鞠莉「心を癒すその唇に」
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鞠莉「ぷぁっ…」
キスの終わり際は、いつも間の抜けた声が出てしまう。
蕩けきった後だから仕方ないって思うことにしてるけど…やっぱりカッコ悪い。
曜「そんなこと気にしなくてもいいのに」
キスの相手、曜は笑って答えた。
鞠莉「気になるのよ。やっぱりカッコよくありたいじゃない」
曜「そうなの?」
鞠莉「曜の前では、特にね」 曜「私の前だからこそ、なおさら気にすることなんてないよ。『ぶっちゃけトークのご縁』でしょ」
鞠莉「それはそうかもだけど、そうじゃないっていうか…」
見栄を張っているのは自分でもわかってる。うまく言葉を繋げないでいると、曜が嬉しそうに笑った。
鞠莉「なぁに?」
曜「いや、可愛いところあるんだなって…むぐっ」
生意気を言うほっぺたを掴んで、唇を押し当てる。
曜「んっ…まり、ひゃ…んん…」 柔らかくて心地いい。本日5度目の感触だ。
鞠莉「…ぷぁっ」
唇を離すとき、また気の抜けた声が出てしまったけど…ほら、曜が目を見開いて真っ赤になってる。
鞠莉「その言葉、そっくりお返しデース」
勝利を確信し、とどめの一言をお見舞いした。
さらに赤くなった顔で、もじもじしながら「いきなりすぎるよ、ムードもないし…」とこぼす曜。
その様子に満足して時計に目をやると、昼休み終了5分前を指していた。
鞠莉「もう時間ね」
曜「あ、うん…」 鞠莉「支度しましょう。ほら、ここ崩れてる」
曜「わっ」
乱れた髪を整えてあげる。くせっ毛だから、一度形が崩れると直すのが大変だ。
曜「今日は練習来れないんだっけ」
鞠莉「そうなのよ。臨時の理事会が開かれることになっちゃって」
曜「一緒に帰るの、難しそう?」
鞠莉「多分長引くと思う。今日は待たずに帰って」 曜「ん…わかった」
鞠莉「そんな顔しないの。夜は必ず連絡するから。はい、準備完了」
仕上げの合図とばかりに、肩をポンとはたく。
名残惜しいけど、いつもの小原鞠莉と渡辺曜に戻る時間なのだ。
鞠莉「これでよし。午後も頑張ろうね」
曜「うんっ!」 ……………………………………
曜と別れて、自分の教室へ向かう。気持ちの切り替えが必要なのはわかっているけど、ふわふわした余韻はまだ収まりそうにない。
私たちが今のような関係になったのは、一ヶ月ほど前からだ。
あの夏の日――『ぶっちゃけトーク』と称して曜の相談相手を務めてから、曜は何かと私を頼ってくれるようになった。
スクールアイドルや学校に関する相談だけじゃなく、勉強でわからないところや、美味しいお店情報など、色んな話をした。
曜「こんな風に色々話せるの、鞠莉ちゃんが初めて!」
そう言ってくれた曜の嬉しそうな顔を、今でもはっきりと覚えている。
3年生になって帰国し、理事長の仕事にかかりきりだった私にとっても、仲の良い後輩は曜が最初だった。
そうやって一緒の時間を共有するうちに、いつしかお互い惹かれ合っていった。 曜「鞠莉ちゃんのことが好きです。大好きです」
夕暮れに染まるびゅうおで、曜からの告白を受けた。
本当なら私から切り出すつもりでいたので、びっくりして、嬉しくて。涙交じりの声でイエスと答えた。
返事を聞いた曜も感極まって、私たちは涙を流して抱きしめ合った。昨日のことように覚えている。
こうしてスタートした曜と私の新しい関係。お互い立場があるので、目立った行動はできないけど、先ほどみたいになんとか二人の時間を作って。
まだまだ不慣れだけど、最近は恋人らしいスキンシップも重ねるようになってきた。
大きなトラブルはなく、幸せ続きで全ては順調――のはずなのに。
最近、どういうわけか不安が膨らんできた。 Aqoursの知名度も上がってきたとは言え、浦の星を取り巻く状況は依然厳しい。
パパからは、今年中に100人の入学希望者を集められない場合は廃校だと告げられている。
廃校回避に向けて、学校のみんな一人ひとりが動いてくれている中。理事長である私は、先頭に立ってこの問題に立ち向かわなければならない。
そのために、私は帰ってきたのだから。
だから、曜と『特別な関係』を始めることには戸惑いもあった。以前、そのことを正直に打ち明けると――
曜『鞠莉ちゃんの考え、よくわかるよ。でも、大変なときだからこそ、今の私たちの気持ちと、やりたいことを大事にしたいと思ってるんだ。だって、今は今しかないんだもん』
曜『もちろん、Aqoursとして、浦の星の生徒として、学校のために全力で頑張るよ!』
曜らしい答えが返ってきた。希望と元気をくれるこの真っ直ぐさに、私はきっと憧れたんだと思う。私もなおさら頑張らなきゃいけない。 それなのに。
曜『鞠莉ちゃん、おいで』
鞠莉『曜、よう…』
なのに、最近の私はいつも曜の優しさに甘えてしまう。
曜『よしよし』
鞠莉『ん…』
ふたりきりで、ハグして優しく背中を撫でられると、居心地の良さと温かさに溺れてしまう。
これじゃダメだって思えば思うほど深みにはまっている。優しさの中に沈み込んでしまう。 鞠莉「曜と付き合っているのは、逃避や慰めが欲しいから…?」
そんな考えまで頭をよぎる。
そんなことない、曜を想う気持ちはそんなんじゃない。けど、胸のモヤモヤは絡みついて離れない――
ぐるぐる回りの思考と戦っていると、いつのまにか教室に到着していた。
鞠莉「…ダメね。一歩外に出ると、余計な事ばかり考えちゃって」
頭を振って、リセットする。
鞠莉「頑張るよ、鞠莉」
気合いを入れ直して、努めて明るく教室に入った。 ……………………………………
生徒職員が帰宅し、静謐に包まれた夜の学校の中で。私はひとり、理事長室の机に突っ伏したまま、動くことができずにいた。
今日の仕事は散々だった。
急遽開催された臨時理事会。議題は入学希望者の見込みと学校存続の可能性に関することだった。
風向きは良くなさそうだと覚悟はしていたけど、実際『逆風』と表現して差し支えないほど、風当たりは激しかった。
前々から私のことを快く思わない数名の理事がいたのも事実だが、小原家の影響力を気にしてか、少なくとも表面上は静観に徹していたはずだった。
しかし、今日は態度が一変していた。吹き荒れる厳しい意見に、私は防戦を強いられた。
生徒募集の方針をめぐる、私とパパとの紛争を知った上でのアクションなのだろう。 本来であれば、私たち理事が一丸となって、生徒と学校の未来を守るために行動しなければならないのに。身内同士で対立している場合ではないのに。
一人の理事が言ったことが耳に残っている。
「出資者の気まぐれや子供のお遊びは、方針や戦略とは言えませんよ」
この手の話は陰口としては聞いていたが、直接耳にしたのは初めてだった。けど、何よりも悔しいのは、その言葉に頷く理事が数名いたことだ。
依然として残る、私とAqoursに向けられた懐疑的な認識。
私たちの頑張りが理解されていなかった――違う、理事たちの理解と協力を確保できなかった私の力不足だ。突きつけられた現実に、無力感でいっぱいになる。 カチ、カチ、カチ…
やたら大きく聞こえる時計の音。
鞠莉「私が、頑張らなきゃ…頑張って学校を…そうだよね、曜…」
声に出してみたが、時計の音にも負けそうなほど小さな声だった。 コンコン。
静かな部屋に、ノックの音が響いた。こんな時間まで、まだ誰か残っていたのだろうか。
応答すべきところだけど、体は重いし気分も最悪だ。誰とも会いたくない。とても会える状態じゃない。
コンコン。
またも扉が叩かれた。今回はノックだけではなかった。
「私です、曜です」
鞠莉「曜…?」
曜の声を聞いて、反射的に体が起き上がる。
曜「鞠莉ちゃん、入っても大丈夫?」 ――――――――
曜「失礼します」
時間が時間だし、状況が状況だ。居留守を使うわけにも、断るわけにもいかず、曜を部屋の中に招き入れた。
曜に心配はかけたくない。それに、優しくされたら、きっと自分を保てなくなる。ボロボロだけど、悟られないようにしなきゃ。
曜「ここだけ明かりがついてたから、鞠莉ちゃんまだいるのかなって…鞠莉ちゃん?」
鞠莉「ああ…ごめんなさい、ちょっと考え事してて」
曜「ん…」
早くも作戦は失敗だ。曜の目が心配している。その視線から逃げるように、思わず顔を背けてしまった。 鞠莉「なんでもないの。本当に」
曜「まだ何も言ってないよ」
失敗どころか、自分で逃げ道を塞いでいる。
鞠莉「大丈夫、大丈夫だから。何もないから、何も」
曜「…鞠莉ちゃん?」
誤魔化す言葉ばかりが出てくる。気持ちを伝えるのが、自分自身を見せるのが、今はたまらなく怖い。
でも、怖がるなんておかしい。私たちはパートナーなのに。なんでも言い合える関係のはずなのに。
どうしよう、どうしよう。もう戸惑いを隠すこともままならない。 曜「鞠莉ちゃん」
ふいに、温かい感触に包まれる。
鞠莉「あ…」
曜「大丈夫。怖がらなくていいんだよ」
いつもとは逆の、曜からのハグ。
曜「辛いのなら話さなくていいよ。気持ちの整理が必要なら、すぐ出て行くよ」
曜「だけど、だけど…お願い。少しの間でいいから、こうさせて」
私を抱く腕に少し力がこもる。体温を通して、曜の気持ちが体から伝わってくる。
閉じた心を、優しく温かく解きほぐしてくれるみたいに。
鞠莉「曜…わたしっ…」 ――――――――
ソファーに座り直して、私は今日あったことを話し始めた。曜はお決まり席の対面側ではなく、私の横に座って話を聞いてくれた。
思えば、仕事の悩みを話すのは初めてだし、追い詰められた自分を見せるのも初めてかもしれない。
守秘義務に関わることや、Aqoursに対する厳しい意見については話せなかったけど――
曜「そんなことが…辛かったね…」
曜は私の手を握って静かに聞いていてくれた。溜め込んでいた辛さを言葉にできたことで、気持ちが少し楽になった。
鞠莉「うん…けどね、もう一つ、言わなきゃいけないことがあって」
だからこそ、言わなければならない。きちんと自分の気持ちと、曜に向き合わなければならない。
曜「うん、どんなこと?」
鞠莉「話したいのは、私の弱さ…臆病さについてなの」
曜「臆病?」 鞠莉「私、いつも曜に甘えて、もしかしたら曜のことを逃げ場にしているんじゃないかって…」
曜「逃げ場…」
曜の反復が痛くて、思わず俯く。曜からすれば、こんな話向きになるなんて思ってもいなかったはずだから。
鞠莉「曜はいつだって優しくて…私は甘えてばかりで、依存して。しっかりしなきゃいけないのに、その優しさに逃げ込んでるだけなのかもって、最近はずっと…」
うまく言葉に変換できない。先ほどとは反対に、話せば話すほど焦りと不安が混ざり合って、大きくなっていく。
鞠莉「だから、えっと…」
曜「…そっか、そんな風に思ってたんだ」
鞠莉「…!」 静かな曜の呟きに私は凍りついた。それはきっと、引き返すことの出来ない一線を踏み越えてしまったサインだ。
鞠莉「あの、違うの、そうじゃなくて」
慌ててみても、繫ぎ止めるに足る言葉が出てこない。言っちゃいけなかったんだ、という後悔が全身を駆け巡り、視界と頭の中がめまいのようにぐるぐるしていく。
なんとか場を保とうと混乱していたその時。ずっと繋いでいてくれた曜の手が、ぬくもりが、すっと離れた。
鞠莉「あ――!」
命綱が切れて、谷底に落ちていくような恐怖。いやだ、行かないで。とっさに曜の方を見やると――
鞠莉「え…」
曜「鞠莉ちゃん。おいで?」
ぼやけた視界の中で、曜は手を広げていた。今や私たちの日課となったハグを待つポーズだ。 鞠莉「どうして…」
対する私の反応はそれだった。状況の整理が追いつかない。
曜「おいで」
鞠莉「う、うん…」
促されるがまま、おずおずと体を近づける。体重を委ねられず躊躇していると、柔らかく抱き寄せられた。
鞠莉「きゃっ」
曜「大丈夫、大丈夫だよ」
鞠莉「ん、ぅ…」
耳元で優しい声が聞こえる。背中を撫でてくれる手が温かくて心地よい。ハグは昼休みにもしたはずなのに、随分と久しぶりのような気がする。 曜「そんなに自分を追い詰めないでいいんだよ」
鞠莉「…私が変なこと言ったから、怒ってたんじゃないかって」
曜「怒ってないよ、怒るわけない」
鞠莉「手を離すから、見放されたのかもって…」
曜「ああ、そんなつもりじゃ…ごめんね、いきなりだったし、気付いてあげられなくて…」
よかった、私のはやとちりで…曜の言葉に安堵する。体と心からこわばりが抜けていくのが自分でもわかった。
鞠莉「心配して、くれたんだ」
曜「もちろんだよ。落ち着いた?」
鞠莉「うん…心が重なってるみたいで、すごく安心する」
言っていて、我ながら現金なことだと思う。けど、ハグから伝わる曜の気持ちは間違いじゃないんだって信じられる。
「ここにいても、いいんだよ」って、曜のぬくもりが伝えてくれているから。 曜「あのね、私なりの考えだけど、聞いてくれる?」
曜の腕の中で、こくんと頷く。
曜「私たちが一緒になったのってさ。楽しいとか、胸がドキドキするとか…えっと、気持ちいいとか…そういうのも勿論あるんだけど」
曜「一番の理由は、安らぎじゃないかなって思うんだ」
鞠莉「安らぎ…?」
曜「そう。こんな風に、安心して全てを預けられる関係。うまく言えないけど、お互いの居場所っていうか、心の住む場所なんだよ。きっとね」
鞠莉「心の、住む…」
曜の言葉を反復する。それは心の中にあったモヤモヤを吹き飛ばし、表現できなかった感情に輪郭を与えていく。
心が住む、安らげる場所――そうだ。だから、こうして曜にハグされて背中を撫でてもらうと、不思議なくらい気持ちが落ち着いていくんだ。
曜「鞠莉ちゃんは真面目さんだから、甘えることに対して後ろめたいとか、一方的だっていう風に思っちゃうんだろうけど」
曜「私は嬉しいよ。それって、鞠莉ちゃんと心から許し合える関係になれたってことだもん。甘えるのって、初めは勇気が必要だからね」 曜「私もね、最初の頃は戸惑ってたんだ。自分の弱いところとか、悩みとかって、あんまり人に話したことなかったから」
曜「でも、あのとき鞠莉ちゃんが、悩んでた私を見つけてくれて。優しく話を聞いてくれて」
鞠莉『ぶっちゃけトーク!する場ですよ、ここは』
曜「それで気づいたんだ。鞠莉ちゃんには、悩みや弱さを打ち明けてもいいんだ。優しくあたたかく受け止めてくれるんだって」
曜「それが、私が鞠莉ちゃんに憧れた理由。あの日以来、鞠莉ちゃんのために何かしたい、支えてあげたいって、ずっと思ってたんだ。付き合う前から、ずっとね」
鞠莉「曜…」
初めて聞くことだった。
好きになったきっかけはお互い話したことはあったけど、それよりもさらに深いところで、そんな風に想ってくれていたなんて。
曜「もちろん、お仕事に関してとか、鞠莉ちゃん家のこととかは、今の私じゃどうすることも出来ない。それはわかってるよ」
曜「わかってるからこそ、一緒の時間を過ごす時の鞠莉ちゃんには笑っていてもらいたかったのに。結局は寂しい思いをさせて、悲しませて…ダメダメだね」
私の背中を撫でる手が、止まった。 鞠莉「違うわ。仕事のこともだけど、何より自分のことを話せていなかった私がいけないの」
曜「それは私も同じだよ。一番近くにいたのに、鞠莉ちゃんの気持ちをわかってあげられなかったんだ」
曜「ふたりのときっていつも幸せで、何でも分かり合えてるって思ってたけど…だからこそ、ちゃんと言葉でも伝え合わないとダメだったんだって」
鞠莉「…ええ。本当、そのとおりだと思う」
曜「けどね。こうやって改めてお話しができて、鞠莉ちゃんにもっと近づけたような気がして。私、なんだかすっごく嬉しいんだ」
鞠莉「うん…私も、とっても嬉しい。本当は頼りない私を支えてくれて、いつも寄り添っていてくれて、ありがとう。曜」
曜「わ…!」
そっと小さな体を抱きしめる。今度は私が曜に伝える番だ。ハグと言葉で、想う気持ちを分かち合うために。 曜「…鞠莉ちゃん!」
鞠莉「ふふっ、曜」
曜「えへへ…!」
曜の頭や背中を撫でてあげる。互いの体温と呼吸を感じながら、頬を寄せて微笑み合っていると。
曜「ねぇ。キス、する?」
いきなりの提案。甘えた声と上目遣いは反則的な可愛さだし、滅多にない曜からのお誘いだけど。
鞠莉「ううん、今はしない」
今はもっと、このまま抱き合っていたかったから。 曜「ん、そっかぁ」
と、背中に回されていた曜の腕が、私の頭にかかって――
鞠莉「あっ、んん…」
曜「んっ…」
鞠莉「ん、む…」
不意打ちのキス。
本日6度目のそれは、今までのどれよりも優しくて、あたたかくて…曜の全てが伝わってくる気がした。
鞠莉「ぷあっ…よ、曜…」
曜「へっへー、お昼のお返しー」
鞠莉「ん…もう」
いたずらが成功した子供のように笑う曜を見て、思わず頬が緩む。 曜「私、キスの後の鞠莉ちゃん、好きだよ。鞠莉ちゃんは?」
鞠莉「うん、私も好き。曜のおかげで、そう思える」
キスの後の間の抜けた声。未熟さの象徴のように思っていたそれが、今はとても愛おしい。
曜「えっへへ!」
背伸びや強がりは、もういらない。これがきっと、私たちらしいってことなんだから。 すっかり静かになった時計に目を向けると、21時を過ぎていた。
鞠莉「こんな時間だったのね。遅いし帰りましょう」
曜「えっと、お仕事の方、いいの?」
心配してくれているのか、声のトーンが少しおとなしい。
鞠莉「ええ。おかげで元気をもらえたし、後は頑張るだけだもの。過去のことは変えられないけど、未来と、今しかない今のためにね。そうでしょ?」
曜「…へへっ、うん!」
きらきらした微笑みが返ってきた。私も笑って応える。曜がそうであるように、私も曜には笑顔でいてほしいから。 鞠莉「あ、そうだ!せっかくだから」
笑顔を見ていて思いついた。曜の手を取って指を絡ませる。
曜「わっ…」
いわゆる、恋人つなぎだ。
鞠莉「今日はこれで帰りましょう。校内に残ってるのはきっと私たちだけだろうから、誰かに見られる心配はなさそうだし…って、曜?」
反応が鈍かったので、目で尋ねる。
曜「あ…えへへ。その、嬉しくって」
鞠莉「嬉しい?」
曜「手を繋げるのが嬉しいんだ。実はずっと憧れてたの。手を繋いで学校から一緒に帰るのって」
言われて気が付いた。よほど遠出したときでもない限り、手を繋いだりはしてこなかったんだって。 鞠莉「そうね。なら、新しい想い出だね、ふたりの」
曜「う、うんっ…」
頬を朱に染めてもじもじしていた。思わず笑ってしまう。さっきはハグやキスまでしてたっていうのに。
曜「あ、何で笑うの?」
鞠莉「やっぱり曜って可愛いなって」
曜「か、からかわないでよっ」
鞠莉「素直な感想。さあ行こう。遅くまで学校に残ってると、こわーいお化けが出ちゃうわよ」
曜「こ、こどもじゃないんだから。あっ、待って、引っ張らないでゆっくり行こうよ。ねえってばー!」
曜はいつだって、癒しと立ち上がる勇気を与えてくれる。曜がいてくれるから、私は私でいられるの。
冷たい逆風が吹き荒れても、荒れ狂う激流が立ちふさがっても。手を離さず、微笑みながらふたりで進んでいく。
かけがえない今を、いつかきっと誇れるように。
終わり 全弾撃ち尽くしました。新たなステージでぶっちゃけトークをするようまりでした。
↓は前に書いたものです。よろしければ併せてお願いします。
曜「あけましておめでとう、鞠莉ちゃん先生!」
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1547245003/
ありがとうございました。 また全弾撃ち尽くしたのか
次も全弾撃ち尽くしてください! RIVER懐かしいな
心が温かくなるSSをありがとう あーこの雰囲気ホントにたまらないですねぇ
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