「前例にとらわれないという決意の一つだ」。29日開かれた衆院政治倫理審査会(政倫審)に現職首相として初めて出席した岸田文雄首相は、信頼回復に取り組む姿勢を強調した。ただ、政倫審のきっかけとなった自民党派閥を巡る政治資金収入不記載事件では「脱税」に当たるかどうかも焦点になっているだけに、納税者からは憤りの声が上がった。

岸田首相は政倫審の冒頭、事件について「党総裁として心からおわび申し上げる」と頭を下げ、手元の原稿に目を落としながら事件の概要や党の調査結果を淡々と説明。自身が会長を務めた宏池会の不記載を「事務処理上の疎漏」と表現し、「裏金」という言葉を使うことはなかった。

事件を巡っては2月22日の国会質疑で、政治資金収支報告書に不記載となった金額が「脱税」に該当する可能性を指摘され、鈴木俊一財務相が「議員自ら判断し納税する」などと答弁。後に発言を否定したものの、納税者の反発を呼び、X(旧ツイッター)では「#確定申告ボイコット」のキーワードが拡散した。

一方、確定申告の手続きのために東京・神田税務署を訪れた人々からも、政倫審について厳しい声が相次いだ。

50代の男性会社員は「政倫審の非公開を求めたり、説明したがらない姿勢からは反省が感じられない」と憤り、70代の自営業男性も「二階(俊博元幹事長)さんが出てこないのはおかしい。還流した金額にかかわらず、なぜこのようなことになったか、明らかにすべきだ」と声を荒らげた。

識者は国会でのやりとりをどう評価するのか。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「自民党総裁としてこうした事態を招いた背景に何があったか、はっきり答えるべきだった」と指摘。「この日の唯一の収穫を挙げるとすれば、(立憲民主党の)野田(佳彦元首相)さんから追及を受けて『(首相)在任中はパーティーはやらない』と、約束したことぐらいだろう」と話した。

産経新聞
2/29(木) 20:20配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b8a635e9a7f9860810b43c84407a5ff8cbda696