善子「何年振りかしら……ずっと連絡もよこさないし、Aqoursの集まりにも来ないから心配してたのよ?」

千歌「……ぁ、うん。ごめん……」

善子「ふふ、でも久しぶりに千歌の顔が見れてよかった。こんなところで再会するなんて、あなたじゃないけど、奇跡なのかしら」

奇跡、か……懐かしいな。昔は口癖のように言ってたっけ、奇跡。

現実はそんな甘い願いが通用するようなもんじゃなかったけどさ────

善子「なにそんな惚けた顔してるのよ。仕事帰り?」

千歌「……うん、そんなとこ」

嘘をついた。

本当のことを言ったら、善子ちゃんの笑顔を奪ってしまうと思ったから。

人を不快にさせない振る舞いを1年半続けた私には……それは、できなかった。

昼間から街中を歩くから、見てくれだけは仕事してる風にしておいて助かったかな。

おかげで疑われずに済んだし。

善子「そう……じゃあこれから少し、飲みにでもいかない? 再会を記念して」

千歌「……」

飲み、か。……この言葉も久しぶり……私、あんまり好きじゃなかったんだよね、飲み会。

ひとりになってからは、ずっと飲みっぱなしだけど。

酔ってる間は……嫌なこと全部忘れられるからさ。

千歌「……いいよ、あんまりお金ないから高いとこ行けないけど」

私は善子ちゃんの誘いを受け入れた。

やっぱり、断って彼女を不快にさせるのが嫌だったから。