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善子「ここ、私の行きつけなのよ。安いし美味しいの。カウンター席しかないのがつらいとこだけど」

善子ちゃんに連れていかれたのは、大衆居酒屋だった。

あんまり多くのお客さんは入らないけど、そのぶん、ひとりひとりに手間をかけられる立派な居酒屋さん。

何より、本当に安い。

この値段設定は、今の私にはありがたいや。

善子「なに飲む? ビールで良い?」

千歌「いいけど……善子ちゃん、ビールなんて飲めるようになったんだ」

善子「これでも社会人1年生よ? 飲まされまくって慣れちゃったんだから!」

善子「マスター、こっちビール2つね! あと唐揚げと枝豆と────」

言いながら、慣れた様子で善子ちゃんは一通り注文を終えた。

ほぼ同時にビールと枝豆が差し出され、その早さに驚いてるうちに善子ちゃんが乾杯しましょ、と言う。

善子「なにぼーっとしてるのよ。ほら、持って持って」

千歌「う、うん」

善子「はい、再会を記念して……乾杯っ」

千歌「か……乾杯」

かちん、とぶつけ合ったジョッキはいい音が鳴った。

善子「ごく、っん……んく、っく……」

善子「ぷはーっ! このために生きてるって感じだわ!」

千歌「……おじさんみたいだよ」

善子「いいのよ、金曜の夜はこれって決めてるの」

……ああ、今日って金曜日なんだ。居酒屋も人が多いわけだね。