宗教団体「エホバの証人」の元信者などを支援する弁護団は27日、厚生労働省を訪れ、「子どもに輸血を拒否させるよう、教団が指導している」などとして、児童虐待にあたる可能性があると訴えました。「エホバの証人」は「事実に反する」などとしています。

訪れたのは、「エホバの証人」の元信者や2世などを支援している弁護団です。

元信者などおよそ100人への聞き取りの結果、「子どもの輸血を拒否するよう、教団の幹部から指導を受けた」という信者がいたほか、子どものころの体験として「親からむちでたたかれた」といった証言が複数寄せられたということです。

厚生労働省が、去年12月に全国の自治体などに向けて出した通知では、医師が必要と判断する輸血などの医療行為を受けさせないことはネグレクトに該当するとされたほか、むちで打つなど暴行を加えることは身体的虐待に該当するとされました。

「エホバの証人問題支援弁護団」の田中広太郎弁護士は、「厚生労働省の担当者は問題を十分に理解したうえで関心を持って対応してくれた。これからも協力して問題に取り組むことを確認でき、実りある話ができた」と話していました。

厚生労働省は「提供された情報の内容を精査したうえで、今後の対応を検討したい」とコメントしています。

一方、「エホバの証人」は「組織に不満を持つ元関係者のコメントのみに基づいて、ゆがんだ報告や誤った結論が出されていることに、私どもは心を痛めています。そうした元関係者の意見は、エホバの証人の親が、子どもたちのために最善を尽くしたいと願っているという事実に反しています。輸血を受け入れない主な理由は、宗教上の理由です。医療の選択は、個人や家族の決定であり、十分な話し合いに基づいて決めるべき事柄です」としています。

現役幹部が“無輸血指導”を証言

教団の地域の組織で幹部を務める男性が「教団の指導が倫理観を逸脱しているという疑念を持った」として、匿名で取材に応じました。

この男性は、教団が今も指導に使っているという内部文書を示し、「親は『血を避ける』ことを固く決意し、子供のために輸血を拒否しなければなりません」などと書かれていると訴えました。

また、子どもの氏名や住所を記入する欄とともに、「無輸血の治療を希望しています」と書かれた「身元証明書」も示し、親に渡していると証言しました。

そのうえで輸血の拒否について、「輸血の受け入れには破門も含めた重いペナルティーが科されているほか、教団を辞めた人に対しては、たとえ家族だったとしても基本的には一切の交友を禁じるように指導されている。このため信者にとって輸血を受け入れる選択肢は基本的になく、信者になっていない子どもにも教えを強要する環境になっている」と話していました。

学会発表のガイドラインは

日本輸血・細胞治療学会などが平成20年に発表した「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」では、親権者が15歳未満の子どもへの輸血を拒否した場合、「医療側は親権者の理解を得られるように努力し、なるべく無輸血治療を行うが、最終的に輸血が必要になれば、輸血を行う」としています。

NHKニュース
2023年2月27日 19時05分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230227/k10013992561000.html