なんでも、火を見ると「蒼玉(サファイア)」という悪魔の人格が現れるそうで、真っ暗な部屋の中で唐突にマッチを擦っては、
「……くっくっくっ、久しぶりに外に出られたわ。この小娘は意思が強すぎて困るわね(笑」
などと乱暴な口調で叫んだりしていました。

ある日、夕食の時に「蒼玉」が出たことがあります。
突然おかずのハンバーグを手掴みでムシャムシャと食べ始めて、「久々の飯だわ(笑」と言いました。
食べ物関係のジョークを一切許さないお母さんが、蒼玉の頭にゲンコツ振り落とすと蒼玉は涙目になっておとなしくなりました。
それ以来、食事時に蒼玉が出たことは無いです。

そして別人格とやらは、ルビィが高校に入った辺りでパタリと出なくなりました。 大学生になった姉にその頃のことを尋ねたら、もう演じる必要がないのですわ…逢えましたからねと言って枕を涙で濡らしていました。