入管難民法改正案について、政府が法改正が必要な根拠として引用する「難民をほとんどみつけることができない」との発言をした柳瀬房子・難民審査参与員の年間審査件数が2022年で全体の4分の1を占めていたことが分かった。25日、参院法務委員会で出入国在留管理庁(入管庁)が資料を提出した。参与員が111人いる中、1人に審査が集中する格好で、同発言を法改正の根拠とすることに一部野党や難民支援者から疑問の声が強まっている。

◆政府が利用「難民みつけることができない」発言の信ぴょう性は

 難民審査参与員は、入管庁が難民ではないと認定した外国人が不服を申し立てた際、3人1組で審査する役割。法務省から委託された識者らが務め、NPO出身の柳瀬氏は05年の制度発足時から務めている。
 入管庁の公表資料によると、柳瀬氏の審査件数は21年が件数全体の約20%に相当する1378件、22年が25%の1231件だった。
 全国難民弁護団連絡会議(全難連)が、参与員を務める弁護士10人に調査したところ審査件数は年平均36件だった。元参与員の阿部浩己明治学院大教授も23日の参考人招致で「年50件」としており、柳瀬氏の数と開きがある。
 立憲民主党の石川大我議員は委員会で「特殊例の人の発言を改正の根拠とするのはおかしい」と述べた。
 入管庁の西山卓爾次長は「長年、難民支援に取り組んできた方で発言は重く受け止めている」として、柳瀬氏の発言を改正の根拠とする立場を崩さなかった。

◆「一部の参与員に異常なまでに大量に処理させている」

 難民問題に詳しい高橋済弁護士は「一部の参与員に異常なまでに大量に処理させているのが問題。保護されるべき人が保護されるような審査がなされておらず、法改正の根拠が崩れている」と話す。
 柳瀬氏は21年の衆院参考人招致で「難民を認定したいと思っているのにほとんどみつけることができない」と発言。入管庁は発言を難民申請が乱用されていることの根拠として法改正の必要性を説明している。
 審査件数などについて柳瀬氏に取材を申し入れたが関係者を通じ「回答を差し控えたい」とした。(池尾伸一、望月衣塑子)

東京新聞
2023年5月25日 21時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/252412