カネを配ることしか能がないのか──。岸田首相が5日、アフリカ4カ国歴訪を終え、帰国した。帰国途中にシンガポールに立ち寄り、リー・シェンロン首相と会談。リー・シェンロン首相と握手し、満面の笑みを浮かべた岸田首相は、一連の外交は「大成功だった」といわんばかりだったが、今回の外遊で目立ったのは“バラマキ”だけだ。

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 最初に訪れたエジプトでは、首都カイロと郊外を結ぶ地下鉄整備に1000億円の円借款の供与を表明。ガーナでは、サハラ砂漠南部地域やガーナを含むギニア湾沿岸諸国の平和と安定のため、今後、3年間で約5億ドル(約680億円)の支援を公表した。計約1700億円である。

 これに対しSNSでは、《日々の生活に困っている日本国民を助けろよ!》《日本国内では増税? 外交でバラマキ?》《外国にばらまいて気持ち良いだろうが国民のために使え》と批判が殺到。岸田政権は「異次元の少子化対策」の財源として、社会保険料の上乗せを俎上に載せ、防衛増税まで検討している。国民が物価高に苦しんでいるのに、海外で気前よく税金をバラまいているのだから、ブーイングが上がるのは当然だ。

■「日本は相手国のニーズを捉えられているのか」

 しかも、今回のバラマキはムダ金に終わる可能性大だ。岸田外遊の目的は、ロシアのウクライナ侵攻や、中国への対応が主要議題となる広島サミットに向けて、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国を取り込むことだった。グローバルサウスの中には、欧米にくみせず、「中ロ寄り」の国も少なくない。アフリカ諸国との関係を強化し、中ロに対抗しようという腹積もりだった。しかし、カネを配るだけでうまくいくはずがない。

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。

「国際社会が欧米vs中ロで割れる中、どちらにもくみしないグローバルサウスとの関係強化を図ることは、これ以上の分断を防ぐ上で重要です。しかし、巨額の“バラマキ”でグローバルサウスを取り込もうという発想は安直すぎます。日本政府は情報収集能力が低く、相手国のニーズを捉えられているのか微妙です。本当に必要なのは、カネだけに頼らない独自外交でしょう。いま、フランスやブラジルは、欧米と中ロ、双方の“陣営”と向き合い、仲裁役を担おうとしています。中国の隣国である日本も独自外交を展開できる立場にいるはずですが、相変わらず欧米寄り。しかも『とりあえず配っておけ』といわんばかりの“バラマキ”ですから、あまりに乱暴です」

 岸田首相は、安倍政権下で4年7カ月も外相を務めた経験があるはずだが“バラマキ”しかできないなんて、情けない話だ。アフリカ諸国だって「くれるものはもらえばいい」と思っている程度で、大して感謝していないのではないか。

日刊ゲンダイ
5/6(土) 14:02
https://news.yahoo.co.jp/articles/db42151a1f4a45012be786c734af67be84936dcf