SS 小泉花陽はお腹がすいた
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
よくあるわかりやす〜い異世界もの
のんびり進行
伝説として語り継がれる9人の女神たちのお話し
話をちゃんとするためにも、私は自身のスキルを信じて、強気に出ようと思います!
花陽「あのー……」
「あん?」ギロッ
……強気に……は、ちょっとまだ無理かなぁ…
花陽「お話しがあります……」オドオド
「うるっせぇ、さっさとこれ解きやがれ!」ガウッ
スズ「キサマ!」サッ
花陽「ああ、いいです。大丈夫です」スッ
さて、どうやってお話しを切り出そうかな……
花陽「取り敢えず皆さん、暴れなければ何もしないので落ち着いてください」
スズ「話があるというのは本当です。それと……」ゴソッ
ドサッ ガバッ
「………こ、この匂いはっ」ゴクッ
「食い物……」ゴクリ…
花陽「昨日から何も食べてないようですし、これどうぞ…」ゴソッ
「なんのマネだ…」
「俺達を飯ごときで懐柔しようってんなら……」
なんでここまで嫌われているんでしょう……?
花陽「ちょっとお話しがあるだけです。それ以外に用事なんてありませんから」
「話をきくだけでその飯をくれるってぇのかい?」
スズ「ハナヨちゃんの好意はありがたく受けておくのが身のためですよ」
微妙に誤解を生みそうな言い方ですけど、話が進むのならいいかな?
さすがに突っぱねていても目の前に食べ物を置かれると人間、抗えるものじゃありません
私なんて一瞬でご飯に飛びついて罠にハマります
「ま、どうせこのまま放置されりゃ死ぬんだ。話くらい構わねぇぜ」
スズ「他の方々もよろしいですね?」
この人がこちら側のリーダーなのでしょう
そのリーダーの決定に他からの異論はなさそうでした
私が盗賊達に聞きたい事は彼ら独自のコミュニティの話です
先にあったという戦争がきっかけでたくさん増えた戦争難民達の現状……それと……
花陽「みなさんは、元王国騎士団で結成されたという野盗の集団をご存知ですか?」
「元騎士団……ああ、あの連中か……」
花陽「彼らについて知っている事があるなら教えてください」
「知ってるも何も、戦争に負けていくあてのない連中が行きついた先だろう。珍しくもない」
花陽「それだけですか?」
「……ん、ああそういや妙な噂は聞いた事があるな」
花陽「噂って、なんですか?」
話によると、戦争で負けた敗残兵の一部が敵国にそのままつき、ある命令で動いているらしい…と
「そのまま敵に殺されるよりかはマシなのもあるが、戦争の原因が元々この国にあるんだ、わからん話でもない」
花陽「原因……?」
スズ「先の戦争を引き起こした原因がクレスタリアの王族によるものだというのは事実です」
花陽「え……そうなんですか?」
戦争があったという話は聞いていましたが、そういえばどうして戦争になんてなったかなんて考えていませんでした
それが……この国によるもの?
スズ「私も詳しくは知りませんが、姉さんならもう少し知っているかもしれません」
花陽「ユリカちゃんが……」
そういえば何か知っているような口ぶりだったような?
「ま、そんなんで誰もこの国のために動かないんで、今のような無法地帯の出来上がりってわけさ」
スズ「他人から奪う事しかしない者が国を批判とは……」ググ…
花陽「スズちゃん、落ち着いて…ね?」ドウドウ
国が国民からも見放されたという事なんですね……
日本でいうと、国民総ストライキとか、そういう規模の話なのでしょうか?
花陽「あの、敵国が戦争に勝ったのに何もしないって言うのは……?」
「元々相手はこの国を占領したいわけじゃねぇ。自衛のための戦争だからだろ」
「ほっとくとこの国は周辺国すべてを巻き込んで何をするかわからねーからな」
「噂じゃ世界征服を目論んでたってよー」
スズ「お前たち、憶測で勝手なことを……」
世界征服……急に漫画のような言葉がでてきました
しかしそれが現実として起こりそうだったからこの国は他国によって抑えられた……そういう事?
花陽「でも敗戦国をそのまま放置って、ちょっと無責任じゃないですか?」
「そうか? 勝者がすべてなんだ、負けてとやかく言うのも変だろ」
花陽「む……そういうなら大人しく私の言う事聞いてくださいよっ」
「へっ、誰がおまえみたいなガキに」
花陽「むぅ……」プクー
スズ「ハナヨちゃん、こんな奴ら仲間にしなくて良いですよ」
「ああそうだ、もう一つ妙な噂を聞いたな…」
花陽「ん、なんですか?」
「元騎士団の連中は相手国の命令で、何者かを探してるらしいぜ」
花陽「…………」ドキッ
「なんでもソイツがいるとまた戦争になる可能性があるんだとよ……まぁ噂だからどこまで本当かは知らんが」
何者かを探している……どうしよう……話が繋がりそう……
――その後他にいくつか質問をしたり、別の盗賊団についても聞いて見ましたが、私の心はずっと同じ部分でぐるぐると回り続け、ほとんど話がはいってきませんでした
「おい、まだあんのか? いい加減それ食わせろよ」
花陽「あ……はい、そうですね……」
さすがにもうこれ以上何かを聞き出すのは無理かな……じゃあ
花陽「スズちゃん、ここはもういいので先に帰っていてくれますか?」
スズ「え、先にですか?」
花陽「はい。お願いです」
ちょっとズルイ言い方。こうすればスズちゃんが断りづらいのを知っています
ゴメンね。でも、きっと私のやろうとしている事はスズちゃんもみんなも納得しにくいでしょうから……
スズ「わ、わかりました……ハナヨちゃんに何かあるとは思えませんけど、どうか無事に帰ってきてくださいね」スッ
花陽「ふふ、大丈夫です。すぐに帰りますよ」
数回こちらを振り返りつつも、スズちゃんが先に帰っていきました
さて、こっちもとっとと終わらせて帰りましょう
「なんのつもりだ…?」
「は、まさかおまえ!?」
「アイツらにいい顔しておいて、裏で俺らを消すつもりか!」
花陽「しませんよそんな事……」スッ
スズちゃんに運んでもらったのはこの人達にあげる予定の食料
で、私自身も彼らに渡すものを持参しています。小さめの革袋を2つ……
花陽「……これ、みなさんに差し上げます」ドサッ
「これは……む!?」
「金…か?」
花陽「はい」
私が渡すものは、お金。単純であり、この人達に必要なもの……
花陽「このお金差し上げますので、もう盗賊なんてやめてマジメに働いてください」
「は……?」
「俺らに働けって?」
花陽「そうです。盗賊なんてやっても何もいいことありませんよ。人に恨まれるだけです」
そしていつかその行いは自分に返ってくるんです
決して良い事にはなりません。みんなを見ていればよくわかります
花陽「誰かに想われるなら、もっとステキな想いのほうがいいですよ」スッ
「……ん?」
何かに憧れる、純粋な夢を描く想いのほうが、きっと生きていても楽しいと思います
夢中になれるものがあれば……
花陽「あ……そうだ」
「まだなにかあんのか?」
いつかやる予定……そのうちできたらいいかなっていう願望……
ううん、言葉にして、やる事を決めちゃう方がきっと話は進むと思います
花陽「今度スクールアイドルのライブをします。よかったら見に来てください」
「あ? なんだって?」
「巣食う……なんだ?」
花陽「スクールアイドルです! そのうち告知もしますから、どこかで見かけたらぜひ……」スッ
言っちゃいました。日時も場所も決まってないけど、告知するって言っちゃいました
これで出来ませんなんて言えなくなりましたっ!
まぁ何のことかよく伝わってないと思いますけど、とにかく前に進まなきゃです!
花陽「遊びに来てくださいね」ニッコリ
おつです
グラブルコラボのストーリーとこのスレがダブるわ! -夕方
盗賊達の拘束を解き、歯向かうのも無駄だというの理解してもらってからお家へと借ります
家の前ではソラくんの特訓がまだ続いていました
「はぁ、はぁ、ったく……まだやんのか…?」
ソラ「まだまだ……勝つまでやるっていっただろっ!」グッ
花陽「わぁ……」
アヤ「お帰り。こっちはご覧の通りよ」
花陽「ずっとやってるんですか、二人とも?」
アヤ「そうなの。あ、あのコンポってやつは中に運んでおいたから」
花陽「ありがとうございます」
ソラくんと盗賊さんはずっと訓練という名の勝負を続けていました
さすがに年季が違うのか、実力はあきらかに盗賊さんのほうが上
しかし若さゆえの気力、体力はソラくんのほうがあったようです
「いい根性してんじゃねーか、ボウズ……ふぅ」
ソラ「おっさんこそ、へばってんじゃないのか?」ダッ
「うるっせー」ガッ
お互い手にしている木刀もすでにボロボロ……ずっと打ち合ってるんですね
アヤ「ソラー、もうじき晩ご飯だよー?」
ソラ「わかってるよ〜っ!」ブンッ
「そらっ!」ガッ
どうやら私の読み通りのようですね……というか、凛ちゃんの読んでた漫画の通りといいますか…
「ほらっ、また足が止まってんぞー!」ガッ
ソラ「うわっとっ…くぅ、もっかいだ!」ザッ
なんだかちょっと楽しそうにも見えます。男の子ってよくわかりません
フワ「おかえりなさい。話は終わったの?」
花陽「ただいま。はい、聞きたい事はだいたい…」
おかげでアイドル活動のためのハードルが少しあがりましたが……
フワ「晩ご飯の前に、あっちに顔出すんでしょ?」
花陽「あっち……ああ、はいっ!」ハッ
フワ「………ちょっと忘れてたでしょ?」
花陽「考え事が増えたので……はい」
そういえば夕方頃に行くと言ってありました。危ない危ない…
花陽「まだスキル使えるほどお腹空いてないし、今日も晩ご飯は一緒ですかねぇ……」
フワ「……そう」
花陽「……………」
なんだかそわそわしているような……んん?
花陽「私ちょっとあちらへ行ってきますけど、フワちゃんも行きますか?」
フワ「えっ? わ、私?」
花陽「はい。向こうのアルパカさんとお話しでもどうかなっと…」
フワ「べ、別に私はあんなの興味ないんだけどー?」
花陽「……………」
フワ「まぁ花陽ちゃんが一人でむさくるしい男達のところに行くのが不安だっていうなら、ついて行ってあげてもいいけど?」
花陽「……………」
フワ「………」
花陽「………」
フワ「ごめん、行きたい」
花陽「はい、行きましょう♪」
まぁ……もしかしなくても、そうなんだね
フワちゃんも女の子です。ここは陰ながら応援しましょう!
ん、そういえばクリエイトに交配設定とかいうのもあったような……あれってどういうのだろう?
花陽「ま、必要ならその時にって感じかなー」
フワ「どうかしたの?」
花陽「ううん、なんでもないです」
あんまりこっちから弄るのもあれですし、温かく見守りましょう
花陽「フワちゃん、背中乗ってもいいですか?」
フワ「ん、いいわよ。はいっ」スッ
なんとなく、今のうちにモフっておきたくなりました
盗賊さん達は昼間と同じ場所で談笑していました
見た感じ、決めるべきことは全部決まったのかな
花陽「みなさーん」パカラッ パカラッ
「お、ハナヨさん」
「お帰りっす」
「ふお、それ、背中に乗れるんか?」
フワ「女の子限定よ」
「姉御〜」
雇うと決めたからというのもありますが、私の側についてくれた人達は基本明るい方々です
フワちゃんや他の子達と仲良くしてくれるのも嬉しく感じます
そして…あのアルパカさんも……
「ん、戻ったか……」
花陽「え………?」
アルパカさんは程よい大きさの岩に腰掛けて寛いでいました
アルパカが……椅子に座るかのように……胡坐をかいて……寛いでいますっ!
花陽「……………プフッ」フルフル
「どうかしたか?」
花陽「い、いえ……クク……」
フワ「笑われてるわよ、あなた」
「?」
花陽「あ、いえ…ごめんなさい。見た目の愛らしさとその声のギャップが…フフ」
どうしよう、すごく可愛い……でも大人の男性なんですよね……
花陽「はっ、もしかしてこれがにこちゃんがよく言ってたギャップ萌えというやつでしょうか!?」
フワ「ただ不格好なだけよ」
「お、これって俺らもギンに乗れるってことか?」
「必要とあらば乗せるのは構わないが……」
花陽「ん……ギン?」
「ああ、この人っつーかアルパカ?の名前っす。色々候補あがった中で本人に決めてもらいやした」
オスのアルパカさん、名前はギンさんということになったようです
渋いですね〜
ギン「そういうわけだ、以後よろしくな」
フワ「ん……フワよ。まぁ、よろしく」
花陽「うんうん。なんだかお似合いですっ」
「それと、言われてた家のデザインってやつなんだが……」スッ
花陽「はいはい。ん、これですか……?」
「よく考えるまでもなく、俺らに絵心のあるやつなんざいなかったからな。適当に屋根と窓と車輪だけつけたぜ」
紙に描かれていたのは子供のラクガキかと思うほど線の崩れた馬車……のようなものの絵
これでイメージしたらホントにこういうのが出来上がってしまいそうです
花陽「んー……これは却下です」
「そうか……。デザインなんて誰もやったことねぇからな。難しいもんだ……」
花陽「仕方ありません、ここは私達でなんとかしましょう」
「すまねぇな……」
内装とかは基本うちのと同じで問題ないと思いますが……
花陽「あの、もしかしてみなさんわりと不器用だったりします?」
「全員刃物の扱いには自信あるぜ?」
花陽「……………」
↑の一行目訂正
「それと、言われてた家のデザインってやつなんだが……」スッ
花陽「はいはい。ん、これですか……?」 日曜大工的なノリでやってくれる……かな?
ステージ作りをお願いしようと思っていましたが少し不安になってきました
花陽「それも練習ですかねー」
フワ「家もそうだけど、今日はこれからどうするの?」
花陽「みなさんを正式に雇うので、これからみんなであちらへ行きましょう」
「あんまり歓迎はされてねぇようだが……」
「無理もないわなー」
花陽「そうですけど、これから先もずっとこの調子なのも困るので、無理やり打ち解けろとはいいませんが、話くらいはできるように、お願いします」
「俺らはハナヨさんに従うって決めたからな、命令されればなんだってやるぜ」
……命令は、できればしたくないですねぇ
-夜 馬車 1F
花陽「ただいまー」ガチャ
ユリカ「ハナヨちゃん、お帰りなさい!」
アイナ「お帰り、ご飯の用意できてるよ」
アヤ「もう食べる?」
花陽「あ、いえ…この後スキルを使いたいのでそれの後で頂きます」
スズ「それではお茶だけでも淹れますね」
花陽「ありがとう」
さて、どうやって切り出そうかな……
花陽「…………あれ?」
花陽「そういえばソラくんと一緒に特訓してた人は?」
アヤ「ああ、あいつなら……」
ドタドタドタ… ガチャ
ソラ「よっし、ご飯食べたらもうひと勝負!」
「風呂はいったばっかだろーに、またボロボロんなるぞ?」
ソラ「いつまでもやられたままでいるかっ」
花陽「………え?」
ユリカ「二人とも泥だらけだったので、一緒にお風呂に入ってもらってました」
アイナ「なーんか、ソラのやつが妙に懐いちゃってね……」
アヤ「………ふん」
花陽「あらまぁ……」
期待していたことではありますが、まさかユリカちゃん達がお家にあげるのを認めたのは意外でした
これなら外で控えてる問題もスムーズにいくかな…?
花陽「そういえば子供達は?」
ユリカ「スズと一緒に二階で音楽を楽しんでますよ。ご飯になったら呼んでと」
アイナ「音楽って確かにいいものだけど、わたしらの中で一番ハマってるのはあいつらだねー」
アヤ「わたしももう一回聴きたい曲あるのに、すっかり占領しちゃってて…」
アヤちゃんが気に入った曲ってどういうのだろう。ちょっと気になります
花陽「でも丁度いいかな。ちょっとみなさん外に来てくれますか?」
ユリカ「ん、はい」
花陽「ご紹介したい方々がいますので」
-馬車外
状況的に私の話はみんなわかっていると思いますが、ギンさんも含めて正式にご挨拶です
花陽「みなさーん」
ザッ ザッ ザッ
「うす……」ザッ
「ども」ザッ
ギン「…………」
ユリカ「あら、あの方は……?」
アイナ「フワさんがもう一人?」
アヤ「可愛い……」
花陽「こちらは男性陣のお世話兼馬車を引くために来ていただいた、アルパカのギンさんです」
ギン「よろしく……」
ユリカ「っ!?」ドキ
アイナ「渋っ」
アヤ「えー……」
反応が様々でおもしろい……
花陽「ギンさん、それにみなさん。こちらが私の仲間…というか家族同然の方々です。仲良くしてくださいね」
「わかりやした」
「後ろにいるのは足を負傷してますんで、そのままで失礼しやす……」スッ
「………」ザッ
「………」ザッ
花陽「……え?」
お互いにちゃんと挨拶をして、今後とも仲良くやっていければという話をしようと思っていたのですが…
「先日の無礼、改めてお詫び申し上げたい……どうかこのとおり……」スッ
花陽「…………」
盗賊さん達が皆、膝をついて頭を下げます
これは……昨日の襲撃に関する謝罪……
ユリカ「はい……わかりました。どうか頭を上げてください」
アイナ「結局こっちはほとんど被害なかったし、いいんじゃない」
アヤ「私を襲ったムカつく奴は……いないか。ならいいわ」
花陽「……………」
フワ「どうかしたの?」
花陽「いえ……なんでも……」
私はみんな仲良くしてもらおうと間に入り中継役として手を回そうとしていました
だけど、一番大事な事を忘れていたのです
やった事、起こした事への謝罪……この一番大事な部分を私はうやむやに済まそうとしていました
自分がいればみんな強く言えないとか、立場を強調してばかりでみんなの気持ちを考えていませんでした
フワ「誰もそんなとこまで気にしてないわよ」
花陽「…………」
フワちゃんにはお見通しみたい
なんだかすごく……
花陽「恥ずかしいです……」
フワ「花陽ちゃんなりにみんなをまとめようとしたじゃない。その気持ちはみんなに伝わっているわよ」
ユリカ「まぁ、ギンさんと仰るんですね、ステキなお声です…」
アイナ「ホント渋いなー…おいくつなんですか?」
ギン「今日生まれたばかりなんでな……」
アヤ「あはは、おじさんおもしろーい」
ギン「おじ……」
勇者という特殊な立場にいつのまにか慣れてしまってたんですね
みなさんのおかげで、人としても初心に戻ってがんばろうと、そう思いました
乙です
毎日更新は嬉しいけどグラブルコラボちゃんと回るのならがんばるんやで 道徳や倫理感の描き方というかバランスがなんか好きだな -夜
ユリカちゃんが男性陣を家に招いて晩ご飯にしましょうという提案を、彼らは断りました
「嬢ちゃん達の申し出はありがたいが、こんなおっさん達で女子の聖域を汚すわけにはいかんよ」
「そういう事。風呂ありがとよ」
ソラ「明日もまたやろうな、おっちゃん!」
「ったく、マジで疲れ知らずだな…」
昨日と同様、馬車の外でご飯を食べるという事だそうです
この国に季節があるのかどうかはわかりませんが、夜は比較的暖かいです
日本でいうと、春あたり?
おじさん達が焚火を囲い晩ご飯を食べている間に私に出来る事をやりましょう
花陽「いい具合にお腹も空いてきたし……」
最初こそみんな私に気を使って静かにご飯を食べていましたが、今ではもうそんな気遣いも無用と理解してくれました
リホ「えっ、フワちゃん増えたの!?」モグモグ
パイ「見たい!」グモグモ
アヤ「増えたといえば…増えたのか……」パクパク
アイナ「ご飯食べながら大声だすなよー、飛んでくる」
エミ「あの方々のお目付け役という事ですか?」
花陽「ううん、新しい仲間として来てもらったんだよ」
そしてあの人達の住むお家を今……
ヨシノ「ふんふ〜ん、ふふ〜♪」
ヨシノちゃんがデザイン中です
寝ころびながらおかずを口にし、鼻歌まじりにお絵かき……
てっきりユリカちゃん辺りが躾として注意するかなとも思いましたがー……
ユリカ「あむ……おいしいわね、これ」サッサッ
アヤ「んふふ、でっしょ〜?」
特に何も言わない。おそらくヨシノちゃんがお絵かきしている理由を知っているからでしょう
つまり、はやくお家を作らないと私がご飯を食べられないのですっ!
花陽「ホントに絵が上手だね〜ヨシノちゃん」ナデナデ
ヨシノ「えへへ♪」
予定としてはこの後おじさん達のお家を作ってからご飯を食べてお風呂に入って……
エミ「……?」
花陽「………」
エミ「?」ニコッ
花陽「………っ」ドキッ
エミちゃんに歌を教えてあげる約束をしています
……けど、その時に少し話を聞いて見ようと思います
そして、できれば一緒に歌を……アイドルをやりませんかと、勧誘してみるのです
ヨシノ「出来たのっ」バッ
花陽「はやいねー。どれどれ……」スッ
ヨシノちゃんデザインの馬車と言う名の動く大きな家、二号
この家と同じような羽が生えてますけど、こっちは黒を基準にして全体的に大人の雰囲気です
思いのほかちゃんと細部まで拘っていて、少しボーっとしながら無難なデザインにするのかなと考えていたのを訂正します
リホ「リボンついてないよー?」
ヨシノ「ハッ!?」
アヤ「いらないでしょー男くさいところに」
パイ「リボンは誰でも可愛くなれるよ?」
スズ「うーん……さすがにちょっと……」
色々意見はありましたが結局リボンは無しという方向に決まりました
私も無しに1票いれたのは言うまでもなく……
……そして、新しい馬車が完成しました!
キラキラキラ…… デーーーン
「こりゃ…‥すげぇ……」
「そこらにあったただの石ッコロが……」
「ハナヨさん、アンタ一体何者なんだ?」
花陽「ふふ、慣れたとはいえ、すごい光景です」
「ここに俺らが住んでいいんですかい?」
花陽「はい」
「「うおおおお」」
外観こそ違いますが、中の設備などはほぼ同じはずです
私のイメージがこれ以外を知らないので……
花陽「中にあるものの説明をしますね」
「お前が入ったって言う風呂はあるのか?」
「あるんじゃねーかなー」
「どれどれ……」
ギン「俺はこの家を守ればいいのだな…」
花陽「家だけじゃなく、みなさんと協力して、出来ることはやってあげてください。そのための能力はさっき設定しておいたので」
とりあえず上げられる数値はフワちゃん同様に最大値にしておきました
これで防犯対策も大丈夫でしょう
花陽「あ、それと……」
「……ん?」
家にはそこに住む人達のルールがあります
それはここにいるみなさんでやっていってもらいましょう
花陽「こっちの……ええっと……」
どっちも呼ぶときは家だったり、やけに大きい家のような馬車とかなので、わかりやすい別呼称が必要です
花陽「取り敢えず、こっちを男子寮、向こうを女子寮としておきましょう」
「男子っていうか、おっさんだらけだけどな」
花陽「取り敢えずですよ。それでここの管理と細かいルールはあなたにおまかせしますね」
「まぁ、これでも元副団やってたんだ。なんとなくそうなるとは思ってたぜ」
みんなこの人についてこちら側に来てくれたのです。この人の言う事なら素直に聞くでしょう
花陽「それともう一つ。今後一切、悪い事は禁止ですよ?」
「ハナヨさんの不利益になるようなマネはしないさ……安心してくれ」
利益があるならいいってものでもないんですが……ま、そこはしばらく様子見で
家の設備、特に台所とお風呂、トイレの説明をざっくりとし、私は女子寮に戻りました
ようやくご飯が食べられます……
フワ「おかえりなさい」
寮の前ではフワちゃんがいつものくつろぎモード
懐でモフモフしているリホちゃんはお休みのようです
花陽「ただいまー」ガチャ
お家の中ではヨシノちゃんがソファでゴロゴロ…
アヤちゃんとソラくんがお茶を飲みながら楽しくおしゃべりしています
他のみんなは二階かな?
トタタタ…
エミ「おかえりなさい、ハナヨちゃん」タッ
花陽「ただいま、エミちゃん」
私との約束があるから待っててくれたのかな?
歌を覚えるの、楽しみにしてくれていたんですよね
私もそんなエミちゃんと楽しく歌いたいから………もう目を背けちゃいけない、大事な話をしましょう
-女子寮 屋上
エミ「今日も星が綺麗ですね…」
花陽「そうだねー。この世界は空がとても綺麗です」
エミ「ハナヨちゃんの国ではどんな星が見えるのですか?」
花陽「んー。私は自分の国から見た空しか知らないけど、外国にはもっとたくさんの星が見える地域もあります」
エミ「外国ですか……」
花陽「遠くてそう簡単に行けないんですけどね…」
エミ「遠い……そうですね。やっぱり自分の国から出るのって、大変なんですね」
花陽「…………」
エミ「…………」
トントントン… ザッ
ユリカ「おまたせしましたー。夜は少し冷えるので温かい紅茶をお持ちしました」トンッ
花陽「ありがとう」
エミ「ありがとうございます」
二階では子供達がコンポから流れてくるクラシックを聴きながら静かに眠っているのでお話しの場所を屋上にうつしました
エミちゃんと歌の話をするのとは別にするお話しのために、ユリカちゃんにも同席してもらいました
ユリカ「何のお話しをしていたんですか?」カチャ
エミ「ハナヨちゃんの世界の星空の話です」リン
花陽「こことそんなに変わらないのって、やっぱり異世界にも宇宙や他の星があるからなんですかね」
ユリカ「あまり意識した事はありませんが、そうかもしれませんね」
エミ「異なる世界とは異なる宇宙も存在するということですね。興味深いです」
エミ「あの、ハナヨちゃん。さっそくで申し訳ないのですが、昼間に言っていた話を……」
花陽「うん、そうだね。えっと……まずはこれ…」カサッ
さっきヨシノちゃんが絵を書いてる時にさらっと書いておいた、スノハレの歌詞
まずはこれを見て全体の曲のイメージを見てもらいましょう
エミ「……………」
花陽「その曲はね、みんなでラブライブ優勝を目指していた時に……」
エミ「あの、すいませんハナヨちゃん……字が読めないので、内容を理解できません」
ユリカ「これはハナヨちゃんの国の字ですね」
花陽「………あ」
そういえばスキルのおかげで当たり前のように会話したりしていたので失念していました
花陽「言葉や歌にすると思うままに伝えられるのに、文字だと無理なんですね……」
エミ「…………」
ユリカ「それにしても、複雑そうな文字ですねー……」
いきなり躓いてしまいました。さて、どうしよう……
エミ「あの、ハナヨちゃん。よかったらこの歌詞の内容を教えてくれませんか?」
花陽「え…でも言葉が…」
エミ「覚えます! そしてできるだけハナヨちゃんの国の言葉で歌ってみたいのです」
ユリカ「ハナヨちゃんの国の言葉ですか。それは確かに聴いてみたいですね」
エミちゃんの真っ直ぐな視線と言葉がすごく嬉しく思います
これはこちらもその想いに答えないといけませんね
花陽「それじゃ、エミちゃんも紙とペンを用意して」
私自身もこの世界の文字は読めないけど、もしも読むことが出来たらもっとたくさんの事を知れるのかな
花陽「ここまでが一文で、歌だと……この部分まで」
エミ「なるほど……ふ、し、ぎ、だ、ね……い、ま、の、き、も、ち……」
ユリカ「こうして文字にするとまた違った印象を受けますね」
花陽「詩や作文と違って歌の歌詞はリズムをとっていますからね」
エミ「それで全体的に見ても統制がとれているように見えるんですね」
この世界には俳句のようなものはあるのかな?
文字で気持ちを……言葉で歌を……
あたりまえのようにある想いを伝える方法。想いを感じとれる方法
それがないというのを考えた事がありません
花陽「……漫画とかテレビも……ないんだよね」
ユリカ「……ふふ、歌詞のこの部分、はじめてハナヨちゃんに出会った時の事を思い出しますね」
花陽「はじめて……あぁ……そうですね」
私は気が付いたら見知らぬ神殿のようなところに立っていて、ユリカちゃんに声をかけてもらいました
あそこで一人ぼっちだったら、きっと今でもあそこで蹲っていたかもしれません
花陽「…………?」
あれ、そういえば私、あそこに召喚される前って何してたんだろ?
凛ちゃんと一緒にいたのはうっすらと覚えているのに……
エミ「ハナヨちゃん、この部分は……」ササッ
花陽「あ、うん。ここはね……」
たぶん、下校途中で突然……だったのかな
凛ちゃんきっと驚いて、心配してるだろうな……
エミ「と〜ど〜けて〜切なさ〜には〜♪」
ユリカ「名前を〜つけよう〜ぅかー♪」
「「スノーハレーション〜♪」」
花陽「………………」
エミ「……あ、今声が重なってなんだかすごくいい感じでした」
ユリカ「そうですね、歌って実際自分で歌うとその良さがわかります!」
驚きました……エミちゃんもだけど、ユリカちゃんも綺麗な歌声
それに覚えるのも早くて……みんな賢いなぁ
エミ「これ、三人で歌ったらもっと楽しくなると思いませんか?」
ユリカ「ふふ、リホちゃん達がずっと一緒に歌っている楽しさ、わかったような気がします」
花陽「ホントはね、この曲は九人で歌っていたんです」
エミ「そうなんですか? そんなにたくさん同時に同じように歌えるのってすごいですね」
花陽「うん。そのための練習をみんなするんだ。毎日、毎日……」
ユリカ「それが以前におっしゃっていた、アイドル活動なのですか?」
花陽「それだけじゃないよ。ダンスの振付を考えたり、衣装を考えたり。それをみんなで形にしていくの」
エミ「1つのものをみんなで作る……それがアイドル……」
花陽「正確には、スクールアイドルだよ」
ユリカ「それはアイドルと何が違うのですか?」
アイドルとしての活動やその意義はきっと同じです
だけど決定的に違うのは、スクールアイドルはスクールアイドルによって創られるものだという事です
エミ「良く分かりませんが、自分達で自分達を創る……?」
ユリカ「どういう意味でしょうか?」
花陽「スクールアイドルは、繋がっていくんです。みんなどこかのスクールアイドルに憧れて、自分もこうなりたいって願って…」
自分達がスクールアイドルを辞める時がきても、今までの自分達の姿を見て、きっとどこかで自分もなりたいと思ってくれている
そうしてスクールアイドルの想いは伝わっていく……私がスクールアイドルに憧れたように
それは、とてもステキな事だと私は思います
エミ「想いは伝わる……」
ユリカ「すごいですね。そんな存在がハナヨちゃんの世界にはあるのですね」
花陽「きっと、この伝わる想いに世界は関係ないのだと思います」
音楽を楽しいと感じてくれた。歌うことの喜びもわかってもらえた
私達は、何の違いもありません
花陽「だから、みんなで一緒にやりませんか? スクールアイドル!」
エミ「私達が……」
ユリカ「スクールアイドルを?」ドキッ
花陽「はい。正直ずっと思っていました。みんながアイドルのステージに立ったらどんなにステキだろうって」
エミ「……………」
ユリカ「で、ですが私達はハナヨちゃんのために召喚術を学ばないと……」
花陽「それはわかります。でも、スクールアイドルは人生すべてを捧げるものじゃありません」
みんなそれぞれが未来を見つめて動き出す大切な時期
その限られた時間の中で輝くからこそ、スクールアイドルはどこまでも本気になれるんです
花陽「私はそのために帰るのが遅れるのも、いいかなって思っています」
ユリカ「ハナヨちゃん、それは……」
花陽「ユリカちゃんには前に言ったと思いますけど、私は私自身のできることでみんなを助けたいんです」
エミ「…………」
もらったスキルをただ使うだけでいいのなら、きっとそんなのは勇者でもなんでもない、ただの便利屋さんです
この世界に召喚された意味を、ちゃんと私自身が納得する容で残さないと、
今度はそのせいで私は元の世界に帰れないと思います
花陽「私はみんなにアイドルのステージを見せてあげると言いました。でも……」
エミ「…………」
花陽「それは一緒にステージに立つという意味でも同じです。そして私はみんなとやりたいと思っています」
ユリカ「ハナヨちゃん……そこまでして……」
花陽「それにこれからユーディクスへ行くのなら、その国の人達にも見て欲しいと思います。アイドル!」
ユリカ「わかりました、やりましょう!」
花陽「あれ、意外にあっさりと……」
ユリカ「ハナヨちゃんの言う通り、歌はいいものだと思います。それをハナヨちゃんと一緒にやれるのはきっと楽しいと思いますから」
花陽「もちろんです!」
ユリカ「それにこの曲、9人で歌っていたと言ってましたよね?」
花陽「はい。私とスクールアイドルの仲間とで……」
ユリカ「じゃあ私達も負けてられません! こっちも9人で歌いましょう!」
花陽「……ええっ!?」
ユリカ「私とエミちゃん、それに子供達の3人。ハナヨちゃんにスズ……アイナとアヤも誘いましょう!」
花陽「やってくれますかねぇ……?」
なんとなくですが、スズちゃんとアヤちゃんはどうなんだろう……もちろん一緒にできたら楽しいと思いますが
エミ「…………」
ユリカ「そこはまかせてください、やらせて見せます!」
花陽「そんな無理やりやってもらっても楽しんでもらえないですよ……」
ユリカ「大丈夫です、そこは……」
エミ「あ、あのっ……」
花陽「……ん?」
エミ「ごめんなさい……私、歌は歌いたいです…でも……」
さっきまでの楽しい雰囲気を微塵も感じさせないエミちゃんの様子
ついにこの時が来たのです。慎重に話を進めましょう……
花陽「もしかして……人前で歌うのは嫌……ですか?」
エミ「…………」
ユリカ「そうなのですか?」
花陽「人に……見つかるとダメ……なんですか?」
エミ「ハナヨちゃん!? どうしてそれをっ!?」ビクッ
一つだけ気がかりなのは……
私の思う流れでは一度もスキル「それ正解!」が発動してくれないという事です……
続くー 週末お出かけするのでまた少しお休みします。週明けに……
なんだか長文だと書きすぎだよと出るようになってきたョ おつおつ、スクールアイドルらしさを感じる展開が楽しいね
次スレを立ててもいいのでは ユリカ「…………二人とも、どうかしたのですか?」
私とエミちゃんが急に黙ってしまったからユリカちゃんが心配しています
こんな雰囲気のまま話をするのも嫌なので、空気を重くしないようにしないと…
花陽「なんでもないですよ、ただエミちゃんがアイドルをするのに問題があるのなら……」
エミ「ハナヨちゃんは、どこまで知っているのですか?」
花陽「えっ……?」
エミ「あの事故の事も知っていて……はっ! だからここにユリカちゃんを!?」
ユリカ「え?」
花陽「あの、エミちゃん……?」
なんだか様子が……というよりも、追加で新しい情報が……
エミ「そうでしたか……だからハナヨちゃんとユリカちゃんに繋がりがあったのですね……納得です」
ユリカ「あ、あの…エミちゃん何を言って……」
エミ「ということは……ユリカちゃんも知っていて?」
花陽「……………」
どうやって話を進めるかというよりも、どうやってこの子を止めようかと考えます
このまま放置しておくとどこまで話が広がるんだろうとも思いますけど、こっちが置き去りなのは困ります
花陽「エミちゃん、落ち着いてください」
エミ「………私がここに呼ばれたのは……そういう理由からだったのですね……」
花陽「落ち着いてください」
エミ「……でも……私、本当にこの曲……歌が好きなのです。歌ってみたいと思ったのは本当で……」
花陽「…………」
ゴツン!
エミ「ひゃいっ!?」
花陽「落ち着きなさいっ!」
誰もそんな事言ってません。アイドルを好きだと言ってくれるこの子の言葉を、私は微塵も疑ってなんていません
それを勝手に否定されたようで、なんだか頭にきて手がでてしまいました
でもこうでもしないと治まりそうになかったと思いますし、少し心は痛みますが致し方なし……と、いうことで
エミ「ぁぅぅ……」ジーン…
ユリカ「いいゲンコツです、ハナヨちゃん」グッ
花陽「そこを褒められても……」
とりあえずこちらの話を聞いてもらわないと……
花陽「叩いちゃってゴメンね。でもエミちゃん全然話聞いてくれないから……」
エミ「でも……話って……私の……」
花陽「勝手に話が進んでいましたけど、私はほとんど何も知りませんよ?」
エミ「えっ!?」ドキ
ユリカ「なにか私の事もでていたようですが、どういう事でしょうか?」
私とユリカちゃんの言葉を聞いてエミちゃんが数秒固まります
そして状況を理解したのか、顔を真っ赤にしていきます。可愛い……
エミ「は、恥ずかしいです……」
ユリカ「エミちゃんがあれだけ取り乱すなんて初めて見ました」
花陽「落ち着いて少し達観した印象でしたけど、子供らしい一面ですね」
もちろんイイ意味としてです。みんな可愛いですね
花陽「ユリカちゃん、紅茶のおかわりお願いしてもいいですか?」
ユリカ「はい、すぐに用意してまいりますっ」シュタッ
エミ「…………」
花陽「大丈夫ですか?」
エミ「あ…はい。すいません、御見苦しいところを……」
花陽「落ち着いてからでいいので、ゆっくり話してもらえますか?」
エミ「……はい」
花陽「あと、別に問い詰めるとか、そういった事では全然ないので、気を楽にしてくださいね」
エミ「………」
エミちゃんがそのまま黙り込んで数分が経過し、ユリカちゃんが戻ってきました
ユリカ「ふふ、結局下ではみんな音楽を聴きながら眠ってしまったようです」
花陽「あの子達、クラシックに辿り着くとはさすがです」
まぁそのせいで眠っちゃったとは思いますけど…
ユリカ「はい、紅茶をどうぞ」カチャ
花陽「ありがとう」
エミ「………ありがとう、ございます」
ユリカ「あとお茶請けも用意しましたっ」ササッ
花陽「おー」
エミ「…………」
ユリカ「さすがに温かいといってもずっと外にいるのならと毛布も用意しましたっ」バサッ
花陽「さすがですっ」
エミ「…………」
ユリカ「さ、これでお話しする体勢は万全ですっ! 聞きましょう!」ザッ
花陽「はは……」
若干テンションがおかしいというか、話の内容がもしかしたらとても重いものかもしれないと、気が付いているのかな
エミ「まず最初に言い訳をさせてください」
花陽「ん?」
ユリカ「言い訳って…エミちゃんが何かしたのですか?」
エミ「何もしていません……いえ、もう忘れて生きていくようにしていました」
花陽「……?」
エミ「でもそれは、決して逃げたわけではなく……歴史から私達の存在を消すにはそうしたほうがいいと、あの方に言われて……」
んー……話の流れが掴みにくいです。というか、順を追って説明してくれないと意味がわかりません
ユリカ「エミちゃん、さっきも言ったけれど、私もハナヨちゃんもよく状況が呑み込めていません。最初からお願いします」
エミ「……ごめんなさい。落ち着いたつもりでしたけど、やっぱりまだ動揺しているんだと思います……」
花陽「じゃあこうしましょう。私達からいくつか質問していくので、ゆっくりでいいからそれに答えるというのは?」
ユリカ「尋問形式ですね」
花陽「あ、いえ…そんな重いものでは……」
エミ「はい、それでお願いします……」
花陽「尋問じゃないからね? もっと気を楽に、ね?」
もう、ユリカちゃん……けっこう言葉がきつい時があります
ユリカ「それではまずお尋ねしますが……」
エミ「…………」
ユリカ「エミちゃん。あなたは何者ですか?」
エミ「私の本当の名前は、エレミアと申します」
花陽「エレミア……ちゃん?」
ユリカ「エレミア……どこかで聞いたような……はっ!?」ガタッ
エミ「クレスタリア王国王位継承権第11位……この国の、元王女です」
花陽「…………お」
ユリカ「思い出した。確か王族の一番遠い筋の……」
エミ「そうです。肩書としてはありますが、ほとんど意味を持ちません」
ユリカ「でも確か戦争が始まる前にほとんどの王位継承者は行方不明になったり死去したりと……」
花陽「え……」
すごく物騒な話に……
でもやっぱりエミちゃん、高貴な人だったんですね
エレミア・クレスタリア……それがエミちゃんの名前
エミというのは偽名だったんだ……
エミ「偽名というと少し違います。私に新しく名前をくださった方がいたのです」
ユリカ「名前を……新しくというのはどういう意味ですか?」
エミ「私に国の事は忘れて新しい人生をと、道を示してくださったのです……」
ユリカ「………それは、誰ですか?」ズイッ
ユリカちゃん?
エミ「………それは……」ジ…
ユリカ「………まさか……お父さん……?」
エミ「……………」コクッ
お父さん……ユリカちゃんのお父さん?
ユリカ「どうしてっ!?」ガタッ グッ
エミ「……っ!」
花陽「ユリカちゃん!?」ガッ
ユリカちゃんが突然エミちゃんの肩を掴むと強く揺さぶる
慌てて止めますが、ユリカちゃんの様子がおかしいです
やっぱりお父さんの事だから?
ユリカ「どうしてお父さんがエミちゃんに……?」
エミ「それは……私があの方の実験に…被験者として選ばれていたからです」
ユリカ「実験って……それはいつの話ですか?」
エミ「去年の春先のことです」
ユリカ「………っ!」
ユリカ「それじゃ、お父さんがお城に呼ばれたのって……」
エミ「はい……例の魔導兵器の実験と開発のためです」
ユリカ「そんな………ウソでしょ……」カクッ
花陽「……………」
去年何かあったのでしょうか……ユリカちゃんがすごく動揺しています
ユリカ「それじゃあの事故って……お父さんの……」
エミ「それは違いますユリカちゃん! あの方の実験は成功しています! すべて私達王家が悪いのです!」
ユリカ「じゃあどうして……戦争になんて……」
エミ「それは………」
エミ「私は魔法の素質があったので実験に使われていただけで良く知りませんが、上の姉さま達があの兵器を軍事運用しようとしていたのです」
ユリカ「軍事……それではあの事件は?」
エミ「はい……。兵器を悪用し、隣国との開戦のきっかけにしようとしていました……」
ユリカ「なんてバカな事を……」
エミ「あの兵器はあの方の調整下と、私以外には扱えない仕様になっているのをあの人達は知りませんでした」
ユリカ「それって……」
エミ「おそらく暗躍に気づいたあの方がそうしてくれていたのだと思います」
花陽「…………」
どうしよう……お話しについていけません……
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています