第2次安倍政権の政治介入で、放送法の「政治的公平性」の解釈がねじ曲げられた問題。総務省が存在を認めた「行政文書」によれば、解釈変更を主導した礒崎陽輔首相補佐官(当時)が総務省に圧力をかけるきっかけとなったのは、2014年11月23日放送のTBS系「サンデーモーニング」だった。

 文書には<コメンテーター全員が同じ主張の番組は偏っているのではないかという問題意識を補佐官はお持ちで>と記されている。

 実際、礒崎氏は同日の自身のツイッターでこうつぶやいていた。

<日曜日恒例の不公平番組が、今日も、放送されています。仲間内だけで勝手なことを言い、反論を許さない報道番組には、法律上も疑問があります>

 そこで日刊ゲンダイはこの番組の映像を入手。どこが礒崎氏の逆鱗に触れたのか、視聴した。

 番組は日曜朝8時からの2時間生放送。2日前の金曜に安倍首相(当時)が「消費税10%への引き上げ先送り」を理由に、残り任期を2年残して衆院を解散、12月14日投開票の総選挙が決まっていた。番組では8時10~30分まで、選挙の争点などをテーマに話し合った。

 出演者のおもな発言はこうだ。

「争点は2つ。1つはアベノミクスの評価。もう1つは国の形。自民党憲法改正草案が持っていきたい国の姿が、戦後日本が積み上げてきた民主国家とどう違うか、真剣に考えて判断しなければいけない」(評論家・寺島実郎氏)

「この国の形を変えたいということだろうと思う。安倍さんのナショナリズムみたいなものが自信に満ちてきた」(写真家・浅井慎平氏)

「大義がない選挙。消費増税に賛成の政党はないので、争点にならない。この2年間、前回選挙で争点にすらなっていないことが閣議決定で次々決まった。そのことをどう評価するか」(中央大教授・目加田説子氏)

「一番大きい問題は安全保障政策の変更。集団的自衛権、特定秘密保護法は事実上の憲法改正。内閣の決定だけでやったことに対して、やはり信を問うべきテーマ」(元毎日新聞主筆・岸井成格氏)

■解散総選挙は政権与党への審判

 番組では野党の問題点への言及もあったし、そもそも選挙の話題は20分間で、番組全体の6分の1に過ぎない。それでも安倍政権に対する厳しい指摘は、礒崎氏には「仲間内」「反論を許さない」と映ったようだが、解散総選挙は政権与党がやってきたことへの有権者による審判だ。政権が“まな板の鯉”となるのは必然で、政権幹部として度量が足りな過ぎたのでは?

日刊ゲンダイ
3/9(木) 14:05配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/4a8434a7e3233bfdcad9765078aca519ae8680e7