解散命令請求が出された世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。その財産が被害者救済に使われず韓国の教団本部などへ流出するのを防ぐため、被害者らは財産保全の特別立法を求めていた。だが、自民、公明の与党などは財産保全は見送り、代わりに損害賠償請求訴訟の支援などを柱とする特例法案を国会に提出した。なぜこんな骨抜き案になったのか。(曽田晋太郎、木原育子)

「与党で実効的な被害者救済策について被害者とその弁護団、宗教関係者、憲法学者の意見も聞きながら精力的な検討を経て取りまとめられた法案だと理解している。憲法上の要請である信教の自由や財産権にも配慮しながら、生活の困窮や社会的孤立に苦しむ被害者に寄り添った実効性あるものになっている」
 自民・公明の与党がまとめた旧統一教会の被害者救済特例法案を了承した自民党総務会後の記者会見で、森山裕同会長は21日、こう意義を強調した。法案はこの後、国民民主党を加えた3党で国会に提出。法案の取りまとめを担った自民の若宮健嗣衆院議員は「今国会で必ず成立をさせ、何よりも迅速に、そして広い意味での助けになるような形で、被害者救済支援に全力を尽くす」と語った。

◆自公提出案は損害賠償の訴訟支援が柱

法案では、解散命令請求を受けた宗教法人を対象に財産処分の監視を強化。不動産処分時に所轄庁への通知を義務付ける。財産目録などの財務書類を3カ月ごとに所轄庁に提出させ、被害者による閲覧を可能にする。また、被害者が日本司法支援センター(法テラス)に相談しやすくするための資金援助も規定。資金力にかかわらず司法手続きや訴訟の費用を立て替えられるようにする。
 ただ、被害者らが求めてきたのは財産保全法案だ。見送った理由について、若宮氏は「具体的な金額も定かでない中、包括的に財産保全ということで網を掛けるのは難しい。それよりも訴訟を起こして損害賠償請求をする段階の手続きがまだなかなか数としてなされていないのが現状なので、(財産保全の)手前の段階をもっと充実させていこうと力を入れた」と説明。

◆公明議員「財産保全は信教の自由に制約も」

 一方、与党案の協議に携わった公明議員は「解散命令確定前に財産保全するのは憲法が保障する宗教活動の自由や信教の自由に制約を与えかねず、憲法との整合性を取る必要がある。それよりも、被害者が裁判しやすいよう相談支援を充実する方が実効性がある」と話した。

 他方、今回政府は法案提出を見送り、議員立法での対応となる。その理由について、盛山正仁文部科学相は10月24日の記者会見で「教団の財産はまず民事保全の手続きにのっとり、個々の被害者が主体的に債権を確定させ、請求や保全の手続きに入ることが基本。政府ができることは法テラスなどで被害者の請求手続きの手伝いをすることで、それに取り組んでいる」と説明した。

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東京新聞
2023年11月22日 12時00分
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