「財務官僚には、文化財の持つ普遍的価値と後世に継ぐ重要性をもっとよく認識してもらいたい」

 東京国立博物館長の藤原誠氏は月刊「文藝春秋」に寄稿した文章の中でそう強く訴える。

なぜ国宝が危ういのか
 同館は日本最多の国宝89件を所蔵する。2022年秋には「国宝 東京国立博物館のすべて」が開催され、チケットは連日完売するほど人気を博した。

 だが、その国宝が危ういというのだ。

 ひとつは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機による。電気やガスといった光熱費が世界的に高騰するなか、東京国立博物館(以下、東博)では光熱費の予算2億円に対し、その倍以上となる4.5億円もかかる見込みとなっている。

「国からの交付金が年間わずか約20億円に過ぎない小さな予算規模の東博で、年間約2.5億円も新たに負担することは非常に困難である」

「そこで、私としては、光熱費不足分を昨年秋の補正予算に盛り込んで欲しいと文化庁に要望し、文化庁から財務省に折衝してもらったが、残念ながらゼロ査定だった」

修理費も潤沢でなく、“修理待ち”の所蔵品も
 数百年にわたって引き継がれてきた文化財は脆弱で、適切な室温と湿度のもとで保管しなければ、あっという間に劣化する。日本の歴史の証ともなる財産を消失しかねないという。

「国の機関で大量の文化財を所蔵しているのは博物館のみであり、その役割を重視せずに財務省が補正予算への計上を認めないのは理解できない」

 問題は光熱費だけではない。修理費も潤沢でなく、“修理待ち”の所蔵品もあるという。藤原氏は「早急に改善する必要がある」と危機感を露わにする。詳細は「国宝を守る予算が足りない!」と題して、「文藝春秋」2023年2月号(1月10日発売、電子版では1月9日に公開)に掲載されている。

文春オンライン
1/9(月) 11:12配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/382ffa25d5581a2f71a4119b782e2e785850cf67