善子「ほら、千歌も飲みなさい? 今日はヨハネが奢ってあげるから。マスターおかわり」

千歌「まだヨハネやってるんだ……」

善子「……バカ、今のは千歌の前だから言っただけ。外じゃもうやってないわよ」

千歌「そうなんだ」

善子「高校卒業したら、さすがにね」

千歌「さすがに恥ずかしい?」

善子「恥ずかしくはないわよ? けど、堕天使は期間限定なのよ。大人になると、名乗るのが難しくなるの」

千歌「そっか……善子ちゃんはもう大人になったんだ」

善子「ええ、それなりにね」

善子「千歌は? ちゃんとやれてる?」

千歌「私は────」

仕事を辞めたよ。

今はバイトも職探しもせず、ただ惰性で毎日を過ごしてるだけ。

頼る人はいないし、家に帰る勇気もない。

地元の人を思い返すだけで胸が苦しくなって死んでしまいたくなるような毎日を過ごしてる。

千歌「────ちゃんとやってるよ。この前、肩書き付きになってお給料も増えたしね」

また、嘘をついた。しかも積み重ねるように。

善子「え、すごいじゃない! やっぱりむしろ奢ってもらおうかしら」

千歌「え〜」

善子「ふふ、冗談よ。言ったからには私が奢るわ。……でも、まあ、千歌のことだし会社のことは心配してなかったけどね」

そっか、私は心配されないんだ。

いいのか、悪いのか、分かんないけど。