入管難民法の改正案が国会で審議されている。非正規滞在者の強制送還を徹底する内容で、世論の反対で廃案になった2021年の改正案と骨格は変わらない。在日外国人や支援者は「母国に帰れない人もいる」と強く反発する。どんな法案で、何が論議を呼んでいるのか。(共同通信編集委員=原真)

 ▽難民申請を繰り返すと…
 政府が3月に国会提出した改正案について、斎藤健法相は「保護すべき者を確実に保護しつつ、ルールに違反した者には厳正に対処できる制度にして、現行法下の課題を一体的に解決する」と自賛する。
 改正案の中心は、在留期間を過ぎるなどした外国人の送還の徹底だ。法務省・出入国在留管理庁は「送還を忌避する人が多く、入管施設での収容が長期化している。前科がある人もいる」と強調する。
 入管庁は、難民認定申請中は送還しないとの現行法の規定が乱用されているとして、改正案では、申請を3回以上繰り返した場合は送還できるようにする。国外退去処分を受けても帰国しない人には、1年以下の懲役などの罰則を新設する。
 しかし、入管庁の統計によると、非正規滞在者は2022年現在、約6万7千人。前年より19%減り、長期的にも大きく減少してきた。退去処分を受けた人は、ほとんどが自主的に帰国している。入管庁はチャーター便による一斉送還なども実施している。送還忌避者は22年末で約4200人にとどまり、そもそも法改正は不要だとの指摘もある。

▽命に関わる
 外国人支援者らは「送還を拒んでいるのは、母国で迫害される恐れのある難民や、日本に家族がいる人たちだ」と反論する。
 日本の難民認定率は先進国で極端に低く、過去最多の認定者数を記録した2022年でも2・0%に過ぎない。他国なら認定される人も認められないから、難民申請を重ねざるを得ないというわけだ。実際、3回以上申請を重ねて、裁判で争った末に、ようやく認定された人もいる。
 支援者らは「改正法が可決されれば、真の難民が帰国させられて、命を失いかねない。難民認定手続きを改善する方が先決だ」と批判する。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も2021年の改正案に対し、異例の見解を発表、「非常に重大な懸念」を表明した。
 また難民でなくても、日本人と結婚して子どもがいたり、在日が長年に及び生活基盤ができていたりする人は「罰則を適用されても、帰国できない」と訴える。こうした人には、日本滞在を認める「在留特別許可」を出すべきだとの声が強い。少子高齢化で人手不足が続く中、外国人技能実習生らを新たに受け入れるより、既に日本に定着している人々を正規化する方が、メリットが大きいともいわれる。
 仮に前科があったとしても、既に刑に服しているのだから、犯罪歴がある日本人と同様、社会に受け入れて更生を支援するべきだとの意見もある。

▽収容に代わる「監理措置」
 現状では、非正規滞在者は送還まで、原則として入管施設に収容される。この無期限の収容中に死者が相次いでおり、改正案は収容に代わる「監理措置」を打ち出した。
 監理措置では、家族や支援者が「監理人」となって本人を指導・監督することを条件に、収容せず社会生活を認める。入管庁は「『原則収容』の現行法の規定を改め、個別事案ごとに収容か監理措置かを選択することとなり、『全件収容主義』は抜本的に改められる」と強調する。
 だが、そもそも現行法は、非正規滞在者を「収容することができる」と定めているだけで、入管庁が原則として収容しなければならないわけではない。外国人支援者らは、全件収容主義は条文を踏み越えた同庁の恣意的な運用であり、法改正しなくても是正は可能だと主張する。

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47NEWS
2023/05/03 10:00
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