内閣と党の人事を刷新した岸田総理。その狙い通りに支持率は上がるのか。すでに指摘されているのは、新たな面々の古傷である。たとえば自民党選対委員長という重責を担うことになった小渕優子衆議院議員は、「ドリル優子」というニックネームを持つことでも知られる。かつて政治資金を巡って捜査が身に及びそうになった際、事務所側がハードディスクをドリルで破壊するという荒業に出たのがその由来である。この政治資金を巡る疑惑は、2014年、「週刊新潮」が報じたことで発覚したものだ。何が明るみに出て、何が問題とされたのか。プレイバックしてみよう。

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 2014年10月8日の朝、東京・日本橋浜町の「明治座」前。50人は乗れそうな大型観光バスが続々到着し、そのつど車内から中高年女性の一団が現れる。ナンバーはいずれも「群馬」「高崎」。手馴れた係員の誘導で、彼女らは劇場へと吸い込まれていった。

 エントランスに掛かっていたボードには「本日の御予約団体様」として、

〈昼の部 小渕優子後援会女性部大会〉

 そう記されていた。

 この日、横付けされたバスは合計26台。ざっと1000入超の“観客”を運んできた計算だ。

集めた費用と劇場に支払った額が著しく違う

 自民党群馬県連の関係者が言う。

「明治座と小渕家とは、父の恵三さんの時代からつながりが深く、優子さんが支部長を務める党の『群馬県第5選挙区支部』には、今でも毎年24万円の寄付を頂いています。また、地元の群馬県中之条町にある政治団体『小渕優子後援会』の女性部は毎年、明治座を借り切って観劇会を催しており、今年は10月8日と14日、地区ごとに分かれて天童よしみさんの舞台を観ることになりました」

 もっとも、名目は「女性部大会」。例年、冒頭で代議士自ら挨拶するなど、あくまで“政治活動”の体裁をとっている。ところが、不思議なことに、

「参加者から集めた費用と、劇場に支払った額が著しく違っているのです」(中之条町関係者)

 たとえば「小渕優子後援会」が群馬県選挙管理委員会に届け出た2010年分の政治資金収支報告書では、収入の項目に「観劇会」として372万8000円が記載されている。一方で支出を見ると、組織活動費の「大会費」扱いで、844万円余りが「入場料食事代」として明治座に支払われたことになっている。その結果、実に470万円もの差額が生じているのだ。

「第5選挙区支部のほか、政党支部として『自民党群馬県ふるさと振興支部』という組織があります。高崎市の司法書士の事務所が所在地となっており、かつては実質的に恵三さんの関連団体でした。今は、これを優子さんが引き継いだ格好になっています」(同)

宙に浮いた1326万円

 そして、この自民党群馬県ふるさと振興支部からも、明治座に対し、同じ10年10月1日の日付で約844万円が支払われていた。報告書に添付された領収書のコピーを確認すると、2枚の番号は連番。つまり合計1688万円の支出を2等分し、異なる団体の支出として別個に届けたというわけだ。

 これにより、謎の“差額”は1316万円に広がってしまったことになる。
同じく11年についても、小渕優子後援会は「観劇会」名目で369万3000円の収入を得ているものの、明治座に対しては「入場料食事代」として10月5日に848万8000円を支払っており、ふるさと振興支部からも同日、847万1030円の支出が――。

 差し引き1326万円が、やはり適正に処理された形跡のないまま、宙に浮いてしまっているのだ。

 明治座の関係者に聞くと、

「貸切公演の場合は、定価の3分の2ほどに値下げさせて頂いておりますが、あまり観客が少ないと役者も演じにくいため、大体1000人を目安としてお願いしております」

 通常の公演では1、2階の合計約1200席がS席扱いとなり、定価1万2000円であれば貸切時は8000円に値引きされる格好だ。が、先述した2年分のケースは、“参加費”として集めた金額が、いずれもたったの370万円程度であり、1000人と見積もっても一人3700円だ。

2に続く

デイリー新潮
9/15(金) 6:03配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2cc32bb9d3d26f1ffea9577c270bdf975e2618bc