自民党は16日の総務会で、性的少数者(LGBT)への理解増進法案の修正案を了承した。自民、公明両党は与党政策責任者会議でも了承し、週内に国会に共同提出することで合意した。自民内では保守系議員の反発が根強いが、19日開幕の先進7か国首脳会議(G7サミット)を見据え、議長国の日本が「差別解消の取り組みに消極的だ」との批判を避ける狙いがある。

「十分に議論した上で修正し、満場一致で了承を得た」

 自民の遠藤総務会長は16日、総務会後の記者会見で、こう強調した。

 修正案は、超党派の議員連盟が2021年にまとめた法案の「差別は許されない」との文言を「不当な差別はあってはならない」、「性自認」を「性同一性」にそれぞれ修正したことが柱だ。「行き過ぎた訴訟につながる」など、党内の反対意見に配慮した。

 ただ、この日の総務会でも、出席者からは、懸念や注文が相次いだ。

石破茂・元幹事長は「公衆浴場の女湯に『私は女性だ』と自認する男性が入ってきた時、排除できないとの懸念を 払拭ふっしょく しておかなければならない」と指摘。中曽根弘文・元外相は、学校に必要な対策を求める内容について「教育現場に対応が丸投げされないかを危惧している。付帯決議などで説明すべきだ」と述べ、採決前に退席した。

 オブザーバーとして出席した高鳥修一・元農林水産副大臣は総務会後、12日の党の合同会議で反対意見が多かったと主張し、「(了承の)手続きには 瑕疵かし がある。極めて不正常な運営だった」と記者団に不満をぶつけた。

 これらの動きに対し、萩生田政調会長は記者団を前に、「一部に『民主主義が壊れた』と言う方がいると聞くが、何ら瑕疵はなかった」とくぎを刺した。

 自民は野党にも賛同を求めるが、立憲民主、共産両党は修正案に反対する方針だ。立民の岡田幹事長は16日の記者会見で「超党派で合意した法案から大きく後退している」と批判した。

 日本維新の会と国民民主党は、党内で修正案への賛否が入り交じっており、対応を協議している。国民の玉木代表は記者会見で「『一歩前進』という意見がある一方、(法案の推進派と慎重派の)二つの方向から反対がある」と語った。

 自民内からは「国会に提出さえできれば、国際社会に姿勢は示せる。成立する必要はない」(保守系議員)との声も漏れている。

読売新聞
2023/05/17 07:03
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230517-OYT1T50014/