鞠莉「いとつきづきし」
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鞠莉「おはよう、曜」
曜「おはよう、鞠莉ちゃん!今日も寒いねー」
鞠莉「手袋、マフラーにニット帽。今日はかなりの重装備ね」
曜「寒いからね!」
鞠莉「モコモコしてて、まるでうちっちーみたい。ふふっ、曜は冬が似合うわね」
曜「え、そう?」
鞠莉「意外?」 曜「意外って言うか、寒いの苦手だし、自分では春か夏かなって思ってたんだけど」
鞠莉「冬の装いがよく似合うってこと。私は好きよ、良いと思うわ」
曜「そっか…鞠莉ちゃんがそう言うなら、そういうことで!」
鞠莉「ふふっ。寒さに負けず、今日も元気に行きましょう!」
曜「ヨーソロー!」 ……………………………………
帰り道、コンビニ
鞠莉「おでんも捨てがたいけど、冬といえばやっぱり中華まんよね」
曜「レジの横にあるから、つい食べたくなっちゃうよね。えっと、今あるのは肉まんとあんまんだけみたい。どっち食べる?」
鞠莉「んー。どっちも食べたいから、ちょっと選べないわね」
曜「となれば…すみません、肉まんとあんまん、ひとつずつお願いしまーす!」 アリガトウゴザイマシター
曜「迷ったらふたりで半分こ!基本だよね」
鞠莉「そうね。先にどっち食べる?」
曜「じゃあ肉まんから!」
鞠莉「なら私はあんまんね」
曜「いただきまーす。んっ、美味しい!」モグ
鞠莉「あつあつの中華まんを頬張るこの感じ…寒い季節ならではよね」モグ 曜「ねー。あっ。肉まんと言えば、この前ね――」モグモグ
鞠莉「へえ、そんなことが。あっ、今の話で思い出したんだけど――」モグモグ
曜「そうなんだ、さすが鞠莉ちゃん先生!ところで前から気になってたんだけど、肉まんって――」モグモグモグ
鞠莉「それは要するに、具材や形というよりも考え方の違いで――あっ」モグモグモグ
曜「どうしたの?」
鞠莉「…話すのに夢中で、半分こする前に食べちゃった」
曜「あっ。私も…」
鞠莉「…」
曜「…」 鞠莉「ふふっ、なにこの空気」クスクス
曜「えへへっ、予想外の展開にフリーズしちゃったね」クスクス
鞠莉「中華まん、どうする?」
曜「さすがに買いに戻るのもアレだよね。2個も食べたらお腹いっぱいになっちゃうし」
鞠莉「そうね。今日のところは諦めて、シェアはまた次の機会にしましょうか」
曜「今度は忘れずに、だね!」 ……………………………………
浦の星女学院、玄関
鞠莉「お待たせ。さ、帰りましょう」スッ
曜「う、うん」モジモジ
鞠莉「ん?手、繋がないの?」
曜「繋ぎたいよ?繋ぎたい…けど」
鞠莉「けど?」
曜「今日けっこう着込んでるから、私が触ったら、きっと静電気でバチってしちゃう」
鞠莉「そんなこと?気にしなくたっていいのに」 曜「鞠莉ちゃんが痛いのは嫌だもん」
鞠莉「あら、可愛いこと言って」
曜「本当のことだし…」
鞠莉「気持ちは嬉しいわ。でもね、静電気よりも、曜と手を繋げないことの方が私はヤだな」
曜「!」
鞠莉「マリーの右手が言ってるわ、ひとりきりじゃ寒くて寂しいって。だから、ね?」
曜「うんっ!えへへっ♪」スッ
鞠莉「うふふっ♪」スッ
鞠莉「アーウチ!!」
曜「いったぁ!?」 ……………………………………
コンビニ、夕方
イラッシャイマセー
曜「避難完了っと。うう、寒かったぁ…」
鞠莉「すっかり日課になっちゃったわね。コンビニ通い」
曜「一時避難だよ。寒さから逃れてパワーを蓄えるためのね」
鞠莉「うふふっ、物は言いようね」
曜「さてさて。今日は飲み物、何を買おうかなー」
鞠莉「毎日来てると、買うものに困っちゃうのよね」
曜「そうなんだよね。ローテーションの間隔が短くなるから、選ぶ時も『これ、この前飲んだばかりだー』ってなっちゃうんだよね」 鞠莉「ここはひとつ、定番から外れて違ったものにチャレンジしてみましょうか」
曜「違ったもの、っていうと?」
鞠莉「いつも飲んでるコーヒーやココア以外の飲み物で、体があたたまりそうなもの…例えば、これっ!」
曜「それは…甘酒?」
鞠莉「ええ。試してみたいんだけど、どうかしら」
曜「う、うん。いいと思うよ」
鞠莉「決まりね!この前テレビで甘酒特集を見てから、ずっと気になっていたの」
曜(…どうしてだろう。鞠莉ちゃんと甘酒の組み合わせ。おかしなところは何も無いはずなのに)
曜(なにか、すごく不安な気持ちになる…)
その後、鞠莉ちゃんがアルコールに弱いことが発覚して大変なことになりました。 ……………………………………
曜「鞠莉ちゃん…」
鞠莉「あらあら。どうしたのその髪型。あちこちハネて、随分とパンキッシュしちゃってるじゃない」
曜「ニット帽を取ったら、静電気でひどいことになっちゃって…」
鞠莉「なるほどね。それはそれで可愛いけど」クスクス
曜「可愛くないよ…まるで変身しそこねたスーパーサイヤ人みたいじゃん…」
鞠莉「その例えはよくわからないけど。ほら、直してあげるからこっち来て」 曜「でも、触ったらまた静電気が」
鞠莉「ちょっと我慢すれば良いだけよ。っ!」パチッ
曜「鞠莉ちゃん!」
鞠莉「大したことないわ。始めるわね…オゥ、これはなかなかハードね。全然クセが直らない」
曜「くせっ毛だから余計にひどくなっちゃうんだ。自分で直そうとしても思うようにいかなくて」
鞠莉「静電気をなんとかしないと難しそうね。丁寧に、しっかりとやってあげる…いっ」バチ
曜「あっ!」
鞠莉「平気よ。それにほら、だんだん髪が落ち着いてきた」
曜「ん…」
鞠莉「もうちょっと我慢してね」
曜「んぅ…」
鞠莉(目を閉じちゃって、気持ち良さそう)クス ……………………………………
沼津駅前
鞠莉「約束の30分前…さすがに早く来すぎたかしら」
曜「鞠莉ちゃーん!」
鞠莉「あら、噂をすれば…ん?」
曜「よっと、お待たせー!」
鞠莉「待ってはいないわ。今来たばかりだし、そもそも予定時間の30分前よ?」
曜「あ、そっか!えへへっ!」
鞠莉「今日は、メガネなのね?」 曜「うん!コンタクトをうっかり切らしちゃってさ」
鞠莉「ふーん」ジー
曜「ん、なに?」
鞠莉「メガネ姿も新鮮だなって」
曜「そうかなぁ。いつも部屋で見てるでしょ」
鞠莉「外出先でメガネ姿を見ることが、よ」
曜「ああ、それはそうかも。外ではあまりかけないからねー」 鞠莉「ということは、今日の曜は激レア中の激レア、メガネでお出かけバージョン!ってわけね」
曜「あははっ、レアだなんて大袈裟だよ」
鞠莉「新しい曜に出逢えたみたいで嬉しいの。とってもよく似合ってる。可愛いわ」
曜「わ…!」
鞠莉「さてさて。予定より早いけど、立ち話っていうのもなんだから、歩き始めましょうか」
曜(か、かわいいって言われた…)モジモジ
鞠莉「あれ、曜?」
曜「は、はいっ!?」 鞠莉「どうしたの、行きましょう」
曜「う、うん!」ギュ
鞠莉「あら。曜からだなんて珍しいわね」
曜「たまにはね!」
鞠莉「ふふっ。楽しい一日になりそうね」
曜「えへへっ!」 ――――――――
鞠莉「このお店、見てもいい?」
曜「うん!入ろう入ろう――うわわっ!?」
鞠莉「曜?」
曜「ご、ごめん。建物に入った瞬間、メガネが曇って」
鞠莉「寒暖差ね。外は寒いけど、お店の中はあったかいから」
曜「外でメガネするの久しぶりだから、完全に油断してたよ…」
曜(びっくりして変な声出しちゃった…カッコ悪い。メガネで来なきゃよかった…)シュン 鞠莉「ふーむ」ギュ
曜「わっ。ま、鞠莉ちゃん?」
鞠莉「メガネが曇ったままじゃ危ないでしょ?ちゃんと掴まって」
曜「!」
鞠莉「今日は私がエスコートね。さあ行きましょう、お嬢様?」ニコ
曜「は、はいっ…!」ギュ
曜(たまにはメガネも良いかな…えへへ)ギュー ……………………………………
曜「おはよーそろー…」フラフラ
鞠莉「おはよう。元気がないわね。どうかしたの?」
曜「なんでもないよーそろー…」
鞠莉「あなたがなんでもないって言うとき、大抵なんでもなくないのよね…ていっ」グイッ
曜「ひゃあ!?」
鞠莉「ふぅむ。服の下にカイロがいっぱい。原因はこれね」ゴソゴソ
曜「ん…鞠莉ちゃんから沢山もらったから、寒さ対策にと思って貼ってみたんだけど」
鞠莉「あいにく今日は小春日和だものね」 鞠莉「こんな日にカイロを使ったら暑くて当然よ。少し剥がせばいいのに」
曜「あはは。すぐ剥がしちゃうのも、なんだかもったいなくて…鞠莉ちゃんがくれた物だから」
鞠莉「しょうがないわね。なら」ペリッ
曜「あっ」
鞠莉「剥がしたカイロを自分に貼って、っと。これなら曜は暑くないし、マリーも寒くない。カイロも無駄にならないし、一石三鳥のグッドアイデアでしょ?」
曜「鞠莉ちゃん…!」パァァ
鞠莉「シェアありがとう、うふふっ♪」 ……………………………………
理事長室前、夕方
鞠莉「ふう…たまっていた仕事も、なんとかひと段落ね」ガチャ
曜「まーりちゃんっ!」
鞠莉「あら、曜?」
曜「お疲れ様!お仕事終わったの?」
鞠莉「ええ、やっと片付いたわ。曜はどうしてここに?」
曜「私もちょっと残ってたんだ。一緒に帰ろうよ!」 鞠莉「ええ、そうしましょう…っ!」ビク
繋いだ手は、驚くほど冷たくて。
いくら夕方で、今日は気温が低かったとは言え、こんなにも冷え切ってしまうなんて普通は無いはずだ。
きっと、廊下で私をずっと待っていてくれたたのだろう。冬の寒さと暗さに耐えながら…
曜「あれ、鞠莉ちゃん?」
堪らず手を引いて、小さな身体を抱き寄せる。
曜「わっ…!」
鞠莉「ありがとう。でも、次はこんな寒いところで待たないで」 ……………………………………
曜「じゃーん!モナカアイスだよ!」
鞠莉「じゃーんって、冬なのにアイス食べるの?」
曜「よく言うでしょ、寒いときこそ冷たいものを食べたくなるのが人のサガだって。はい、半分こ」
鞠莉「ありがと。けど、身体が冷えても知らないよ?」
曜「その時は鞠莉ちゃんが温めてくれるでしょ?」
鞠莉「ふふっ、言うようになったこと。あ、美味しい」
曜「美味しいよね!誰しもサガには勝てないんだよ。一緒に食べるならなおのことね」
鞠莉「ふーむ…確かにそのとおりかも」
曜「でしょ。えへへっ!」ニコニコ
曜「ざむい…」ブルブル
鞠莉「だから言ったのに」 曜「ま、鞠莉ちゃぁん…」ブルブル
鞠莉「はいはい、仕方ないわね」ハグッ
曜「ううー…」
鞠莉「これに懲りたら、冬のアイスはもう控えて…あっ」
曜「ん…?」
鞠莉「いえ、なんでもないわ」
曜「そう…?」
鞠莉「そうよ。ほら、もっと寄って」
曜「んぅ…」ギュ
鞠莉「マリーをカイロがわりに使うなんて、曜は幸せ者デース」ナデナデ
曜「えへへ…」ギュー
寒さに震える曜の身体をぎゅっとしたら、さっき食べたみかんの匂いがした。そんな冬の日 ……………………………………
曜「寒さのピークは越えたって感じだけど、まだまだ寒いねー」
鞠莉「そう、ね…」
曜「ん、鞠莉ちゃん?」
温もりが恋しくなるのは寒いからだけじゃない。
冬って、少しセンチメンタルな季節だから。
曜「どうかしたの――わっ」
突然曜に抱きついてしまったのは、きっとそういうわけで。
曜「えっと、あの…」
いつもと違うハグだから、びっくりさせちゃったかも。けど――
鞠莉「しばらくの間、このままでいさせて」
曜の優しさが欲しいの。 ……………………………………
曜の部屋、夜
鞠莉「これは問題発生ね…お布団が畳まれていたせいで、ベッドが冷え切ってしまっている」
鞠莉「今から温めようにも時間がかかるし、そもそも湯たんぽとかも見当たらないし…」ウーム
鞠莉「仕方ない。ここは曜のためにマリーが一肌脱ぎましょう…あ、本当に脱ぐわけじゃないわよ?」
鞠莉「要するに、ベッドを体温で温めてあげようってこと…よいしょっと」モゾモゾ
鞠莉「う、冷たい…完全に冷え切ってる。私でも寒いくらいなんだもの、なおさら曜を入れるわけにはいかないわね」 鞠莉「けど、曜のにおいでいっぱい…」すんすん
曜『えへへっ、鞠莉ちゃんっ!』
鞠莉「なんだか、曜に包まれてるみたいで安心する…ふぁぁ…zz…」
――――――――
曜「鞠莉ちゃん、お待たせー!…おっと」
鞠莉「すー…くー…」
曜「一足早くおやすみモードだ。お疲れだったんだね」ナデナデ
鞠莉「すぴー…」
曜「ふふっ、無邪気な寝顔で可愛いなぁ。失礼しまーす」モゾモゾ
鞠莉「んん…」
曜「へへ、あったかい。それに、鞠莉ちゃんのにおいでいっぱいだ」ギュ
鞠莉「すー…くー…」
曜「すっごく安心する…ふぁぁ…おやすみ、鞠莉ちゃん…zzz…」 ……………………………………
曜「まだ3月だっていうのに、今年は暖かいよね」
鞠莉「本当にね。冬物の出番が思ったより少なかったし。この感じだと、下旬ごろには桜が満開を迎えているかもね」
曜「あはは、かもね」
曜(桜。春、か…)
鞠莉「…曜、どうかした?」
曜「…冬が終わっちゃうなって思って」 鞠莉「暖かくなるのは良いことじゃない。曜は寒いの、好きじゃないでしょ?」
曜「苦手だけど…」
鞠莉「確かに、季節の終わりって少し寂しい気もするのよね。でも新しい季節が始まるのは素敵なことで――」
曜「そんなんじゃないんだ、そんなんじゃ」
鞠莉「曜…」
わかってる。冬の終わりが嫌なんじゃない。
新しい季節を迎えるのが。鞠莉ちゃんの居ない春を迎えるのが、どうしようもなく寂しいんだ。
鞠莉ちゃんとの春の想い出を作れないことが、この上なく辛いんだ。
悩み、願い、悲しみ、憧れ…言葉にならない色々な想いが、頭と胸の中をぐるぐると駆け巡っていく。 鞠莉「曜」
曜「あ…」
輪郭の無い気持ちにとらわれていると、鞠莉ちゃんに抱き寄せられた。
鞠莉「なんだか辛そうだったから…大丈夫?」
曜「ごめんね、私…」
鞠莉「いいのよ…私も多分、同じ気持ちだから」
曜「…鞠莉ちゃんも寂しい?」
鞠莉「名残惜しい…いえ、それだけじゃないわね。伝えたくても、上手く言葉に出来ないの」
曜「…そっか、そうだよね」
揺れる想いは、言葉に置き換えるのが難しい。けど、私には鞠莉ちゃんの心の声が聞こえた気がした。
それと同時に、鞠莉ちゃんが私のもつれた胸の内をわかってくれていることも直感できた。
私たちは通じ合っている。そう信じられる――それだけでもう充分だった。 鞠莉「大丈夫?」
曜「ん…うん、もう大丈夫」
鞠莉ちゃんの居ない春は、もしかしたら冬よりも寂しくて冷たい季節になるかも知れない。
感情の濁流が溢れ出て、自分では止められなくなることもあるかもしれない。
曜「ありがとう、鞠莉ちゃん」
だけど、笑顔で春を迎えられる日がきっと来る。
ハグから伝わる鞠莉ちゃんの優しさとあたたかさが、そう教えてくれているから。
終わり 全弾撃ち尽くしました。冬の日ようまりでした。
↓は前に書いたものです。よろしければ併せてお願いします。
鞠莉「心を癒すその唇に」
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1549055610/
ありがとうございました。 素晴らしい!
3年生は必ず卒業してしまうのは
時間が進むラブライブならではだけど
その1年間の出来事総てが愛しいのもラブライブならではだと思う 冬が来て訳もなく悲しくなる時があっても、曜ちゃんはきっと乗り越えられるんだなあ、って。
あとメガネあるあるシチュエーションをときめきシチュエーションに切り替える鞠莉ちゃんの機転の良さよ。
乙乙 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています