事でお出かけするから、それまでにアイドルの基礎をしっかり勉強しますよ!」
リホ「やった〜!」
パイ「ライブ見てていいのね?」
ヨシノ「エミちゃんも一緒に見れないのー?」
エミ「ごめんなさい、でも戻ったら一緒に見ましょう」
アイナ「ユーディクスに着いてからじゃダメなの?」
花陽「ごめんね、急ぎの用だから」
花陽「それじゃ、向こうにはそう伝えておいてください」
ユリカ「はい。男性陣には買い出しとお金の洗浄をやってもらうんですね」
花陽「何かあったらギンさんと相談して決めてください」
スズ「無事に戻ってきてくださいね」
エミ「ハナヨちゃんが一緒ですから、安心してください」
花陽「…………ん」
花陽「そういえばソラくんは?」
アヤ「ああ、朝ごはん食べたら向こうに跳んでったわ。まったく…」
アイナ「今日も訓練やるんだってさ。相手のおっちゃんも大変だね」
ソラくん、がんばってるんですね
いつかその努力がみんなの望む形で報われるといいな
フワ「準備できてたかしらー?」ガバッ
花陽「はい、いけますっ!」
エミ「こちらも大丈夫です」
花陽「それじゃ、最初の予定で行きますね」
エミ「………お願いします」グッ
ユリカ「フワさん、お二人をどうかよろしくお願いします」
フワ「まかせといてっ! そっちもしっかりね」
私の急なお願いにも了承してくれたフワちゃんには、ちょっとがんばってもらいます
短い時間で長い距離を移動するにはフワちゃんの協力は不可欠です
フワ「道中は飛ばすから、しっかり掴まってるのよ!」
エミ「手綱を体に括りつけるので遠慮なさらず、やってください」
ユリカ「それではハナヨちゃん……」ギュッ
花陽「うん、行ってきますね」グッ
今回の件は言ってしまえば私個人の我儘です
ユリカちゃんのお父さんはエミちゃんにすべてを忘れて新しい人生を生きて欲しいと、手を差し伸べました
ユリカ「行ってらっしゃい!」
違う国で別の人生を歩むこともできたエミちゃんにとってこれが本当に良い事なのかわかりません
だけど大人の都合だけで命を狙われ続ける人生なんて、きっと幸せになんてなれないと思います
だから私はこの我儘を、やり通すと決めました
これが私の選んだ方法、みんなを救うために絶対に必要な事だから
エミ「まず向かうのは旧王都と呼ばれるクレスタリアの西にある町…」
フワ「そこに隠された研究施設があるのね」ダッ ダダダダダ!!
エミ「はい。おそらく施設は抑えられていると思いますが」
フワ「そこは勇者さまがなんとかしてくれるわ。ね、ハナヨちゃん?」ダンッ
花陽「……………ぅぅ」
エミ「ハナヨちゃん、どうしたのですか?」
花陽「いえ、みんなの手前、我慢していたんですけど……」
フワ「あぁ、なるほど。でももう少し我慢していてね、きっとそのパワーが必要になるんだから」ザザッ タタタタ…
エミ「ファイトです、ハナヨちゃん!」
花陽「わかってますけど……ぅぅ……お腹がすきました……」グゥ…
スレ容量的に自由に書けないのでここで終わります
新スレに続くー すいません、少し間が空いたので書留と他色々やってました
明日スレ立てて続き載せていきます
こっちは落としてもらって大丈夫です 新スレ乙です!
これからも楽しみに読ませていただきます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています