77歳の青春の思いを成就。おめでとう一休さん。
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余寓薪園小舎有年。森侍者聞余風彩。  余薪園の小舎に遇する年あり、森侍者、余が風彩を聞いて、
巳有嚮慕之志。予亦知焉。       すでに嚮慕の志あり、余もまたこれを知る、
然因循至今。             しかれども因循として今に至る。 
辛卯之春邂逅干墨吉。問以素志。    しんぼうの春墨江に邂逅して、問ふに素志を以ってす、 
則諾而應。              即ち諾して、応ず。
因作小詩述往日間何闊懐        因って小詩を作って往日かくわつの懐にまじふることを述ぶ、
且記今日來不束之喜云         かつ今日来不束の喜びを記すと云ふ。
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憶昔薪園居住時            おもふ昔    の時
王孫美誉聴相思              の美よ聴いて思ふ、   
多年舊約即忘後            多年旧約即ち忘じてのち、    
猶愛玉堦新月姿            猶ほ愛す玉かい新月の姿

仁先生訳
 この詩を書いたのはね、ぼくが薪村の草庵に住んでいた頃の話だけれどね、この森公がね、ぼくの風評を
色々聞いて、密かにぼくに憧れていたんだよ。そしてぼくに会ってね、いよいよぼくを慕うようになるのさ。
森公の心根の無垢さがぼくには不思議なくらいだった。
 けれどいろいろのことがあってね、森公の傍にばかりいることはできなくなってね、いつの間にか森公も
いなくなって、今までそのことさえも忘れかかっていた。
 文明三年(1471年)の春に、住吉の薬師堂で偶然にも森公に巡り会えてね、あの頃のことを謝し、今
もまだあの頃の心はあるのだろうかと問うたところ、あれからもずーっとぼくを慕いつづけてきたと心を明
かしてくれたんだ。
 ぼくはほっとしてね、森公が愛おしくてたまらず、もうずっと一緒にいようと思い、そのぼくの念いを詩
にして伝えたよ。

思えば昔ね、ぼくが薪村に住んでいた頃、
ぼくが皇孫であることや誉れ高い噂を聞いて、森公はぼくを密かに慕っていることを知って、ぼくも愛お
しく思っていたんだよ。
その相思の契りを、長い間すっかり忘れていたけれど、今こうして再会して、
あの薬師堂の階段に立っている新月のように優美な森公の佇まいがもうたまらなく愛おしいよ。

くま訳
思いだしてみれば昔、薪園に住んでいたころ
わしが、誉れ高い高貴な出であると、聞いて、相思相愛になったのだ。
その時した約束を、長いこと、ころっと、忘れていたのだ。
今、再会して、思いを確かめることができて、ワシの心は愛で満たされてるのだ。薬師堂の階段に佇む森の
姿は、月光のような美しいのだ。

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木凋葉落更回春 木凋み 葉落ちて更に春を回らす
長緑生花旧約新 緑を長じ 花を生じて旧約新たなり
森也深恩若忘却 森也が深恩 若し忘却せば
無量億劫畜生身 無量むりょう億劫おくごう 畜生の身 

ある男の残日HP 宇野直人先生訳
木の葉が凋み落ち 又春が巡ってきた
緑を育み 花を咲かせ 昔からの定めが実現する
森女の深い恩を もし忘れたら
未来永劫 私は畜生道の身だ

くま訳
木の葉が枯れるように、朽ちかけてていた我が身に、春が廻ってきたのだ。
青葉茂り花咲く春が。約束を違えたわしを、森は赦してくれたのだ。
森や。君から受けたこの深い恩を、もし忘れるようなことがあれば、
わしは、永遠に畜生の身のままであろう。

うむ。かっこいい爺ちゃんである。森がいたから、大徳寺の受持をつとめたのかもしれませぬ。
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