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2023年12月5日 18時37分

 集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は憲法9条に違反し、平和的に生きる権利が侵害されたとして、福島県の住民などが国に賠償を求めた裁判で、二審の仙台高等裁判所は一連の裁判では初めて憲法判断を行った上で、「憲法9条に明白に違反するとまではいえない」として訴えを退けました。

2015年に成立し、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法について、福島県の住民など170人は戦争の放棄を定めた憲法9条に違反し、平和的に生きる権利が侵害されたなどと主張して、国に賠償を求める訴えを起こしました。

去年2月、一審の福島地方裁判所いわき支部は憲法判断をしないまま訴えを退け、原告側が控訴していました。

5日の二審の判決で、仙台高等裁判所の小林久起裁判長は「武力の行使について、政府の国会答弁で国民が受ける犠牲の重大性などから客観的、合理的に判断して要件を満たす場合に限られるという、厳格で限定的な解釈が示されており、今後の政府の行動において憲法上の重みを持ってしっかりと守られるべきものであることが前提となっている」と指摘しました。

そのうえで「政府の憲法解釈で一貫して許されないとされてきた集団的自衛権の行使が、安全保障関連法によってこのような限定的な場合にかぎり憲法上容認されるとなったとしても、憲法9条の規定や平和主義の理念に明白に違反し、違憲性が明白であると断定することまではできない」などとして訴えを退けました。

原告の弁護団によりますと、同様の裁判は全国で25件起こされ、これまでに言い渡された判決は、安全保障関連法が憲法に違反するかどうか、判断を示さないまま訴えを退けていて、憲法判断が示されたのは今回が初めてです。

原告は「不当判決」

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判決が言い渡されたあと、裁判所の前では原告側の弁護士が「不当判決」と書かれた紙を掲げました。

原告側の広田次男弁護士は「これまでの判決とは違う、踏み込んだ実体的な判断をしたが、政府の見解を補強するような内容で、非常に残念な結果」とコメントしました。

松野官房長官「国の主張が認められた」
松野官房長官は午後の記者会見で「国の主張が認められたと承知している。2015年に成立した平和安全法制により、日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力や対処力も向上している」と述べました。

その上で「政府としては、これまでの安全保障上の施策の積み重ねを踏まえ、現下の安全保障上の諸課題にしっかりと対応していく」と述べました。

安全保障関連法とは

(略)

憲法との適合性 当初から議論に

集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法をめぐっては、国会での審議が行われていた当時から、憲法と適合するかどうか議論になっていました。

集団的自衛権の行使は、自分の国が攻撃されていなくても、同盟国などへの攻撃に対して反撃することで、歴代内閣はそれまで憲法9条のもと行使は許されないとしてきました。

これについて2014年、当時の安倍内閣は従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定し、それに基づいて翌年、安全保障関連法が成立しました。

そして、安倍内閣は、法律について、あくまでも日本の防衛のために、限定的に集団的自衛権の行使を可能にするものだとして、これまでの政府の憲法解釈との整合性は保たれているとしました。

3人の学識経験者が「憲法違反」

これに対し、法案に反対した野党は「憲法違反だ」と指摘しました。また、2015年の衆議院憲法審査会で、3人の学識経験者全員が「憲法違反にあたる」と指摘しました。

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さらに同じ年の衆議院特別委員会の参考人質疑でも、2人の内閣法制局長官経験者が「従来の政府見解と相いれない」などとして、憲法に違反すると主張しました。

さらに、憲法学者などで作るグループが「明白に憲法違反だ」とする声明を発表するなど、法律の憲法との適合性をめぐって大きな議論となりました。


※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。