「難民・移民フェス」の仕掛け人がイランで四股を踏む理由 金井真紀さんは「多様性をおもしろがる」実験中:東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/300206

2024年1月4日 06時00分

<その先へ 解なき時代に>③

 2023年11月4日、東京都杉並区の公園で「難民・移民フェス」が開かれた。金井真紀(49)の発案で2022年に始まったフェスは4回目を迎えた。
 ガーナのスパイシーなミートパイ、クルド料理の世界一小さな水ギョーザ「マントゥ」、チュニジアの卵の包み揚げ…。芝生広場に調理の湯気が立つテント、色鮮やかな手作り雑貨やステージが用意され、約4500人が食や音楽を楽しんだ。

 ミャンマーから逃れた少数民族ロヒンギャの男性は「他の国でも悲しいことが起きているけれど、自由、民主主義、平和。三つの言葉で闘います!」と宣言。アフリカ出身の男性は「難民のためにいつもサポートしてくれてありがとう」と日本語で感謝した。

◆フェスして遊んでる場合か、って思うけど…

 難民・移民フェスといっても、日本の難民認定率は22年で約2%。欧米主要国に比べて著しく低いのは知られた事実だ。なので、フェスに参加している難民の多くは、在留資格のない「仮放免者」。入管施設の収容を一時的に解かれているものの、仕事に就けず、健康保険にも入れない。何年間も不安定な中を生きている人たちがいる。

 「考えれば考えるほど、八方ふさがり。フェスして遊んでる場合かって思うんですけど…」。金井は自らにツッコミを入れつつ「やることがないまま、時間を過ごさないといけない難民の現実を何とかしたい。たった1日だけど、みんなのできることや自慢を持ち寄りたい、と始めた」と企画したきっかけを振り返る。

 金井の本業は文筆家・イラストレーター。日本に住む世界の人たちを取材していて、難民申請中のコンゴ(旧ザイール)出身の男性に出会ったのは21年のことだ。民主化運動の弾圧を受けて日本に逃れた後、両親と3歳のおいは殺害されて、弟は行方不明という。「僕のせいだ」と男性は言った。
 「この人を帰せない。でも自分一人では抱えられない」と考えた金井は「変わり者」の仲間を集め、誰も知らないリンガラ語を男性から学ぶことにした。男性はミシンを使って、フェスに出品する雑貨作りを担う。「大変だ、忙しい」と、男性がアピールしてくるのがうれしい。「みんな役目をもって社会とつながっていたいんだ」と思う一方、そんな友人の生きる誇りを奪っている、この国の状況がやるせない。

◆入管難民法改正案に反対して「お茶」

 23年1月、難民申請中の人も送還できるようになる入管難民法改正案が、国会に再提出される見通しが報じられた。反対の意思を示すため、ゆるくつながることはできないか。フェスの実行委員で話していたら、中東を旅してきたばかりの一人が「お茶を飲んで行きなさい、ともてなす文化がすばらしかった」と紹介し、法改正反対の「#お茶アクション」が決まった。

 職場でも病院でも海外でも、お茶を飲むことはできる。交流サイト(SNS)で呼びかけたら、多くの人がお茶の写真とともに反対意見を投稿してくれた。
 「みんなでお茶を飲み、国会前の反対デモでもお茶をふるまった。楽しかったんですけど、法案は通ってしまったし、難民の日常は変わらないし…」。それでも遊ぶことでハードルを少し低くし、多くの人に日本の難民のことを知ってもらえればと願う。

◆単なる相撲ファンだったはずが…すり足を伝授

 フェスから10日後、金井はイランに飛んでいた。

(略)

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