23日投開票の衆参5補選は、最終盤まで勝敗が読めない展開になっている。情勢分析の結果は調査によってまちまち。それだけ激戦ということだ。

「自民の勝利が確実なのは、安倍元首相の弔い選挙となった衆院山口4区だけ。衆院の千葉5区、和歌山1区、山口2区、参院大分は接戦で、どちらに転ぶか分からない。自民党の全勝から1勝4敗まであり得ます」(政治評論家・野上忠興氏)

■千葉5区

 自民の薗浦健太郎前衆院議員が「政治とカネ」の問題で辞職したことによる補選だ。野党側は立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党、政治家女子48党と候補が乱立。政権批判票が分散して自民優位とみられていたが、予想に反して立憲の矢崎堅太郎氏と自民の英利アルフィヤ氏がデッドヒートを繰り広げている。

「“政治とカネ”の悪いイメージを払拭するため、アルフィヤは当初、自民党を前面に出さない選挙戦を展開し、自民支持層への浸透が遅れてしまった。矢崎は地元県議で一定の知名度がある上、本来は自民に行くはずの保守票が維新や国民に流れて浮上した格好です」(地元政界関係者)

 アルフィヤ陣営には連日、自民幹部が応援に駆けつける。21日は菅前首相と麻生副総裁が応援に入った。最終日の“マイク納め”には岸田首相が来る予定。総力戦で頭ひとつ抜け出したとの見方もある。

和歌山は勢いに乗る維新がリード

■和歌山1区

 維新の新人で元和歌山市議の林佑美氏と、自民元職の門博文氏による事実上の一騎打ち。奈良県知事選を制して勢いに乗る維新が一歩リードだ。

 門氏は県知事に転じた岸本周平氏に和歌山1区で一度も勝ったことがなく、今回も自民・公明支持層を固めきれていない。

「路チュースキャンダルが尾を引いて、門は女性票から見放されとる。学会の女性部もよう動かんからアカンわ。負け癖がついとんねんな」(地元有権者)

 和歌山県連会長の二階俊博元幹事長と懇意の小池百合子・東京都知事も最終日に門氏の応援に入る。その告知には「和歌山のことは和歌山で決める」と書かれていて、「だったら何で東京の知事がシャシャリ出てくんねん」と不評だ。小池知事の応援は逆効果になりかねない。

捕手の牙城・山口でも苦戦

■山口2区

 岸信夫前防衛相が引退し、長男の信千世氏に家督を譲る選挙。楽勝とみられていたが、民主党政権で法相を務めた平岡秀夫が無所属で出馬し、猛追する。平岡氏は自民支持層からも一定の票を集め、無党派層の支持を広げている。

「いくら岸家の御曹司といっても、東京育ちで幼稚舎から大学まで慶応の信千世さんは地元のことを知らない。地元の高校を出て東大に進んだ平岡さんに親しみを感じる有権者が多いのは当然です。小学校から高校までの同窓会が再集結して支えているのも強み。信千世は家系図自慢も感じ悪かったよね」(地元メディア関係者)

 岸陣営の選対が機能不全との見方も出ている。圧勝の選挙しか経験がなく、接戦の制し方が分からないというのだ。

「平岡候補は『家系図より未来図』『家系図より家計簿』と、庶民生活や地元の問題を訴えて支持を広げている。政策を語れない信千世候補が岸家のブランドだけで簡単に勝てる選挙ではありません」(ジャーナリスト・横田一氏)

 次の衆院選から減区になる山口の選挙区事情も影響する。1区の高村家や3区の林家、山口から追い出された河村家の支援者は静観の構えだ。


■山口4区

 安倍元首相が銃弾に倒れ、昭恵夫人が元下関市議の吉田真次氏を後継指名。立憲公認の有田芳生元参院議員が旧統一教会の問題を争点に戦いを挑むが、吉田氏の圧勝は揺るがないとみられている。

「吉田陣営は朝から晩まで泣きながら安倍元首相の話をしている。国葬の礼賛ムードが下関では続いているかのようです。有田候補は、『有権者の反応はとてもいい』と話していますが、この選挙区で有田支持とは口に出せない雰囲気がある。安倍応援団は熱が入っていますが、一般有権者は少し引いており、投票所に行かない人が増えそうです」(横田一氏)

2に続く

日刊ゲンダイ
23/04/22 11:40
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