[社説]東京電力の原発稼働への説明責任は重い - 日本経済新聞
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2023年12月30日 19:00

テロ対策の不備を理由に東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所に出されていた運転禁止命令が、2年8カ月ぶりに解除された。原子力規制委員会が問題点は改善されたと判断した。

再稼働へ向けて、新潟県など立地自治体の同意に焦点が移る。福島第1原発事故を起こし、最近も原発管理の不手際が絶えない東電に対して不信は根深い。同社は説明を尽くす必要がある。

柏崎刈羽原発は2017年に6、7号機が安全審査に合格した。ところが21年初め、IDカードの不正使用や外部からの侵入検知装置の不具合が発覚。規制委は同4月に原発内での核燃料の移動を禁じ、燃料を装てんできなくした。

東電は社長直轄の「モニタリング室」を新設し、規則や作業手順が守られているかを監視する改革を進めた。規制委は「自律的な改善ができる状態」と結論づけた。

ただし柏崎刈羽では6月に不審者の侵入監視照明が電源に接続されていなかったことが発覚し、10月には薬物検査で陽性反応が出た社員を誤って核燃料を扱う区域に入れる事案が起きた。同じ時期に福島第1でも放射性廃液を浴びた作業員が入院する事故があった。

新潟県内では東電のずさんな管理に疑念の声が強い。東北電力管内のため地元の電気代が安くなる恩恵もない。東電は住民の理解促進を地道に進めるべきだ。

ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化で、エネルギー安全保障と脱炭素を両立させるため世界的に原発の再評価が進む。日本政府も抑制的だった原発政策を転換し、有効活用を明確にした。

柏崎刈羽を運転できれば首都圏の電力需給の逼迫は遠のく。原発が稼働中の関西電力や九州電力の供給地域に比べ高止まりする料金の引き下げ余力も生じよう。

東電の最大の使命である福島での廃炉や賠償の巨額費用を捻出するためにも、再稼働は不可欠だ。同社の筆頭株主の政府にも、地元の同意取り付けへ前面に立つ責務があるのは言うまでもない。